ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第26話

 星之宮クラスは、その日のうちに各クラスへと攻勢を仕掛けた。

 放課後のホームルーム。一人ずつ代表に立てて各クラスにスカウトへ走らせる。

 結局のところ、成功しても失敗しても構わないのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()という事実を知らしめるだけで、他クラスは容易に星之宮クラスに攻撃を仕掛けられなくなる。

 ()()()()()()()()()()()()A()()()()()()という事実があり、現在の星之宮クラスはクラス逆転を果たした結果Aクラス。真嶋クラスとは僅差であるため再逆転される可能性がないではないが、少なくとも現状においてCクラスやDクラスより望みがあるのは事実だ。――まあ、それとてこの先の三年でどうなるか分からないのも事実ではあるが……。

 とはいえ、根本的に人間という生き物は、自分の信じたいものを信じ、見たいものを見る傾向が強い。未だクラスへの思い入れやしがらみが少ないからこそ、卒業特典を求めている生徒ほど、()()()()()()()()()……という心情が働くのは無理からぬことだろう。

 衆目の中、堂々とスカウトを仕掛けた時点で、正確にはそれが可能であると知らしめた時点で、スカウト自体が成功と失敗どちらの結果を迎えても、星之宮クラスには損がないのだ。

 真嶋クラスには帆波が、Cクラスにはアズが、そしてDクラスには神崎が使者として立った。事前に、それぞれの端末にはクラスメイト各自からポイントが送金されている。合計で二千万ポイント以上が、個人の端末に振り込まれているのだ。

 普通に考えると、この時点ではどう足掻いても持ち得ることのない大金だ。

 しかし、受け持ちの生徒たちに理由は説明できずとも、教師はこれが不正に得たポイントでないことは分かっている。一人を除き、星之宮クラスの生徒それぞれに、昨日、ポイント支給と時を同じくして、一人当たり三百六十万ポイントが振り込まれていることは把握している。

 である以上、個人では足りずとも、合わせれば二千万くらいは軽く突破する。

 だからこそ、スカウトの場には教師も同席しているのが望ましい。実際にスカウトが叶った場合、手続きには教師を介する必要があるので一石二鳥でもある。

 一方、担当教師である星之宮知恵は、ある意味で受け持ちの生徒以上に一喜一憂していた。これまでにも何度かクラスを受け持ったことはあるが、此度のクラスは毛色が違いすぎる。

 資料によると、中学の時分から見るべき部分がある生徒がいるのは間違いない。むしろ、()()()()()()がなければ、この学校への入学が認められることはない。

 だが、それを踏まえても度が過ぎている。その理由を考えるならば――

 

「ここに入学して、このクラスになって、いい意味で化学変化を起こしたってことよね……?」

 

 それ以外に結論の付けようがなかった。

 早い話、一足飛びな成長を果たした生徒が現われ、各自がそれに引きずられる形で成長をしている。

 そしてこうなると、中学時の資料など、文字通りに『参考資料』程度の価値しかない。

 資料の中の櫛田桔梗は、まかり間違ってもこんなスタンスではなかった。

 中学の三年間、生徒と教師を問わずに八方美人を振りまき、それを貫き通したのは見事なものだが、その一方で明確な優先順位を付けることはなかった。基本的には、誰もを平等に扱っていた。

 アズ・セインクラウスが転入してきてからは、些か彼女を優先する向きはあったが、立場を鑑みれば普通に納得できる範疇だ。不慣れな相手を優先するのは、決して間違っているわけではない。

 そして、朝のようにある種の()()を露呈させることもなかった。誰もが誰も、櫛田桔梗を現実の人物として扱いながら、どこか()()()()()として扱っていた。

 それが、資料における中学時の櫛田桔梗だ。――部分的に見れば、現在とは余りに違う。

 櫛田桔梗だけではない。同じことは他の生徒にも言える。一之瀬帆波、神崎隆二、柴田颯、姫野ユキ……程度の差はあれ、誰もが誰も、中学時とは変化を見せている。

 

「その中心にいるのが、アズ・セインクラウスか……」

 

 アズは、自分から他人へ積極的に働きかけることはしない。基本的には受け身のスタンスだ。そしてそれは、中学時代と何ら変わるものではない。

 まあ、アズの場合は海外出身ということもあるのだろうが、参考資料が殊更に少ないのだが……。ぶっちゃけた話、中学三年時のそれしかない。

 身体能力と頭脳の優秀さは中学時から明らかだったが、その()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、アズがAクラスではなくBクラスに初期配属された理由でもある。

 それを踏まえると、まさしく現状は『偶然の賜物』以外の何でもない。

 正味な話、入学日の出来事は、今思い出しても赤面ものである。資料を確認して優秀さは知っていたつもりであったが、それが文字通りに()()()でしかなかったことを、まざまざと思い知らされたのだから。

 質問そのものも目を瞠る部分はあったが、その後の暴走など想定外である。だが、だからこそ、その暴走ぶりから鑑みると、あの質問の味気無さがアリアリと分かる。つまりあの質問は、学校側を気遣った内容でもあったのだろう。

 自分の能力に自信と自負があるから、卒業特典に拘る必要がない。究極的には、どのクラスだって構わないのだろう。無論、現実には好き嫌いがあるだろうから、()()()()()()()()()()になるだろうが。

 だが、クラスのランクはどうでもよくても、お金――ポイントに関しては話が別。だからこそのあの質問であり、無難な方法が全滅したからこその暴走であったと鑑みれば、十分に筋は通るのだ。

 同時、彼女の人間らしさが窺えた瞬間でもあった。

 小テストで満点を取ったことも合わせ、彼女は余りにも()()()()()()()というものを逸脱している。

 その一方、()()()()()という行動自体には個人的に思うところがあれ、正規のルールに則った上でポイント稼ぎに精を出す部分には、人間らしさが窺えて安心できるのも事実だ。

 

「私がどうかしましたか?」

「うわっ!? アズちゃん、いつ戻ってきたの?」

 

 気付けば、当のアズが目の前にいた。本人から声をかけられて初めてそのことに気付いた知恵は、あからさまなほどに驚いた。

 

「今しがたです。……で、私がどうかしましたか?」

「いやいや、そういうわけじゃないの。桔梗ちゃんと一緒の学校だったアズちゃんなら分かるだろうけど、中学とはスタンス的に違う部分も大きいでしょ? うちのクラスの場合、そういう子は桔梗ちゃんだけに限らなくてね。原因を突き詰めていけばアズちゃんに行き当たるって話」

「ああ、そういう……」

 

 知恵の説明に、アズは頷いた。

 自分のスペックが一般的な高校生を逸脱しているのは、アズ自身がよく理解している。それを利用して部活荒らしなんぞを行いポイントを稼いでいるのだから、否定できるわけがないのだ。

 美術品や芸術品は自分からは何一つ動かずして、観た者に感銘を齎す。その観点で言えば、自分もそれと大差ない。物であるか、者であるかの違いだけだ。

 ()であるからには自分から動くわけで、そりゃあ自分からは動きたくても動けない()以上に、周囲へ感銘を齎しても不思議はない。

 

「まあ、それはいいですけど……。取り敢えず、交渉は成立です。Cクラスはホームルームでの伝達事項は伝え終えたとのことでしたので、ついでなのでお連れしました。椎名ひよりさんです」

「よろしくお願いします」

 

 考え事に嵌っていた知恵は気付かなかったが、アズの横にはもう一人の女生徒がいた。彼女こそが椎名ひより。アズがスカウトしてきた、元1-Cの女生徒である。

 

「ひよりちゃんだね~。私はこのクラスの担任で星之宮知恵っていうの。よろしくね~」

 

 礼儀正しく一礼するひよりに対し、知恵は人好きのする笑顔を浮かべて応えた。

 それから程なく、帆波と神崎も、生徒を一人ずつ連れて戻ってきた。帆波が連れてきた女子は、アズにとっては初見の相手。一方、神崎が連れてきた男子は、アズも見知った人物だ。

 

「山村美紀です。よろしくお願いします」

「綾小路清隆だ」

 

 端的にそれぞれが名乗った。

 

「取り敢えずの顔合わせも済んだところで、ホームルームはここまでです! 明日からは連休に入りますが、節度ある生活を心掛けてください! 山村さん、椎名さん、綾小路くんの机に関しては、連休明けにはうちのクラスに運び込まれている筈ですので!」

 

 そう言って知恵は教室を出ていこうとしたが、そこに帆波が待ったをかけた。

 

「せっかくですので、連休中、新たなクラスメイトとなった三名と、延び延びになっていた佐倉さんの歓迎会を併せて行いたいと思います!

 一緒にお昼を食べて、カラオケやボーリング、ショッピング辺りが無難かな~と思ってますが、皆さんはどうでしょうか!?

 あ、もちろん、主賓の四人の費用はこちらで持ちますので、その点は心配なさらず!」

 

 そして提案される、歓迎会の開催。

 刻一刻と中間が迫る現在、確かに勉強は大切だ。しかし、同じクラスになったからには親睦を深めるのも大切だろう。

 

「いいんですか?」

「いーの、いーの! それがこのクラスの風潮なんだから! あ、私は月ノ輪フォルテっていうの。フォルテって呼んで。よろしくね、美紀ちゃん!」

 

 自信なさげに美紀が問えば、笑顔で詰め寄ったフォルテが答えた。

 

「あ、はい。よろしくお願いします。フォルテさん」

 

 差し出されたフォルテの手を、美紀はおずおずと握り返した。 

 

「ぜひ参加させていただきますね! あ、ショッピングの際は本屋に寄ってもらえると助かります!」

「ありがたく参加させてもらう」

 

 その一角では、ひよりと綾小路が積極的に参加を表明していた。

 

「あ、はい。分かりました」

 

 愛里もまた、流されるままに参加を承諾する。

 

「あ、もちろん先生もどうぞ!」

「え!? 私もいいの!? わ~い! じゃあ、ありがたく参加させてもらうね!」

 

 知恵にも声をかければ、ノリノリで参加を表明した。

 

「ぜひぜひ! 先生もクラスの一員ですので!」

 

 今度こそ、知恵は教室を出ていった。

 それを見送って、帆波が再度口を開く。

 

「というわけで、連休中は、どこか一日を使って歓迎会です! 流石に勉強もあるので、連日やってはいられませんのでね。そこは了承をお願いします!」

 

 銘々から承諾の言葉が返る。

 

「ま、さっきはあんな感じで言いましたが、せっかくの歓迎会ですのでね! 主賓が楽しめなければ意味がありません! 椎名さんは書店を希望とのことですが、他のお三方は何か希望はありませんか?」

「ファッションショップは欠かせないっての! 佐倉の強みを盛大に見せつけてやるわ!

 ぶっちゃけさ~、ビジュアル特化型の佐倉がその強みを生かさないのって、私としては不満なのよね~。だから、この機会に、盛大にプロデュースしてやるわ!」

 

 三人が答えるよりも早く、桔梗が割って入った。

 クラス内でも容貌に優れる桔梗の断定に、衆目の視線は一斉に愛里を向く。

 

「ひうっ!?」

 

 それにより、身を縮こまらせる愛里。

 

「私は、特に希望はないです。今までは影の薄さから仲のいい友人もいませんでしたし、こうして誘っていただけるだけでありがたいです」

 

 美紀のその言葉には、全員が大なり小なり胸を痛めた。

 

あ~、やっぱアレかな~。彼女って天然の覚醒者なのかな~……?」

 

 それを聞いたフォルテは、思わず小声で呟いていた。

 フォルテを含むN.I.N.J.Aは、その語源である『New Infinity Neuron - Japanese Assassin』が指し示すように、先天的に特殊な神経細胞を持っている。そしてこの細胞自体、誰もが持っているわけではない。N().()I().()N().()J().()A()()()()()()()とは、()()()()()()()()()()()()()ことを意味するのだ。

 だが、世の中には持っているだけで効果を示すモノもあれば、持っているだけでは意味がないモノがある。この細胞もまた然りで、基本的には特殊な鍛錬を行うことで覚醒させないと意味がない。

 その一方、何事にも例外はあるもので、細胞を持つ者の中には、極稀に鍛錬を行うことなく天然に覚醒させてしまう者もいるのだ。そういう場合、大抵は歪な覚醒の仕方をしているし、覚醒の内容や時期によっては本人が無自覚なことも多い。

 美紀の影の薄さは、そのせいだとフォルテは見当を付けた。元々の源流である忍者なら影の薄さは武器であるかもしれないが、度を越したそれは、現代社会では些か以上に相容れない。

 詳しく調べてみないと断定はできないが、推測が正しいなら彼女はフォルテの同胞ということになる。根は割かしドライなフォルテであるが、仮にそうだとするならば、放置するのは些か以上に寝覚めが悪い。

 

「オレも任せる。正直、どれもこれもに興味はあるんだが、だからこそ自分では決めきれないんだ」

 

 断片的にでも綾小路の過去を知る者は、その言葉に納得を示した。

 

「だいぶ厳しい家庭環境だったようで、学校に通うの自体、ここが初めてなんだと」

 

 怪訝そうな表情を浮かべた者も、柴田のその言葉に理解を示した。その言葉を素直に信じたわけではないが、そうであるなら綾小路の言い分にも筋は通るからだ。

 

「主賓の雰囲気的に、食事は騒がしい場所よりも落ち着いた場所の方がいいだろうな。もっとも、格式ばった店とはまた別だが……」

 

 神崎の提案に対し、否が出ることはなかった。何となく、()()()()()()()()()()()()()()よりは、()()()()()()()()()()()といった感じだ。それも、お蕎麦屋さんとかうどん屋さんとかの和のイメージ。『一度に四十人強を収容できる』という一点だけで、かなり候補は絞られるだろう。

 問題は予約ができるかどうかだが、元より来店客自体が限られているのだ。予約自体を断ることはないだろう。断るとすれば、()()()()()といった理由とかの場合か。

 結局、肝心の主賓に大した要望がなかったので、他の面子の意見を取り上げられることになったのだった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 以下は本文中に入れなかった、交渉時の他クラスの様相です。

 

帆波「うちのクラスの生徒に山村さんを推してる人がいてね。移籍費用は払うから、うちのクラスに来ない?」

美紀「行きます!」

 

 真嶋クラスはこんな感じです。

 即落ち二コマもかくやといった有様ですが、葛城も有栖も外面を意識しなければならないため、本人が強い意向を示しているのなら必要以上の干渉も出来ません。互いが権力争いの真っ最中であるため尚更です。

 僅差とはいえ、クラス評価を覆されたこともあって、尚更止める理由がありません。 

 

アズ「他クラスの生徒にスカウトをしようという話になりまして。このクラスからは椎名さんの名前が候補に出ました。何でも『クラスにお話の合う生徒がいない』と零されていたとか? ですので、どうでしょう? 費用は払いますのでうちのクラスに来ませんか?」

ひより「確かに、そちらのクラスには読書を嗜まれる方もいましたね。……分かりました。移籍に同意します」

龍園「待ちな。本人の意向とあれば止めることは出来ねえが、それでも、馬鹿揃いのうちのクラスだとそいつは貴重な教師役なんだ。少なくとも、このタイミングで持っていかれるのは困る」

アズ「いや、その言い分を認めちゃうと、ズルズルと引き延ばされちゃうじゃないですか……。分かりました。先輩に『過去問の供出』を交渉してください。たぶん、それで中間は乗り切れる筈ですので」

龍園「過去問? なるほど、あの小テストはそういうことか……。だが、中間を乗り切れるだけだとな。椎名の価値には見合わねえ。そいつを持っていくってんなら、そいつが在籍することで齎すだろう利益も寄越してもらわねえとな?」

アズ「その点は、彼女が在籍することで齎すだろう不利益と相殺ですね。まあ、過去問の交渉費用はこちらで出しますよ。五万もあれば十分でしょう?」

龍園「チッ、手強いじゃねえか。しゃあねえ、それで交渉成立だ。――それはそれとして、気に入ったぜ。お前、名は?」

アズ「交渉成立はいいですが、他人に名前を訊ねるんなら、まずは自分から名乗ってください」

龍園「ますます気に入った。俺はこのクラスの王――龍園翔だ」

アズ「アズ・セインクラウスです。ではまた、王様。うちのクラスは『助け合い』をモットーにしてますので、可能な範囲で協力は惜しみませんよ。タダで力を借りるのが嫌なら、ポイントをください。そこが両者の落としどころでしょう」

龍園「だろうな。だが、油断してるようなら俺たちは牙を剥くぜ?」

アズ「だからこそのスカウトですよ。それが分からない王様じゃないでしょう?」

龍園「クハハッ。本当に手強いな。……おら、さっさと椎名を連れていきな」

アズ「はい。過去問交渉用のポイントは、坂上先生を経由してお渡ししますので」

 

 坂上クラスはこんな感じです。本人以上に龍園との交渉になりました。

 

神崎「綾小路、お前をスカウトにきた」

綾小路「(オレはまだ碌にポイントを貯められていないが)いいのか?」

神崎「ああ。クラスの方針でな。臨時収入が思いの外に巨額だったため、攻撃と防御を兼ねて他クラスから生徒をスカウトすることになったんだ。今頃は真嶋クラスと坂上クラスにも他の奴が交渉に向かっている」

綾小路「そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらおう」

茶柱「……(止める言葉も方法もない。様子を見てるうちに綾小路を持っていかれることになってしまった)」

 

 茶柱クラスはこんな感じですかね。 




スパロボYとクロスしたことにより、その煽りを受けた人物――山村美紀の登場です。天然のN.I.N.J.Aになってもらいました。
むしろ、彼女をN.I.N.J.AにしたいがためにスパロボYとクロスさせたと言っても過言ではありません。

原作だと美紀は坂柳派ですが、加入タイミングも不明ですし、有栖に心酔した理由が理由ですからね。
勧誘タイミングとその理由次第では、十分に他クラスに転がると見ています。

ひよりはひよりで、普通にクラスの雰囲気とは馴染めないでしょう。あくまでも許容できるだけで。
そういった理由から、やはり初期ならば十分に転がると思います。
あと、クラス雰囲気的に、坂上クラスであればスカウト対象自体が限られるでしょうし。

綾小路は言うまでもありません。散々と本作の中で言及してますので。

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