間違えずに、失う者たち   作:助兵衛

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第4話 後ろ暗い受験日

 緑谷出久とAFOの出会いから、数か月が過ぎた。

 

 季節は移り変わり、空気から冬の鋭さが薄れ始めている。それでも朝はまだ冷え、吐いた息は白く、制服の袖口から入り込む風は肌に冷たかった。

 

 人の流れに紛れながら、出久は駅から続く坂道を歩いていた。

 

 周囲には、同年代の少年少女がいる。緊張した顔、興奮を隠しきれない声、参考書を開いたまま歩く者、友人同士で励まし合う者。皆、同じ方向へ向かっていた。

 

 雄英高校。

 

 日本最高峰のヒーロー育成機関。

 

 その名前を意識しただけで、胸の奥が熱くなる。出久はゆっくりと視線を上げた。

 

 そして、見えた。

 

 巨大な門。広大な敷地。朝日を受けて輝く近未来的な校舎群。

 

 雄英高校。

 

 憧れ続けた場所だった。

 

 何度も雑誌で見た。何度も動画で見た。ヒーロー分析ノートにも、この学校の卒業生の情報を書き込んできた。

 

 オールマイトも、この場所を歩いた。

 

 あの平和の象徴もこの門を潜り、この校舎で学び、この場所からヒーローになった。

 

 胸が高鳴る。

 

 ずっと遠かった場所だ。無個性だと診断された日から少しずつ遠ざかり、“現実的ではない夢”として、自分で切り捨てようとしていた場所。

 

 なのに今、自分はここにいる。

 

 受験生として、雄英高校の前に立っている。

 

「……っ」

 

 喉が詰まった。

 

 嬉しかった。夢みたいだった。

 

 けれど、その感情と同時に、胸の奥で別の何かが蠢く。

 

 地下施設。白い研究室。生命維持装置。焼け爛れた男。掌の黒い穴。

 

 脳裏に断片が浮かんだ瞬間、胸の高鳴りは別の熱へ変わった。

 

 後ろ暗い。

 

 その感覚だけは、どうしても消えない。

 

 自分は本当にここへ来ていいのか。この場所を目指している他の受験生たちと、自分は同じなのか。オールマイトに憧れ、真っ直ぐここへ来た彼らと、ヴィランの王から力を受け取った自分が、同じ場所に立っていいのか。

 

 出久は、無意識に俯いていた。

 

 先ほどまで見上げていた雄英の校舎が視界の上から消え、代わりに見えるのはアスファルトと自分の靴先だけになる。

 

 周囲では受験生たちの声が飛び交っていた。希望、緊張、憧れ。その中に、自分だけが紛れ込んでしまった異物のように思えた。

 

 ポケットの中で、指先が小さく震える。

 

 あの日から、何度も自分に問い続けている。

 

 これは、本当に正しい選択だったのか。

 

 だが、答えはまだ出ない。

 

「……でも」

 

 俯いたまま、出久は拳を握った。

 

 それでも、ここへ来たかった。

 

 ヒーローになりたかった。

 

 誰かを助けたかった。

 

 その気持ちだけは、嘘ではない。たとえ、そのために踏み込んだ道がどれほど歪んでいたとしても。

 

 出久はゆっくりと息を吸い込み、もう一度だけ顔を上げようとした。

 

 その時だった。

 

「——おい」

 

 背後から、聞き慣れた荒々しい声が飛ぶ。

 

 出久の肩が、びくりと震えた。

 

 まさか。

 

 そう思うより先に、声はさらに大きくなる。

 

「おいクソナード!!」

 

 反射的に振り返る。

 

 人混みを乱暴に掻き分けながら、こちらへ歩いてくる少年がいた。鋭く吊り上がった赤い目、逆立った灰金色の髪、苛立ちを隠そうともしない顔。

 

 爆豪勝己。

 

 幼馴染。

 

 そして、ずっと背中を見続けてきた存在。

 

「な、なんで……」

 

 出久の喉が詰まる。

 

 爆豪はそんな反応など意に介さず、ドカドカと荒い足音を立てながら近づいてきた。

 

「なんでてめえ、ここにいやがる!!」

 

 周囲の受験生たちが、ぎょっとしたように振り返る。だが爆豪は気にしない。

 

「雄英受けるのやめろって言ったよなぁ!?」

 

 怒鳴り声が、朝の校門前へ響き渡った。

 

 出久の身体が強張る。

 

 変わっていない。

 

 その声も、その威圧感も、自分を見下ろす目も。昔から、何一つ。

 

「か、かっちゃん……」

 

「気安く呼ぶな!!」

 

 爆豪の怒声が飛ぶ。

 

 火薬の匂いがした。掌の汗腺が刺激されているのか、小さく火花が散っている。

 

「てめぇ、自分が何モンか忘れたのか!?」

 

 爆豪が一歩距離を詰める。

 

「無個性のくせに、ヒーロー科受けるとかまだ諦めてなかったのかよ!」

 

 その言葉が胸に刺さった。

 

 数か月前までなら、きっと出久は何も言い返せなかった。俯いて、謝って、誤魔化して、そうして終わっていた。

 

 だが、今は違う。

 

 地下施設。AFO。掌の黒い穴。

 

 あの男の声が、一瞬だけ脳裏をよぎる。

 

『君は、ヒーローになれる』

 

 出久の喉が、静かに上下した。

 

 爆豪の圧力は昔と変わらなかった。いや、以前よりも鋭くなっているようにすら感じる。周囲の空気が張り詰め、受験生たちが距離を取り始める中、出久は反射的に一歩下がっていた。

 

「……っ」

 

 喉が締まる。

 

 身体が、過去を覚えている。怒鳴られるたびに縮こまり、睨まれるたびに言葉を失ってきた記憶が、理屈より早く身体を動かしてしまう。

 

 爆豪はそんな出久の反応を見て、さらに苛立ったように舌打ちした。

 

「そのツラだよ、そのナメたツラ」

 

 掌で小さな爆発が弾ける。

 

 パンッ、と乾いた音が鳴った。

 

「てめぇみてぇな出来損ないが、俺と同じ場所に立てると思ってんじゃねぇぞ!」

 

 さらに一歩、距離が詰まる。

 

 周囲の受験生たちの顔に、明確な緊張が走った。このままではまずい。そう誰もが思った、その瞬間。

 

「待ちたまえ!!」

 

 鋭く、よく通る声が割って入った。

 

 爆豪の眉が跳ねる。

 

「あぁ?」

 

 二人の間へ、勢いよく一人の少年が踏み込んできた。

 

 眼鏡。整えられた紺色の髪。長身で、がっしりとした体格。そして何より、その立ち姿には妙な“真面目さ”があった。

 

 少年は、出久を庇うように爆豪の前へ立つ。

 

「君!」

 

 びしっ、と指が突きつけられる。

 

「これからヒーローを志そうという者が、校門前で恫喝行為とは何事だ!」

 

 爆豪のこめかみが引き攣った。

 

「は?」

 

「聞こえなかったのか!? 俺は、その行為はヒーローを志す者としてあるまじき行動だと言っている!」

 

 眼鏡の奥の目が、真っ直ぐ爆豪を睨んでいた。

 

 恐れていない。威圧されてもいない。むしろ、本気で怒っている。

 

「公共の場で他者を威圧し、怒鳴り散らすなど論外だ! 君は自分が何をしているのか理解しているのか!?」

 

 腕を大きく振りながらの叱責は、声量も動作も無駄に大きい。だが、その一つ一つには妙な説得力があった。

 

 出久は思わず、呆然とその背中を見る。

 

 爆豪に、真正面から怒鳴り返している。

 

 しかも、一歩も引かずに。

 

「……んだてめぇ」

 

 爆豪の声が低くなる。

 

 だが、眼鏡の少年は怯まない。

 

「俺は飯田天哉! 推薦でも何でもない、一受験生として君に言わせてもらう!」

 

 びしっ、と再び指を突きつける。

 

「暴力と威圧で他者を押さえつける者に、ヒーローを名乗る資格はない!!」

 

 一瞬、空気が静まり返った。

 

 次の瞬間、爆豪の額に青筋が浮かぶ。

 

「……上等だメガネ」

 

 掌で、ボンッ、と爆発が弾けた。

 

 周囲の受験生たちがざわめく。

 

 飯田天哉はなおも姿勢を崩さなかった。むしろ堂々と胸を張り、爆豪を真正面から見据えている。その姿は、出久の目に妙に眩しく映った。

 

 爆豪は忌々しげに舌打ちする。

 

「……チッ」

 

 鋭い視線が飯田へ向いた。

 

 そのまま殴りかかっても不思議ではない空気だった。だが、周囲にはすでにかなりの数の受験生が集まっている。遠巻きに様子を窺う者、露骨に警戒している者、スマートフォンを取り出しかけている者までいた。

 

 雄英高校の校門前。

 

 入試当日。

 

 ここで騒ぎを起こせば、確実に面倒になる。

 

 爆豪はそれを理解していた。

 

「……クソが」

 

 吐き捨てるように言い、最後に出久へ鋭い視線を向ける。

 

「覚えとけよ、デク」

 

 低い声だった。

 

 怒りを押し殺した声音。

 

「入試で無様晒したら、ぶっ殺す」

 

 それだけ言い残すと、爆豪は踵を返した。乱暴な足取りのまま人混みを割り、校舎の方へ向かっていく。

 

 周囲の空気が、ようやく緩んだ。受験生たちも、小さく安堵したように息を吐いている。

 

 出久は、しばらく動けなかった。

 

 心臓が速い。掌に汗が滲んでいる。昔の記憶を無理やり掘り返されたような感覚が、まだ身体に残っていた。

 

「大丈夫かい?」

 

 飯田が振り返る。

 

 先ほどまで爆豪に向けていた厳しい表情は薄れ、今は純粋な気遣いが浮かんでいた。

 

「あ、えっと……は、はい」

 

 反射的に答えたが、声は少し裏返っていた。

 

 飯田は眉を寄せる。

 

「全く、大丈夫には見えん!」

 

「えっ」

 

「君は少々、いや、かなり気圧されすぎだ!」

 

 びしっ、とまた指を向けられ、出久の肩が反射的に跳ねる。

 

「ヒーローを志すならば、その気弱な態度を何とかしたまえ! 威圧された程度で萎縮していては、人を助けるなど到底できんぞ!」

 

 真正面からの言葉だった。責めるというより、叱咤に近い。

 

 飯田は腕を組み、真剣な顔で頷く。

 

「もちろん、恐怖を感じること自体は悪ではない! だが、それに呑まれてはならない!」

 

 熱量の高い言葉。真っ直ぐすぎるほど真っ直ぐな声音。

 

 出久は、少し呆気に取られた。

 

 こんな風に、自分へ真正面から“期待するような言葉”を向けられたことが、あまりなかった。

 

「……あ」

 

 何か返そうとした時には、飯田はもう姿勢を正していた。

 

「では俺は行く!」

 

 くるり、と勢いよく振り返る。

 

「互いに全力を尽くそうではないか、受験生諸君!」

 

 最後だけなぜか周囲全体へ向けて叫び、飯田天哉は大股で校舎へ向かっていった。

 

 背筋の伸びた歩き方だった。その後ろ姿を、出久はしばらく呆然と見送る。

 

「……すごい人だな」

 

 ぽつりと漏れた。

 

 胸の奥に残っていた緊張は、まだ完全には消えていない。爆豪の怒鳴り声も、掌で弾けた爆発音も、耳の奥にこびりついている。

 

 けれど、飯田の言葉もまた、同じ場所に残っていた。

 

 恐怖を感じること自体は悪ではない。

 

 だが、それに呑まれてはならない。

 

「……あ」

 

 そこで、出久はようやく気づいた。

 

 周囲の受験生たちは、もう次々に校舎へ向かっている。門の前で足を止めている者は、ほとんどいない。

 

「ま、まずい……!」

 

 慌てて受験票を取り出す。

 

 紙面に印字された試験会場の番号を確認し、案内板と見比べた。

 

 広い。想像していたより、ずっと広い。

 

「えっと、第二会場……第二、第二……あっち!?」

 

 出久は小さく声を上げ、鞄を抱え直して走り出した。

 

 雄英の校舎は、外から見上げた時以上に巨大だった。廊下は広く、天井は高く、壁には案内板が整然と並んでいる。すれ違う受験生たちは皆、どこか落ち着かない顔をしていたが、それでも足取りは早い。

 

 その流れに乗り遅れないよう、出久は何度も受験票を見直しながら進んだ。途中で曲がる場所を間違えかけ、案内表示の前で立ち止まり、慌てて戻る。

 

 心臓が、また速くなる。

 

「ここ、だよね……?」

 

 ようやく辿り着いた扉の横には、受験票と同じ番号が表示されていた。

 

 出久は息を整え、そっと扉を開く。

 

 中は、ほとんど埋まっていた。

 

 ずらりと並んだ席。前方の大型スクリーン。壁際に立つ職員らしき大人。受験生たちはすでにそれぞれ席につき、資料を確認したり、静かに待機したりしている。

 

「え、えっ……」

 

 焦りが一気に込み上げる。

 

 空いている席はどこだ。どこに座ればいい。前に行くべきか、後ろに下がるべきか。

 

 視線が泳ぐ。

 

 その時。

 

「こっち! 空いてるよ!」

 

 明るい声が聞こえた。

 

 出久が慌ててそちらを見ると、茶色い髪の少女が手を振っていた。丸い頬に大きな目。柔らかい雰囲気の少女だった。

 

 彼女の隣の席が、一つだけ空いている。

 

「あ、ありがとう!」

 

 出久は小声で礼を言いながら、急いでその席へ向かった。鞄を置き、椅子に座る。ようやく腰を下ろした瞬間、全身から力が抜けそうになった。

 

 少女は少し身を乗り出し、声を潜める。

 

「さっき、大変そうだったね。大丈夫?」

 

「えっ」

 

「校門のところ。怒鳴られてたから」

 

 出久の肩が小さく跳ねた。

 

 見られていた。

 

 それが恥ずかしくて、すぐに視線が下がる。

 

「あ、いや、その……大丈夫、です」

 

 少女は眉を下げた。

 

「ほんとに? あれ、いじめられてるの?」

 

 あまりにも真っ直ぐな心配だった。

 

 出久は、一瞬だけ答えに詰まる。

 

 違う、と言おうとした。いつもの癖で。

 

 幼馴染だから。昔からああだから。自分が弱いから。

 

 そうやって言い訳を並べようとした。

 

 けれど、喉の奥で言葉が止まる。少女の目には、好奇心ではなく心配だけがあった。

 

「……えっと」

 

 出久は、ぎこちなく笑う。

 

「大丈夫。たぶん……大丈夫だから」

 

 曖昧な答えだった。

 

 少女は納得しきれないようだったが、それ以上は踏み込まなかった。

 

「そっか。ならいいけど……無理したらあかんよ?」

 

「あ、ありがとう」

 

 出久は小さく頭を下げる。

 

 その時、会場前方の照明がわずかに落ちた。ざわめきが静まっていく。

 

 試験説明が、始まろうとしていた。

 

 教室前方のスクリーンに、雄英高校の校章が映し出される。ざわついていた受験生たちも、次第に口を閉ざしていった。

 

 静寂。

 

 その空気を破るように、バンッ、と勢いよく壇上脇の扉が開いた。

 

「ヘーイヘーイヘーイ!!」

 

 爆音のような声が教室中へ響き渡る。

 

 出久の肩が跳ねた。

 

 壇上へ飛び出してきたのは、サングラスをかけた長身の男だった。奇抜な髪型。派手なジャケット。そして何より、全身から溢れる異様なテンション。

 

「ようこそ雄英高校入試へ!!」

 

 マイクを片手に、男は両腕を大きく広げる。

 

「俺が今日の実技試験担当! プロヒーロー、プレゼント・マイクだァ!!」

 

 教室の空気が一気に動いた。ざわめき、驚き、小さな歓声。

 

 出久の目も思わず見開かれる。

 

 プレゼント・マイク。

 

 現役プロヒーロー。派手な個性とハイテンションなトークで有名な、雄英教師の一人だ。

 

「うわ、本物……!」

 

 思わず声が漏れる。

 

 隣の少女も「すごー……」と小さく呟いていた。

 

 プレゼント・マイクはそんな反応に満足したように頷き、教卓へ片足を乗せる。

 

「オーケイ受験生諸君! 早速だがァ! 時間は有限! 説明始めるぜェ!!」

 

 巨大スクリーンへ映像が切り替わる。

 

 そこには、巨大な人型ロボットの姿が映し出されていた。

 

「君たちにはこれからァ! 市街地演習場にてヴィラン役ロボをぶっ壊してもらう!!」

 

 ドンッ、と効果音付きで複数のロボット映像が並ぶ。

 

 一点。二点。三点。

 

 それぞれサイズも形状も違う。

 

「四種のロボにはポイントが設定されてる! より多く倒し、高得点を狙え!! シンプル! 実に雄英らしい実力主義ってワケだァ!!」

 

 受験生たちの顔つきが変わる。

 

 ノートを取る者。画面を凝視する者。静かに深呼吸する者。

 

 出久も無意識に前のめりになっていた。

 

 実技試験。

 

 いよいよ始まる。

 

 その実感が、じわじわと胸へ広がっていく。

 

 その時だった。

 

「質問!」

 

 鋭い声。

 

 出久の視線がそちらへ向く。

 

 立ち上がっていたのは、あの眼鏡の少年——飯田天哉だった。姿勢は直立不動で、腕はぴしりと上がっている。

 

「資料のロボット図面についてですが!」

 

 周囲の受験生たちが少し驚いたように見る中、飯田は真剣そのものの顔で続けた。

 

「一点から三点まで、計四種と説明されました! しかし図面にはもう一体、別種のロボットが存在しています! これは記載ミスでしょうか!?」

 

 プレゼント・マイクは一瞬きょとんとした後、すぐに笑った。

 

「ナイス質問、受験生!」

 

 びしっ、と飯田を指差す。

 

「そいつァゼロポイントだ! ポイント対象外のギミックロボってことだな!! 無理に戦わず回避することをおすすめする!」

 

「なるほど! 回答ありがとうございます!」

 

 飯田は大きく頷き、勢いよく着席した。その動作まで妙にきっちりしていて、出久は思わず目を瞬かせる。

 

 真面目だ。

 

 本当に、とことん真面目な人だ。

 

 プレゼント・マイクは再び会場全体を見回した。

 

「他に質問はァ!?」

 

 沈黙。

 

 誰も手を上げない。

 

「オーケイ!! ならばァ!!」

 

 プレゼント・マイクが大きく両腕を広げる。サングラスの奥で笑っているのが分かるような声だった。

 

「受験生諸君!!」

 

 空気が張る。

 

 教室中の視線が、壇上へ集まった。

 

「PLUS ULTRA!!」

 

 爆発するような大声。

 

「己の限界を超えてこいッッ!!」

 

 その瞬間、出久の胸が強く脈打った。

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