ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~ 作:山上真
『自分の作品の文法やらについて』という題です。
興味があればご一読ください。
「さて、どうしよっか?」
取り敢えず木陰に避難した星之宮クラスは、緊急の首脳会議を開いた。
何かしら試験が行われるだろうとは思っていたが、肝心要のルールが分からない以上、細部まで詰めることは出来ない。
とはいえ、『無人島』という環境で行われることは分かっていたのだから、
「ある意味、『陣取り合戦』ではあるか……。想定外だったのは、初期エリアすら
「ルール上、どこかしらのスポットを占有しないと、ベースキャンプを構えることすら出来なくなっちゃうからね……」
「ベースキャンプとして設定したスポットの占有を更新し続けることは『暗黙の了解』なんだろうが、だからこそ、候補が多いに越したことはない。
何せ、一度定めたベースキャンプの変更は
「とはいえ、余り悠長にもしてられない。時間をかければかけるほど、他のクラスも動き出して候補地がどんどんと減っていくことになる……。
早い話、この試験では『二律背反の両立』を図らなければならないわけだ。いやはや、何ともシンドイね……」
当座の結論を見出した神崎と帆波は、揃って溜息を吐く。
なお、アズ、桔梗、綾小路の三人は、生徒会に所属したのを機に、こと『試験』に対する話し合いでは積極的に意見を述べないことにしている。述べるにしても、可能な限り
これに関しては、他の首脳陣の同意も取り付けている。
「まあ、このような事情を鑑みると、うちのクラスでリーダーに相応しい人物なんぞ限られている。極論を言えば二人しかおらず、安牌を取るなら一人しかいない。――というわけで、頼んだぞ、忍者」
「はいはい、了解。ま、この試験内容ならそうなるよねえ~」
神崎から言葉を向けられたフォルテは、肩をすくめて気楽に答えた。
スポットを占有する上で重要なのは、他の人物に気付かれないことだ。たとえ相手の目の前で占有したとて、
フォルテの身体能力の高さはクラス内で周知の事実である。普段の体育の授業で極端に手を抜くことはないし、他クラスに伝わっていてもおかしくはない。その時点で、リーダーの候補に名前が挙がる可能性は否めない。
しかしその一方で、フォルテがN.I.N.J.Aである事実までは拡散していないのだ。いや、流石に『N.I.N.J.A』、『N.I.N.J.A』言っていることはバレているだろうが、普通に考えれば冗談としか受け取られない筈だ。
つまり、
更に、真嶋クラスに対しては
「んじゃ、美紀ちゃんもついてきてね」
「了解です。でも、あまり飛ばされるとついていけませんよ?」
「分かってる、分かってる。その点は気を付けるよ」
念のため、アズから知恵へと話してもらい、その上でリーダーをフォルテに指名する。無論のこと、他クラスに対する牽制だ。
そしてアズから
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「率直に言って、他クラスと組むのが最善だと思う。そうすると、候補は自動的にDクラスしかあり得ないわけだが……」
「戸塚くんと山内くんの退学で、うちのクラスだけ極端な一強状態になっちゃったからねえ~。
オマケに、CPのマイナスを食らったことで真嶋クラスは坂上クラスと僅差になった。それだけに互いに潰し合う可能性もないわけではないけど、それ以上に手を組んで私たちを潰そうとする可能性の方が高いよね?」
「そう考える方が無難だろう。これが正当な試験である以上、葛城だって俺たちへの攻撃を躊躇いはすまい。
だからこそ、俺たちが組めるとすればDクラスしかない。山内の退学で、Dクラスは再びCPがゼロへと帰したからな。『最小限のダメージで済ませた』と言えばそうなんだろうが、それだけにこの試験で無理を主張する生徒が現れないとは限らんだろう。『収入の増加』がDクラスにとって喫緊の課題であるのが間違いない以上、冷静にモノを考えられる反対派がいたとて、どこまで抑えられるかは分からん」
「だからこそ
「まあ、そんなところだろう。今回の試験テーマは『自由』らしいからな。最初から他クラスとの協力に取り組んだとて、学校側も文句は言えまい」
取り敢えず、方針は決まった。あとはDクラスに話を持ち掛けるだけだ。
「はい皆、注目~く! 今回の試験、うちのクラスはDクラスと協力して乗り越える方針にしました! ついては、これからDクラスとの交渉に行ってきます。そこで、女子から二名、同行をお願いします。なお、男子の方は神崎くんと綾小路くんで確定です」
パンパンと手を打ち鳴らして帆波が言った。
「普通にアズと櫛田でいいんじゃね? 要は向こうを乗り気にさせるための説得力が欲しいんだろ? 実力的にも知名度的にも、その二人で決まりだろ」
「そうとも言えないだろう。うちのクラスには元Dクラスの佐倉もいる。彼女がうちのクラスに移籍した原因を考慮すれば、彼女ほど向こうの良心を刺激する人物はいないだろう」
「それだと、弱みに付け込む部分が多くなりすぎる可能性がないか? 余計な反感を買ってしまっては元も子もないと思うが……」
「白波と網倉はどうだ? 一之瀬との仲の良さなら、その二人がダントツだろ」
あーだこーだと意見が提示される。
その光景は、正直に言って帆波の想定外だった。彼女自身、最初に挙がった意見のように、アズと桔梗で決まりだと思っていたからだ。
しかし、確かに愛里の名前が挙がるのも頷ける話であった。
クラス代表である帆波との親密度を鑑みれば、千尋と麻子の名前が挙がるのも。
重視する部分によっては、確かにどれもこれも一定の筋が通るのだ。
「時間もないので、私の方で決めさせてもらいます。今回は佐倉さんと姫野さんに同行をお願いします。基本、一緒にいてくれるだけで構いません。
確かに、佐倉さんを同行させれば向こうの良心を刺激する可能性はありますが、その一方で良心の呵責を打ち消せる可能性もあります。佐倉さん自身が同行することで、『私は気にしていませんよ』と暗に示すことに繋がると思うんです」
「一理あるな。これで佐倉が同行しなければ、『私は貴方たちを恨んでいます』と捉えられる可能性もあるだろう。『被害妄想』と言ってしまえばそれまでだが、Dクラスだって問題児ばかりではない筈だし、一端の良心を持つ人物だっている筈だ。そういう人物ほど、苦しんでいる可能性は捨てきれない」
結果、愛里とユキの同行が確定した。
「なんで私が……」
ユキはガックリと肩を落としていたが、それでも同行を拒まない当たり、最低限の納得をしていることは明らかだった。
そもそも、クラス内で愛里と最も仲がいいのはユキである。
♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢
「茶柱クラスの皆さ~ん! 交渉に来たんですけど、今いいですかあ~?」
未だに炎天下の砂浜で喧々囂々と議論している茶柱クラスに対し、帆波は声を張り上げることで自己主張した。正直、そうでもしなければ気付いてもらえない可能性があったからだ。
「あら? 一之瀬さんに神崎くんと綾小路くん、それから佐倉さんと姫野さん……だっけ?」
辟易としながらも状況を改善する機会を狙っていた千秋が、帆波の声に真っ先に反応した。
千秋はユキ本人と直に対面したことはない――あったとしても、通り過ぎる程度が精々だろう――が、モールのポスターで目にしたことはある。恰好や雰囲気は異なれど、愛里=雫とツーショットをしているのだから、自然と印象に残る。ポスターに興味を惹かれて印字されているクラスと名前を確認すれば尚更だ。
その一方、あくまでも『愛里のオマケ』的な部分があるのも事実であり、それだけ記憶を引き出すのにも時間はかかる。
「ああ、うん。姫野ユキ。――会ったことはない……よな? なのに私の名前を知ってるってことは、やっぱポスターの影響か?」
「ま、そうだね。遅ればせながら、私は松下千秋。綾小路くん主導の試験計画の被験者でもあるから、彼と同じクラスの貴方とはこれから顔を会わせる機会も増えるかもしれないね?」
「ああ、あのけったいな……。まあ、アイツの立場と能力を鑑みれば、そこまで不思議でもないんだが……」
千秋とのやり取りで、ユキは頷いた。
ユキ自身はそこまで試験計画について知っているわけではないが、生徒会から正式に発表されたのは事実だし、そうでなくても綾小路は同じクラスだ。
愛里との繋がりで自分自身も偶に勉強を見てもらっていることもあるので尚更だ。少なくとも、そんなことをやってもおかしくないほどには、綾小路が頭脳明晰であると同時に馬鹿であることは理解している。そうでなければ、帆波に対し真正面から『ハーレムに入ってくれ』なんて言わない。『馬鹿と天才は紙一重』と言われるが、あの時ほどそれを実感したことはないだろう。
見ず知らずの第三者に自分の名前と顔が知られていることに対し、ユキはゲンナリとした態度を隠しきれない。もっとも、それによってメリットを得ているのも事実なため、『必要経費』と受け止めるしかないのだが……。
「……と、脱線しちゃったね。交渉ってことだけど?」
「うん、そう。今回の試験テーマは『自由』でしょ? だから、そちらさえ良ければ、私たちはそちらと協力体制を取って試験に臨みたいの。
ところで、話の本題に入る前に、せめて木陰に場所を移さない? 長くなるかもしれないし、少なくとも延々と直射日光の降り注ぐ砂浜で話し合うことでもないと思うの」
「それもそうだね。――皆~、木陰に移動しよ~! お話の内容次第では、収入が増えるかもしれないよ~!」
よく言ってくれた! 内心の歓喜を隠しつつ、千秋はクラスメイトに声をかけて移動を促した。
普通に考えれば、
かといって、下手に自分から促せば反発を受けかねない。根本的に、
その上で各々に『バランス感覚』の違いがあり、それ故に喧々囂々とやり合っているのが実情だ。DクラスがDクラスたる所以である。
だがそこに、異なる要素が加われば話は別となる。
「いやぁ、正直に言って助かったわ……」
木陰への移動中、千秋は心から安堵の息を吐いた。
「苦労しているな、お前も……」
島に着くまでの船上での会話で、神崎もそれとなく千秋の状況を知ったのだ。それ故に『苦労人』としてのシンパシーが働き、より一層の感情移入を果たしていた。まあ、『セクハラ』と捉えられかねない恐れがあるため、
「で、話の本題だけど、今回の試験、うちのクラスは貴方たちのクラスと協力して臨みたいの。当然、理由はいくつかある」
そう前置きして、帆波は話を持ち掛けるに至った理由を語った。
山内の退学に触れたことで顔を顰めた面々もいたが、それを選択したのは他ならぬDクラス自身だ。その一点で食って掛かることはなかった。食って掛かろうとした生徒もいたが、千秋や鈴音、平田たちに睨まれて引き下がらざるを得なかった。
山内の退学は、
だからこそ、普段は温厚な平田も、山内の退学を警鐘としない生徒には怒りを隠さない。隠せない。隠さなくなった。
せめて山内の退学に価値を見出すことこそが、彼への謝罪であり感謝であると、平田は本気で思っているからだ。
「こちらは物資を購入してそちらに提供する。まあ、中には共同利用せざるを得ない部分もあるだろうけどね。何せ、300ポイントっていう上限があるから。――そちらは代価として労働力を提供する。
スポットの占有に関してはこちらに一任させてもらう。ただし、ベースキャンプ用に提供したエリアに関してのみ話は異なる。そちらは占有によるボーナスはベースキャンプに指定した分を除いて得られなくなるけど、リーダーを見破られる危険性も減る。
占有したスポットエリアに対しては共同利用とし、互いにリーダー当ては行わない。
どう? そちらにも十分にメリットは思うんだけど?」
帆波の提案に、千秋と鈴音、平田は顔を見合わせて頷いた。
デメリットもあるが、十分にメリットもある。むしろメリットの方が大きい。冷静にモノを考えられる面子にとって、同意しない理由はなかった。
なお、クラスの意見は聞かない。そんなことをすれば、また喧々囂々とした意見のぶつかり合いになることは目に見えているからだ。本来ならそれにも歓迎する、できる側面はあるのだが、感情が先に立つ面々には話が異なる。この炎天下で、これ以上
こうして、本特別試験における星之宮クラスと茶柱クラスの同盟が結ばれたのだった。
実力が伴わない段階での極端な一強状態は星之宮クラスとしても困るため、『今回はCPを得られなくても構わない』というのが、星之宮クラスの根底にあります。
『優秀』ということは、そう評価する者からは期待を受けますし、立場を追う者からは敵意や憎悪を向けられますからね。
そして、それらは須らく重荷――『精神的負担』へと繋がります。適度であればモチベーションへの転化も叶うでしょうが、過度であれば文字通りに『負担』でしかありません。
CPはあくまでも『クラスとしての評価』に過ぎないため、個人としては能力的に分不相応な者もいなくはないでしょう。
序盤からCPを稼ぎに稼いでの『先行逃げ切り』も一つの方針としてはありでしょうが、未だ不足している情報の方が多い状況でそれを掲げて実行しようとするのは、よほどの楽天家でないとあり得ないでしょう。必然、星之宮クラスでは取られません。
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