ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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感想が来ない……。お気に入りが減る……。低評価が付く……。最近はこの三重苦ですよ。
やっぱり、展開を変えすぎると受け入れられにくいんですかね?

ただ、二次創作って『IF』を描くのが醍醐味だとも思ってるので、余りに原作沿い過ぎるのも、それはそれで違和感があったり……。
大枠は変わらずとも、細かい部分では影響や変化があって然りだと思いますし……。
それを描こうとすれば、説得力を持たせようとすれば、主人公周りだけにスポットを当ててもいられないですし……。
で、本文だけだと描写しきれないから後書きに補足を入れているわけですが、それが逆に感想を減らす要因になってたりもするんでしょうね。
そうは思っても、根本にあるのが『筆者の解釈』ですからね。補足を入れないと、どうにも不安と言うか、同じようなツッコミばかりが来ることになりそうで……。

『理想』と『現実』のこの落差よ……。



第79話:『優待者』の法則と戦況分析②

「するってーと、Dクラスは平田が正式に起ったってことですか?」

「そういうことになるな。……確かに、Dクラスの顔触れの中じゃあ、以前から平田は有名ではあった。――だがその一方で、『脅威足り得ねえ』と俺は認識していた。

 何故か? ()()()()だったからさ。『みんな仲良く』は結構なことだが、そのお題目を実現化させるためにクラスに()()を掛けることもしねえ。あくまでもアイツ個人が()()()()()()()()足ろうとしていた。

 普通に考えて無理難題さ。それでも、クラスの顔触れ次第では可能だったろうが……。現実はどうだ? 初月からクラス評価をゼロに落とす有様だ。そこで方針転換するならまだしも、尚もそのスタンスを続けた。その結果が、山内とかいうクラスメイトの退学だ。

 まあ、だからこそ、平田が決起するというのなら納得のいくタイミングではある」

 

 宛がわれた自室で、龍園はルームメイト――石崎、金田、アルベルトと話をしていた。

 まあ、石崎以外は辰グループでもあるので、専ら石崎への情報共有が目的だ。

 

「その脇を堀北女史と松下女史が固めているようですね。

 堀北女史はDクラスの生徒の中では『文武両道』で通っています。学力も身体能力も高いです。反面、人付き合いに難があるとのことですが、単に()()()()()()基準が高すぎるのでしょう。自身の能力も高水準ですし、あの生徒会長が実兄のようですからな。それを思えば、特段おかしなことではありません。

 松下女史は軽井沢女史のグループに所属しておりますが、正直に言って実力は松下女史の方が上ですな。平田氏同様、単純な能力だけで見れば全体的に高水準で纏まっている様です。初月はグループに合わせて素行不良な面も些か見られたようですが、学校の実態が公表された五月以降はめっきりと改善されています」

「能力が高い。頼られるし慕われるけど、疎まれる。おかしなことじゃない」

 

 金田が鈴音と千秋に対する補足を述べれば、アルベルトがそれに続いた。

 

「あ~、出る杭は突かれるとか言いますし、松下が手抜きを図ってもおかしくはありませんか……」

「ま、そうだな。――だがなあ、石崎。正しくは『出る杭は打たれる』だ。普段からもっと勉強しとけや……」

 

 石崎の言葉に龍園は同意を示しつつも、呆れを隠さずにツッコんで溜息を吐いた。

 

「す、すみません、龍園さん!」

 

 それを受け、石崎は勢いよく頭を下げる。

 

「で、各クラスが『三グループ分の解答権を得る』ことで同意をしたと……。ちょっとよく分かんねえんですけど……。解答権って『優待者』とそのクラスメイト以外、基本的に全員が持ってるもんじゃねえんですか?」

()()()と考えるから分からなくなっているのだと思います。単純に『グループの方針を決められる』と考えればいいかと……。裏切るも裏切らないも、権利を得たクラスの自由ということです。

 確かに、『生徒の自主性』を言い出したら問題があるのは否めませんが、根底に『クラス』が付き纏うのも事実です。である以上、クラスを優先して己を曲げるのも、曲げさせるのも、時として必要です」

 

 首を傾げる石崎に金田が答えた。

 

「学校の思惑とは異なるかもしれねえが、平田が『Dクラスの代表』として話を持ち掛けてきた時点で、他クラスもまた『代表』として対応せざるを得なくなったんだよ。――()()()としての意見であれば、こっちも()()()()()を答えるだけで済んだんだがな……」

 

 龍園が肩をすくめて続けた。

 

「星之宮クラス、たぶん、『優待者』見つけた」

「え? 『優待者』ってまだ通達されてませんよね?」

「はい。明日の午前八時に学校から通達される予定です」

「これは試験だ。四つあるクラスの生徒を、学校側が十二のグループに振り分けた。んで、辰グループの人選を見りゃあ分かるが、間違いなく担任の意向が大きく絡んでいる。ここまできて『優待者』がランダムなんてあり得ねえよ。各クラスから選出された『優待者』は三人で、必ず何らかの法則によって振り分けられている。

 そのヒントが坂柳だ。星之宮クラスの奴、会議室に備え付けのホワイトボードに、これ見よがしに坂柳の名前だけを書いてやがった。裏を返せば、辰グループの『優待者』は坂柳ってことだ。

 つまり、『私たちはもう「優待者の法則」を見付けたよ。そっちはどうなのかな?』……と、一之瀬の奴は笑顔の裏で俺たちを挑発していたのさ。全く以てムカつくが、だからこそ潰し甲斐があるってもんだ」

 

 怒りを露わにしつつ、龍園は不敵な笑みを浮かべた。

 

「だからこそ、こっちも延々と考えているわけですが……」

「個人個人のデキの悪さじゃあ、うちのクラスも茶柱クラスを嗤えねえってことだ。指示したことはやるが、指示がなけりゃあ大した働きなんざ出来やしねえ。何だって金田と真鍋グループ以外、誰もメモ取ってねえんだよ……。普通、グループメンバーぐらいメモ取るだろうが……」

 

 龍園はガックリと肩を落として深々と溜息を吐いた。

 

「いや、そういう龍園氏もメモを取ってませんけどね」

「俺は同じグループのお前がメモを取ってるからいいんだよ」

 

 呆れ気味に金田がツッコミを入れれば、龍園は悪びれもせずに答えた。まあ、間違いではない。

 

「現実問題、コレじゃあ坂柳の奴を『優待者』だと仮定したところで、法則を見付けるのには無理がある。

 星之宮クラスが既に法則を発見しているだろうこと、無人島試験で星之宮クラスと茶柱クラスが共闘した事実を踏まえれば、『クラスの王』としては平田の提案に乗るしか道はねえよ」

「その点は坂柳女史も同じでしょう。『天才』と名高き彼女のことです。或いは既に法則を見付けていたとしても不思議はありませんので、尚更苛立ちがありましょうな」

「んん……? 金田の言葉が正しけりゃ、坂柳も法則を発見しているんですよね? だったら、坂柳が提案に乗る必要はねえんじゃねえですか?」

 

 石崎が不思議そうに訊ねた。

 

「お前の疑問は尤もだが、現実的に考えりゃあ坂柳は提案に乗るしかねえんだよ。でなきゃ、一方的に潰されるからな。一矢報いることは可能でも、被害の方がデカくなるのは間違いねえ。

 何故か? クラス内の支持基盤で考えれば、坂柳は下から数えた方が早えからだよ。クラス代表としての実力と、個人の支持率はイコールじゃねえ。真嶋クラスの場合、ただでさえ葛城派と中立派もいるからな。坂柳の支持率は、良くて1/3を上回る程度だ。

 それぞれのクラスの代表を支持率で並べると、一之瀬≧平田>俺>坂柳ってことになるだろうよ。

 平田は確かに『クラス代表』としては起ったばかりだが、それまではクラス内の調停に積極的に動いていたんだ。当然、それだけ人気も支持率も高えだろ。

 アイツが、『このグループの「優待者」は誰々だから学校側に答えてほしい』と言えば、従う奴の方がクラス内には多いだろうさ。根拠があれば尚のことだ。

 俺はやり方が()()()()の『恐怖政治』だ。しかし、このクラスで起っているのは俺しかいねえ。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()状況が出来上がる。

 また、前回の無人島試験でクラスメイトには良い目を見せてやったから、多少なりと状況はマシになってるだろうさ。

 それに比べて坂柳はどうだ? 圧倒的に支持基盤が少ねえんだよ。グループが学校側の人選である以上、全てのグループに坂柳の派閥が振り分けられている可能性は低い。

 当然、他の派閥だって自分たちのクラスのことだ。可能な限り坂柳に協力しようとはするだろう。しかしな、それで『坂柳の一人勝ち』になるのは困るのさ。坂柳の天才性は認めても、独裁を認める気なんかねえからだ。特に、葛城派はそれが顕著だろう。

 オマケに、今回の試験は()()()に配慮されている。直接的に自分たちのダメージにならねえんなら、他のクラスに華を持たせようとしてもおかしくはねえ。

 そんな状況で立ち向かえるか? 出来ねえだろう? そんな状況で立ち向かう奴がいるとしたら、そんなのはただの馬鹿だ。

 まあ、『馬鹿と天才は紙一重』って言うからな。クラスが完全に己の支配下に入ったなら、坂柳もそんな馬鹿をやらかすかもしれねえが、流石に現状ではやらねえだろうさ。――いや、『出来ねえ』って言うべきだな」

 

 流石に口上が長過ぎたのか、龍園はドリンクを飲んで喉を潤した。

 

「平田の提案に乗らない場合、俺たちと真嶋クラスは、手を組んだ星之宮クラスと茶柱クラスから一方的に攻められる。星之宮クラスと茶柱クラスが互いの『優待者』を当てれば、直接的なダメージはねえ。その上で、茶柱クラスに俺たちと真嶋クラスの『優待者』を全員当てられればどうなるよ?」

「いや、でもそれってあり得るんですか? そもそも星之宮クラスは()()()()()()()を嫌ったから、無人島試験では茶柱クラスと手を組んで、一方的なポイント負担を買って出たんですよね? だってのに、ここでそんな真似をするのは辻褄が合わねえんじゃないですか?」

「ところが、無人島試験の開始時とは状況が違うんですよ。……理由はどうあれ、無人島試験で星之宮クラスは茶柱クラスに恩を売りました。その上で、再び茶柱クラスが星之宮クラスの差し出した手を掴んだとします。

 確かに、それによって星之宮クラスは一強常態になりますが、その下は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()3()0()0()C()P()()()()茶柱クラスと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()-()1()5()0()C()P()()()()()()()()()()真嶋クラスと坂上クラスが並ぶわけです。

 当然、真嶋クラスと坂上クラスの怒りは直接的にダメージを齎した茶柱クラスの方に多く向かうでしょうし、茶柱クラス――と言うより平田氏は、星之宮クラスから受けた恩も相俟って、壁として立ち塞がるでしょうな。たとえ茶柱クラスが壁として機能するのが僅かな間であっても、星之宮クラスはその期間、悠々と過ごすことが出来るのです」

 

 龍園の言葉に石崎が異を唱えれば、金田が分かりやすく説明した。あくまでも可能性でしかないが、決して否定しきれない可能性だった。

 

「分かるだろ? 俺たちも坂柳も、平田の提案を受け入れざるを得なかったんだよ。――或いは、平田もまた『クラス代表』として起ったが故の提案かもしれねえな。今しがた金田が言った可能性は、平田としても望ましくなかった可能性がある。

 だが、本音がそうだとしても、俺たちが提案を断れば潔く星之宮クラスと手を結んでいただろうな。そう考えれば、平田の奴も実に強かじゃねえか。クックックッ……! ハーハッハッハッハッ……!」

 

 龍園はご機嫌に呵々大笑した。

 それを見て、金田とアルベルトは肩をすくめる。龍園の実力は認めるが、こういうところは付き合いきれない。純粋に目を輝かせる石崎とは違うという自負があった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「……よかったのか? 平田からの提案を呑んで」

 

 階段に葛城、有栖、藍が腰掛けていた。

 今しがたの会談結果を交えてゆっくりと話し合いたくとも、話し合うための場所がない。ラウンジが使えなくはないが、平田たちがラウンジに向かうのが見えた。話の内容次第では他クラスが一緒でも構わないだろうが、今回はそういうわけにはいかない。それ故の階段だった。

 

「仕方ありません。呑まねば潰されてしまいますからね……」

 

 葛城の質問に有栖は答え、溜息を吐いた。

 

「正直、こちらとしてはそこがよくわからないのですがね。坂柳有栖、貴方には何が見えているのです?」

「今回の試験、先生は『シンキング能力を問う』と言っていましたね? それは決して間違っているわけではありません。ですが、『クラスの勝利』を求めようとすれば、途端に統率力や人望、団結力といった組織力が絡んできます。無論、根底に個々の能力があるのは大前提ですけどね。

 学校側からの『優待者』の通達は明日の午前八時ですが、今時点でも『優待者』を見つけ出すことは出来るのですよ。少なくとも、自分の所属するグループであれば、()()()までは絞り込むことが出来ます。

 そこから先に進めるかや他のグループに関しては、それこそ運や組織力が絡んできます」

 

 有栖はそう前置きして、『優待者の法則』について二人に語った。

 

「むぅ……。星之宮クラスが使っていた会議室のホワイトボード。そこにただ一人書かれていたお前の名前。何か意図があるとは思っていたが、そういうことだったか……」

「正直、私たちが訪ねた時点では、話の内容がどうなるかまでは分かっていなかったでしょう。しかしながら、『脅しにはなる――かもしれない』と判断した。

 機能すればそれで是。しないならしないでそれもまた是。その判断の元、星之宮クラスは保険としてこれ見よがしに私の名前を書いた」

「過度な一強状態を忌避する星之宮クラスにとって、今回の試験は相性が悪いですからね。順当に考えて、各クラスの『優待者』は三人です。

 クラスの地力に不安があるのはどこも同じでしょうし、裏切られ、当てられる()()なら許容範囲としても、躍進するクラス次第ではそうも言っていられません。

 それを防ごうとすれば、自分たちから積極的に裏切りを行って牽制する必要があります」

「しかし、それはそれで()()()()()()が難しくなるか……。そもそも、他クラスの行動次第で途端に計算が崩れかねん」

 

 今回の試験、星之宮クラスにしてみれば、()()()()()()が必要不可欠だったのだ。そこに三人の意見は一致した。

 

「そんな折に齎されたのが平田くんからの提案です。しかも、彼は『茶柱クラスの統率者』として、同じく『各クラスの統率者』との同時会談を求めました。私然り龍園くん然り、同じく『クラスを率いる立場』にある者としては無下にも出来ません。提案に対する返答はともかく、話し合いに参加することは必要不可欠でした。

 そうして訪れた先――星之宮クラスがレンタルしていた会議室で待ち受けていたのがあの光景です。余りにもこれ見よがしに私の名前が書いてあるんです。当然、平田くんたちや龍園くんたちも訝しんだことでしょう。

 そこに持ち出されたのが、平田くんからのあの提案です。正直、『渡りに船』ではありましたね。あの時点で既に、星之宮クラスと手を結んだクラスの勝ちが確定したに等しい状況でしたから」

「平田の目的は、順当に考えて『どこかのクラスの一人勝ち』を防ぐことか?」

「まあ、そんなところでしょうね。今までが今まででしたから、統率者として起ったとはいえ、自身の統率力に自信がなかったのも一因としてはあるでしょうが……。

 だからこそ、統率者として意見することで、他クラスの統率者の自尊心をくすぐった……。

 それにより、どのクラスも一人勝ちをすることは出来なくなりましたが、一人勝ちを許すこともなくなりました。落としどころとしては十分でしょう」

 

 肩をすくめて有栖は言った。

 

「解答権を得たグループの選択基準はどう思います?」

「さて……? 既に法則を見つけ出していたなら裏切りも視野に入れて選択したでしょうが、平田くんは法則を見付けていないことを明言していましたからね。その上で、『CPの低い順に選ばせてほしい』と譲歩を求めてきました。

 情けないと言えば情けない行動ですが、妥当と言えば妥当でもあります。これまた、それぞれの自尊心をくすぐってきたんですよ。

 そも、どれだけ高い実力があろうと、狭量では人はついていきませんからね。強者としての自負と自信がある者こそ、時として()()()()()を示すことが必要になります。

 ともすれば()()を買う恐れを許容してまで、平田くんが真っ先に選んだグループがあります。人選を見れば納得ではありますが、おそらく平田くんの目的は『そのグループの解答権を得ること』だったんでしょう。たぶん、それ以外はオマケですよ」

 

 有栖の言葉に、葛城と藍はそれぞれの記憶を漁り、メモ帳をめくった。

 

「……なるほど。高円寺の所属グループの解答権を真っ先に得ることが目的だったか……」

「高円寺六助の唯我独尊振りは有名ですからね。暴走を織り込むなら当然の判断と言えるでしょう。高円寺六助の所属グループの解答権を他クラスが得て、それで高円寺六助が暴走した場合、どのクラスにも損しかありません。高円寺六助がおとなしくペナルティを受け入れるビジョンも思い浮かびませんしね。

 契約という盾はありますが、普段の態度を見ていると、それもどこまで機能するか……」

 

 葛城と藍は納得したように頷いた。

 

「そして、龍園が真っ先に選んだのは辰グループか……」

「まあ、これ見よがしでしたからね。法則が分かっていたにせよしないにせよ、()()()()()で選ぶ可能性は十分にあるでしょう」

 

 そして龍園の選択にも納得した。

 

「まあ、そんなところです。

 結果として、どのクラスも裏切り可能な余地を残す一方、①、②のいずれかを求めるしかなくなったグループもあります」

 

 真嶋クラスは元々が優等生の集められたクラスである。メモ取りなどもキチンと行われていたし、情報を持ち寄った上で法則が分かれば、全てのグループの『優待者』を求めることは容易い。

 

「大丈夫だとは思いますが、特に葛城くんは自派閥の引き締めをお願いしますよ? 戸塚くんの例もあります。これで暴走でも起こされたら、ある意味で彼以上の()()()()を味わう破目になりますからね。

 現状は私がクラスを率いている以上、私も責め苦を負わせないわけにはいかなくなります」

「……分かっている」

「坂柳有栖、私には期待しないでくださいよ? そも『中立派閥』なんて言われてますが、その実は派閥でも何でもなく、『その他大勢』に過ぎないんですから……」

「分かっていますよ。――さて。時間も遅いし戻るとしましょうか」

 

 反論はなく、三人はそれぞれの自室へと戻っていくのだった。




今回は龍園たちと有栖たちです。

クラスメイト個々人のデキって部分では、坂上クラスも茶柱クラスと大差ないと思います。
龍園が事前にメモ取りを指示すればキチンと従った面子は多いでしょうが、指示がないなら普通にやらないでしょう。龍園自身、そんなことを指示するとも思えませんし。
その結果、本作の龍園は情報不足に困らされることになりました。
むしろ、『それぞれのグループの正確なメンバーが分からない』という点では、原作も同じだったんじゃないですかね?
メンバーが元々交流あったり関心あったりする人物ばかりでなければ、メモを取らない限り覚えてられるもんでもないでしょう。
事前説明だと、単にプリントに書かれた物を見せられただけだから尚更です。

割と卑劣な印象を持たれがちな真鍋志保ですが、実際にはそこまででもないと思うんですよね。
『ごく普通にルールと人道とスペックをある程度尊重する一般的な人間』だと個人的には思ってます。
恵に対しても、最初は横暴な振る舞いに対する謝罪を求めただけですし。
むしろ、この時点では『友人思い』、『善良』とすら受け取れます。
加えて、恵の態度を見て『こりゃ駄目だ。話が通じない』とアッサリと見切りを付けず、執拗に謝罪を求めた点を考慮すると、恵を『不良品』ではなく『人間』として扱っていたのは間違いありません。
グループリーダーとしてのプライドがあったのも否定はできないでしょうが、それもまた人間らしいと言えます。
原作での龍園失脚後の振る舞いも、『自身にある程度の自負と自信があればこそ』と受け取ることも可能です。
結局、誰かが龍園の代わりにクラスを率いらなければならないのは確かですし、実際に自分のグループを構築している志保が成り代わろうとするのは自然とすら言えます。
だからこそ、そんな彼女やそのグループメンバーであれば、坂上クラス内では比較的真面目な方だと思います。メモ取りくらい、言われずにやってもおかしくはありません。

また、本作の龍園は確かに『暴君』寄りではありますが、原作ほどではありません。
間違いなく原作以上にはクラスメイトに受け入れられています。

一方の有栖たち。
その人間性や戸塚を見れば首を傾げたくなる部分があるのは間違いないですが、初期Aクラスだけあってスペック的には優秀な人材が揃っていますからね。
言われずとも普通にメモ取りはするでしょうし、例え派閥が分かれていても、『クラスの勝利』のために情報提供までは協力するでしょう。
しかし、あくまでも『クラスの勝利』であって、『有栖の勝利』ではありません。
この時点での有栖の台頭は、葛城が派閥員であった戸塚に足を掬われたのが最大の要因です。
原作と違って、本作の葛城は別に失策続きというわけではありません。必然、有栖の支持力や統制力は、原作での彼女の初登場時とは比べ物にならないほど低いです。何でもかんでも言うことを聞かせられるわけではありません。

そも、結果論ではありますが、二年生編の『無人島』に有栖を参加させるなら、一年生編でも参加させて然るべきですし、干支試験も同様です。
原作の干支試験に有栖が参加していたなら、当然ですが異なる流れと結果になったでしょう。

そういった解釈を前提に置いた展開ですね。

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