ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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今更ですが、現在進行形の会話は「」。回想での会話は『』を使用してます。
通信越しの会話だったりすると、片方は「」で相手は『』ですね。


第65話

「うおおおぉぉぉ……っ!」

「おおおおぉぉぉ……っ!」

「負けるかよおおおぉぉ……っ!」

「こっちだってなあああぁぁ……っ!」

「女だからって舐めんなあああぁぁ……っ!」

 

 砂浜を雄叫びを上げて一部の生徒が走っていた。柴田颯、平田洋介、須藤健、三宅明人、小野寺かや乃の運動部生徒たちだ。

 きっかけは柴田が平田を誘ったことだった。

 

『走ろうぜ、平田。俺たちは運動部だ。だったらよ、誰に迷惑を掛けるでもねえ『無人島』っていうこの好環境を、精一杯に利用し尽くしてやろうじゃねえか! 運動部が体を鍛えなくて何とするってな!』

『柴田くん……。嬉しいお誘いだけど、僕は……』

『行ってきなよ、平田くん。留守番役くらい、私たちでも出来るからさ』

『てか、平田くんはもう少し我儘になっていいと思うな。こんな時くらい、クラスのことよりサッカーを優先していいと思う』

『そうそう。平田くんがサッカーの試合でレギュラーに選ばれて活躍すれば、巡り巡って「クラスの利」になるでしょ? その点で他の子たちには文句を言わせないからさ』

 

 柴田の誘いを断ろうとした平田に対し、間髪入れずに恵たちが畳みかけた。数の暴力もあるが、曲がりなりにも『彼女』からの申し出が含まれていたのも大きかったのだろう。

 

『そう、かな……? それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね』

 

 そう言って、平田は柴田の誘いに乗った。

 確かに平田は利他的な人物であるが、決してそれだけの人物ではない。そもそも、完全無欠に利他的な人物であれば、自発的に部活動に入部するわけがないのだ。しかし、自己紹介の時点で平田はサッカー部への入部を表明していた。

 つまり、それこそが平田の『利己性』の証明と言える。平田には、確かにサッカーに懸ける『何か』があるのだ。

 そして、そんなお題目で大々的に誘いをかければ、他にも刺激を受ける運動部がいて然り。

 斯くして、『サッカー部』の柴田と平田、『バスケ部』の須藤、『弓道部』の三宅、『水泳部』のかや乃による、『身体訓練』の名を借りたデッドヒートが繰り広げられることになったのだった。

 砂浜を走っているのは、水泳部のかや乃が参加していることも大きい。ここにはボールも弓矢もない。必然、球技部と弓道部の男共に向けた訓練は限られる。だが、海がある以上、水泳はその限りではない。

 結果、走っては休憩を挿んで泳ぎ、泳いでは休憩を挿んで走るというローテーションが組まれることになったのだ。

 無論、『クラスの仕事』という、やるべきことはやった上での話だ。そもそもにして、二クラスの人数を合わせれば八十人近くいるのだから人手は十分。『一つの仕事』に割かれる人数は少なくなるが、『過不足ない人数』が割かれているとも言える。である以上、()()()()()()は生まれて然りだ。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「おー、やってるやってる。結構結構! ――んじゃ、私たちもやろっか」

「別にいいけどさ。加減はするけど、ちょっとくらいの怪我は覚悟してよね。寸止めだけじゃ、訓練にならないからさ」

 

 別の一角では、運動部のデッドヒートを見て気分を盛り上げた桔梗が、アズへと向き直った。

 二人が行おうとしているのは『戦闘訓練』である。『訓練』と『暴力』の境界をどこに置くか? という問題はあるが、試験のルールで禁じられているのは『他クラスの生徒への暴力行為』だ。逆に言えば、『同じクラスの生徒への暴力は許容する』とも受け取れる。

 元はアズが孤児院で叩き込まれた技術であり、『武器術』と『無手術』両面の攻防技術が多く盛り込まれている。それ故に『システマ』が原型とされているが、真偽は不明である。

 ぶっちゃけた話、一般的な学生の身である二人としては、攻撃手段として選べるのは『無手術』が大半だ。

 

「上等! こっちだって、いつまでも負けっぱなしじゃいられないってね!」

 

 桔梗は凶悪な笑みを浮かべ、自分から積極的に仕掛けた。エッジから最低限には教わっているが、この学校に入学して()()()()()を実感したのだ。となれば、エッジがいない以上、あとはアズから教わるしかない。

 

「って、何その走り方!?」

 

 接近する桔梗に備えながらも、アズは思わずツッコミを入れていた。桔梗の走り方が、如何にも『忍者』を彷彿とさせるポーズなのだ。

 

「普通にやったってアンタには勝てないからね! 必要と思えば何だって取り入れるわよ! 幸い、教材には事欠かないしね!」

 

 言う間にも接近を果たした桔梗は、その勢いのままに上段回し蹴りを繰り出した。

 走行ポーズには意表を突かれたものの、アズとて棒立ちで受けるほど間抜けではない。見事な見切りで躱したアズは、流れのままに裏拳を叩き込もうとする。

 対する桔梗は、躱されたことを察した瞬間、追撃が来ると判断。ステップと回転を合わせて距離を取った。

 

「へえ? 今のを躱すんだ?」

「ったり前でしょうが。外れたことを理解して、それでも踏みとどまるほどトーシロじゃないっての。むしろ、そんなんだったらエッジさんから及第点をもらえる筈ないでしょうに……」

 

 学校の敷地内には監視カメラがわんさかと設置されていることもあり、訓練するにも限度があった。監視カメラの無い場所でやればいいとか、そんな単純な問題ではない。戦闘訓練である以上、どれだけ気を付けようと怪我は付き物。である以上、可能な限り安全性を高めるのは必須である。

 しかし、一生徒に過ぎない二人にはそれが出来なかった。生徒会役員になった後なら出来なくはなかったが、今度はそれをするだけの時間的余裕がなかった。

 だから、実のところ双方が知っていることなど限られている。

 それでも、その情報の『密度』においては、桔梗に軍配が上がっていると言えるだろう。

 桔梗はエッジから基礎を教わったが故に、アズの実力にも『エッジと同等以上』というある程度の目途を付けることが出来る。上限はともかく、下限を付けられるだけでも大きく違う。

 だが、一方のアズにはそれがない。あるのは『エッジさんから及第点は与えられた』という桔梗の自己申告のみ。

 自身の境遇と桔梗の境遇の差異を鑑みれば、これだけで絞り込むのは不可能に近い。()()()()()()()()()()()()()()()()()を知るのはエッジのみなのだから。これでは下限の目安を付けるのも一苦労だ。

 

「と言うか、さっきの攻撃、殺意高くない?」

 

 紛うことなき本音であった。上段回し蹴りなどされた日には、頭部狙い一直線である。

 

「アンタなら躱せるでしょ? 現に躱したし。てか、アンタは小柄すぎるから、意図して下段でも狙わない限り、どんな攻撃だって殺意は高くなるわよ。――その一方で、小柄さ故に攻撃は当てにくいし……」

「クッ……。この高身長が……!」

 

 悔し気に表情を歪めてアズは悪態を吐いた。実際問題桔梗の言う通りで、身長140cm台のアズと150cm台の桔梗では、それだけ狙いやすい『高さ』が異なる。

 アズは桔梗のボディを狙いやすい=その分だけ面積が広くなり、攻撃を当てやすい。

 一方の桔梗がアズに仕掛ける場合、普通にやれば頭部近くが狙いやすいのだ。身長差ばかりは如何ともしがたい。

 だがそれは、一撃の危険性が高まる反面、狙える面積が狭くなり、攻撃を当てにくいことに繋がる。

 

「ちょっとギア上げてくよ……!」

 

 今度はアズから仕掛けた。言うと同時に眼光鋭く睨み付け、それに合わせて闘気を飛ばす。

 世間一般では半ば『オカルト』扱いされている気功だが、それは単に現在の科学や理論・理屈では証明しきれていないだけだ。

 アズが『AZ』と名付けられた所以。ギフテッドである証。その中には、先天的に『気功』の利用法を理解していた部分も含まれる。

 他人に説明することは可能だが、それだけでは相手が真似することなど出来ない。

 その点についてはN.I.N.J.Aと同じだ。N.I.N.J.Aが特有にして固有の神経細胞を持ち、それを介して潜在能力を引き出しているように、アズもまた固有にして特有のチャンネルを開いて潜在能力を引き出していると言える。

 言わば、この『チャンネル』が『N.I.N.J.A細胞』ということになる。

 古今東西、『超常的な力』というものは枚挙に暇がない。『気功』、『霊力』、『魔力』、『神通力』、『妖力』……それらが()()()()()()()()かすら分かっていないのが、現在の常識であり限界なのだ。

 

「ウグ……ッ!?」

 

 瞬間、桔梗は身体全体に重圧を感じた。重い。訳の分からないモノに全身を絡め捕られている。

 

(物理的影響力を齎すほどのプレッシャー!? 理屈は分かんないけど、重圧だってんなら撥ね退ければいいだけの話でしょうが!)

 

 これまでのコミュニケーションの中で、桔梗はいわゆる『サブカル知識』も豊富に収めている。その中には『殺気を飛ばして相手に重圧をかけ、それによって拘束する』なんて類の業は珍しくもなかった。作品によって『剣気』だの『殺気』だの『闘気』だの『魔力』だのと表現は異なるが、端的に言えば先の一言に集約される。

 それを現実にやって見せる時点で理屈はサッパリだが、『事実は小説よりも奇なり』と言う。逆に言えば、『創作物で登場した技が現実で使われてもおかしくはない』ということになる。それは同時、『解除法もまた創作物に沿う』ことに繋がる。

 

「アアアァァ……ッ!」

 

 だからこそ、桔梗はその『負けん気』で以てアズの『闘気』を弾き飛ばした。自他共に認める『承認欲求の怪物』の『負けん気』は、並大抵ではないのである。

 パァン! 闘気と負けん気のぶつかり合いは、盛大な音と化して現実に影響を齎した。

 

「マジで!? それを弾くの!?」

 

 その事実に驚くアズだが、その一方で納得してもいた。桔梗の『負けん気』はアズもよく知っている。桔梗であれば撥ね退けても不思議はない。――それでも、実際にやられれば驚かずにはいられなかったが。

 そして、心情がどうあれ、すでに動き出した身体はそう簡単には止められない。

 いわゆる『連携攻撃』と定義した技の欠点だ。一連の流れが『一つの技』として成立しているからこそ、そう簡単には本人でも身体を止めることが出来ないのである。無理をすれば止められなくはないが、それはそれで負担が大きい。

 

「ハッ……! 私の『負けん気』を甘く見るなっての! アンタならよく知ってんでしょうが!」

 

 闘気を弾き飛ばすことに成功した桔梗だが、取れる行動は多くない。刹那の判断で、回避でも防御でもなく逆撃を選択した。立ち向かわずして、勝てる道理などありはしないのだから。

 

「無茶苦茶だよ!」

「『天才』ってのは無茶苦茶なもんなのよ!」

 

 掌打と掌打がぶつかり合う。

 大抵の場合、二人は拳を握らない。拳を握ることでパンチの威力は高くなるが、根本問題、アズも桔梗も華奢な少女なのである。拳を握ったところで威力の程は高が知れている。

 であるならば、『弾き』、『捌き』、『引っ掛け』など、『次の行動』に繋げられる『掌』を重視するのは理に適っている。

 パン! パン! パン! パン! ……アズによる怒涛の攻めを、桔梗はひたすらに()()()()続ける。

 

(ウザい……ッ! 初撃はともかく、以後は弾きと捌きで手一杯だ。このままじゃ圧しきられる……ッ!)

(堅い……ッ! 桔梗ってこんなに守りが堅かった……? このままじゃ圧しきれない……ッ!)

 

 二人の少女の真逆の心情は、『分け』として表出した。互いの『弱気』が、『次の攻撃』への流れを絶ってしまったのである。

 瞬間、両者は同時にそれを認識。刹那の逡巡の末、次に先手を取ったのは桔梗だった。

 先の攻防では掌を用いた桔梗だが、それは守りに回ったが故のこと。むしろ、彼女の本分は『足』と『蹴り』にある。

 

「フッ……!」

 

 ()()()()の乗った蹴りが繰り出される。咄嗟に防御したアズだったが、体格差もあって吹き飛ばされた。――いや、自ら後方に吹き飛んだ部分もある。

 それもあり、アズは割かし早く体勢を立て直した。

 

「ちょ、マジで!?」

 

 それを見て驚愕の声を上げたのは桔梗だ。先程のアズと一緒である。連携を意識した攻撃だからこそ、動き出した身体は急には止まれない。桔梗にしてみれば起死回生を期していたので尚更だ。

 特に、桔梗は既に追撃の飛び蹴り状態になっている。尚更に如何ともしがたい。

 

「焦りすぎたね!」

 

 先の攻防において桔梗は逆撃を選択したが、アズまでそれに倣う必要はない。

 悠々と身体を翻したアズの横を、桔梗の身体が通り過ぎていく。端から見れば、何とも間抜けなシーンだろう。

 無論、アズにしてみれば黙って見送る理由はない。即座に後を追って、体勢の整わない桔梗へと攻撃を繰り出した。

 

「……参った。降参。私の負け」

 

 眼前で寸止めされて、それでも己が敗北を認められないほど桔梗は矮小ではない。おとなしく両手を上げて降参宣言をしたのであった。

 

「あーもう! 悔しいいいぃぃ……ッ! 今日こそは一矢報いれると思ったのにいいいぃぃ……ッ!」

 

 それはそれとして、決して悔しさを覚えないわけではない。敗北を認めればこそ、桔梗は地団太を踏むのであった。

 

(やっぱり、この学校は桔梗にとっていい刺激になってるんだろうな……。桔梗は覚えてないみたいだけど、さっきの攻防の中、桔梗は自らを『天才』と称した。――これまで、頑なに自身を戒めてきた桔梗がだ。

 桔梗が自分を認めるのは『努力の成果』に対してのみだった。己が才を認めることはあったけど、精々が『秀才』止まりだった。――そんな桔梗が、自身を『天才』と称した。『天才』と認めた。

 それはつまり、桔梗が無意識的にだろうけど()()()()()()()()()が外れかけていることを意味している。さっきの発言は無意識だったみたいだけど、意識的に認められるようになった場合、桔梗が『天才』性を取り戻した場合、果たしてどこまで化けるんだろうな……?

 私にも追いついてくれるかな……? 追いついて、追い越してほしいな……)

 

 地団太を踏む桔梗を見ながら、アズは微笑を浮かべるのであった。




冒頭はせっかくの無人島ということで、運動部には無人島らしい訓練で汗を流してもらいました。
平田と柴田のプレイスタイルって、『ブルーロック』だと誰になるんだろうか? とか考えてます。
須藤は『黒子のバスケ』だと青峰かな? とか。

スパロボクロスということで戦闘描写を入れてみました。『よう実』でも戦闘はありますしね。
桔梗の戦闘モデルはトウマ――雷鳳ですね。
アズはフォルカ――ヤルダバオト(神化)ですね。
本来、アズの場合は『ヒュッケバイン30』をモデルにするべきなんでしょうけど、武器がありませんので。
そこに『るろうに剣心』を混ぜてみたりしました。はい、『居竦みの術』です。
率直に言って戦闘描写は難しいですが、楽しんでもらえれば幸いです。
スパロボで攻撃を外した時のシュールさも表現してみました。

桔梗のモデルを雷鳳にしたのは学繋がりでもあります。
アズが南雲に付き合わされている間、桔梗は桔梗で学から合気道や空手を教わっています。
そのため、空手繋がりでトウマ――雷鳳がモデルになりました。
また、雷鳳をモデルにするなら忍者走りは欠かせません。そこはフォルテから教わりました。
そのうち、トウマ繋がりでアクセルの技も使わせるかもしれません。アクセルって生身でソウルゲインの技を使えるんだから恐ろしいですよね。

今回の描写でお分かりと思いますが、活動報告で記載した桔梗の封印されている技能は『天才』です。原作の描写でも、それだけの素養はあるように感じました。
本作では、『かつての敗北』を機に自身の『天才性』に疑問を抱いたが故に長らく封印されてます。
ただ、自分を負かしたのが『N.I.N.J.A』の池だったことが判明した結果、『かつての敗北』に疑念が浮かんだわけですね。
そうして疑念が浮かんだことにより、封印が解けかけているわけです。
まあ、幼少期の桔梗は『天才』ということで経験値効率が良かったり、行動にバフがかかったりしていたわけですが、本人としては一般的な生活をしているだけで、特に潜在能力を引き出しているわけでもなかったので。
本人に自覚はなかったにせよ、N.I.N.J.A故の特殊な訓練を訓練を積んでいた池とは土台からして違うのは事実です。
その点で言えば、桔梗が勝敗に疑念を抱いても無理はありません。

身体能力だけとはいえ、そんな『天才』にそれほどの敗北感を与えるんだから、『N.I.N.J.A』の恐ろしさは底が知れません。
なお、エースボーナスを獲得した場合、池もキッチリと『N.I.N.J.Aマスター』に変化します。
本作ではそれだけの素養はあります。どうやってエースボーナスを獲得するのかは分かりませんが。

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