ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第33話

「ゴメン、佐倉。もう一回言ってもらっていい?」

「あ、はい。……敷地内に私のストーカーがいるみたいなんですがどうしましょう?」

 

 頭を押さえながら桔梗が言うと、佐倉もまた素直に答えた。

 それを聞いた者たちの心境は一致した。すなわち、勘違いじゃなかった! 聞き間違いじゃなかった!

 

「いや! アンタ、それならもっと騒ぎ立てなさいよ! ――姫野は聞いてたの!?」

「私だって初耳だっての! そりゃあ、頑なに部屋に入れないな~、とは思ってたけど、『私の部屋の方が充実してて勉強しやすい』って言われれば、それ以上は踏み込めないよ」

 

 愛里に向かって吠え猛った桔梗は、その矛先をユキへと変えた。愛里の人間関係からしておかしなことではない。

 睨まれたユキは、両手を前に出しながらも反論してみせた。愛里がDクラスだったことを踏まえれば、十分に筋は通っている。

 

「フォルテ!?」

「無茶言わないでってば! いくら私がN.I.N.J.Aだからって、一人じゃ限度があるよ!」

 

 それも道理だ。フォルテの場合、優先対象としてアズと清隆がいたのだから尚更だ。

 

「綾小路!?」

「確かにオレは佐倉と同じクラスだったが、割と早期にクラスを見限ったこともあって交流なんて有って無いようなものだ」

 

 それも間違いないだろう。そもそも、どちらも自分から積極的にコミュニケーションを取るような人物ではない。綾小路の場合、必要とあればやるだろうが、逆に言うと、必要がなければやらないだろう。

 ガルル! ガルル! やり場のない怒りに桔梗が吠え猛る。

 

「落ち着いて櫛田さん」

 

 そんな桔梗を、両肩に手を置きながら知恵が宥めた。そのまま、今度は愛里に向けて言葉を続ける。

 

「佐倉さん。貴方を疑うわけじゃないのだけど、何か根拠とか証拠と言えるものはあるのかしら?」

「根拠としては、私の――雫のブログに対するコメントが一つ」

 

 瞬間、僅かに知恵の表情が歪んだ。根拠としては弱いという判断だろう。

 

「そしてここにはありませんが、自室にコメント主――ストーカーからの物と思われる手紙が……」

 

 しかし、続く言葉を聞いた瞬間、その表情は一転した。

 直に内容を確認してみなければ何とも言えないが、この陸の孤島で手紙が届くということ自体、送り主が敷地内にいる証左である。 

 

「先生、ブログのコメント、ありました!」

 

 愛里が根拠にブログのコメントを挙げた瞬間から、自分の端末で該当の書き込みを探していたのだろう。帆波が声を上げた。

 

「見せてもらえる」

 

 言って、知恵が帆波の端末を覗き込んだ。

 帆波の端末が示していたのは、『運命って言葉を信じる? 僕は信じるよ。これからはずっと一緒だね』という書き込みだった。まるで雫の近くにいるのを主張するかのような内容。入学後に限定すれば、数あるコメントの中で、それが一番()()()書き込みだ。

 ファンの行き過ぎた妄想。その一言で片付けることも出来そうな内容だが、似たような内容の書き込みが連日続くとなれば話は別だ。

 

「何これ……。入学直後からこんな……。親しい相手も出来ない内からこんなのが届いたら、周りへの相談なんて出来るわけがない……」

 

 恐怖か、怒りか、知恵の言葉が震えた。

 学校が放任体制を敷いていることもあって、教師への相談も簡単ではないだろう。

 

「ごめんなさい、佐倉さん。コレは私たちの責任でもある。謝って済む問題でもないけど、謝らせて」

 

 言って、知恵は愛里へと頭を下げた。

 

「そんな! 先生の責任じゃないです! 頭を上げてください!」

 

 愛里が頭を上げるように求めるが、知恵は暫くの間下げ続けた。

 

「ごめんなさい、一之瀬さん。予定ではこの後どうなっていたかしら?」

 

 頭を上げた知恵が、端末を帆波に返しつつ問いかけた。

 

「椎名さんの希望もあって、これからはモール内の本屋に向かう予定でしたが……」

「そう……。ごめんなさい、椎名さん。その予定はキャンセルでも構わないかしら?」

「事情が事情ですし、私は構いません」

「ありがとう。――フフ、どこの誰だか分からないけどやってくれるじゃない。当人に自覚があるかどうか分からないけど、この行為は私たちに喧嘩を売っている。なら買ってあげるわよ!」

 

 ひよりへと礼を告げた知恵は、次の瞬間には表情を一転させた。怒っていることが一目で分かる。

 

「まずは、さっきの店舗責任者たちと情報を共有しましょう。一之瀬さん、このアドレスを私の端末に送って。

 これが真に敷地内の人物によるものなら、候補はそれだけで限られる。生徒と教師、そして敷地内の施設で働いているスタッフ。である以上、決して彼らにとっても他人事じゃないわ。

 私が店舗の責任者と話している間、佐倉さんと姫野さん、それからアズちゃんと神崎くん、あとは主賓だけど綾小路くんで、佐倉さんの自室から該当の手紙を持ってきてもらっていいかしら? 一之瀬さんと櫛田さんは他の人たちの面倒をお願い。最短で終わらせて、歓迎会の続きを行いましょう!」

 

 佐倉の精神安定と護衛を慮った面子だろう。短時間で人選を済ませる辺り、担任は伊達ではなかった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 現在地が()()()()ということもあるのだろうが、だからこそ『たかが一店舗の責任者』であっても、孤島内の事柄に対しては強い権限を持っている。『学生生活のオマケ』と見做されがちな各種施設ではあるが、敷地内独自のシステムと強く結びついている以上、決してそんなことはあり得ないのだ。

 先の歓迎会イベントを通し、モールの責任者たちは『佐倉愛里=雫』であることを認識している。である以上、そんな彼女がストーカー被害に遭っていると言われたら、『勘違いだろう』の一言で済ますことなど出来やしない。彼らもまた、『高度育成高等学校』という環境と強く結びついているからだ。

 そして、こんな独特な環境に配置される以上、スタッフもまた相応の調査と教育を受けている。前提として、その上で『問題なし』と判断されたから、敷地内に配置されているのだ。

 である以上、責任者としてはスタッフを信じたいのが本音だが、希望に縋って問題が拡大化してはそれこそ問題だ。そもそも、事前調査とて万全ではないのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()など分かるわけもなく、本人とご対面を果たした際の行動もまた然りである。

 そういう点で、事前調査に引っ掛からなかった可能性は捨てきれないのだ。

 教師である知恵から話を持ち掛けられ、実際に該当サイトの該当箇所を提示されては、尚更協力しないわけにはいかない。

 責任者は、即座に店のシステムから顧客の利用履歴を呼び出し、その上で『高度育成高等学校 サクラアイリ』で検索を掛けた。決済が学生証端末を介して行われる以上、ある程度の個人情報は店側に晒される。少なくとも、『高度育成高等学校の生徒である』点と、『利用者の名前』は確実に晒される。

 

「ここでの生活を始めてから、実際に彼女がストーカーからの手紙を受け取ったのだとすれば、下手人はコレを利用した可能性が高いでしょう。私は、当店舗全体の責任者ですので、モール内全店の取引履歴を引き出すことが出来ますし、実際にそれを利用しましたが、テナントショップの店員でも担当店舗の取引履歴は引き出すことが出来ますので。

 でないと、不良品があったりした場合に対応できなくなってしまいますのでね……」

 

 現時点ではあくまでも可能性でしかないが、それを悪用された可能性は確かに高かった。

 そして、生徒であることと名前さえ分かってしまえば、たとえ部屋番号が分からなくとも、漢字が分からなくとも、ポストに投函すれば郵便局の方で勝手に仕分けてくれる。そういう寸法だ。

 

「佐倉さんは、入学して早々に当モール内のテナントショップである家電量販店でデジカメを購入してますね。あとは服飾店の方で衣類も幾らか。

 実際、それを裏付けるように、その日のうちにオフィシャルブログの方には画像が投稿されています。

 コメントの方も、また同様に……。日を跨いでもいません。コメントの内容とタイミングから見れば、十中八九、近日中に写真が投稿されると見て粘着していたと考えるべきでしょう」

「こちらの写真ですが、僅かに学生寮の一室が映っています。過ごしていくうちに各々の色が出てくることは否めませんが、初期はどの部屋も統一されています」

 

 言って、知恵は高度育成高等学校のホームページに接続し、そこから学生寮案内を引っ張り出した。

 ブログに投稿された写真に写っている室内はほんの僅かだが、注視して見比べると、確かに一致するように思えた。

 

「決まり……ですかな?」

「可能性は高いですが、念のためこちらの方でも確認してみます。……電話をかけても?」

「構いませんよ」

「ありがとうございます」

 

 一礼して、知恵は同僚へと電話を掛けた。一年の学年主任にして自身の友人、かつての同級生でもある真嶋智也に。

 

『星之宮か、何だ?』

「真嶋くん、至急、佐倉愛里さんのポイント利用履歴を調べてほしいの。私は今モールにいるんだけど、ちょっと離れられないから代わりにお願い」

『随分と緊迫しているようだが、何があった?』

「連休突入前、うちって他のクラスからスカウトしてきたでしょ。以前に移籍させられてきた佐倉さんの分も含め、今日はクラス総出で歓迎会を行っていたんだけど、そこで佐倉さんが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを告白してね」

『佐倉愛里にか? 彼女のことは俺も授業で知っているが、到底ストーカーが付くようには思えんのだが……』

「彼女の個人情報の補足を見れば、その疑問もすぐに解決するわよ。ぶっちゃけ、言葉だけじゃ私も信じられないわ」

『まあ、分かった。丁度学校にいたからな。すぐに調べる』

「お願いね。――今、私の同僚に学校の方でも佐倉さんのポイントの利用履歴を追うように頼みました」

 

 通話を切った知恵は、責任者に向き直って言葉を紡いだ。

 

「分かりました。こちらは該当の部分を印刷しているところです」

 

 責任者の言葉に応えるように、片隅に置かれた印刷機がガーガーと音を立てている。

 やがて印刷が終わると、ブログの写真投稿日、及びストーカーからのものと思しきコメント投稿日と合致する日付のものへ、マーカーでチェックを入れていく。

 結果、コメントが投稿されているのは、高確率で愛里がモールを利用した日だということが分かった。一番最初だけは家電量販店や服飾店を利用しているが、以降はスーパーを利用している。買っているのは、主に無料食品だ。

 

「最初に散財してしまった結果でしょうな。いや、微笑ましい」

「この時期の風物詩でもありますね」

 

 状況を考えると決して微笑ましくはないのだが、ずっと気を張り詰めてもいられない。

 ほっと一息ついていると、知恵の端末が連続で音を鳴らした。次いで、電話の着信音。真嶋からだった。

 

「はい」

『星之宮か? 今しがた、俺が調べた範囲での利用履歴をお前の端末に送った。そして、佐倉のストーカー被害にも納得がいった。よもや、あんな地味な子がグラビアアイドルだとはな……。女性の変貌具合をまざまざと見せつけられた気分だよ。

 生徒のストーカー被害となれば、学校側としても黙ってはいられない。お前は今モールにいるんだったな?』

「うん。責任者に説明して、事情を理解してもらって、今は佐倉さんのポイント利用履歴と雫のオフィシャルブログとの照会をしているところ」

『分かった。そちらは引き続き頼む。理事長へは俺の方から報告する。……俺たちに喧嘩を売ったらどうなるか、犯人に思い知らせてやるぞ』

「もちろん。私もそのつもりだよ。むしろ、関係者全員がそうなんじゃないかな?」

『違いない。ではな』

 

 そうして通話が切れた。

 真嶋から送られてきた履歴も合わせて照会を続けるが、そちらの方は目ぼしい成果はなかった。自販機やらコンビニやらでもポイントを利用している。決してケヤキモールだけではない。だが、気味の悪いコメントとも、写真の投稿とも、独立して一致する日付はないのだ。合致する日付はあったとしても、同時にモールでもポイントが利用されている。

 しかし。

 だからこそ。

 

「確定ですな」

「……はい。十中八九、ストーカーはモールの従業員でしょう。一番可能性が高いのは、家電量販店のスタッフですかね?」

「でしょうな。タイミングがタイミングです。新しく衣服を買ったところで何らおかしくはないですし、然るにブログへの投稿と結び付けるのは無理があります。たとえ、佐倉さんと雫を結び付けたとしてもです。

 ですが家電量販店のスタッフなら、佐倉さんがデジカメを買ったことを把握していれば、佐倉さんと雫を結び付けることが出来れば、投稿を予想することは不可能ではありません。――運に左右される部分が大きいのは事実ですがね」

 

 それもまた事実だった。諸々の要素から鑑みて筋が通るだけであり、現実的には無理筋であることは否めない。

 これが現実に起こったのだとしたら、下手人はどれだけ運がいいのか。そして、愛里はどれだけ運が悪いのか。そういう話になってしまう。

 だが、『事実は小説よりも奇なり』と言う。運次第では十分に起こり得るのだから、ある意味では現実味が高い。 

 アズたちが戻ってきたのはそんな時だった。その表情は、誰もが険しい。無表情がデフォルトの綾小路ですら、僅かに顔を歪めていた。

 その疑問も、差し出された手紙を見れば氷解した。どれもがレターケースに入っており、宛先には『高度育成高等学校 サクラアイリ様』。差出人の名前はない。ストーカーにも一端の危機感があった証左だろうが、問題なのはその数だ。

 

「一……五……十。一……五……十。……一……五……」

 

 その総数、合わせて三十通近く。愛里が入学して一ヶ月が経ったばかりな現状を鑑みれば、間違いなく異常だ。ほぼ一日一通のペースで送られていたことになる。

 愛里に一言断り、中身も確認する。ブログへのコメント同様、気持ち悪い内容が羅列されていた。

 せっかくの新天地でコレだ。愛里が受けた精神的被害は如何ほどのものか、知恵には想像もできない。

 

「コレは……酷いですな。正直に言って見るに堪えない。こんな物を連日送られていたとは……佐倉さん、心中お察しします。

 そして申し訳ない。確証はありませんが、調べたところ、十中八九、当モールの従業員が犯人です。当モールの責任者として、謝罪いたします」

 

 モールの責任者が愛里に頭を下げる横で、知恵は憤慨していた。

 

「ったく、寮管は一体何をやってんのよ!? 普通に疑問を持ちなさいよ!」

 

 口からは寮の管理人に対しての不満が洩れているが、道理と言えば道理であった。

 寮生への手紙はないわけではないが、『外部連絡の禁止』を謳う以上、連日届くものでもない。である以上、大抵は敷地内の店舗からのダイレクトメールか、そうでなくても敷地内の住人が差し出したことは確定だ。

 そして、手紙の類は管理人の元へ一括して送られ、そこから管理人が仕分けしていく形になる。負担はあるが、仕分けの対象は一年生だけだし、そもそもの土壌として手紙が届きにくい。

 その上で、こんな物が連日で特定の生徒に送られてくれば、中身が分からなくても疑問に思って然りであり、報告があって然りである。

 再度、知恵は真嶋に対して電話した。

 

「ああ、真嶋くん? 寮の方から、報告が送られてきたりしてる? 

 今、佐倉さんに送られてたっていう()()()()()()()()()()を確認してるんだけど、凄いわよ。全部がレターケースに入れられてるんだけど、数だけで三十通近くある。レターケースのデザインは日によってまちまちだけど、書かれているのは共通して宛先だけ。差出人の名前はない。中身も凄くて、ブログのコメント以上に気持ち悪い。

 正直、たとえ中身が分からなくても、コレを見逃していたっていうんなら、寮管の仕事ぶりに疑問を持たずにはいられないんだけど……」

 

 嫌悪を露わに、知恵が口を開いた。

 ブログによっては、特定のキーワードを弾く様に設定されていることも少なくはない。一方で、現実の手紙にそんな機能はない。誰かが間に入って内容を添削するなら話は別だろうが……。

 だからこそ、場合によっては寮管への怒りも尚更に増すだろう。

 

『少し待て。確認する』

 

 端的な答えがあり、それから暫し。

 

『あったぞ。スマンな。対処済みの方にあったために発見が遅れた。

 寮の方からは、確かに報告が上がっている。『特定の生徒に対し、連日差出人不明の手紙が届いている。今は該当生徒に届けているが、このままの対応でいいか指示を求む』……とあるな。

 それに対し、『様子見をするため現状維持』と返答されている。返答者は……なに?』

「真嶋くん?」

『いや、返答者に驚いてな。返答をしたのは二年生の南雲雅だ。確かに生徒に関する事柄であるため、生徒会役員である彼には返答する権限があるが……。だが、俺の元にはそんな報告は届いていない』

「は? ちょっと、どういうことよそれ? そりゃ生徒会役員である彼には権限があるでしょうけど、同時に報告の義務があるでしょうが! 誰にも報告を入れてないの?」

『いや、書類によると、当時の担任である茶柱に報告を入れた旨が記載されている』

「佐枝ちゃんに? で、佐枝ちゃんからは?」

『言ったろう? そんな報告はない』

「何やってんのよ、佐枝ちゃんは!?」

 

 怒りの余り、知恵は思わず通話を切ってしまった。このまま端末を床に叩きつけたい衝動に襲われる――が、どうにか耐えた。

 

「星之宮先生?」

 

 手紙を渡してそのまま同席していた神崎が、怪訝そうな眼差しを知恵に寄越す。それを受け、知恵はどうにか平静を装いつつ、今しがた仕入れた情報を語った。

 瞬間、部屋を静寂が支配した。一行を襲ったのは、呆れか、それとも怒りか。

 

「一応、茶柱の擁護も出来なくはないが、それもタイミング次第だな」

 

 そんな中、綾小路が口を開いた。教師を呼び捨てにしているが、それに対する言及はなかった。むしろ、内容の方を重視された。

 

「と言うと?」

「お前たちに訴えられたことでバタバタしていた時期の可能性もある、ということだ」 

「あ~……」

 

 実際、Dクラスの生徒に対する罰則は思いの外に紛糾した。連日会議も開かれた。それとタイミングが重なったのであれば、茶柱から真嶋への報告がなかったことに対して理解は示せる。

 言い忘れなんて、特段珍しいことではない。教師だって人間なのだから、ミスは普通に起こり得る。そして茶柱は、ミスを起こすことが多いから、Dクラスの担任でもあるのだ。生徒同様に、教師もまた学校からの評価によって初期クラスが決められている面があるのは否めない。

 ぶっちゃけた話、茶柱は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()部分がある。一般的な外の学校であれば、とっくに『教師失格』の烙印を捺されているだろう。

 まあ、そういった面が、逆に『高度育成高等学校の教師として相応しい』と言われたなら、否定することも出来ないのだが。

 さておき。

 教師陣に対応する余裕がなかったから、南雲が気を利かせて対応した。そう考えた方が無理はない。だが、如何に権限があったところで、一生徒に過ぎない南雲では得られる情報にも限りがある。結果、無難に『現状維持』を選択した。そして、南雲から茶柱へは報告がされているので、本来ならそこで終わりとなる――筈だった。

 無論、今のところは推測に過ぎないが、時期的なタイミングとして考えられるのがそこしかないのも事実である。

 予期せぬ場所で、何ともまた厄介な問題が湧き起こった瞬間だった。

 

「取り敢えず、当座のところはこちらにお任せを。量販店の責任者にも通達した上で絞り込みをかけます。

 今日は生徒の皆さんの歓迎会なのでしょう? こんな事態になって楽しめるかも分かりませんが、次にいつ行えるか分からないのも事実です。せっかくの機会を逃さないのも、ここで生活する上では大切なことです」

「では、申し訳ありませんがお言葉に甘えさせて頂きます。あとはよろしくお願いします。学年主任である真嶋智也には既に伝えておりますし、理事長には彼の方から伝えておくとのことでした」

 

 店舗の責任者からそう言われては、知恵としては引き下がるより他にない。善意の申し出ではあるし、これ以上は、たとえ該当生徒の担任とはいえ、一教師でしかない知恵の職分を超えることになるのも事実だ。

 

「ああ、佐倉さん? 不躾な質問ではありますが、下手人について、佐倉さんの方に今以上の心当たりはありませんか?」

「……誹謗中傷になっちゃうかもしれないけど、デジカメを買ったときに担当してくれた店員さんが気持ち悪かったかな。――すみません。素だと上手く喋れるか分からないんで、コレで……」

 

 雫として返事をした愛里は、言葉遣いからして普段とは違う様相をまざまざと見せつけたのであった。 




原作は生徒目線が優先されるので仕方ないのかもしれませんが、だとしても『ストーカー問題』がアッサリと流され過ぎな気がします。
発覚してしまえば、学校側にとっては校内暴力よりも重要度は高いでしょう。
校内暴力は、言ってしまえば学校の管理下にあるわけですが、『ストーカー問題』は犯人の立ち位置次第では学校の管理下には置ききれないわけですから。
まあ、『高度育成高等学校』という『一つのシステム』・『一つの環境』の管理下には置けるんでしょうけども、教師や生徒会の判断だけで対処できる問題でもありません。必然、モールや病院など、学校以外の施設責任者だって巻き込むことになるでしょう。

なので、軽めにそこら辺をピックアップしてみました。
原作で、愛里が学校側に何の相談もしなかった、出来なかった事情、愛里の元にストーカーからの手紙が届いた仕組み、手紙を届けることが出来ることが出来るのに、その上で尚もストーカーが愛里の個人情報を知ろうとした理由なんかも考えてみました。
個人的には無理のない範囲で整合性が取れたかと思います。

また、生徒の個人事情に関しては、基本的には担任にのみ『補足事項』として通達される設定としています。愛里=雫であることや、恵がイジメを受けていたこと、帆波が長期間の欠席をしたことなどですね。
同時、教師や生徒会役員などの『権限を有する者』であれば、調べようと思えば調べることも可能としています。

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