ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第28話

 神崎の部屋にて。

 桔梗ではなくアズの姿を認めた須藤と外村は、揃って怪訝な表情を浮かべた。まあ、当然ではある。

 それでも、神崎が仲立ちとなって双方を紹介し、その上で事情を説明すれば理解したようではあった。

 

「歓迎会を開くから、会場の確保に奔走中……でござるか。いやはや、櫛田殿であれば納得せざるを得ないでござるな……。そして、櫛田殿の代わりにアズ殿が来られたと……。

 ところでお二方、率直な疑問なのでござるが、お二方のクラスはどうやってそれだけのポイントを稼いだのでござるか?

 いやまあ、ホームルーム中、神崎殿が綾小路殿をスカウトしに現れた際は、驚きはしたものの普通に納得もでき申した。

 されど、移籍費用が一人当たり二千万ポイントと知ってしまえば、また別の疑問が生まれるのも道理でござろう?」

「そうだぜ。しかも、スカウトしたのは綾小路だけじゃねえんだろ? 今の話によると、他の二クラスにもスカウトをかけたそうじゃねえか。

 佐倉の奴は罰則での移動だから外すにしても、え~と、一人二千万だから……三人で六千万か。

 うちのクラスなんか支給ポイントがゼロだし、俺に至っては手持ちもゼロだ。俺は自業自得だから仕方ねえと納得しちゃいるが、入学して一ヶ月でそんだけのポイントを稼いだなんて、到底信じられねえよ」

 

 もっとも、その一方で当然の疑問が寄せられたが。

 

「簡単に言えば、先月、俺たちのクラスは所属生徒が揃って学校側にある質問をした。そして、俺たちは『褒賞と口止めを兼ねたポイント支給』と『退学』の秤にかけられた。結果、全員がポイントを選んだ」

 

 クラスで愛里に行われた説明とは、似ているようで若干違う。具体的に何ポイントもらったのかを、神崎は伝えなかった。伝える必要を認めていないことの表れだ。

 

「なるほど。具体的な方法はともかく、学校側も認める正当な方法で手に入れたポイントである……と」

「そういうことだ。そして、そのことは担任にも共有されていた。だから、茶柱先生も異様なポイントに対して騒がなかっただろう? 綾小路のクラス移籍に顔を顰めてはいたがな」

「……確かに、そうでござるな。騒いでいたのは、()()()()()()()()()()()()()と知った生徒の方でござった」

「アッサリと移籍に同意した綾小路を恨んだり薄情と思うのは、こっちの我儘に過ぎねえんだろうな。ユースチームだって、優れた奴が選ばれる。綾小路は選ばれて、俺たちは選ばれなかった。言ってみりゃあ、それだけの話だ……。

 だが、誰もが誰も俺たちみたいに納得してるわけじゃねえぞ? 特に佐倉の移籍に関してはな。逆恨みしてる奴もいるし、普段は冷静ぶってるメガネの奴も『どうして俺じゃないんだ!?』って荒ぶってた」

「幸村殿でござるな。彼の御仁は、特にDクラスの配属に納得がいってなかったみたいでござるからな。実際、昨日も相当でござった」

 

 神妙な表情で須藤と外村が言った。

 この二人は愛里と綾小路の移籍に関してどうにか折り合いを付けているみたいだが、やはりそういう人物ばかりではないらしい。

 

「その幸村というのは?」

「メガネをかけた、如何にもインテリぶった御仁でござる。実際、頭は良いようで、先の小テストでも難問の一つは解いてござった。

 悪い御仁ではないのでござろうが、頭の良さをひけらかす部分があるのが玉に瑕、と言ったところでござろうか。学力の低い生徒や不真面目な生徒を見下している雰囲気がアリアリと表れているのでござるよ」

 

 説明する外村の言葉には、若干の毒がある。外村もまた、幸村のことを快くは思っていないのだろう。

 

「フン! 頭の良さは認めるが、ヒョロモヤシじゃねーか、あんな奴。俺と真逆で、運動を捨てて勉強に全振りしただけだろ。偉ぶるんなら、その上でそこそこの運動能力を身に着けてからにしろってんだ……!」

 

 一方、須藤も須藤で毒を吐く。武官と文官と対立は、今に始まったことじゃない。それを鑑みれば、須藤の態度にも納得だった。

 

「幸村に関しては分かった。ありがとう。――しかし、逆恨みか……。起こり得るだろうとは思っていたが……。さて、どうするべきか……?」

 

 神崎は頭を悩ませた。綾小路ならどうとでも対処できるだろうが、愛里が狙われるとなればそうも言っていられない。不安の方が増す。

 

「大丈夫だと思うよ、隆二。そもそも、桔梗が生徒のスカウトを提案したのも、根っこには愛里を守る目的があるだろうし」

「うん……? ああ、なるほど。学校側からのネタ晴らしによって、ポイントによる移籍が通達された。これを知ってしまえば、自身の痛手を無しにクラス移籍を果たした佐倉に恨みが向かうのは道理だな。Dクラスは尚更だろう。

 だから、その恨みを緩和するべく、そして矛先を分散させるべく、櫛田は須藤と外村の勉強を見ることを申し出た。二人がDクラス内における劣等生であることに間違いはない。こちらが慈悲の手を差し伸べる道理は立つし、Dクラス内の学力優秀勢が楽になるのも事実だ。

 だがその一方で、同じ劣等生グループからは恨まれるだろうな。理由は告げたし、過去問の可能性も教えたが、それで納得できる奴ばかりでもないだろう。

 それが昨日のことで、それだけでは()()()()と櫛田は判断したわけか。だから今日になって、他クラスからのスカウトを提案した……と」

「たぶんね。言っては何だけど、佐倉の移動は学校側の判断による部分も大きい。あくまでも佐倉を選んだのは学校側で、そこに佐倉の意思は関与していない。

 だけどスカウトとなれば話は別。こちらが話を持ち掛けて、それに『乗るか乗らないか』を本人が示す必要がある。必然、移籍という()()()()()()()()()()には本人の意思が関与している。その分だけ、更に恨みの矛先は分散される。

 ついでに言うと、歓迎会の開催もそう。提案したのは帆波だけど、うちのクラスであれば誰が提案してもおかしくはなかった。だから、敢えて桔梗が提案することもなかった。

 そして他クラスの生徒がスカウトに乗ろうと乗るまいと、どの道歓迎会は提案されていた。だって、佐倉が移籍を果たしているんだから。

 佐倉の性格を考えれば歓迎会を後に回しても不自然じゃないし、ゴールデンウィークという打ってつけの連休があるんだから、()()()()()()()()()となるのは何もおかしなことじゃない。

 ただ、佐倉一人だと、提案しても断られる可能性があったのも事実。だから、それを防ぐために他クラスから生徒をスカウトすることで巻き込んだ。

 桔梗は殊更にファッションショップを推し進めていたでしょ? 佐倉を着飾らせるとも言っている。つまり、桔梗にとってはそれこそが本命だったという証左。

 桔梗曰く、『佐倉はグラビアアイドルの雫』らしいけど、それを聞いて男子陣はどう思う?」

 

 アズによる突然の暴露に、男共は言葉もなかった。しかし、その驚愕の表情が何を言いたいのかを如実に物語っている。

 

「本当でござるか? 佐倉殿が、雫……?」

「マジでか!? あの地味子が!?」

「いや、だが言われてみれば納得だな。俯きがちな姿勢で誤魔化されてはいるが、スタイル自体はかなりいい」

 

 そして、それぞれが感想を零した。半信半疑――と言うよりは『疑』の部分が強い。

 

「ま、そういうことでね。これまで碌に目を向けていなかった地味子が、一転して蝶に羽化したらどう思う? しかも、それがグラビアアイドルの雫。不満があっても抑えるんじゃない? むしろ、逆に掌を返してお近付きになることを狙ってもおかしくはない。――だけど、そういう人は多いだろうし、うちのクラスの生徒だって守ろうとするだろうから、そう容易くはいかない。

 着飾らせるのも、佐倉自身の手持ちでは厳しくても、こっちには『歓迎』という打ってつけの名目がある。スカウトでだいぶ持ってかれたのも事実だけど、それでもまだ余裕があるのも事実。奢ったところで何もおかしくはない。言い訳は立つ」

 

 神崎を襲ったのは畏怖だった。櫛田といいアズといい、一体いつからそこまで考えていたのか。

『一挙両得』、『一石二鳥』……神崎の脳裏に、一つの行動で二つの事柄を成立させる四字熟語が思い浮かんだ。逆に『二兎追うものは一兎も得ず』や『虻蜂取らず』になりかねないのも事実だが、話を聞く限りだと成功の方に転んでいる。

 未だ本命が成功していないのは事実だが、オマケ――他クラスからのスカウトは成功しているのだ。

 

「桔梗は視野狭窄に陥りやすいのが重大な欠点ではあるけど、そこを除けば基本的に優秀なんだよ? ポテンシャルだけなら、下手をすると学校でも一番じゃないかな……?

 桔梗は『承認欲求の化け物』を自称してるけど、アレは伊達で言ってるわけでなければ、自虐で言ってるわけでもない。文字通り、チヤホヤされることに対する熱意が凄まじく、そのためには苦行も厭わない行動力の高さを指し示しているの。

 よく『八方美人は嫌われる』っていうけど、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からでもある。だけどそれは、第三者的に客観視することが出来なければ、当事者が自力で気付くのは難しいのも事実。

 むしろ、()()()()()()()()()()()()()()という一点では、コミュニケーション能力に対する最大級の賛辞と言ってもいい。

 そして桔梗は、中学時代にそれをやり遂げている。正しく八方美人のままで卒業を果たした。

 だけど、その道のりは桔梗に果てしないストレスを与えた。それを反省した桔梗は、高校では限定的ながら自分の意見や立場を明確に表している。『チヤホヤされる』という目的を細分化して、対象に優先順位も付けた。

 結果、八方美人ぶりは中学より劣っているけど、その反面、桔梗のメンタルは凄く安定している。

 同時、決して八方美人を止めたわけではない。事実、入学して一ヶ月にして『人気者』というポジションを確立している。

 そして、中学時代の経験は桔梗に多大なストレスを与えたけど、その一方でこれ以上ないほどの糧にもなっている。正直、高校一年で桔梗ほどのオールラウンダーもそうはいないんじゃないかな……?」

 

 自他共に認める()()()()()――アズ・セインクラウス。その立ち位置故か、彼女の語る桔梗評にはこれ以上ないほどの説得力が含まれていた。

 

「だが、それほどに優秀なのであれば、櫛田は初期Aクラスでも問題なかったのではないか? どうしてBクラスなんだ?」

「断言は出来ないけど、中学時代の桔梗は手を抜くことも相応にあったからじゃないかな? 前述の通り、桔梗は高いポテンシャルを持っている一方で視野狭窄に陥りがちなの。そして、評価してくれる対象に優先順位も付けていなかった。当然、『彼方を立てれば此方が立たぬ』になることも少なくはなかった。だから、桔梗は程々に手を抜くことで対応した。

 また、付き合いで始めた分野に対し、桔梗を誘った当人よりも遥かに短い時間で高レベルで修めることも少なくはなかった。それを素直に表に出しちゃうと、チヤホヤされる以前に嫉妬で嫌われかねないから、そこでも手を抜く必要に迫られた。

 それもまた桔梗のストレスになったんだろうね。普通に考えて、初心者が手を抜かないと勝負にもならない分野で相手に称賛されて、素直に喜べる?」

「それは……難しいだろうな」

 

 称賛される。チヤホヤされる。確かにそれが目的ではあるだろうが、そうして与えられる称賛が労力に見合わなければ価値などあるわけがない。この程度で? 私をバカにしてるのか? そんな感じで、逆に不快になる場合の方が多いだろう。

 

「そして、手を抜いたかどうかなんて本人以外には分かるわけがないのだから、必然として櫛田の評価もそれに準ずる形になったと……」

「だから、この学校の水はこれ以上ないほどに桔梗に合っていると思うよ。自分の頑張りがクラス評価になり、学校と生徒の双方から称賛される土壌があるんだから」

 

 そして、だからこそ余計な変化は望んでいない。アズや神崎は南雲先輩とやらを知らなかったが、桔梗が敵意を露わにするのも道理と思えた。

 

「……と、長話が過ぎちゃったね。取り敢えず、二人は問題集を解いてください」

 

 そもそも、アズは桔梗の代理で来ているのだ。それが本筋とは関係のない話に夢中になって面倒を見なかったとなれば、桔梗がどれほど怒るか分かったものじゃない。

 そんなアズの恐れを感じ取ったのか、須藤と外村は素直に問題集に取り掛かった。

 その間に、アズは立ち上がって冷蔵庫の中を物色した。桔梗の代理ということは、必然的にアズが食事を用意することになるからだ。

 冷蔵庫の中には、いくつかの食材と、小型の鍋に入ったカレーがあった。うどんもある。

 

「そのカレーは、昨日櫛田が作ってくれたものの残りで、食材も櫛田が買ってきた無料品だな」

 

 同じく立ち上がってやってきた神崎が言った。

 

「ふ~ん。このカレーを食べないのはもったいないけど、コレだけじゃ足りない……よね?」

「だな。だからと言って、継ぎ足して今日もカレーがメインになるのは勘弁願いたいのが本音だな。空にしないとならないのは分かっているが、昨夜に今朝とカレー尽くしだ。流石に飽きが来ている。まあ、俺の我儘に過ぎないが……」

 

 振り返って確認するアズに対し、神崎は若干申し訳なさげに伝えた。

 確かに我儘と言えば我儘だが、その気持ちは分からないでもない。毎日食べるのは構わなくても、毎食続くのは勘弁願う。それは当然の願望だ。基本的に、学校の昼食時は山菜定食を毎日食べているアズだが、それが毎食続くとなれば億劫になる。

 

「ま、ある物を使って何かメインになるのを作るとするよ。ただ、所詮はあり物での料理だから、量の方には文句を言わないでね?」

「それはもちろん。作ってもらう身でアレコレと言えるわけがない」

「そっちの二人もいーい?」

「もちろんでござる!」

「食わせてもらえるだけでありがてえよ!」

 

 三者からの了承を得たアズは、早速下拵えに取り掛かるのであった。




桔梗のポテンシャル自体は原作でも相当に高いことが窺えます。
一年生編のガイドブックによると
鈴音が学力A、 知性A-、身体能力B+、協調性E、 判断力B-
平田が学力B、 知性B、 身体能力B、 協調性A-、判断力B+
息吹が学力C、 知性C、 身体能力B、 協調性E、 判断力B-
帆波が学力B+、知性A、 身体能力C、 協調性A-、判断力B
桔梗が学力B、 知性B-、身体能力B、 協調性A、 判断力C+となってます。
いずれも7/1時点の評価であるため、概ね中学時代の総評と思っていいでしょう。
平田と帆波は『Aクラス相当』、『Aクラスに配属予定だった』と記されており、桔梗が『Bクラス相当』なのは些か納得がいきませんが。

特筆すべきは、原作で武道を学んでいたことが明言されている鈴音と伊吹、サッカーに精を出していたことが語られている平田に、桔梗は身体能力で負けず劣らずなんですよね。
他の項目も合わせ、大部分をコミュに費やしているのにこの評価ですから、普通に考えて凄いことかと。
協調性にも努力が結果として表れています。同時、視野の狭窄ぶりが判断力に表れてもいますが。
総じて、原作で本人が自分のことを『優秀』と自負するだけの素養はあるわけです。

で、そんな優秀な人物が、人気者になるべく行動するわけですよ。
いつまでも口先だけで誤魔化せる相手ばかりな筈もないですから、話題を合わせるためにも興味のない事柄にだって取り組む筈です。
そう考えれば、この評価は順当な結果とも思えます。一緒に勉強したり、スポーツしたりもする筈ですからね。
その一方で、過小評価の可能性も否めません。付き合いで手を出した側が、誘った本人より優れた結果を出すことなんて珍しいことではないですし。
そして、桔梗の目的はあくまでも『人気取り』なわけですから、それを素直に表すとも思えないわけです。人は嫉妬と無縁ではいられない以上、嫉妬されないように力を抑える可能性だって普通にあり得ます。
つまり、ガイドブックに載っている桔梗の評価は、力を抑えたものである可能性が否めないわけです。

帆波も帆波で、母子家庭というハンデを抱えていてこの評価ですからね。彼女のポテンシャルも計り知れないものがあります。
一方、ほぼ同等の評価を受けている平田ですが、彼には帆波みたいなハンデもなく、桔梗みたいに『力を抑えた』可能性も見えません。
鈴音は学に追いつくべく、協調性を投げ捨てて多方面で努力してきたことが原作で明言されていますし、それを踏まえればやはり順当な評価と言えます。

そういったアレコレを鑑みた結果、本作における『よう実』原作勢の中で、『才能』や『ポテンシャル』が一番優れているのは桔梗と帆波に設定しています。
ただし、スパロボとクロスしたことにより、スパロボ的な補強がされているキャラもいます。
推測という形でフォルテが語っていますが、山村美紀がその一人ですね。彼女は『N.I.N.J.A』技能の保持者です。ただし、効果は飛影勢の『忍者』技能寄りですが。
他にも、そういう固有スキル保持者は設定されています。分かりやすいところで『天才』とか『極』とかですね。

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