間違えずに、失う者たち   作:助兵衛

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第11話 いろんな意味でぶちまけろ!

改行を詰めた形で再生成します。

 

「……教えてやるよ」

 

 爆豪の声は低かった。怒りと苛立ち、そして理解不能なものへの激情が滲んでいる。

 

「テメェと俺の差をなァ……!!」

 

 カチッ、と籠手の安全装置が完全に解除された瞬間、出久の『五感強化』が絶叫じみた警鐘を鳴らした。汗腺、筋肉、呼吸。そのすべてが、今までとは桁の違う“爆発”へ集中していくのが分かる。

 

「っ……!」

 

 出久の顔色が変わる。避けなければならない。だが通路は狭く、距離も近すぎた。

 

「死ねやァァァァァッ!!!」

 

 ドォォォォォォンッッッ!!!!!!

 

 閃光と轟音が同時に炸裂し、廊下そのものが爆発した。壁が吹き飛び、床が砕け、コンクリート片が暴風のように乱れ飛ぶ。閉所で放たれた超火力の爆風は通路を丸ごと呑み込み、訓練場全体を大きく揺らした。

 

 モニタールームでも、生徒たちが一斉にどよめく。

 

「うわっ!?」

「な、何あれ!?」

「廊下消し飛んだぞ!?」

 

 モニターに映っているのは、崩壊した通路、爆煙、瓦礫、そして爆心地を中心に抉れたコンクリートだった。切島が目を剥き、八百万は顔を青くし、上鳴などは完全に引いている。

 

「いや洒落になってねぇって……!」

 

 一方、オールマイトの表情からは完全に笑みが消えていた。

 

「……爆豪少年」

 

 普段の陽気さが消えた、低い声だった。オールマイトはモニター越しに爆煙の中の爆豪を見据える。

 

「次、それを使えば失格とするよ。拠点である建物を崩壊させかねない攻撃なんて、下策も下策だ。よく考えて行動したまえ」

 

「……チッ」

 

 爆豪は露骨に舌打ちした。今すぐもう一発叩き込みたいという衝動が顔に出ていたが、それでも籠手から指を離す。

 

「……分ァってるよ」

 

 不機嫌極まりない声ではあったが、オールマイトの制止には従った。少なくとも、“失格”になるほど理性を飛ばしてはいない。その点だけは、ヒーロー科としての最低限の線を守っていた。

 

 瓦礫の向こうで、出久は荒い呼吸を繰り返していた。

 

「はぁ……っ、はぁ……!」

 

 肺が痛い。耳鳴りがする。右腕も、もう感覚が曖昧だった。五感強化が爆発の衝撃まで鮮明に拾ってしまったせいで、脳が悲鳴を上げている。それでも立たなければならない。

 

 出久がふらつきながら構え直した瞬間、爆豪の姿が消えた。

 

「——え」

 

 ドンッ!! という爆発音の直後、横合いから衝撃が叩き込まれる。

 

「がっ!?」

 

 出久の身体が壁へ激突し、肺から空気が抜けた。

 

「砲撃駄目ならよォ、普通に潰しゃいいだけだろ」

 

 爆豪は爆風を推進力へ変え、狭い通路内を縦横無尽に飛び回っていた。低空機動、壁蹴り、急制動、方向転換。そのすべてが一つの流れとして完成している。出久の五感強化は確かに動きを捉えているが、身体が追いつかない。

 

 右から来る。分かる。なのに、反応が間に合わない。

 

 パァンッ!!

 

「ぐぁっ!」

 

 爆豪の蹴りが脇腹へ突き刺さり、出久は床を転がった。痛い。速い。そして何より、動きに迷いがない。爆豪勝己は“戦闘”へ慣れ過ぎていた。

 

 モニタールームでも、生徒たちが息を呑んでいる。相澤は腕を組みながら、静かにモニターを見つめていた。

 

「……爆豪は元々センスが高い。自分の個性を、戦闘機動として完全に使い慣れてる」

 

 それは単純な火力だけではない。個性を使うタイミング、姿勢制御、視線誘導。そのすべてが洗練されている。

 

「緑谷は逆だな。個性の出力自体は高い。だが、扱いが荒い」

 

 経験不足。習熟不足。そして、急造。出久の戦い方には、どこか不自然な歪さがあった。まるで、短期間で無理やり戦闘技術だけを詰め込まれたみたいに。

 

 その頃、通路では爆豪が爆風で天井近くまで跳ね上がっていた。

 

「どうしたァ!! 避けろやァ!!」

 

 真上から急降下してくる爆豪に対し、出久は咄嗟に骨槍を展開する。ズガァンッ!! 爆発が骨へ叩きつけられ、白い骨片が弾け飛んだ。衝撃と熱に押され、出久の身体が床を滑る。

 

「ぐっ……!」

 

 防戦一方だった。五感強化で読めても、身体性能と経験差が埋まらない。かっちゃんは強い。昔から知っていたはずなのに、真正面から戦うと改めて理解させられる。圧倒的だった。

 

「どうしたデク!! 反撃してみろやァ!!」

 

 爆豪が爆風で横壁を蹴り、次の瞬間にはもう視界の外へ消える。至近距離で爆発が起き、出久の身体は再び吹き飛ばされた。

 

「がぁっ!?」

 

 肩から壁へ叩きつけられ、コンクリートへ亀裂が走る。肺が潰れるような衝撃に、出久は呼吸を止めたまま床へ膝をついた。だが爆豪は、そこで終わらせなかった。本来なら拘束バンドを嵌めれば終わりだ。なのに、爆豪はそれをしない。

 

「まだ立てんだろ?」

 

 赤い目が、完全に獲物を見る目になっていた。

 

「すげぇ個性持ってたんだよなァ? だったら見せてみろよ」

 

 パァンッ!! と顔の横で爆発が起き、熱風が頬を裂く。爆豪は明らかに確認していた。無個性だったはずの存在が、どこまで戦えるのか。どこまで耐えられるのか。そして、どこで折れるのかを。

 

 モニタールームでは、瀬呂が困惑した声を漏らした。

 

「……あれ、拘束しないのか?」

 

 相澤は無言だった。オールマイトの表情も硬い。爆豪は勝てる。誰の目にも明らかだった。にも関わらず、わざと終わらせていない。

 

 その頃、出久は壁へ叩きつけられながら、荒い呼吸を繰り返していた。全身が痛い。熱い。視界も揺れている。それでも出久は、爆豪を見ていた。

 

 観察していた。

 

 五感強化で拾う呼吸、筋肉、視線、攻撃の“間”。爆豪は止めを刺さない。拘束しない。怒っている。だから、“勝つ”より“叩き潰す”ことを優先している。その嗜虐心が、隙になる。

 

 出久はあえて立ち上がった。ふらつきながら、限界寸前の姿を晒す。爆豪がそれを見て笑った。

 

「まだやんのかよ」

 

 また来る。右、低空、脇腹狙い。分かる。だが避けない。衝撃が肋骨を軋ませ、口の中へ鉄臭さが広がった。それでも耐える。爆豪の動きは速い。機動力では絶対に勝てない。なら、一度だけ掴むしかない。

 

 たった一度でいい。

 

「どうしたァ!! その骨は飾りかよ!!」

 

 今度は上からだった。爆豪は爆風で跳ね上がり、真上から踏み込んでくる。空間把握、重心制御、攻撃継続。そのすべてが直感的に完成している。普通なら、絶対に捉えられない。

 

 だが、出久は動かなかった。いや、動けないように見せた。膝をつき、肩で息をし、今にも倒れそうな姿を晒す。爆豪の目が細くなった。

 

 来る。

 

 決めに来る。

 

 今までで、一番深く踏み込んでくる。

 

「終わりだデクゥ!!」

 

 右腕。爆破。一直線。その瞬間、出久の瞳がギラリと見開かれた。

 

「——捕まえた」

 

「……ッ!?」

 

 出久の左手が、爆豪の右腕を掴み取る。その瞬間、出久の身体の奥で何かが切り替わった。筋肉ではない。骨、腱、関節。それらが、ぎしり、と音を立てる。

 

 AFOから与えられた三つ目の個性、『筋骨発条化』。筋肉と骨格を一時的に発条のように変質させ、溜めた力を瞬間的に解放する個性。負荷は大きく、使い方を誤れば自分の身体が先に壊れる。

 

 だが、掴んだ。

 

 もう、逃がさない。

 

「てめ——」

 

 爆豪が腕を振り払おうとする。だが遅い。出久の右腕が軋み、皮膚の下で骨が増殖し、拳の外側へ薄い骨の装甲が展開されていく。

 

 槍骨。そして筋骨発条化。二つの個性が、歪に噛み合った。

 

「っ、ぁああああああッ!!」

 

 ドガッ!! と骨で覆われた拳が爆豪の腹へ叩き込まれる。

 

「がっ……!?」

 

 さらに、拳が機関銃のように連続で跳ねた。発条化した筋骨が拳を異常な速度で打ち出し続け、一撃ごとに骨の拳が軋み、砕け、再生成される。白い破片が散り、血が飛ぶ。それでも止まらない。

 

「ぐ、ぉ……ッ!?」

 

 爆豪の身体が揺れる。反撃しようにも右腕は掴まれている。距離が近すぎる。爆破すれば自分も巻き込む。出久は逃げ場を与えなかった。

 

「はぁッ、はぁッ、はぁッ!!」

 

 殴る。殴る。殴る。出久の顔は、勝利への喜びではなく、恐怖と必死さで歪んでいた。倒さなければ進めない。麗日が向かった先へ。爆弾のある場所へ。飯田のいる場所へ。行かなければならない。

 

 ドガァッ!!

 

 最後の一撃が爆豪の胸元を打ち抜いた。

 

「っ……!」

 

 爆豪の膝が崩れ、そのまま床へ落ちる。ドサッ、と重い音が通路に響いた。残ったのは、荒い呼吸だけだった。

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

 出久はしばらく動けなかった。自分の右腕を見る。骨の装甲は崩れ、拳は震えている。指先の感覚もない。けれど、まだ動く。

 

 ふらつきながら腰の拘束バンドを取り出し、倒れた爆豪の腕に巻きつける。カチリ、と固定音が響いた。

 

 爆豪勝己、脱落。

 

「……ごめん、かっちゃん」

 

 小さく呟いても、返事はない。出久は壁に手をつき、足を引きずりながら立ち上がった。麗日さん。爆弾。飯田君。まだ終わっていない。

 

「行かなきゃ……」

 

 壊れかけた身体を無理やり動かし、出久は通路の奥へ進み始めた。階段へ辿り着いた時には、もう足がまともに上がらなかった。

 

「っ……ぁ、ぐ……」

 

 一段、また一段。手すりへ体重を預けながら、無理やり身体を引き上げる。脇腹が痛み、肺が焼け、右腕は熱を持って細かく痙攣していた。筋骨発条化の反動。急造の身体へ複数個性を無理やり重ねた代償だった。

 

 それでも止まれない。

 

 その時、耳元で通信機が弾けるように鳴った。

 

『デク君!?』

 

「っ……麗日、さん……!?」

 

 ノイズ混じりの向こう側から、麗日の荒い呼吸が聞こえてくる。

 

『見つけた! 爆弾の部屋!』

 

 その声に、出久の表情が引き締まる。

 

「飯田君は……!?」

 

『いる! 部屋の中! 待ち構えてる!』

 

 出久は歯を食いしばりながら、階段を上がる速度を少しだけ速めた。五感強化が上階の微かな音を拾う。足音、空気の流れ、金属が擦れるような音。

 

『……っ、デク君、飯田君すごく警戒してる。私の個性、警戒してるんだと思う』

 

 出久は脳裏へ、飯田天哉という人間を思い浮かべた。真面目で、合理的で、ルールに忠実。だからこそ、相手個性への対策も徹底する。

 

「部屋……どうなってる?」

 

『えっと……部屋の中、瓦礫とか、机とか棚とか、全部どかしてる。私が触って浮かせられないように、かな』

 

「……!」

 

 やはり。飯田は“無重力”をきちんと脅威として見ている。

 

 数秒後、出久はようやく上階へ辿り着いた。廊下の先、開け放たれた一室。その手前の壁へ、麗日が背を預けるようにして身を潜めていた。

 

「デク君!」

 

 小声だったが、安堵が混じっていた。出久は息を切らしながら、麗日の隣へ滑り込む。

 

「はぁ……っ、はぁ……!」

 

「だ、大丈夫!?」

 

 麗日の顔が青ざめる。出久の状態は酷かった。スーツは焼け焦げ、腕は血で汚れ、足も引きずっている。

 

「う、うん……まだ、動ける……」

 

 そう答えながら、出久は部屋の中を覗き込んだ。そこには飯田天哉がいた。爆弾役のダミー核兵器の前に真っ直ぐ立ち、腕を組んでいる。そして、その周囲は異様なほど片付いていた。机、椅子、棚、投げられそうな物、触れられそうな物。そのすべてが壁際へ寄せられ、中央には何もない。ただ、広い空間だけがある。

 

「……徹底してる」

 

 出久が小さく呟くと、麗日も困ったように眉を下げた。

 

「さっきから、ずっとああなんだよね……」

 

 飯田は、こちらへ背を向けていない。部屋全体を視界へ入れる位置取りで、いつでも迎撃できる姿勢を保っている。完全に、防衛へ徹していた。

 

「爆豪君とは全然違う……」

 

「……時間を使われると、まずい」

 

 出久の額から汗が落ちる。自分の身体は、もう限界に近い。長引けば動けなくなる。だが飯田も、それを分かっているようだった。

 

「来ないのかね、ヒーロー諸君! ならばこちらは、このまま防衛任務を継続するのみだ!」

 

 部屋の中から、飯田の声が響く。律儀なまでに真っ直ぐな宣言だった。

 

 出久は壁へ背を預けながら、荒い呼吸を整えた。

 

「……麗日さん。多分、正面から二人で入っても駄目だ」

 

「うん?」

 

「飯田君は冷静だ。かっちゃんみたいに感情で突っ込んでは来ない。こちらの個性も、役割も理解した上で防御を固めてる。だから……僕が注意を引く」

 

「え?」

 

 麗日の目が丸くなる。

 

「飯田君は、今の僕を警戒してる。だったら、“僕”を見せれば、そっちへ意識が寄る」

 

 麗日が、はっとした顔になる。確かに、爆豪を倒した今、一番危険視されるべきは出久だ。なら、囮としてはこれ以上ない。

 

「でも、デク君その身体……!」

 

「大丈夫」

 

 即答だった。大丈夫ではない。それは、お互い分かっている。けれど、時間がない。

 

「……お願い、麗日さん」

 

 麗日はぎゅっと唇を結び、数秒迷ったあと、小さく頷いた。

 

「……分かった」

 

 出久はゆっくり壁から身体を離した。足が痛む。脇腹も軋む。それでも前へ出る。そして、廊下の陰から、あえて姿を晒した。

 

「飯田君!」

 

 部屋の中で、飯田の目が鋭く見開かれる。

 

「緑谷君!」

 

 直後、飯田の姿勢が変わった。重心を落とし、エンジンの付いた脚部をわずかに開く。臨戦態勢。だが、爆弾の前からは離れない。

 

 冷静だ。自分を迎撃しながらも、防衛位置を維持している。

 

 飯田の視線が、出久の右腕へ向いた。焼け焦げたスーツ、血、骨の残骸、そして爆豪を倒したであろう痕跡。

 

「爆豪君を……突破したのか」

 

 飯田の声に、わずかな緊張が混じる。出久はふらつきながら一歩踏み出した。飯田の脚部エンジンが低く唸る。

 

「来るか!」

 

 飯田が迎撃姿勢を取る。その瞬間、彼の意識は完全に“正面の出久”へ集中していた。だから気づかなかった。部屋の外、天井近くで、麗日お茶子が静かに浮いていたことに。

 

 自分自身へ無重力を掛け、呼吸すら殺し、壁を蹴る反動だけで、本当にゆっくりと天井すれすれを移動していく。飯田の対策は完璧だった。物を浮かせて飛ばす。瓦礫で攪乱する。それらは全部潰している。だが、“本人が浮く”ことまでは意識の外だった。

 

「……飯田君」

 

 出久がさらに前へ出る。足を引きずりながら、今にも倒れそうな身体で、それでも飯田の目を真正面から見据えた。

 

「まだ……終わってない」

 

「当然だ! ヴィランは最後まで任務を遂行する!」

 

 轟ッ!! と脚部エンジンが噴射する。その瞬間、飯田の視線が完全に出久へ固定された。その頭上を、麗日お茶子が静かに通過しようとする。

 

 その時だった。

 

「……っ」

 

 不意に、麗日の顔色が変わった。ぐらり、と視界が揺れ、胃がひっくり返るみたいな不快感が込み上げる。

 

「うぷ……」

 

 無重力。対象を浮かせる個性。だが、その負担は決して軽くない。特に“自分自身”を浮かせる行為は、想像以上に消耗が激しかった。自分の身体、装備、移動、姿勢制御。その全部へ意識を割きながら、長時間浮遊し続ける。しかも今回は、気配を殺すために極限まで慎重に動いていた。

 

 酔い。平衡感覚の崩壊。内臓が裏返るみたいな感覚。

 

「っ、ぅ……!」

 

 麗日が慌てて口を押さえる。だが、もう限界だった。

 

「おぇっ」

 

 次の瞬間、飯田の頭上へ盛大に吐しゃ物が降り注いだ。

 

「なっ!?」

 

 べちゃっ、と極めて生々しい音が響く。飯田の眼鏡、肩、髪。そのすべてへ直撃した。部屋の空気が、一瞬で凍る。出久と飯田の思考が、同時に停止した。

 

「な、ななななな何ィィィィィ!?!?」

 

 飯田が絶叫する。完全に予想外。あまりにも予想外。真面目な委員長気質ゆえか、精神ダメージが凄まじい。

 

「うわぁぁぁぁごめん!! ごめんなさい!!」

 

 天井付近で麗日が半泣きになる。しかし無重力を解除したせいで、今度はそのままバランスを崩した。

 

「ひゃあっ!?」

 

 ドサッ!! と床へ落下する。

 

「麗日君!? いやそれどころではなく!! ぬ、ぬめっ!? こ、これは……!!」

 

 飯田が完全に取り乱した。眼鏡を外し、制服を確認し、後退りし、防衛陣形が一気に崩れる。その瞬間、出久の目が鋭く細まった。

 

「——今だ!!」

 

 痛む脚を無理やり踏み込み、出久が一直線に駆け出す。

 

「しまっ——!」

 

 飯田が顔を上げるが、遅い。ほんの一瞬、たった一瞬の混乱。それだけで十分だった。

 

 出久はボロボロの身体を引きずるようにして爆弾へ飛び込んだ。脇腹が悲鳴を上げ、肺が焼け、視界も滲む。それでも右手を前へ伸ばす。

 

「っ……!」

 

 そして、ポン、と模擬核兵器へ触れた。

 

 直後、ブォンッ!! と訓練終了を告げるブザーが、建物全体へ鳴り響く。

 

『ヒーローチーム、勝利!!』

 

 機械音声が響いた。

 

 部屋の中が、一瞬静まり返る。

 

 飯田は呆然と立ち尽くしていた。頭から吐しゃ物を垂らしたまま。

 

 麗日は床へへたり込みながら、真っ赤な顔で震えている。

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃ……!!」

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