この素晴らしい楽園に青春―アオハル―を!?《このすば120%ギャグリメイク》 作:ぴこたんすたー
『カラン!!』
バルターの打ち払ったダクネスの木刀が宙を舞い、床へと回転しながら転がる。
「これにて、勝負ありですね」
「ほう……」
ダクネスが落ちた木刀を拾い、再び、武器を手に取った。
「その太刀筋からして、ただの金持ちの御曹司ではないということか……」
「……だが、これで勝った気になるなよ。私が女だろうと構わずかかってこい」
「はい、ララティーナ様。行かせてもらいます!」
バルターが斜め下に木刀を下げたまま、ダクネスの体に下から上に斬りかかるのを、同じ木刀で防ぐダクネス。
だが、その防衛も難なく弾かれ、ダクネスの肩にバルターの力強い一撃がヒットする。
「ぐうう……」
その場に膝を下ろし、あまりの痛みに声を漏らすダクネス。
「いや、これしきのことくらいで!」
木刀を握りしめ、バルターに再度立ち向かう、勇ましいダクネス。
しかし、ダクネスの攻撃はかすりともせず、相手側に斬られてばかりだ。
すげえな、バルターは剣術も巧みにこなせるのか。
「どうした? この私を追いつめるんじゃなかったのか?」
あちこち傷だらけのダクネスが片ひざをつきながらも、バルターを挑発する。
「そんなボロボロの状態で何を言っているのですか。もう勝負は見えているのに、なぜあなたは降参しないのですか‼」
ダクネスが木刀を持ったまま、よろめきながら、その場から立ち上がる。
「私は弱き者を守り、目の前の驚異にも屈することなく、ただ普通に立ち向かうクルセイダーだ……」
「……だから、どんなに攻撃されて、傷を負おうとも、絶対に私は挫けたりしない!! さあ、バルターよ、私を殺す気で斬りかかってこい‼」
おい、ダクネス。
いつもの妄想癖のスキル発動か?
幸せそうな顔つきで、うっすらとよだれも見え隠れしてるぞ。
だが、相手側には十分に効果はあったようだ。
「……参りました。この勝負は僕の負けです」
バルターが木刀を捨て、両手を顔の前に上げる。
「剣術の腕では僕の方が上でも、あなたの心の強さには勝てなかった。あなたはとても強いお方だ」
「何だ、もう終わりか、情けないな。精々、山にこもって、もみの木の木こりの修業でもしてこい」
「ふふっ、それもそうですね。僕の完敗です。ララティーナ様」
「……あなたのことが、本当に好きになってしまった」
所が、最後のバルターの呟きだけは、誰も気づきもしなかった……。
「全く、このままでは示しがつかないな。ならば……」
ダクネスが投げつけてきた木刀をキャッチする俺。
「カズマよ。お前の極悪非情な意地悪さをバルターに見せてやれ」
「はあ!? 何で俺がこんなチャンバラプレイなんて……」
どこぞの女神と違い、悪い冗談に付き合うほど、俺は暇じゃないぞ。
「僕も見たいな。ララティーナ様が信頼を寄せる君が、どんな勝負をするのかを」
「何だって?」
「面白いからやりなさいよカズマ、世界一のお笑い勇者を目指すんでしょ」
「アクアまで……」
まあいいか。
どうせ見合いは失敗したしな。
それにバルターはララティーナの悪い噂は流さないと思うし、俺が執事じゃないことも見抜いての発言だと思う。
バルターは瞑想をするかのように、静かに目を伏せていたが……。
「さあ、カズマ。かかってこい! お前とは一度でいいから、こうして戦いたかったのだ!」
「分かったよ。俺様が直接相手をしてやるぜ!!」
『クリエイト・ウォーター!!』
『バシャーン!』
俺の水魔法で剣を構えたまま、全身びしょ濡れになるダクネス。
「何だ、バルター? 何か言いたそうだな?」
「えっ、いや、木刀同士の試合で、普通は魔法は使わないでしょ……」
「そうなのか?」
バルターが呆れ返って、無言で頭を縦に振る。
「ヒクわー、
アクアがゾッと身を震わせ、俺に奇怪な視線を向ける。
これじゃあ、俺はただの変質者じゃないか。
「ハハハッ! 見たかバルター! 剣での勝負と思わせて、このような全身ずぶ濡れという辱しめのプレイ!! このヤツの非道な行いを存分に見ておくがよい!!」
「くっ、大人しく黙っていれば、俺の批判ばかりつきやがって。こうなったら全力でいくからな!!」
『フリーズ!!』
「きゃあああ‼」
俺の追加魔法で、ダクネスの濡れた体が凍りつく。
「まさに音の合わせ鏡だ。冷たい水を被らせた後に、さらに氷結魔法だって……」
「まあ、カズマは、カスマとかクズマとか言う優れた異名? も持ってますし」
アクアとバルターの実況説明ウザいし、別にいらなくね?
「これくらいどうってことはない!」
ダクネスが体についた氷を打ち砕いて、俺に迫り、近距離で木刀を振り回す。
にわか剣法しかできない俺は、避けるのに精一杯だ。
その刀と刀が合わさり、ギリギリと木材通しのぶつかる音を軋ませる。
「カズマ、今日はよくも裏切ったな。この場でみじん切りにして、ジャイアントトードの餌にしてくれるわ」
「……なあ、ダクネス。もう一度、あのバルターと結婚を考え直してみないか?」
「いや、今さら私は考えを変える気はない!」
「でもさ、イケメンで剣の腕も確かで、何でもそつなくこなす、いい相手だと思うんだけど……」
「何を言っておる。あの男は私の好みのタイプではない!」
「はあ?」
一体、バルターのどこが気に食わないんだろう。
俺にはダクネスの目が腐っているように見えて、仕方がなかった。