ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第14話

 時間が経つのは早いもので、既に入学してから半月が過ぎた。

 この学校は放任主義の側面が強い。質問すれば答えてくれる辺り、そうとは言いきれない部分があるのは確かだが、それも最初に定めた方針に反しない程度でのこと。言ってしまえば、『この日の授業はここからここまで』と範囲が厳格化されているのだ。

 一応、毎時間質疑応答用の余裕は設けられているようだが、それは生徒がある程度授業についていけている状態にあることを――言い換えれば自主予習を前提にしている。何が分からないのかすら分かっていない生徒にとっては、厳しい授業体制と言えるだろう。

 ついてこられない生徒は、自主努力を怠る生徒は放置する。そういう意味でも放任主義と言えるが、より顕著なのは教師の方から注意を行わない点だろう。遅刻・居眠り・無断欠席、果ては授業中の私語や許可なき携帯操作に至るまで、全くと言っていいほど注意をしないのだ。

 それが分かるのは、こういう言い方はアレだが他のクラスのおかげである。曲がりなりにも1-Bは真面目に授業を受けている。その分だけ授業中の教室は静かだ。だからこそ、相対的に他クラスの騒がしさが目立つのである。

 今は各クラスで指揮統制が行き渡ってきたのか入学当初に比べると騒がしさは減っているが、それでも変わらず騒いでいるクラスがあるのも事実だ。

 推測が正しい場合、それで後に痛い目を見るのは騒いでいる当人たちだ。そう理解はしていても、自分たちが真面目にやっている中でこうも騒がれると、流石にイラっとするのは避けられない。

 割と包容性の高いBクラスですらそうなのだ。他クラスはそれこそ怒り心頭というものだろう。だから、質疑応答の時間を迎えたことを確認したアズは、授業担当の教師に質問をすることにした。

 

「先生、授業に関係はしていますが、この授業に直接は関係していない事柄に関して質問をいいですか?」

「セインクラウスか。何だ? 答えられるかは分からないが、聞くだけは聞こう」

 

 現在の授業時間は英語。担当教師は1-Aの担任でもある真嶋智也先生。基本的にはフラットな姿勢を心掛けていることが明らかで、だからこそ訊きやすい場合もあるとアズは判断していた。

 その判断は正しく、真嶋先生は僅かに眉を顰めたものの、話を聞く体制を取る。

 

「現在は授業時間であり、ここまで騒がしいのはおかしいと思います。まあ、騒ぐだけなら、それで授業についてこられなくなっても本人の責任ですが、その騒がしさが真面目に授業を受けている私たちのクラスにまで伝わってくるのは問題視せざるを得ません。有体に言って気が削がれます。授業を受ける上で苦痛でもあります。

 図書館だって、静かに過ごすのが前提の上で成り立っているでしょう? であるならば、授業時間に関しても同様だと思います。

 例えば、これが体育による喧騒であれば、こちらにとっても許容範囲です。ですが、洩れ聞こえる内容を聞く限り、そういうわけではありません。

 既に入学してから半月が過ぎているんです。入学直後の浮かれ気分は払拭されていて然るべきでしょう。――にも拘らずのコレです。流石に、私たちも思うところが出てきます。許容範囲の限界を迎えたと、そう言っても過言ではありません。

 ですので、私たち1-Bは、授業時間中に不必要な事柄で不必要に騒いでいる生徒に対し、『精神的苦痛を齎した』として訴えたいと思います。各クラスに監視カメラが設置されている以上、該当生徒の絞り込みは比較的容易だと思いますが、これは可能でしょうか?」

 

 アズは一般的な常識に基づいた上で、普通に授業を受けている生徒であれば、普通に思うだろうことを質問した。――多くの場合、思うだけで実行はしないだろうが。

 

「……なるほど。確かに『授業に関係しているが、俺の授業に直接の関係はない』な。だが、言っていることは尤もだ。言ってしまえば、モラルやマナーに関する指摘だな。

 我が校が放任主義の強い授業体制を取っていることも一因ではあるが、それを差し引いた上でも、一部生徒の授業を受ける態度に問題がある。……セインクラウスはこう言いたいわけだな?」

「はい」

 

 真嶋先生の確認に対し、アズは肯定で返した。

 

「ふむ。セインクラウスの発言を省みると、彼女の発言内容はこのクラスの総意ということになるが、その事実に間違いはないか?」

「はい。間違いはありません。騒ぐなとは言いませんが、せめてこちらにまで聞こえてこないようにしてもらいたいとは思っています。

 表立って声に出さないだけで、誰もが思っていることであると、自分は判断しています。

 アズはただ、そんな奥手の自分たちを慮り、代わりに発言してくれたに過ぎません」

 

 クラスに向けての確認に対し、神崎が真っ先に同意を示した。

 

「奥手か……。まあ、そうだな。世の中、確かにそういう人物は一定数が存在する。その点を鑑みると、神崎の発言を頭から否定はできん。――だが、その自覚があるのならば、改善できるように心掛けていけ」

「努力します」

 

 真嶋先生は神崎の言葉に深くツッコむことはせず、言い分を認めた。――それでも、一応の忠告を発しはしたが。

 

「確認だが、訴えを出すのは1-Bの一同。対象は、『現在の授業時間において、不必要な事柄で不必要に騒いでいる生徒』で間違いはないか?」

「はい。入学してからの経過時間を考慮して尚うちのクラスにまで騒がしさが聞こえてくることを考慮すると、よほどに該当生徒の授業態度は不真面目なんでしょう。

 それを、同じクラスというだけで、真面目な一部の生徒に『止めろ』と言うのも酷だと思います。それが出来るのなら、既にある程度は統制が取れているでしょうし。

 止める能力があっても止める気がないのならそれまでですし、止める気があっても止める能力がないのならやはり止まりません。

 その事実を以てクラス全体の問題に持ち込むことも出来ますが、私たちとしてはそこまでする気もありません。巻き添えで一番被害を被るのは、その一部の真面目な生徒になるでしょうし、そう考えれば追い打ちになるだけです。私たちとしても、不必要に恨まれたくはありません」

 

 該当生徒にアズが期待するのは、あくまでも()()()()だ。だから、被害範囲はあくまでも限定的にする。その数が多いか少ないかは、騒いでいる生徒次第だ。

 該当クラス内の被害を二分化することで、決定的な敵対を避ける意図もある。該当クラスの一部生徒から恨まれることはあっても、該当クラスの全生徒から恨まれることはない筈だ。

 

「ふむ。了解した。その訴えが通るとして、お前たちは罰則に何を望む?」

「そこに関しては学校の判断に任せまず。私たちが希望してそれが通り、そのことを対象の生徒が知ってしまえば逆恨みされかねませんから。まあ、希望しなくても逆恨みされる可能性は高いですが、学校側の判断の結果であれば矛先は二分されます」

 

 尤もらしい理由を告げて、アズは真嶋先生の質問から逃げた。

 

「他の者もセインクラウスの意見に同意でいいか?」

『構いません』

「了解した。では、手続きは私の方でやっておく。代表者はセインクラウスで構わないか?」

「は――」

「そこに関しては、後ほど改めてでも構わないでしょうか? こういった部分を成り行きで決めるのはよくないと思いますので」

 

 アズが肯定しようとしたところで、帆波が割って入った。

 

「一之瀬か。……まあ、いいだろう。お前の言うことにも一理ある。だが、今日の放課後までには報告に来い。でなければ訴えを棄却する」

「分かりました。今日中に代表を決めて、報告に伺います」

 

 そこで授業終了のチャイムが鳴り、真嶋先生は教室を出ていった。

 

「そんなわけで、部活のある生徒も、今日の放課後は皆教室に残ってね! いい機会だから、クラス代表とかを決めちゃうよ!」

 

 帆波がクラス内全体に向かって言う。銘々がそれに肯定の言葉を返し、今度こそ1-Bは休み時間に突入した。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「それじゃあホームルームを始めるよ~!」

 

 放課後、教室に姿を見せた星之宮先生が元気にそう言った。

 

「真嶋くんから聞いたよアズちゃん! 今日もまた盛大にやったんだって?」

「それが不真面目な生徒への訴えのことを指すなら否定はできませんが、その表現には否定を申し出たいところですね。

 この学校は日本でも有数の名門校・進学校を謳っており、その証明性の一つとして『施設・設備の充実』を挙げています。これは入学案内にも載っていることです。そして、そこには()()()()()()()()()()も含まれます。

 授業中に、それを突き抜けて、真面目に勉強している内のクラスまで喧騒が届いているんですよ? 不快な気分になるのは普通だと思いますけど? 

 まして、私たちが入学を果たしてから既に半月が経っているんです。入学直後の浮かれ気分なんて払拭されていて然るべきでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()、という自覚があるのなら。

 私がこのタイミングで声を上げたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()と判断したからでもあります。事実、この半月の間に自浄作用が機能したクラスはあります。間違いなく騒がしさが減っていますので。

 学校は放任主義で期待できない。クラスの自浄作用にも期待できない。こうなっては、第三者が『迷惑だ』とハッキリ伝えるしかないじゃないですか。

 で、学校の授業体制の弊害でもありますので、その分だけ学校側にも骨を折ってくれるようにお願いしただけです。……何かおかしいですか?」

 

 アズは根拠となるべき部分を添えて、懇切丁寧に説明した。

 これは感情の問題であり、道義の問題であり、自覚の問題であり、個人の問題であり、クラスの問題でもある。そして、学校で起こったことだ。

 一つを指摘すれば、複数の事柄が複雑に絡み合う。元より()()()()()として片付けることなど不可能なのだ。ならば、最初から学校を巻き込んで問題を大型化した方が、後腐れがなくていい。

 

「ううん! 全然おかしくないよ!」

 

 答える星之宮先生は満面の笑顔だ。

 

「でも、罰則がどういう形になるかは分からないけど、罰を受けることになる生徒は大丈夫かな……」

 

 その一方、帆波がそんなことを言った。声にも表情にも、心配の念がありありと表れている。

 

「そこは私たちの気にするところじゃないよ、帆波。帆波は優しいから、自分が被害を被っているにも拘らず相手を心配してしまう。その気持ちは尊重する。――でもハッキリ言うと、度が過ぎてしまえば、それは『優しさ』じゃなくて『甘さ』だよ。長期的な視野で捉えると本人のためにならない」

 

 帆波の感情に理解を示しつつ、アズはバッサリと切って捨てた。

 アズにしてみれば、今回の件で悪いのは、徹頭徹尾授業中に不真面目な態度を取っていた生徒である。それが自クラスの中で収まるのならば問題提起する気もなかったが、収まらないなら話は別だ。

 五月蝿いと、迷惑だとハッキリ伝えて、本人に改善を図ってもらわない限りは解決しない事柄なのだから尚更だ。

 もちろん、いずれは自浄作用が働くだろう。だが、それはいつだ? 学校側からのネタ晴らしが入ったところで、必ずしもそれで自浄作用が機能する保証はない。この一ヶ月で評価がマイナスに振り切ってしまえば、来月の支給ポイントがゼロであれば、逆に開き直られる可能性だってあるのだから。

 そんな、()()()()()に期待するのはアズとしては御免被る。友人やクラスメイトならばまだしも、必要以上に他人に振り回されたくはない。

 

「アズの言う通りだ、一之瀬。お前のその優しさは美徳だと俺も感じているが、度が過ぎればその限りじゃない。『薬も過ぎれば毒となる』と言うだろう?

 それに、アズをきっかけに俺たちが他クラスに攻撃を仕掛けたのは事実だが、俺たちは道義に基づいた上で行っている。その上で可能な限り被害を抑えるべく、責める対象の限定化もした。そもそも、連中が授業中に過度に騒いだりしなければ、俺たちが学校に訴えることもなかった。結果的にではあるが、自浄作用に期待して半月という猶予も与えている。

 いいか、一之瀬。俺たちは可能な限り配慮を示しているんだ。である以上、必要以上に気に病む必要はない」

 

 神崎もまた、キッパリと帆波に告げた。

 

「アズ……。神崎くん……。ありがとう。でもゴメン。二人の言うことは尤もだと思うけど、私は今まで人の優しさに支えられて生きてきたから、そんなすぐには変われない」

「それでいいさ。俺たちだって、何もお前の優しさそのものを否定しているわけじゃない。用法・用量に注意しろと、そう言っているだけだ」

「形が違うだけで、私たちが支え合うことに違いはない。そしてそれは、今回私たちが訴えた生徒の方にも同じことが言える。

 正義の味方は、倒すべき悪がいないと成り立たない。医者は病人や怪我人がいないと必要とされない。……敵対関係も、立派な()()()()の一つなんだよ」

「……だな。サッカーの試合だって、負ければ悔しいけど、だからこそ『次は勝つ!』って奮い立たせることが出来るんだ。俺たちは俺たちなりに、それぞれのクラスと適した形で支え合っていこうぜ!」

 

 最後に柴田が締めた。サッカー少年は、案の定サッカーを持ち上げていたが。

 

「よし!」

 

 パァン!

 教室内にイイ音が鳴り響く。

 帆波が、その両手で自分の頬を張ったのだ。

 

「じゃあ、代表やら何やらを決めていこう! 決める役職は……」

「代表、代表補佐、軍師、諜報担当、外交担当……取り敢えずはこんなところでいいと思うが? あまりに多過ぎても煩雑になるしな。必要に応じて、適宜それぞれの下に役を振り分けていけばいいと思う。

 代表は、文字通りにクラスの顔だな。対外的にはクラスの責任者として振る舞ってもらう。

 代表補佐は文字通りだな。代表の至らぬ部分を補佐することになる。

 軍師には、都度クラスの方針と策を打ち出してもらう。以前に根本的な優先順位は決めたが、アレはあくまでも大枠でしかないからな。アレを下敷きに、よりブラッシュアップすることを期待する。

 諜報担当には情報の取り扱いを任せる。

 外交担当は他クラスとの交渉役だな。

 代表は一人。それ以外は二人ずつ。それが理想形だと個人的には思っている。まあ、まだ分かっていることも少ないからな。暫定的に兼任もありだろう。例として、櫛田に諜報担当と外交担当を任せるといった形だ」

 

 神崎が素案を提示する。

 クラスの中のトップ層。一人ずつが選ばれれば九人となり、多数決をすれば確実に決を取れる人数設定。

 だがその一方で、例に出したように、役職次第では一人二役も普通に納得できる。普段から堂々と他クラスと顔を会わせていれば、そこを経由して自然と情報も集まってくるのが道理だ。八方美人を振りまいている桔梗に諜報と外交を担当させるのは、何もおかしなことではない。

 

「神崎くんから案が出たけど、皆はそれでいいかな?」

 

 帆波がクラスメイトに質問する。

 異論はなかった。

 

「じゃあ、こないだのように星之宮先生の端末に相応しいと思う人の名前を送っていってください。自薦も構いません。一人を採用するか二人を採用するかは、票の割れ具合で決めたいと思います。……じゃあ、まずは代表から!」

「先に代表を決めるのか? そういうのってトリに回すもんじゃねえの?」

「その考えも分かるけどね。前提として、真嶋先生への報告があるから。後に回して決まらなかったら元も子もないじゃない?」

「あ~、そういうことね。分かった、納得」

 

 質問を投げかけた柴田は、帆波の返事を聞いて納得したように頷いた。

 そして、順に投票が行われていった。

 代表:一之瀬帆波。

 代表補佐:神崎隆二、白波千尋。

 軍師:神崎隆二、アズ・セインクラウス。

 諜報担当:櫛田桔梗、月ノ輪フォルテ。

 外交担当:網倉真子、櫛田桔梗。

 

「う~ん、この結果はどう見るべきか……」

 

 悩まし気に首を傾げるのは、代表になった帆波だった。

 

「納得と言えば納得だが……」

 

 同じく、役職に選ばれた神崎も顔を顰めていた。

 

「まあ、タイミング的に仕方ないんじゃないですか? 現時点で分かってることだってそこまで多くないんですし、その上で決めようとすれば、ある程度の偏りが出るのは道理です。

 何だったら、代表以外は学期ごとに再選するとかでもいいんじゃないですか? 時間が経てば、今よりもそれぞれについて分かっていると思いますし……」

 

 取りなすようにアズが言う。

 その言葉は尤もだった。入学してから未だ一ヶ月も経っていないのが現実。公的な試験だって行われていないし、その分だけ目立っている生徒も少ない。である以上、その少数派の周りにいる人物に視線が向いてしまうのは、ある意味で仕方のないことでもあった。

 

「それが妥当なところか。流石に代表の座を軽々しく動かすわけにはいかんが、それ以外であれば学期ごとの変動もありだろう。というより、変動してもらわねば困る。自分で提案しておいてアレだが、兼務など長く続けられるものでもないからな」

「まあ、軍師と代表補佐の兼任はキツイだろうね。私もキツイっちゃキツイけど、集めた情報自体は丸投げが可能なポジでもあるから、その点ではまだ気楽かな」

 

 情報の取り扱いは重責と言えば重責だが、玉石混交のそれらの中から取捨選択を行うのは軍師ポジに丸投げが可能でもある。

 外交とて、定めた指針に基づいて動くわけだから、その点ではまだ気楽だ。

 

「では、役職陣で決を取ります。代表以外の役職は、学期ごとに再選する。……賛成の人は挙手を。なお、代表の意見に周りが流される可能性を防ぐため、私は最後に意思表明します」

 

 そして、全員が手を挙げた。わざわざ代表である帆波が意思を表明するまでもない。学期ごとに役職を再選することに決まった。

 

「いい機会だから、俺から報告することがある」

 

 次の瞬間、神崎が手を挙げた。

 

「なに? 神崎くん」

「俺たちの友人に1-Dの綾小路清隆という男子がいるんだが、コイツがうちのクラスへの移籍を望んでいる。そして、そのために実際に動いている」

「綾小路くんが? って言うより、クラスの移籍って……そんなことが可能なの?」

「分からん。俺としては断言できん。……が、綾小路は理屈の上では可能だと踏んでいるようだ。ポイントで買えないモノはないというのが、この学校の言い分だからな」

「そう言われると否定はできないけど……。それで、神崎くんはその支援がしたいってこと?」

「ああ、そうだ。とはいえ、精々が最後の一押しレベルだがな。あくまでも、アイツが現実的に可能なレベルにまでポイントを貯めることが出来たならの話だ」

「神崎くんは、綾小路くんにそれだけの価値があると認めてるってことだね? そして、それが可能でもあると」

「ああ。俺が知っていることもそう多くはないが、少なくとも、学力は学校でも一番だろう」

「……ちょっと待って。学校で? 学年ではなく?」

()()()、だ。以前、アイツと一緒に図書館に行ったことがあった。そこでは読書に勤しむ生徒が多かったが、勉強に励む生徒もいた。その中には三年の先輩もいたわけだが、アイツは先輩が詰まった部分をチラ見しただけで解いてみせた。それも、一教科だけじゃない」

 

 神崎の言葉に、その場の全員が絶句した。

 

「それが本当なら、確かに見過ごしてはおけないね」

「ああ。ハッキリ言って、友人ではあるがアイツは底が知れない。だからこそ、敵対するのは得策じゃない。

 以前、軽くだがアイツの過去を聞いたことがあるだろう? 学校に通ったことがない。育った環境が厳しかった。そうアイツは言っていたが、俺たちの想像を絶するレベルだったということだ。

 その弊害だろうな。アイツは感情面が未発達なフシがある。極端なまでに合理性が強いんだ。だからこそ、俺たちであれば自然とブレーキをかけるだろう部分でも、アイツは合理的だと判断すればアクセルを踏み込むだろう。

 それが、グレースタイルを容認するこの学校のシステムと組み合わされば、どこまでの被害が出るか分かったものじゃない。

 だがその一方で、アイツは合理的だからこそルールを順守する傾向もある。

 だからこそ断言する。アイツを抑え込むことが出来るのは、ヒトに留めておけるのは俺たちのクラスだけだ。他の――()()()()を最優先にするクラスでは、アイツにブレーキをかけさせることが出来ない」

 

 神崎は淡々と、しかし表情には恐れを隠さずに告げた。

 

「分かりました。そういうことであれば、私も個人的にお手伝いしますよ。

 しかし、場所が変わっても人間ってのは変わらないものですね。()()()()()は、その実紙一重でしかないというのに、どうしてわざわざ()()()()()()を生み出そうとするのか……。真実そうなってしまえば、人の手で御せる筈もないでしょうに……」

 

 そう呟くアズの言葉には、言いようのない実感が込められているのだった。




普通に考えて、授業中、初期のDクラスほどに喧しければ、他のクラスが訴えてもおかしくはないんじゃないかな……と。
休み時間とか、ある種の喧騒が付き物の体育の授業とかならまだしも、そういうわけでもありませんし。
遮音性が高いというのは独自設定ですが、日本有数の名門校にして進学校ならあり得るとも思います。

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