ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ 作:山上真
「知っての通り、本日、8/28から四日間、水泳部専用のプールが一般生徒に対して開放される。
授業で使うプールよりも更に広く、充実した設備が整えられていることは周知の事実。
それが無料で開放されるわけだから、非常に混雑するのは目に見えている」
「まあ、私が訂正案出さなきゃ、もっと混雑することになってたでしょうけどね」
会長の言葉に、桔梗がすかさずツッコミを入れた。
辛辣だが間違ってはいない。当初は29~31の三日間の予定だったし、入場人数に規制を掛ける予定もなかったのだ。
案件を見た桔梗がツッコミを入れ、修正し、どうにか今の形に落ち着いたのである。
そもそも、三学年のそれぞれに四クラスあって、三日間の開催で収容人数に規制を掛けない方がどうかしている。
そりゃあ、生徒の全員がプールを活用する確証はなくても、こういうのは
基本、金のないDクラスの生徒が群がるのなんか、それこそ目に見えているのだから尚更である。
一クラスの基本人数は四十人のため、各学年から一クラス分を想定して一日当たりの収容上限は約百二十人に設定。『日本政府直轄』という肩書は伊達ではない。その程度なら楽に収容できるだけの規模がある。――もっとも、中には退学して人数が減ったクラスも存在するため、あくまでも設定上限だ。
しかし現実問題、どれだけ上等な施設や設備があったとて、それを活かしきるには相応のマンパワーが必要なのである。そして今回の一般開放では、携わる教師の数が余りに少ない。だから、こうして生徒会にもお鉢が回ってきているのだ。
もっとも、それだけで足りる筈もないので、料理部など学校側から協力要請した対象もある。散々とプールを楽しみ、そんな生徒たちに休憩スペースを用意したとしても、飲まず食わずで耐えられるわけがない。館内に自動販売機はあるが、基本的に補充タイミングは定まっているし、局所的に利用人口が増加すれば賄いきれる保証はない。飲食物の提供環境を整備するのは必須である。
そんな風に動いていれば、自発的に協力を申し込んでくる生徒だって増える。『人の口に戸は立てられぬ』のだから、道理と言えば道理だ。
無論、単純な善意だけの筈はない。実力アピールとPP稼ぎを考慮してのことだろう。しかし理由が何であれ、学校側だけで賄いきれぬ部分を補助してくれる人員が増えるのは素直にありがたい。
早い話、ある程度『生徒間による協力・譲り合い』を前提にした運営方式である。こうすることで、漸く対応できるようになる。
ルールとして、プールの利用者には入館受付時に端末を用いたチェックが入り、利用回数によって色分けしたバンドを身に着けることになる。このバンドには利用者の端末情報と紐づけたバーコードを挿みこみ、館内ではこれを用いて食事を買ったりする寸法だ。
ヘタに水辺に携帯端末を持ち込まれて壊されたりしたら、逆にその方が困る。である以上、プール内に端末を持ち込まずとも飲み食いできるシステムの構築は絶対条件だ。
一日の収容上限を超えて利用者が現れた場合、否応なく利用回数の多い生徒から退出してもらう。優先するのは一回もプールを利用していない生徒であり、これを徹底することで、理論上は全生徒がプールを利用できる寸法だ。
「ともあれ、この旨は全校生徒に周知している。それもあって多少は混雑もマシになると思われるが、多くの生徒が利用しに訪れるのは想像に難くない。
然るに、この四日間、我々生徒会は総出を挙げて運営協力に取り掛かる。諸君の奮闘に期待する!」
会長による激が飛び、生徒会メンバーは揃ってプールに向かうのだった。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「すまないな、付き合わせて」
夏休み最終日から一歩手前の30日。学校までの道中を歩きながら、克己は同行者へと声をかけた。
日差しが燦燦と降り注ぎ今日も暑い。そんな中を巻き込んでしまったのだから、克己が申し訳なく思うのもある意味では当然だろう。
オマケに、いくら目的地がプールとはいえ、そこはあくまでも学校の施設である。故に、夏休みにも拘らず制服の着用は避けられない。
いやまあ、正確には件の施設だけなら私服でも問題ないらしいのだが、泳ぎ終わった後のことを考えれば制服の方が安牌である。
普通に考えて、泳ぎ終われば喉が渇く。身体が水分補給を求める筈だ。件の施設にも自動販売機くらいはある筈だが、局所的に人口が増大すれば中身が無事である保証はない。全滅する可能性は低いにしても、『目当ての飲み物』が売り切れる可能性は大いにある。
その場合、制服であれば学校の自動販売機を利用できるため、『目当ての飲み物』にありつける可能性はまだ高くなる。
「ううん。先日は私の方が巻き込んじゃったから……」
克己の言葉に、愛里は首を横に振って答えた。
「それを言うなら、俺より伊吹の方が巻き込まれた感じだけどな」
先日のモールの一件である。
初めて克己が澪と邂逅した日、克己は親戚であり澪と同じクラスの生徒である裕也への伝言――『断水への警告』を澪に頼んだ。
ダメ元ではあったが澪はキチンと伝えてくれたらしく、同時、澪も裕也もそれによって助かったらしい。
それで、裕也も歩み寄るべきだと考えたそうだ。――いやまあ、以前に裕也が歩み寄る姿勢を見せた際に無下に扱ってしまったのは克己の方なのだが……。
その舞台として考えられたのが、一般開放されるプールである。別段、克己と裕也は喧嘩していたわけではない。船上での一幕など、同い年の親戚同士なら然程珍しいことではないだろう。
だが、それとは関係なく疎遠になっていたのは事実なので、再度交流を図るためのきっかけとしては悪くない。
しかしながら、克己と裕也は互いの連絡先を知らず、自然と澪が間に立つことになった次第である。
あの日の澪は、今日の段取りを組むために克己の元を訪れ、結果的に巻き込まれてしまったのだ。
「ところで、その伊吹さんは?」
「彼女にも裕也にも『クラスの立ち位置』ってもんがあるからな。あくまでも、『プールで偶々会った』っていう体裁を取りたいんだよ」
「納得」
克己の言葉に愛里は頷いた。
どうあれ、この学校生活がクラス闘争を下地において成り立っているのは間違いない。そして、澪と裕也の所属する坂上クラスはダーティーな戦法も普通に取る。その点を考慮すれば、『モール』と『学校施設の一部』というのは天と地ほどの違いがある。
「悲報、ダチにハブにされていた件について……」
ここにきて、初めて先日のモールの一件を知ったユキが、克己と愛里にジト目を向ける。
「ご、ゴメンね、ユキちゃん」
「いやでも、お前って面倒な人付き合いは苦手だろ? あん時は茶柱クラスの生徒の方が多かったぞ?」
「それなんだよなぁ~。――でもよ、理解と納得は別だろ?」
ユキは愛里の謝罪を受け入れ、克己の言葉に理解を示しつつも、これ見よがしに克己を見やった。
「はぁ……。分かったよ、今日の食事代は俺が持つ。それでいいな?」
「ゴチになりま~す! いやあ、やっぱ持つべきものは理解の早いダチだよなぁ~」
「どの口が……!」
言葉は荒かろうと、顔には笑みを浮かべている。友人同士のやり取りなのは一目瞭然だった。
「それはいいんですけど、もう少しこっちにも気を配ってもらえません?」
ぶすくれた表情で口を挿んだのは有栖だ。今日の件を話題に挙げたのが道場だったこともあり、有栖と真澄も同行している。
「そうは言ってもな。別に俺、お前たちには同行を頼んでないし……」
事実である。
「それはそうですけど! 男性として、もっと女性には気を配る必要があるのではないですか!?」
有栖もそれを認めた。その上で、蔑ろに扱われていることに不満を述べている。
「道理ではあるが、必要以上に他人の女に手を出す趣味はないよ。気なら綾小路に配ってもらえ。そもそも、俺は『陰キャの集い』のメンバーだぞ?」
それに対し、克己はバッサリと切り捨てた。
「くぅっ! 何かに付け、二言目にはそれを持ち上げるんですから!」
「お前は『天才』を自負するが故に理性的だ。そんな奴に対しては特に効果的だからな。使わない理由がないだろう」
実際、有栖は納得してくれる。『名は体を表す』というが、『陰キャの集い』は文字通りに自称陰キャ――
事実がそうである以上、有栖はそれを認めざるを得ないのだ。『天才』を自負するが故に、有栖は感情的に振るまうにも限度がある。
そして認めてしまえば、自分の言い分が『多大な期待』であることも認めざるを得なくなる。有栖の言い分は一般男性には通用しても、陰キャには通用しないのだ。
「ま、お前がそんな人物だから、こっちとしても接していて気楽なのは間違いない。それは認めるけどな」
克己は笑みを浮かべ、有栖の頭にポンと手を置いて撫でた。
一般に、日本の高校生女子の平均身長は約157.6cmと言われている。140cm台のアズは例外にしても、150cmジャストの有栖も十分に小柄だ。
「むぅ……!」
基本的に、『頭を撫でる』という行為は親愛表現だ。それを理屈として理解するが故に、有栖は克己の行為を咎められない。陰キャを自称する克己がそんな行為をする時点で、克己が有栖に対して一定の親愛を有していることは否定できなくなってしまうのだ。
有体に言えば、『友人』と『他人の女』に対する境界の問題である。克己の境界線は克己にしか敷けないのだ。
「ま、諦めろって。実際、克己はお前たちを誘ったわけじゃないんだから。偶々話を持ち掛けた場にお前たちもいて、それを聞いたお前たちが、会場でスタッフとして働いている清隆目当てに参加を決めただけだろ?」
横からユキが口を挿んだ。
それが事実である。徹頭徹尾、克己には有栖たちを誘ったつもりなどなかった。道場で話題に出したのも、電話やメール、グループチャットよりも楽だと思ったからに過ぎない。
そもそも、プールに有栖を誘う理由がない。
水着を楽しむ? 一つの解としてはありだろうが、他人の女相手にそれをやったところで虚しいだけだ。それでも、自身もまた想いを寄せる女であるなら一考の余地はあったろうが、克己が有栖に抱くのは極々普通の友愛である。然るに条件には当て嵌まらない。
「むぅ……!」
傍目からは和気藹々とした様相を呈しながら、一行は道中を進むのであった。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「よお、克己。お前も来てたのか!」
プールの更衣室、片手を挙げて気安く声をかけてきたのは池寛治だった。その手には赤色のバンドが巻かれている。
「ああ。……にしてもお前、三日連続で来ているのか?」
自身が身に着けているバンドと見比べながら、克己は問いかけた。
利用者は来場日数に応じた色のバンドを腕に巻くことが義務付けられる。
黒:来場日数四日目。最優先退去対象。
赤:来場日数三日目。
黄:来場日数二日目。
緑:来場日数一日目。
御覧の通り、医療におけるトリアージと同じ構成だ。
「当ったり前だろ! うちのクラスのポイントの無さを甘く見るんじゃねえよ! 無料で長時間プールを堪能できるなら、来ない理由はねえよ!」
克己の質問に、池は食い気味に答えた。一言一言の圧が強い。
「そ、そうか……。すまんな、どうやら無頓着だったようだ」
克己は後退りながら頷いて謝った。
まあ、池の言うことは尤もである。これは双方の経済環境の違いが齎した部分でもあるだろう。
手持ちに余裕があるということは、それだけ日々の選択肢にも余裕が出るということだ。
しかし、手持ちに余裕がなければ、日々の買い物だって容易ではない。買える物だって自然と限られてくる。
入学以降、星之宮クラスはずっと『成功者』の位置をキープしている。その一員である克己も同様だ。
一方の池は、五月以降、ずっと最下位を継続中の茶柱クラスだ。その抑圧振りは、克己の比ではないだろう。
まあ池の場合、純粋に経済環境だけが理由とも思えないのが事実だが。まず間違いなく、女子の水着姿を目当てにしている部分はあるだろう。
過度な人付き合いこそ苦手なものの、克己だって健全な一般男子だ。その気持ちには理解を示す。克己が愛里とユキを誘ったのにも、そういう部分が無くはない。真に性欲とは無縁であるのなら、クラスメイトから適当な男子を誘えばよかっただけなのだから。実際、その程度の関係性は構築してある。
「分かればいいけどよ……」
謝罪を受け入れた池は、漸くにして克己から離れた。
「で、お前は誰か一緒に来た奴はいないのか? 星之宮クラスは男子も女子も
更衣室内をキョロキョロと見回しながら、池が克己に問いかけた。
「そっちがどう思おうと自由だが、基本的に俺は陰キャだぞ? クラスの雰囲気は苦手なんだよ」
「じゃあ、ボッチか……」
克己の言葉に対し、池は同情たっぷりの視線を寄越してきた。克己がイラッときても不思議はないだろう。
「……一人で来たとは言ってない」
だから、敢えて克己は直接的ではなく婉曲的に答えた。
「ッ……!? それってまさか!?」
驚愕の表情を浮かべる池も、既に答えは分かっているのだろう。男子の同行者がいない以上、克己の同行者は女子しかあり得ないのだ。
しかしその事実を、池は認めたくない。だから、敢えて決定的な単語は出さずにいる。
「フッ……!」
それを察し、けれど克己もまた決定的な単語は出さない。ただ、池のことを鼻で嗤っただけだ。
ちゃっちゃかと水着に着替えた克己は、未だ驚愕に打ちひしがれる池を放置して更衣室を後にする。
更衣室を後にした克己は、案内板に従って通路を進む。この案内板が普段から用意されているのかは不明だが、助かることに違いはない。
行き着いたのはある程度大きい部屋だった。ここでトイレや準備体操、シャワーなどを済ませるよう案内が出ている。
流石は日本政府直轄の学校ということか。部活一つに対して随分と至れり尽くせりである。
感心しながらも、トイレを済ませた克己が準備体操を行っていると、女性陣もやってきた。ついでに池も。
「っひゃぁ~! 授業で使うプールも大したもんだけど、こっちの方は輪を掛けているな」
「う、うん。凄いね……」
克己同様、室内を見回したユキが感心したように声を出すと、愛里も静かに同意する。
「サッサと準備運動を済ませますか」
「……だね」
全員、ごく普通のスクール水着だが、それでも輝いて見える。方向性の違いはあれ、四人全員が『美少女』だからだろう。
四人は部屋のトイレに行くことなく、そのまま準備運動に入った。まず間違いなく、更衣室のトイレを利用してきたのだろう。
なお、有栖はシッカリと杖を持ち込んでいる。無粋だが、基本、歩行の際には杖の使用を義務付けられているのだから仕方ない。
「克己いいいぃぃ!」
そんな中、池が絶叫を上げて近付いてきた。
「おま、お前なんだ、この面子は!? 自称『陰キャ』はどこいった!? 何だってこうも可愛い子ちゃんと連れ立ってるんだよ!? しかも野郎はお前一人! お前も綾小路と同じくハーレムの形成者か!?」
そして、そんなことを宣う。――かと思えば、周囲からも同意する声が上がった。その声はどれも野太い。確認しなくても男子であった。それも、頭に『モテない』が付くタイプの。
その気持ちは分からないでもないが、克己としては勘弁してほしかった。
こんな、ある意味では理不尽なヤジが起これば、人が来るのは道理である。来なくても、誰かが
わざわざ『予知』しなくても分かりきった展開だ。
「何の騒ぎだ、これは?」
そうして現れたのは、現生徒会長、堀北学だった。
プールとあって、掛けているのは眼鏡ではなくゴーグルだったが、それでも登場と同時にキラリと輝いた。一体全体どんな原理だろうか?
「偶々友人と出会ったんですが、俺の連れを見た瞬間に叫び出しまして。そしたら、それに乗じて室内にいた男子も声を張り上げた次第です」
克己は呆れと情けなさを如実に漂わせながら事情を説明した。
学はその言葉に従い、連れである四人の女子、友人、外野へと視線を巡らせる。
「……なるほど。とどのつまり、嫉妬か」
「おそらくは……」
学の言葉に対し、克己は断言できない。本人ではない以上、推測しか出来ず、然るに遠回しな同意しか出来ないのだ。
「まあ、男共の野太い声は俺がここに来るまでにも聞こえていた。その内容も一部はな。である以上、わざわざ確認を取る必要もない。俺自身が十分に証人として機能する。
生徒会長の権限を以て、ヤジを行った男子には即刻の退去を命令する。周囲に配慮できず、利己的な感情から叫びたてる生徒に施設と設備を使わせる道理はない。なお、この命令に従わぬようであれば、個人乃至はクラスにペナルティが科せられる可能性を合わせて通達する」
学は冷静に、そして冷徹に言い放った。
「すみません、会長。それに関してですが、池寛治を免除していただくことは出来ませんでしょうか? 先も言いましたが、彼は自分の友人です。場を省みずに叫んだ非があるのは否定しませんが、友人なればこそ許容できる行為があるのは事実だと思います」
それに対し、克己は異議を唱えた。
「それと、もしこの場に時任裕也がいるようなら彼も。
彼とは親戚なんですが、家の事情もあって長らく疎遠になっていたんです。おかげで互いの連絡先すら知りません。
元々自分がこの場に来たのは、そんな状況をどうにかするためであり、彼と再度の交流を図るにはいい機会だと思ったからです。彼が入学していることとクラス自体は知っていましたので、彼のクラスメイトに協力してもらった経緯があります。
これで、『この場にいた男子』というだけで彼が退去する羽目になってしまえば、自分がここに来た主目的が果たされなくなってしまいます」
克己が異議を唱えたのは、現実問題として『誰がヤジを行ったか』の確認が難しいからである。出来なくはないが、詳細な確認にはどうしたって時間が掛かる。その時点で即刻退去は難しい。
学がそれを承知していない筈はないし、その上で先の命令を出した以上、暗に『この場にいる克己と学以外の男子全員』へ退去を告げたに等しい。
理由は分からないではないが、その中に裕也がいた場合、克己としては困ったことになるのも事実だ。
池に関してはついでである。彼が騒がしいのは事実だが、その一方で、一緒にいても不快ではない。
「フン、物怖じせずによくも言う」
克己の言い分に学は鼻を鳴らした。
克己はヤジを否定してはいない。池の行動に問題があったことも認めている。――その上で、池に関しては『問題視しない』と言っているだけだ。
池の行動がヤジの呼び水になったのは事実だが、極論すれば、周りがそれに乗らなければ済んだ話でもある。そうであれば、わざわざ学が出張って来ることもなかった。問題があるのは、あくまでも『これ幸いと池の行動に乗っかった周りの男子』だと、克己はそう言っているのだ。
学としても、そう言われたなら否定はできない。それぞれの立場から重視する部分が異なるだけで、双方の言い分に一定の理があるのも事実である。ならば、重要なのは落としどころをどこに持っていくかだ。
そして、克己は落としどころを提示した。後は、学がそれに対してどう返すかだ。
「しかしながら、こちらとしても『ヤジを飛ばされた本人』の意向を否定しきるつもりはないし、その言い分に理があるのも確かだ」
結果、学は克己の言い分を認めた。
これにより、この場の男子は大半が退去する羽目になったわけだが、『捨てる神あれば拾う神あり』とはよく言ったもの。女子がフォローした場合に限り、学はその言い分を認め、残留を許される男子も現れた。
これは別に学が女好きとかそういう話ではなく、単にこの場の男子には、ヤジを飛ばされた当人である克己と裁定役である学を除いて発言権がないだけだ。そして、真実問題がないのであれば、フォローする女子が現れるのも道理というだけのこと。
早い話、そこに真偽は関係ないのだ。公に訴えられたわけでもなし。一々真偽を確認してもいられない。この場で求められているのは、『人脈』という名の実力である。
その一方、どれだけ清廉潔白だろうと、それを認める人物がいなければ、そのために声を張り上げる人物がいなければ、それが認められることはない。容赦なく退去させられるだけである。
世の無常さの一端が、ここには確かに存在したのだった。
プール回です。
読んでお分かりの通り、原作に変更を加えたりオリジナル部分を設定したりしています。
プールに屋台を出したところで、『会計をどうするんだろう?』という疑問が付き纏います。
プールの本分はあくまでも泳ぐことであり、水着の構造上、水中までは端末やカードを持っていけません。
休憩スペースを確保してそこに置いておくにしても、紛失や窃盗に遭う可能性は否めません。加え、携帯端末なら濡れて壊れる可能性もあります。
屋台で提供される飲食物が無料なら、そもそも持ち込む必要が無いためその問題は解決ですが、普通に考えてその可能性は低いですし。
提供・販売しているのが生徒なのは原作で明言されてますので、その分だけ格安な可能性はありますが……。
あと、入場制限の判別ですね。
そこら辺、原作では結果だけが描写されて、仕組みが一切描写されていないんですよね。
館内に関してもそうです。原作では更衣室で着替えた後、真っ直ぐプールサイドに付いてますが、原作で描写されているような上等な施設なら、シャワーとか準備運動とか、そこら辺に関しても上等なスペースが用意されているのが自然です。
普通に考えると『更衣室に併設されている』可能性が高いですが、それだけだと物足りない感じです。
付け加えると、学や南雲って信じられないほど高評価もらってるのに、その割に『生徒会』としては信じられないようなミス描写が散見されるんですよね。
一般生徒に対するフォローが利いていないと言うか……。4.5巻は特にそれが顕著だと思います。
葛城なんかは、それで暑い中を何度も生徒会に向かう破目になってますし。『何日まで改装中』とドアに貼り紙つけとけば解決する問題でしょうに、それすらやってません。
プール開きに関しての、入場規制と制限に関してもそうです。学と南雲の実力なら、混雑具合も事前に想定できて然るべきですし、対策を用意しておいて然るべきです。
決定権がなくとも学校に提案するのが自然で、学校側だって二人の言い分である以上、聞く耳を持つのが自然な筈です。
普通に考えて、場当たり的な対処になってること自体がおかしいんですよね。
必然、そこら辺に補足を入れようと思えばオリジナル要素を組み込むより他になく、本作では増し増しになってます。
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