「では!」
オールマイトが、巨大モニターへ向けて腕を振る。
直後、ブゥン、と低い駆動音と共に、画面へ立体的なマップが表示された。複雑に入り組んだビル群、通路、屋内構造、複数階層。まるで小さな都市そのものだった。
「今回の訓練では、諸君らに“ヒーロー”と“ヴィラン”へ分かれてもらう!」
生徒たちが、ざわりとどよめく。
「ヴィラン!?」
「いきなり!?」
上鳴が目を丸くし、切島が「燃えるじゃねぇか!」と拳を握る。
オールマイトは大きく頷いた。
「現実では、災害や街中だけが戦場とは限らない! 時には、秘密裏に“ある物”を奪おうとするヴィランを、ヒーローが制圧するケースも存在する!」
ビシッ、とモニターを指差すと、画面上に“核”と書かれたアイコンが表示された。
「ヴィラン側は、この模擬核兵器を守り切れば勝利! ヒーロー側は、それを制圧するか、ヴィランを捕縛すれば勝利だ!」
「おおー……!」
麗日が感嘆の声を漏らす。飯田も真剣な顔で頷いていた。
「なるほど、単純な戦闘ではなく、制圧と確保を目的とした実践訓練か!」
「その通り!」
オールマイトが親指を立てる。
「加えて今回は、“屋内戦闘”特有の制限も存在する!」
モニターへ、新たな項目が表示された。
視界不良。死角。閉所戦闘。人質想定。建造物被害。
「火力だけでは勝てない!」
ドンッ、とオールマイトが拳を打つ。
「判断力! 索敵! 連携! そして!」
ニカッ、と笑う。
「“ヒーローらしさ”が試されるぞ!」
教室が一気に熱を帯びた。
「うおおおおっ!!」
「めっちゃ面白そう!!」
「絶対勝つ!!」
盛り上がるクラスメイトたち。
だが、出久だけは僅かに顔を強張らせていた。
ヴィラン。
その単語が、以前とはまったく違う意味を持ってしまっている。
白い地下施設。生命維持装置。AFO。
『定期的に情報を流してもらう』
『必要に応じて任務を与える』
脳裏へ蘇った声に、右腕の奥が鈍く疼いた。
その時。
「デク君!」
麗日が楽しそうに声を掛けてくる。
「一緒になれるとええね!」
「へっ!?」
出久の肩が跳ねた。
「い、いや、その、えっと……!」
顔が赤くなる。
麗日はそんな反応を見て、けらけら笑った。
「なんでそんなテンパるんー!」
「だ、だって……!」
女子とチーム戦。
しかもヒーローコスチューム。
情報量が多すぎる。
出久の脳がまた処理限界を迎えかけた、その時。
「では組み合わせを発表しよう!」
オールマイトがカードを取り出すと、生徒たちは一斉に静まった。
「完全ランダムだ!」
モニターへ、チーム分けが映し出されていく。
そして、出久の目が大きく見開かれた。
「……え」
表示された組み合わせ。
ヒーローチーム。
緑谷出久。
麗日お茶子。
対するヴィランチーム。
爆豪勝己。
飯田天哉。
空気が、少しだけ変わった。
「……チッ」
爆豪が、明確に舌打ちする。
赤い目が、真っ直ぐ出久を射抜いた。
「……いい度胸じゃねぇか、デク」
低い声だった。
怒気。
そして、隠しきれない苛立ち。
昨日の“槍骨”。未だ説明されていない個性。無個性だったはずの幼馴染。
そのすべてが、爆豪の中で燻っている。
出久は、その視線を受けながら小さく息を呑んだ。
屋内戦闘訓練。
なのに、これから始まるのは、もっと別の何かのような気がしていた。
数分後。
訓練場内部。
無機質な金属扉が閉まり、周囲へ静寂が落ちる。薄暗い通路、コンクリートの壁、非常灯だけがぼんやりと床を照らしていた。
屋内戦闘訓練場。
本物のビル内部を模した構造らしく、空気には僅かな埃臭さすらある。
「おおー……」
麗日が周囲を見回した。
「すごいね、ほんとに建物ん中みたい」
「う、うん……」
出久も辺りを見回す。
視界は悪い。曲がり角も多い。死角だらけ。
しかも相手は。
「……かっちゃん」
無意識に、口から漏れていた。
幼い頃から知っている。
爆豪勝己。
強い。
圧倒的に。
個性の火力、戦闘センス、反応速度。そして何より、“勝つこと”への執着が異常だった。
麗日が、少しだけ真面目な顔になる。
「幼馴染なんだよね?」
「……え?」
「爆豪君と」
出久の肩が、僅かに強張った。
「う、うん……まあ」
麗日は少し考えるように唇へ指を当てる。
「じゃあ、デク君の方が爆豪君のことよく知ってるのかなって」
一拍。
「作戦、どうしようか?」
真正面からの言葉だった。
頼るような声。
信頼。
それを向けられた瞬間、出久は少しだけ目を見開いた。
「……僕に?」
「そりゃそうだよ!」
麗日は当然みたいに頷いた。
「だってデク君、分析とかすごく得意そうだし!」
「ぁ……」
出久の喉が、小さく鳴る。
分析。
その言葉だけで、少しだけ昔へ戻った気がした。
ヒーローノートを書いていた頃。
まだ、全部が憧れだけだった頃。
「……」
出久は小さく深呼吸し、訓練場のマップを頭の中で組み立てる。
ヴィラン側は防衛。つまり、基本的に“待ち”の有利がある。
加えて。
「爆豪は、多分……真正面から来る」
「え?」
麗日が瞬きをする。
出久は少し迷ったあと、続けた。
「かっちゃんは、“勝つ”って決めた時、相手を正面から叩き潰そうとするんだ」
一拍。
「特に、僕相手なら」
その声には、妙な確信があった。
爆豪は怒っている。理由を知りたがっている。だから、隠れたり小細工したりするより、自分から潰しに来る可能性が高い。
麗日は「なるほど……」と頷いた。
「じゃあ、まず爆豪君をなんとかした方がいいってこと?」
「うん」
出久も真剣な顔で頷く。
「飯田君は多分、ルール通りに“核”の防衛を優先すると思う。でも、かっちゃんは違う」
一拍。
「多分、僕を真っ先に潰しに来る」
断言だった。
幼い頃から見てきたから分かる。
爆豪勝己は、感情を戦闘へそのまま乗せるタイプだ。
しかも今は、ひどく怒っている。
「だから」
出久は腰の拘束バンドへ触れる。
「不用意に突っ込んできたところを、二人で拘束する」
「おお……!」
麗日が目を輝かせる。
「なるほど! 真正面から戦うんじゃなくて、まず動きを止めるんだ!」
「う、うん……!」
出久は少し照れながら頷いた。
「かっちゃん、強いけど、怒ると周り見えなくなる時あるから……」
そう言いながら拘束バンドを取り出すと、麗日も「あ、私も持つ!」と慌ててポーチからバンドを引き抜いた。
その時だった。
パチッ。
「……え?」
出久の表情が僅かに変わる。
今、聞こえた。
小さな音。
爆竹みたいな、乾いた破裂音。
「デク君?」
麗日が首を傾げる。
出久は反射的に口元へ指を当てた。
「……静かに」
「え?」
じっと耳を澄ませる。
遠い。
かなり遠い。
だが、聞こえる。
パチ、パチッ、と断続的な爆破音。壁越し。複数階層向こう。普通なら絶対に聞こえない距離。
「……来る」
出久が、小さく呟いた。
「えっ?」
「かっちゃんだ」
麗日の目が丸くなる。
「え、なんで分かるの!?」
出久は答えない。
いや、答えられなかった。
耳へ意識を集中すると、さらに聞こえてくる。
爆破。
靴底が床を蹴る音。
荒い呼吸。
そして。
「……チッ……デク……!」
苛立ち混じりの声。
焦燥。怒気。
爆豪勝己の息遣いが、まるですぐ近くにいるみたいに聞こえていた。
出久の背筋へ、冷たいものが走る。
五感強化。
AFOから与えられた個性の一つ。
“槍骨”ほど派手ではない。だからこそ選ばれた。骨格生成を補助し、戦闘能力を底上げし、それでいて“複数個性持ち”だと露見しにくい個性。
『露骨な能力は避けた方がいい』
AFOの声が脳裏に蘇る。
『複数個性は悪目立ちするからね。あくまで、君自身の力……という建前が通用する個性を選別した』
耳へ入る情報量が、一気に増える。
遠くの換気音。建物の軋み。麗日の呼吸。自分の心臓。
そして、こちらへ一直線に近づいてくる爆豪勝己。
「……速い」
出久の顔から、僅かに血の気が引いた。
「え?」
「かっちゃん、一直線にこっち来てる」
麗日がぎょっとする。
「えぇ!?」
その瞬間。
ドンッ!!!
遠くで爆発音が響き、建物全体が微かに揺れた。
「っ!?」
麗日が肩を跳ねさせる。
出久の耳には、さらに鮮明に聞こえていた。爆風を推進力にして、無理やり直進してくる足音。壁を蹴る音。そして、獣みたいに荒い呼吸。
「……マズい」
出久が、息を呑む。
「想像以上に怒ってる……!」
「え、えっと、どうするの?」
麗日が拘束バンドを握り直す。
出久は一瞬だけ目を閉じた。
爆破音。足音。呼吸。曲がり角までの距離。
全部が、頭の中で線になる。
「……こっちだ」
「え?」
「先に動く」
出久は低く言うと、麗日の手を引くようにして通路の脇へ移動した。
十字路の角。
爆豪が突っ込んでくるであろう進路の、ほんの少し手前。
そこへ身を潜める。
「かっちゃんは、多分この角を曲がってくる」
「う、うん」
「僕が止める。麗日さんは、隙ができたら拘束を」
「分かった!」
麗日は頷く。
その直後。
ドンッ!!
爆発音が、今度ははっきりと近くで響いた。
「デクゥゥゥゥ!!」
怒声。
通路の向こう、曲がり角の先から爆豪勝己が飛び出してくる。
掌の爆破を推進力に、床すれすれを滑るような突進。
普通なら反応できない。
だが、出久には来ると分かっていた。
タイミングも、角度も、踏み込む位置も。
「——ここ!」
出久は一歩前へ出た。
「なっ!?」
爆豪の目が見開かれる。
予想外。
待ち伏せ。
しかも、真正面ではない。
角の死角から、出久が先に踏み込んできた。
爆豪が掌を向けるより早く、出久の左肩が爆豪の胸元へ入り込む。
右腕は使わない。
“槍骨”も出さない。
ただ、強化された骨格と、AFOの訓練で叩き込まれた重心操作だけで。
「っ……!」
出久は歯を食いしばり、爆豪の勢いを横へ流した。
突進の力を、真正面から受けない。
半歩ずらし、肩で押し込み、足を払う。
ドンッ!!
爆豪の身体が、壁へ叩きつけられた。
「ぐっ!?」
コンクリートの壁が鈍く鳴る。爆豪の背中から衝撃が抜け、肺の空気が一瞬詰まった。
「すごい! 達人みたい!」
麗日は興奮気味に身振りをする。
出久はそのまま拘束バンドへ手を伸ばした。
だが、爆豪はそれを見てさらにこめかみを引き攣らせる。
「……おい」
低い声。
通路の空気が、熱を帯びた。
「誰が、誰に、やられたって?」
爆豪の両掌が爆ぜる。小さな火花ではない。明確な爆発の予兆。
出久は息を呑む。
個性『五感強化』が拾う。
汗腺の発火音。呼吸の乱れ。床を踏み締める圧。
次は、来る。
本気で。
出久は、麗日の前へ半歩出た。
「麗日さん、下がって」
「う、うん!」
爆豪が獰猛に笑う。
「調子乗ってんじゃねぇぞ、デク」
次の瞬間。
ドォンッ!!
爆炎が、通路を埋め尽くした。
「っ!!」
出久は咄嗟に身を捻る。壁へ爆発が叩きつけられ、コンクリート片が弾け飛ぶ。
熱風。轟音。
狭い屋内だからこそ、爆豪の爆破は凶悪だった。
「は、速っ……!」
麗日が思わず後退る。
爆豪は、爆煙の中から獣みたいな勢いで踏み込んできた。
「すげぇ個性だなぁ!!」
怒鳴り声。
赤い目が、怒りでギラついている。
「無個性の振りして、俺のことずっと嘲笑ってたのかァ!?」
「ち、違……!」
「じゃあ何だ!!」
爆豪の掌が、至近距離で炸裂する。
パァンッ!!
出久は五感強化で先読みし、反射的に身を沈めた。爆風が頭上を掠め、髪が揺れ、背後の壁が爆ぜる。
だが、避け切れない。
「ぐっ!」
衝撃が肩を掠め、出久の身体が通路を滑った。
痛い。
速い。
そして重い。
かっちゃんは本気だ。
出久の耳には、爆豪の荒い呼吸まで鮮明に聞こえていた。
怒っている。
本当に。
理解できないことが、許せないのだ。
「デク君!」
麗日が駆け寄ろうとする。
「駄目!!」
出久が叫んだ。
爆豪の視線が、一瞬だけ麗日へ向く。
危険。
その瞬間、出久の背筋へ悪寒が走る。
「麗日さん!」
出久は、半ば反射的に叫ぶ。
「ここは僕が抑えるから、爆弾を!!」
「えっ!?」
「行って!!」
爆豪の爆破が、再び膨れ上がる。
この狭い通路で麗日を巻き込めば危ない。
それに、飯田は上階で“核”を守っているはずだ。
なら、勝利条件だけなら、まだ取れる。
「でも……!」
「大丈夫!!」
出久は立ち上がりながら叫んだ。自分でも驚くくらい、声が出た。
「僕、かっちゃんの相手は慣れてるから!!」
その言葉に、爆豪の顔がさらに歪む。
「……は?」
爆音。火花。怒気。
そのすべてが膨れ上がった。
「慣れてる?」
爆豪が、一歩踏み込む。
「なんだそりゃァ……」
低い声。
だが、その奥には明確な激情があった。
「俺を、下に見てんのかよ……!!」
掌が爆ぜる。
麗日は迷ったように二人を見比べた。
だが、出久の表情を見て、ぎゅっと拳を握る。
「……分かった!」
そして。
「絶対、無茶しないでね!」
そう言い残し、通路の奥へ駆け出した。
「行かせるかァ!!」
爆豪が爆風で床を蹴る。
轟音。熱風。一直線。
獣みたいな速度で、麗日を追おうとする。
だが、その進路へ出久が滑り込んだ。
「っ!」
爆豪の赤い目が、怒りで見開かれる。
「どけやァ!!」
右腕。
来る。
出久の脳裏へ、幼い頃から見続けた爆豪勝己の戦い方が流れ込む。
右の大振り。
爆破を乗せた、強引な突破。
かっちゃんは、自信がある時ほど大きく振る。力で押し潰せると確信した瞬間、動きが直線になる。
だから、読める。
五感強化で加速した知覚が、爆豪の筋肉の動きすら鮮明に捉えていた。
肩が入る。肘が開く。掌が向く。爆発の予兆。
「やってみろやァ!!」
爆豪が怒鳴りながら、右腕を振り抜いた。
ドォンッ!!
爆炎。
だが、出久は半歩だけ踏み込んだ。
爆発から逃げない。
懐へ入る。
「っ!?」
爆豪の瞳が揺れた。
出久の左手が、爆豪の右腕を掴む。
熱い。
火薬臭い。
だが、離さない。
「な——」
次の瞬間、出久は身体を捻った。
AFOの地下施設で何度も叩き込まれた体術。強化された骨格。重心移動。
爆豪自身の突進力を、そのまま利用する。
「う、ぉッ!!」
ドガァンッ!!
爆豪の身体が、勢いのまま床へ叩きつけられた。
コンクリートが砕れ、鈍い衝撃音が通路へ響く。
「がっ……!?」
一瞬、爆豪の呼吸が止まる。
その隙を、出久は見逃さなかった。
右腕が疼く。
骨が軋む。
だが。
「——槍骨」
ボゴッ、と不気味な音が鳴った。
出久の前腕が膨れ上がる。皮膚の下で骨が増殖し、変形し、白い槍状構造が形成されていく。
「っ、デク……!!」
爆豪が顔を歪める。
だが遅い。
ズドッ!!
床へ、白い骨槍が突き刺さった。
続けて。
ズガガガッ!!
複数の骨槍が、爆豪の周囲へ展開される。
腕、胴、足。
完全に刺し貫かない絶妙な位置で、逃げ道だけを潰していく。
まるで檻。
白い骨の牢獄だった。
「っぐ……!!」
爆豪が無理やり動こうとする。
だが、骨槍が軋み、さらに締め上げる。
出久は荒い呼吸のまま、爆豪を見下ろした。
「はぁ……っ、はぁ……!」
心臓が暴れている。
怖い。
ずっと、かっちゃんは怖かった。
けれど、今だけは。
「……止めた」
その瞬間だった。
爆豪の表情が変わった。
怒りではない。
憤怒。
理性すら焼き潰しかねない激情が、赤い瞳の奥で爆ぜる。
「……止めたァ?」
低い声。
だが、その全身から漏れ出る圧力は、先程までとは別物だった。
ミシ、と骨槍が軋む。
爆豪の掌が、ゆっくりと握られる。
「誰が」
火花。
バチバチ、と汗腺が異常な勢いで火を噴き始める。
「誰に」
熱。
通路の温度が一気に上がる。
出久の五感強化が警鐘を鳴らした。
危険。
まずい。
出力が跳ね上がっている。
「止められたって……!?」
ドォンッ!!!!!!
轟音。
至近距離。
骨檻の内部で、爆豪が爆破した。
「っ!?」
出久の目が見開かれる。
火炎。衝撃。閉所で炸裂した爆風が、通路そのものを揺らした。
骨槍が悲鳴みたいな音を立てる。
バキッ!!
一本。
さらに。
バギィッ!!
もう一本。
爆豪は、自分の腕が裂けるのも構わず、無理やり火力を上げていた。皮膚が焼け、スーツの袖が焦げる。
それでも。
「ァァァァァッ!!」
さらに爆破。
至近距離。自傷上等。勝つためだけの爆発。
ズガァァンッ!!!
白い骨槍が、ついに吹き飛んだ。
「な……!」
出久が息を呑む。
爆煙。粉塵。
その中から、ギラついた赤い目がこちらを睨んでいた。
「……ナメてんじゃねぇぞ、デク」
爆豪が、ゆっくり立ち上がる。肩で息をしている。腕は赤く腫れ、ところどころ皮膚が裂けていた。
だが、止まっていない。
むしろ、怒りはさらに増していた。
出久の耳へ、爆豪の心臓の音が響く。
速い。
危険域。
それでも爆豪は止めない。
その姿に、モニタールームがざわついた。
「お、おい……」
「爆豪、自分まで吹っ飛ばしてるぞ……!」
「本気すぎだろ……!」
オールマイトの顔から、笑みが消えていた。
「少年たちよ……」
相澤も、僅かに眉を顰める。
一方、通路内。
爆豪は、ゆっくりと右腕を持ち上げた。
腕の固定具。
大型グレネードめいた籠手。
その側面。安全装置めいたピンへ、爆豪が指を掛ける。
カチ。
小さな音。
だが、出久の五感強化は、その音に背筋を凍らせた。
「……っ」
空気が変わる。
爆豪の殺気が、一段階跳ね上がった。
そして爆豪が、ゆっくりと腕を向ける。
照準。
真っ直ぐ、緑谷出久へ。
「……教えてやるよ」
低い声。
怒りと、苛立ちと、理解不能への激情が滲んでいる。
「テメェと俺の差をなァ……!!」