ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第118話:柴田颯は『勇者』である。

 一之瀬帆波による先輩たちに対する弾劾――通称『帆波ショック』の後も、高度育成高等学校は変わらず運営を続けている。生徒たちは普通に登校し、学業や部活に励んでいる。

 傍目にはいつもと変わらないが、よくよく見れば変化している部分もあった。ところどころ、クラスの垣根を超えて一緒に行動している生徒の姿が見られるようになったのだ。同じ部活であったりするならおかしくはないが、それとは関係なくである。

 

「まったく……。今年の一年は大したものだ」

 

 その光景に、生徒会長である堀北学は感嘆の息を吐いた。

 体育館の中、全校生徒の前で一年生が啖呵を切った。確かにその事実は大きいだろう。だが、それだけで劇的な変化が生まれる筈もない。

 しかし言い換えれば、『小(・)さ(・)な(・)変(・)化(・)であれば生まれてもおかしくはない』ということでもある。

 その結果が、この光景なのだろう。

 入学直後は、確かに浮かれ気分もあっただろうが、クラスの垣根を超えて友諠を育む生徒も少なくはなかった。

 だが、五月に入ってシステムの説明をされ、『クラス闘争』を余儀なくされ、その付き合いに蓋をせざるを得なくなった生徒も少なくなかった。特に、クラスに『おんぶに抱っこ』の生徒ほどその傾向が強かった。

 時間が経ち、特別試験や体育祭の存在が明かされ、他クラスとは『敵対』だけではなく『協力』を求められる場合があることを周知されてからは再びクラスの垣根を超えた付き合いも見られるようになったが、どこか『ビジネスライク』だった。

 学はそうと気付きながらも、『仕方ない』と受け入れていた。

 それに真っ向から否を突き付けたのが一之瀬帆波だ。――正確には、彼女が代表に立っただけで、現一年生の総意と捉えるべきだった。

 今年の一年には、どこかそういう部分がある。生徒会長として、一般生徒は見れぬデータを見れる立場にいるからこそ、そう判断することが出来た。

 帆波による弾劾は、二、三年生が抑圧されていた部分を刺激したのだ。それによって火の付いた生徒が、今までを取り返すかのように積極的に交流を図っている。――学には出来ないことだった。

 だからこそ、それを軽々とやってのけた一年生が妬ましく――それ以上に誇らしい。

 もっとも、これは発言者が帆波だったのも大きいと学は認識している。直前に語った自らの過去が、『弱者の立場にあったこと』が、その言葉に説得力を与えたのだ。

 普通に考えて、『片親だけの生活』は一般家庭に比べて不利だろう。事実、親は妹の誕生日プレゼントを用意するべく仕事を増やし、結果として身体を壊して入院することになった。

 これを、『自らを省みることの出来なかった自業自得』の一言で片付けるのは簡単だ。――しかし、他人の上に立とうとする者がそのスタンスでは駄目だと学は思う。

 突き詰めて考えた場合、帆波の言っていた通りに『給料が安い』という問題に行き当たるのだ。だから、働く時間を増やさなければならなかった。その結果、無理が祟って倒れた。ならば、真に悪いのはそ(・)ん(・)な(・)無(・)理(・)を(・)強(・)い(・)た(・)会社であり、それが容(・)易(・)に(・)成(・)り(・)立(・)つ(・)現(・)在(・)の(・)社(・)会(・)そのものだ。

 この状況を根本からどうにかしないと、本当の意味で一般大衆が『楽』と感じられる社会体制を築かないと、日本という国が真に良くなることはない。

 帆波による弾劾は、『上級生に対する説得』であり、『もっと下(・)に――蹴(・)り(・)落(・)と(・)さ(・)れ(・)る(・)側(・)に目を向けろ』という『弱者の叫び』に他ならないのだ。

 そして、そうして蹴り落とされて退学していった生徒自体――『入学試験』という最初の『篩』を生き残った『強者』でもある。である以上、この世の中、そうして蹴り落とされる弱者の方が圧倒的に多いのが実情だ。

 だからこそ、『そんな彼らに目を向けずして、真に国が良くなることはない』と言われたら、学は決して否定できなかった。

 一学年は全体を合計しても僅かに160人なのだ。日本という国全体では極々少数だ。如何に磨き上げられようと、『その中の更に選りすぐり』だけで一つの国を牽引することなど出来はしない。『立場の力』で指示を出すことが出来たとしても、真に相手を思いやれないのであれば、不満は溜まる一方だ。

 そうした不満が一般大衆にまで蔓延しているのが日本という国の現状であり、そう考えれば、尚更一握りだけでどうにかできる筈がない。それぞれが単独行動をするなら尚更だろう。必然、手を携えなければならないのだ。

 優秀な人材が、分野の垣根を超えて手を携え、協力し合う。そうした土台が作られて、漸く変革に向かうことが出来るだろう。実に長期的な計画だ。

 

「『お行儀のいい生徒』……か」

 

 学は知恵に言われた皮肉を思い出して苦笑する。

 ここにきて学校側が直接的に言及してきたのは、現一年生という『先例』が現れたからだろう。

 否定はできなかった。学は自分のことを『意気地なし』だと思っている。『大義名分』――言い換えれば、『寄り添うもの』がなければ大胆な決断や行動が出来ないのだ。

 例えば、学校の定めたルールに対し、個人的な心情では思うところがあったとしても、それを周りに確認することが出来ない。良くも悪くも自分の影響力が高いことを知っているので、『それが本当に相手の望んでいることなのか分からない。自分の意見に流されている可能性がある』――などと理由を付けて、逃げてしまうのだ。

 それでいて完全に目を逸らすことも出来ないので、個人的に協力できる部分は協力を厭わない。

 その果てが、『歴代最高の生徒会長』などという過大な評価だ。実に嗤わせる。

 クラスの垣根を超えて、友人同士気兼ねなく笑いあえる。本来、学校とはこうあるべきなのだ。そしてそう思うのであれば、それを実現するべく行動して然るべきだったのだ。それすら出来なかった時点で、自分には過大な評価だ。

 自分に対する評価を鼻で嗤った学は、校内巡回を再開させた。自分は確かに生徒会長だが、3-Aの生徒でもある。体育祭に向けて放課後も練習するというのであれば、クラスの一員として可能な限り協力しないわけにはいかない。するべきだと思っている。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 ホイッスルが鳴る。走る。対象を代えて、それはひたすらに繰り返された。

 体育の授業である。迫りくる体育祭に向けて、練習を積んでいるのだ。

 

「はっ……はっ……はっ……はっ……。やはり、走るのは苦手ですね」

 

 100メートルを走り終えた浜口哲也が息荒く弱音を吐いた。

 体育祭後の筆記試験を見据え、全員参加種目の個人競技は捨てることにした浜口ら『勉強は出来るけど運動は出来ない』勢だったが、身体能力が求められるのは何も体育祭だけではない。そういう意味で、練習には真面目に参加していた。たとえ微々たるものであったとしても、肉体改造を施しておいて損はない。

 

「ふひゅ~……ふひゅ~……」

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 その傍らでは、愛里や千尋ら『勉強も運動も出来ない勢』が地面に倒れ伏していた。

 本音を言えば浜口も地面に寝っ転がりたいところではあったが、そこはまあ『男の意地』であった。

 

「ちょっといい?」

 

 そんな、現在進行形で疲れ切っている連中に近付いてきたのはアズだった。

 

「おや、アズさん。どうかしましたか?」

「うん。今まで皆には何度か走ってもらったでしょ?」

 

 一言に『運動が苦手』と言っても、その理由は様々だ。だからこそ、中には短時間で改善を見込める部分もある。

 絶対とは言えないが、『走る際の姿勢』もその一つだ。手の振り一つで、小さくも大きく違ってくる。体力不足やらは日頃の積み重ねによる改善しかないが、それであれば本人の意識と努力次第で改善できる可能性があるのは否めない。

 だから、『運動できない勢』には、最低でも一人の『運動できる勢』がアドバイザーとして振り分けられている。アズもその一人であり、三人の担当だった。

 

「それで、ちょっと俄かには信じ難い観測結果が出てね……」

 

 浜口のように個人勝負を完全に捨てる生徒がいないではないが、それでも星之宮クラスなりに全力で体育祭に臨んでいる。

 その証拠にモールから複数のビデオカメラを購入、多角的に撮影し、改善点の発見に力を注いでいた。ポイントがあるからこそ可能な手段だった。

 

「愛里の場合、どうも『見栄え』を意識した方がいい結果を出せているみたいでさ……」

 

 かく言うアズ自身、その実は半信半疑なのだろう。しきりに首を傾げている。

 

「普通、『見栄えを意識した動き』ってさ、『身体を動かす』って観点で見れば無駄が大きいものなんだよ。

 例えば、拳が目の前に迫っているとして、ヒョイと首を傾げて躱すのと、大きく体を動かして躱すの、どっちの方が無駄に体力を消耗しているかは言うまでもないでしょ?」

 

 言いながら、アズは実際にジェスチャーしてみせる。或いはその場で軽く首を傾げ、或いは大きくバックステップしたりサイドステップしたり、何なら転がったりもしてみせた。

 言葉だけではなく動作でも見せられれば、理解も納得も容易い。

 

「ただ、『身体を動かす』って意味では無駄が多くても、観点を変えれば話は別になるのも確かでね。『見栄え』って名前からも分かるように、観客を盛り上げやすかったり、観客の目を惹き付けやすかったりする」

「私の場合、本来なら無駄な筈の動き方の方がいい結果を出せているってこと?」

「そういうことだね。まあ、微々たる差ではあるけど、それが時として大きな意味を持つのが陸上っていうスポーツだからね。決して馬鹿に出来たもんじゃない」

「不思議ですね。理由を考えるとしたら、モチベーションに直結している、とかでしょうか……?」

 

 横で話を聞いていた浜口も首を傾げる。

 

「あ~……」

 

 それを聞いて、愛里は不思議がるよりも納得の方が大きかった。

 

「何か心当たりでもあるの?」

「心当たりって言うか……。私がこの夏休みから護身術目的で道場通いを始めたのは説明したっけ?」

「僕は初耳ですね」

「私も」

「愛里からは初耳だけど、情報だけは知ってた」

 

 順に浜口、千尋、アズである。まあアズの場合、生徒会役員な上、周りに桔梗と清隆がいるのだ。事前に情報を掴んでいても不思議はない。

 

「でまあ、早くも教わり始めた型もあってね。一言に『無手術』とか『護身術』って言っても、その内実は様々だから。中には相手の力を利用するものもあるし、それであれば早めに手を付けておいて損はないからってことで……。

 で、その際にも先生にアズと同じことを言われたんだよね。こう、特撮とかアクションドラマの撮影と考えて、『魅せる動き』をした時の方が、私の場合はスムーズだって。

 先生もしきりに首を傾げてたけど、それが『佐倉愛里(私)の特性』なんだろうってことで結論付いた。

 私自身の自覚の有無はともかく、『魅せて、見られる』時にこそ本領を発揮できるのが私であり、すなわち『天性の偶像(アイドル)』だってさ」

 

 愛里は肩をすくめながら語る。

 最初に先生から言われた際は『何を大げさな』と思ったものだが、その後の有栖からの指摘や、今以て『データ』という『客観的な証拠』を示されると、流石に否定しきれない。

 実際、それであれば、自分が芸能事務所の門を叩いたことにも筋が通ってしまう。自分は心のどこかで、見られることを、そうして輝くことを求めていたのだ。

 冷静に考えれば、典型的な『シンデレラドリーム』や『シンデレラ症候群』の罹患者である。恋愛云々はともかく、『友達がほしい。でも自分で探す勇気がない。自分を見付けてほしい』なんて辺り、まさしくだ。

 グラビア活動ばかりが目立っているが、所属自体は芸能事務所であるからして、歌唱方面やダンス方面のレッスンだって積んではいたのだ。根本的な体力不足やらが祟ってそっちの方でのデビューこそ叶ってはいないが、褒められる部分は褒められていたのだ。

 しかしながら、今になって振り返ると、同じようなことを言われていたような気がする。『魅せる動きは十分』、『ファンを掴むには十分な歌声』等々だ。その最後には、お約束として『あとは体力をつけるだけ』という言葉も付いてきたが……。

 その旨を愛里は説明した。

 

「もういっそのこと、歌いながらダンスして体力付ける?」

 

 それを聞いたアズは呆れ顔で訊いてきたのであった。

 

(将来を考えればそれもいいかもしれない)

 

 その問いかけに、内心でそう考えてしまう愛里がいた。 

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 アイドルのPV動画なんて珍しいものではない。ネットを探せばいくらでも見つけることが可能だ。

 ライブ映像や歌番組出演時の映像だって、物によってはディスク化されている。購入も不可能ではない。

 

「はい! そんなわけで、私たち星之宮クラス女性陣は歌って踊ります!

 いやまあ、体育祭にはまるで関係ありませんが、やっぱり『ただ走る』ことに対して苦手意識を持っている女子も少なくありませんのでね!

 ならもう、ここは観点を切り替えていきましょう! 『身体を動かす』、『体力の向上を図る』、『連帯感を高める』などという点では、十分にありな選択肢です!」

 

 体育の授業中、グラウンドに帆波の声が響き渡った。

 

『いえええぇぇーーっ!』

 

 女性陣がノリよく応じた。『皆で楽しむ』ことを好む人材が揃っているのが星之宮クラスの特徴だ。

 今回の体育祭では、ある意味で付き物とも言える『応援合戦』や『ダンス』、『組体操』などの種目が一切存在しない。体育祭の本分を鑑みれば分からない話ではないが、そちら方面で力を発揮できるだろう人材の活躍の場がないということでもある。

 また、チアガール姿の女子から応援されることでモチベーションを上げ、本来以上の力を発揮できる場合があるのが男子という生き物なのだ。

 ぶっちゃけた話、そういう部分に対する配慮が一切ないのは、『実力を評価する』と嘯く学校として如何かと思わなくもない。こういう公式イベントに組み込まれることで、大々的な『アピールの場』が得られるのも間違いではないのだ。

 早い話、そこら辺に対する『不満の表れ』でもあった。『理解はできるが、納得はしきれない』。言ってしまえばそういうことである。

 

「というわけで、早速やっていきましょう!」

 

 愛里をセンターに、桔梗、帆波、アズ、フォルテといった面々が脇を固め、それ以外の女子が後ろに並ぶ。服装は体育着だが、それでも女子が揃って並べば十分に華がある。

 曲目は愛里がダンスを教えられるものがセレクトされた。端的に言うと、事務所所属時にレッスンしていたものであり、同事務所の先輩アイドルの持ち歌だ。

 まずは模範演技として、愛里が一人前に進み出る。現在の愛里は『雫モード』に突入しており、一切の緊張はない。

 

「いいよ、音楽かけて」

 

 愛里の言葉に従い、帆波がリモコンを使って持ち込んだプレーヤーを再生させる。

 莫大な音量に設定されたプレーヤーから、ジャンジャカと激しい音が響き渡る。とてもじゃないが近くにはいられない。まあ、だからこそリモコンを使っているわけだが。

 プレーヤーから再生される音楽に従い、愛里が踊り始める。動作としてはそれほど難しいものではない。しかしながら、『一曲丸々、表情に気を付けながら歌って踊る』となれば結構な体力を消費するのは否めない。

 たとえ一曲丸々歌って踊ることが出来たところで、本人が楽しそうでなければファンを得ることなど出来はしない。そういった苦労を乗り越えているからこそ、アイドルは『アイドル』足り得るのだ。

 実際、こうして模範演技をしている愛里自身、『踊るだけ』、『歌うだけ』なら可能だが、『笑顔を維持しながら歌って踊る』のは体力的に不可能だ。だからこそ『グラビアアイドル』に留まっている。――逆に言うと、『踊るだけ』なら可能だから、動作の模範ならやってやれなくはない。

 

「すっげ……」

「確かにな」

「普段からは想像もできないな」

 

 気になって見ていた男子陣から感想が零れる。

 普段の愛里を一言で表せば『地味子』だ。相応の鈍臭さも持ち合わせており、そのイメージを損なうことはない。むしろ補強している。――だから、知らぬ者からは『佐倉愛里』とバレずに済んでいる側面もある。

 それがどうだ? こうして踊っているその姿には、普段の鈍臭さが微塵も見られず、むしろ動きのキレはとてもいい。視線を惹き付けて離さない華やかさがある。

 

「えっと、取り敢えずはこんな感じ。……出来そう?』

 

 音楽の終了と共にポーズを決めた愛里は、それと共に『雫モード』を終了し、素の態度でクラスメイトに問いかけた。

 

「まあ自信は無いけど、楽しんでやってこう!」

『おおおぉぉーーーっ!』

 

 帆波もまた男子同様に見惚れていたが、どうにか正気を取り戻して発言する。

 どうせ、体育祭本番には直接的な関係などないのだ。出来るようになろうがなるまいが、それで評価されることはない。――なら、楽しんだ者勝ちである。

 そんな帆波の思惑はクラスメイトに無事伝わり、女子達は揃って手を挙げた。

 まあ、直接的な関係はなくとも、これはこれで男子たちの『目の保養』になるのも間違いではなく、練習に精を出す男子も少なくはなかった。

 言ってしまえば、この『女子によるダンス練習』こそが、本番にはない『応援』と捉えることも出来るからだ。

 

「一之瀬!」

「うん? 何かな、柴田くん?」

「クラスリーダーのお前だからこそ頼む。俺たち男子のやる気をより上げるため、本番が近付いたらで構わないから『チアガール』姿でやってくれ!」

 

 だからまあ、男子の中から柴田のような勇(・)者(・)が現れるのも、無理からぬことであったのだろう。

 

「よく言ったぞ柴田!」

「俺たち男子は女子に『チアガール』を希望する!」

 

 そして勇者が出現したことで、それに続く者が現れるのも、またおかしな話ではなかった。

 

「え~と……」

 

 当然、そんなことを独断で決められる帆波ではない。答えを出せずに目を彷徨わせる。

 

「ま、いいんじゃない。男子が望むならやってやっても」

 

 そんな中、助け舟を出したのは桔梗だった。

 

『おおっ!』

 

 その言葉に、男共は瞳を輝かせる。

 

「ただし、私たちにそれを望むからには、シッカリと得点を稼いでもらうのが大前提だけどね」

『おお……』

 

 しかし、続く言葉でガックシと肩を落とした。他のクラスにだって運動能力に優れた男子はいるのだから、安請け合い出来ることではない。

 

「おお、やってやるぜ! 元より、負ける気で挑むつもりなんざないからな!」

 

 だが、そんな空気を吹き飛ばしたのは、やはり柴田(勇者)だった。

 

「言ったね?」

「言ったさ!」

 

 桔梗と柴田の目線がぶつかり合う。

 

「いいよ。希望者限定で『チアガール』をやってあげる」

『よっしゃあああぁぁーーーっ!』

 

 桔梗からの了承の言葉を取り付けたことで、男子たちはガッツポーズを取り、やる気と歓声を上げるのだった。




前話を受けての学の心情描写と、体育祭への練習(?)場面です。
要は重きを置く場所の問題で、それ次第ではダンスも十分にありな選択肢だと思います。
ぶっちゃけ、筆者が『よう実』女性陣によるダンスシーンを見たいだけです。

本作の愛里は、いわゆる『無駄に洗練された無駄の無い無駄な動き』に適性を持つ人物です。ただ走るよりも、『自分を輝かせる』ように走った時の方がタイムが短くなります。
周りにしてみれば、『何でそんな無駄だらけの動きでそれだけの結果が出せるの!?』となります。
愛里自身、今までその自覚はなかった――と言うより信じてはいなかったのですが、今話で認めざるを得なくなりました。
同時、そんな適性を持つが故に、今まで学校内では陽の目を見ることもありませんでした。
ただし、芸能事務所は別。元よりアイドルなんて『自分が輝いてナンボ』な面を持つ職業ですから、そういう意味ではメチャクチャ輝いてました。事務所としても一押しです。
惜しむらくは、『笑顔を維持したまま、一曲丸々歌って踊れる』だけの体力が当時の愛里には不足していたことです。それさえ満たしていればCDデビューもしてました。

星之宮クラスってフューチャーされている生徒が特に少ないイメージがあります。
そんな中で『勇者』足り得る存在を見出そうと思えば、やはり柴田しか思い浮かびませんでした。
柴田は星之宮クラス男子陣の切り込み隊長です。

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