ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ 作:山上真
書いているのが『よう実』の二次ということもあり、初期Dクラスばりのマナーの悪さに、嘆けばいいのか、『ウケ狙い』と笑えばいいのかよく分かりません。
低評価は構いませんが、せめて『どこがつまらないか』を明確にしてくださいよ。まあ、それをされたとて改善できるとは限りませんが……。
須藤と外村を寮へと連れ帰った時点では、櫛田はまだ帰宅していなかった。端末を確認すると、『長丁場になることが見込まれるため、モールに寄って食材や勉強品などの必要品を諸々購入してから帰る』という連絡が届いていた。帰ったら連絡するから私服に着替えて待っておけ、との旨も記載されている。
二人にもその旨を伝え、自室の部屋番号を伝えた上で着替えてこさせることにした。長丁場と聞いた瞬間には見るからに顔を顰めた二人だったが、食費が浮くことには分かりやすく喜びを表していた。何とも分かりやすい。
一時的に二人と別れ自室に戻った俺は、私服に着替えた。櫛田が来るのは分かっているので、ラフさを優先しつつ、失礼に当たらない範囲をチョイスする。
「そう言えば、あの二人に櫛田が教師役だと伝えていなかったな……」
今更になってそのことを思いだす。ヘタに1-Dの教室でそのことを伝えると、自分も自分もと希望する生徒が後を絶たない可能性が予見されたため、終始『クラスメイト』や『友人』という言葉で呼び表していた。その流れのまま、結局説明していない。
もしかしたら、俺が誘ったことから教師が男子だと思い込んでいる可能性もある。そして往々にして、男子と女子の
まして、言っては何だが二人揃ってDクラスの生徒である。ともすれば、同じ男子相手でも
一抹の不安に駆られた俺は、二人へと『教師役は女子であるため、失礼にならない服装でこい』と一報を入れる。帰宅中、連絡先を交換しておいて良かった。
少し考え、『私服に自信がないなら、学校の体育着で構わない』と追加で入れておく。何せ相手はDクラスだ。娯楽品や趣味嗜好品にポイントを注ぎ込んでいる可能性はあれ、ファッションに注ぎ込んでいるかは怪しいものがある。熱を入れているものがバスケとコンピュータなら尚更だ。
直後、二人から返信が届く。
外村は、『助言、感謝するでござる。拙者、体育着で向かわせてもらうでござる』……と。
須藤は、『あ~、分かった。体育着で行く』……と。
それを確認した俺は、
友人同士の勉強会なんて、時期によっては珍しいものでもない。自分が積極性に欠ける自覚はあるが、決して友人がいないわけではないし、性別に拘らなければそこそこの数にはなる。そして寮則により、男子が女子の部屋に滞在するのには制限がある。
である以上、たとえ勉強会でなくとも、自然的に男子の部屋が会場になるのは目に見えている。事前に買っておいても無駄になるとは思えなかった。その予測は当たり、早くも使う機会に恵まれたわけだ。
テーブルを広げて設置し、クッションも置く。少し考え、横にはちゃぶ台も展開した。
大きめのテーブルを買ったつもりではあるが、個室の広さが広さだ。そこに元々の設備や備品も加えると、サイズにも限度がある。四人で使えないこともないだろうが、うちの三人が男子であり、目的が勉強であることを鑑みると、不安の方が勝ったのだ。
四人を比較した場合、学力は櫛田>俺>外村>須藤ということになるだろう。そして、櫛田は須藤と外村に付きっきりになるだろうが、俺自身はその限りではない。敢えて櫛田に勉強を見てもらう必要もない。なので、テーブルは櫛田、須藤、外村の三人に使ってもらい、俺はちゃぶ台を使おうと考えた次第だ。
そうこうしていると、自室のチャイムが鳴った。確認すると須藤だったのでドアを開ける。
「早かったな。外村も教師役もまだだが、取り敢えず入るといい」
「おう。邪魔するぜ」
「お前と外村、教師役にはテーブルを使ってもらう。俺はちゃぶ台を使う。基本、お前と外村の勉強は教師役が見るが、勉強に限っては俺に質問してくれても構わない。一対二では、どうしたって限度があるからな」
「おう。分かった」
簡単に返事をした須藤は、ドッカリと腰を下ろした。
「正味な話、上手い勉強法とかって何かあんのか? 俺って、勉強なんか真面目にやったことねえし、基本的に一夜漬けで乗り越えてきたからよ」
「上手い勉強法か……。正直に言って、ないな」
「ねえのかよ……」
俺の返答に、須藤はガックリと肩を下ろす。
「誰しもに共通する
「あ……? そんな上手い方法があるってのか?」
「簡単だ。お前のバスケに向ける熱意は並みならぬものがあるからな。なら、勉強も
「んなこと言われてもよ……」
「まあ聞け。お前は将来、プロのバスケ選手を目指しているのだろう?」
「ああ。――嗤わねえのか?」
「嗤う? そんなことをするわけがない。むしろ、立派な夢だと応援するよ。
世の中には、夢を持ててない人も相応に多いんだ。かく言う俺もその一人でな。
だから、夢を持って、そのために行動している人物のことは素直に尊敬する。その点においては、お前に対しても例外じゃない」
「そ、そうか……」
須藤は鼻を擦って目を逸らした。……恥ずかしがっているのか。見た目に似合わず、可愛らしい部分もあるものだ。
と、そこで再度チャイムが鳴った。
「外村が来たかな……? ちょっと待っててくれ」
須藤に一言断って玄関に向かう。来客を確認すると、やはり外村だった。ドアを開ける。
「遅くなったでござる。まだ大丈夫でござるか?」
「ああ。須藤は来ているが、教師役はまだだ。……まあ、入れ」
「なら良かったでござる。お邪魔するでござるよ」
外村もまたテーブルに案内して、俺はちゃぶ台の前に座った。
「教師役が来ないことには始まらんからな。話の続きといこう。興味があるなら、外村も聞いていて構わんぞ」
「何の話でござるか?」
「端的に言えば、勉強に対する意識改革についてだな。須藤から『上手い勉強法はないか?』と質問があった」
外村は納得したように頷き、話を聞く姿勢を取った。
「一つずつ整理していこう。お前はプロのバスケ選手を目指している。……そうだな?」
「ああ」
「では、『プロのバスケ選手』に必要なものとは何だ?」
「あ……? そりゃあ、バスケの腕だろうが」
「そこがそもそもの間違いだ。それは前提条件にして最低条件でしかない。細分化していけば、身体能力や身長はもちろん、社交性だって求められる。最大級にスポットが当たるのは試合であることに間違いないだろうが、インタビューなんかを求められる客商売でもあるのを忘れるな」
「あっ!?」
俺の当然の指摘に、須藤はあんぐりと口を開けて驚いた。
「普通に考えて、インタビュアーに失礼な言動を取る奴を起用する上層部がいるか? いるとしたら、
だが、それはどれほどの腕を持っている奴だ? 古今東西、『プロバスケ選手』というだけなら多くいるだろうが、話に持ち上げられるような人物となると限られている。可能性があるとしたら、そういう選手並みの実力を持っていることだろう。
人柄の悪さを帳消しにして余りあるほどに、
逆に言うと、そこを理解してしまえば、その上で尚もバスケ選手になることを諦めないのであれば、社交性を身に着けるための努力を惜しむことはないだろう。直接的なバスケの腕には関係ないが、それもまた『プロのバスケ選手』になるためには必要なことなんだからな。ついでに言うと、チームワークの向上にも効果が出るかもしれない」
「……なるほど。そういう風に考えたことはなかったな。そして、そういう風に言ってくれる奴もいなかった。だが、言われてみりゃあ尤もだ」
俺の説明に、須藤はウンウンと頷いている。
端的に言って、須藤は環境が悪かったのだろう。部活として、期間限定の遊びとして楽しむ分にはいいが、そこに将来を求めるほどの者が周りにいなかった。そういった者に、須藤の熱意が受け入れられるわけがない。部活に、バスケに求めるものの前提が違うのだから当然だ。
しかし、須藤はそのことに気付かなかった。自身がバスケに将来を求めているからこそ、周りもそうであることを前提にした。前提にして、確認することもなかった。
そうなれば、互いの齟齬は広がるばかり。発覚したときには、溝は埋めきれないほどに広がっていたことだろう。
普段の須藤の態度が、そこに起因する可能性は否めない。信じられないから雑に扱うし、反抗的な態度を取る。信じられる筈のチームメイトが信じられなかったのなら、その行動にも理解はできる。
「同じように、勉強もまたバスケと結び付けて考えればいい。俺はよく知らないが、バスケの本場はN.B.Aでアメリカなんだろう? 当然、言語は日本語ではなく英語が用いられる。
その時点で英語の習得は必須だし、チーム内の交流を深めるとなれば、いろんな話題に飛び火するだろう。互いの身の上話を交わすかもしれないし、故郷自慢をするかもしれない。その時に、世界史や日本史、国語能力が身に着いていればどうだ?」
「そりゃあ、話題は弾むだろうし、仲も深まるかもな」
「だろう? そういう風にメリットを考えて、学ぶ意欲を高めるんだ。
余りに長期的な未来で意欲の維持が難しいなら、より短期的に考えればいい。俺は部活をやってないからアレだが、パンフレットによると、この学校は結構な施設や設備を用意しているんだろう?」
「おお! 少なくとも、俺が通ってた中学校とは比べ物にならねえほどに上等だ!」
俺の質問に、須藤は前のめりで頷いた。
「なら、その環境での練習を維持するための
「違わねえ」
「だろう? だから、退学しない程度の学力維持を前提にして、その上でバスケに力を注ぐ。……そういう風に、自分の考え方を変えるんだ。それで自分が納得できれば、勉強や何かに対する意欲も、多少は前向きになる筈だ」
「それが意識改革ってやつか……。確かに、全教科で100点を取れって言われたら無理だと思うが、51点だったら出来るかもしれねえ。今の俺の学力で実際に出来るかはともかく、そういう風に思えるのは事実だ」
「同じことは外村にも言えるぞ? 世の中は集団社会だからな。時には個を貫くのも必要だが、常に貫いているようでは排斥や矯正をされる。俺にはお前の『ござる』口調を咎める気も『止めろ』と言う気もないが、全員がそう思うかは分からない。だから、誰彼構わずは止めるべきだな。せめて相手は見繕うべきだ。
まあ、この判断も難しいんだがな。その口調を受け入れられない奴と仲良くする気がないのであれば、踏み絵として利用できる面があるのは否めない。だが、口調にそこまでの熱意がないのであれば、友人相手の披露だけでも十分だろう。もっとも、その瞬間に離れていく奴がいないとは言い切れないのも事実だが……。
そういった諸々を考えた上で、お前が納得できる部分に落ち着くしかない」
「助言、忝く……! 拙者、ここまで親身に助言をいただいたことはこれまでなかったでござる……!」
気付いたら、外村は男泣きしていた。正直、若干ヒイた。
瞬間、端末がけたたましく鳴った。マナーモードにしていると櫛田からの連絡に気付かない可能性があったので、わざと音量を高めに設定しておいたのだ。
端末を確認すると、やはり櫛田からの帰宅連絡だった。
「どうやら教師役が帰ってきたようだ。想像以上に買い込んできたんだろうな。駐輪場にいるから、荷物を取りに来てほしいとのことだ」
「っしゃ! んじゃ、行くか。勉強を教えてもらおうってんだから、せめてそのくれえはしねえとな」
「で、ござるな」
俺、須藤、外村は立ち上がり、この奇妙な三人組で寮の駐輪場へ向かったのだった。
時期が時期だけあって、一年寮の駐輪場はガランとしていた。用意されているスペースと比較して、駐輪されている数は実に少ない。
「あ~、神崎
その、数少ない一台の横に立つ人物――櫛田が、俺たちの姿を確認するなり手を振って声を上げた。ひと気が少ないのは事実だが、クラスメイト以外に見られる可能性はゼロではない。わざわざ俺を『くん』付けで呼んだのはそのためだろう。
「すまない。待たせたか?」
「そうでもないけどね~。ただもう、重くて重くて……」
言いながら、櫛田はママチャリのカゴを指し示す。
「こっちは食材で、こっちは問題集。あと神崎くんの部屋を指定して、数時間内には買い込んだ調理道具を届けるようにお願いしてきた」
「それはまた……随分と買ったな」
紛うことなき本音である。問題集は袋一杯に入っているし、食材だってまた然り。その上に自転車と調理道具まで買ったとなれば、果たしてどれだけの散財をしたことか。
「このくらいは必要経費だって! 大半の食材は無料だしね! 取り敢えず、私は着替えてくるから、荷物を先に運んでおいてもらっていい?」
「そのために呼んだんだろう? 構わないから着替えてこい」
「じゃ、よろしくね!」
櫛田は須藤と外村にも笑みを一瞥くれて、タタタッと駆けていった。
「よもや、教師役が櫛田殿であったとは……! 拙者、一生分の幸運を使い果たした思いでござる!」
「あ~、うん、それはどうかな……」
果たして、櫛田の本性を知ってもその喜びが持続するものなのか?
そこに一抹の興味を覚えつつ、俺は敢えて真実を告げることなく言葉を濁すのだった。
原作における印象ですかね? 初期のDクラスに対する評価はどうしても辛口にならざるを得ません。
今回描写してますが、服装に関してもまた然りです。
それでも、イラスト描写から須藤が制服を着崩しているのは分かりますし、会話シーンから外村が特段コミュニケーション能力に不足しているわけではないことも分かります。
だからこそ、余計に須藤の私服に関しては辛口に考えざるを得ません。
一方の外村の場合、手持ちが少ないだろうことは明らかですし、原作での描写から『女子とのコミュニケーション』に難があるのは間違いないと思われます。普通に女子とコミュニケーションが取れるならやらないようなことをやってますし。
そんなわけで、『事前に服装に関して神崎から一報を入れる』という描写に繋がりました。神崎は星之宮クラスということもあり、『普通にそこら辺にまで気を回すだろう』という判断です。
あとは目標達成に向けての細分化のくだりですね。
須藤って『プロバスケ選手』を目指している割に、必要と思われる他の分野に関して考えているようには見えないんですよね。本当に『バスケの腕』しか頭にない感じです。
だからこそ、バスケに対する熱意は高く、『夢は本物』のように思える面があるのも事実です。
だからこそ、桔梗が来るまでの時間つぶしを兼ねて、神崎の方からその辺りを指摘しています。
同時、神崎は無意識に『桔梗のやろうとしていたこと』を奪っています。
星之宮クラスに初期配属される辺り、彼もまた『根底部分は世話焼き気質』なのだと考えたからでもあります。
原作での設定と描写から考えられる、また変化を加えたことで起こる、様々な『だろう』を文章化するのは、楽しくもあり、難しくもあり、ですね。
挿むタイミング次第では、単なる『後付け描写』になりかねませんし。
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