ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第86話:『実力者』とは、『狂人』であり『破壊者』である。

「ねえ、龍園くん。いい加減、サッサと裏切ってくれませんか? 正直、このグループの裏切りによる損害は織り込み済みなわけですし、無駄に時間を拘束されるのは勘弁願いたいのですが?」

 

 干支試験二日目。

 本日二度目の龍グループのディスカッションにて、有栖が龍園に懇願した。

 

「そう言うなよ、坂柳。俺はお前の困り顔が見れて満足なんだからよ」

 

 それに対し、龍園は嗤って返す。

 

「まったく……。こんなにも可愛い女の子が懇願しているというのに、龍園くんは何て非道なんでしょう!」

「可愛い……? まあ、容姿に関しちゃ否定する気はねえが、性格は程遠いだろ。お前ほどイイ性格をしてる女も――この学校には結構いたな」

 

 有栖の軽口に龍園もまた軽口を返そうとして、室内を見渡して真顔で頷いた。むしろ、このグループの女子はそんなのばかりである。

 

「ちょっと龍園くん。今の間は何かな~?」

 

 ニッコリ笑顔で帆波が問いかける。笑顔は最大の攻撃手段だ。

 

「ハッ! 自分自身で心当たりがあるからこその、その反応なんじゃねえか?」

 

 しかし龍園も負けてはいない。ニヤニヤとした笑みを浮かべながら帆波を見返した。

 

「流石に、この面子と同列視されるのは勘弁願いたいのですがね、龍園翔」

「抜かせよ。いちいち人の名前をフルネームで呼ぶなんざ、十分にイイ性格をしている証拠だ」

 

 続いて藍が不満を返すが、龍園は意にも介しない。

 

「そこで我関せずとばかりに百合ってる二人は言うまでもねえな」

 

 実際、百合ってる二人は龍園の言葉を意にも介さなかった。桔梗はアズの髪を弄っては髪型を変えているし、アズはお返しとばかりにネイルアートを施していた。十中八九、桔梗の髪が短くて弄れないからだろう。

 これがまともに『話し合い』を行う空間であれば二人も真面目に向き合っていただろうが、既に『優待者』を導き出すための法則は見付かっているのだ。その上で、クラス間契約により、このグループの方針を決める決定権は坂上クラス――龍園にある。これでは『話し合い』を行う意味がない。

 

「ちょっと~、二人ばっかり仲良くしてズルくない? 私も混ぜてよ~」

「お! 帆波も混ざる?」

「じゃあ、帆波はそこ座って。帆波の髪は私が弄ってあげるよ」

「わ~い!」

 

 龍園の言葉はシカトした桔梗とアズだったが、帆波の言葉にはキチンと反応を返した。

 

「やっぱり、ここは定番のツインテールかなぁ……?」

「やってやって!」

 

 アズが呟くと、帆波は前のめりに頷いた。

 自身がツインテールなのもあるだろう。アズは慣れた手つきで帆波の髪を弄り、その髪型は見る間にストレートから形を変えていく。

 

「へっへ~! アズとお揃いだあ~!」

 

 帆波は満面の笑みを浮かべ、アズと桔梗も含め自身の端末で自撮りした。

 

「チッ! 私も髪を伸ばそっかな……」

 

 舌打ちした桔梗は、僅かに不貞腐れた様子で自身の髪を人差し指でクルクルと弄った。

 それを見て、鈴音が行動を起こした。

 

「ねえ、アズさん。よければ私の髪もお揃いにしてくれないかしら?」

「あ、私もお願~い!」

「別にいいけど……」

 

 鈴音がアズに頼むと、すかさずに千秋が便乗した。この二人、桔梗を揶揄う気満々である。

 若干戸惑いながらも、アズはそれを了承した。

 

「はっ!? 乗るしかありません! このビッグウェーブに! ということで、私もお願いします。アズ・セインクラウス」

 

 ついには、そんなことを宣って藍までもが便乗した。

 何だかんだ、頼まれたら断れないのがアズである。

 結局、アズは鈴音、千秋、藍もツインテールにした。藍は長さ的に厳しかったが、ギリギリ何とかなった。

 

「ありがとう、アズさん。ついでだから、一緒に写真もいいかしら? あ、もちろん桔梗さんを蔑ろにしたりなんてしないわよ。一緒に写りましょう?」

「このアマ。良い度胸してんじゃねえか……」

 

 ニッコリ笑顔で鈴音が言う。桔梗もまた笑顔だったが、その言葉は取り繕えていなかった。この面子を前にして態度を取り繕う意味もないのが大きいが。

 その調子で、髪形を変えた面々は随時アズと桔梗と一緒に自撮りを行っていった。毎回桔梗も含まれる分、()()()()()()()()()()を誰もが理解している証拠である。反面、『間に挟まれる自分だけ髪型が違う』という事実に桔梗はダメージを負った。

 たかが髪型。されど髪型である。

 

「むぅ……。私の髪の長さだと流石にツインテールは無理ですからね。そこはかとなく疎外感が……」

 

 それを見て、何気に有栖もダメージを受けていた。――しかし、ただでは転ばないのが有栖である。

 

「櫛田さん、ここは一つ、私たちも協力体制を取りませんか?」

「ふ~ん。面白いじゃん、乗った!」

 

 有栖の提案を、桔梗は笑みを浮かべて了承する。

 今度は桔梗と有栖がツインテール勢を挟んで順に自撮りを行っていく。断ろうと思えば容易に断れるが、如何せん、有栖には『先天性心疾患』という明確な弱点がある。この場の女子たちは、その事実を前にして()()()()()を断るほど狭量な人物ではなかった。

 そんな折だった。この場にいる全員の端末が一斉に音を奏でる。メールの通知音だ。

 全員がメールを確認する。それは龍グループの試験の終了を告げるものだった。

 当然の如く、全員の視線が龍園を向いた。

 

「いや、正直な。コレを毎回見せられるのはキチイわ……」

 

 心底からゲンナリとした様子で龍園が告げる。

 百合にも一定の理解を示す龍園だが、それは手の届かぬ場所の景色だからこそ許容できる部分がある。そのことを、ここに来て初めて龍園は自覚した。

 流石に同じ室内で、しかも人数が増えると、雰囲気と合わせて厳しいものがあったのだ。女性陣にしてみれば『友人同士の戯れであり百合ではない』のかもしれないが、そんなのは知ったことではない。男子にしてみれば百合にしか見えないのだ。こうも目の前でキャッキャウフフとされては、精神的にクるのは否めなかった。

 特に、男性陣の方は女性陣ほど吹っ切れない。クラスの垣根を超えて仲よくしようにも限度があった。平然と受け止められているのは平田とアルベルトぐらいである。

 

「今ばかりはお前に感謝しよう、龍園」

 

 自クラスの『優待者』――有栖に対して裏切りを行われたにも拘らず、真顔で龍園に対して礼を言う辺り、葛城も結構な精神的ダメージを負っている証左だろう。

 

「ああ。しかし、我ながら思わぬ弱点が知れたぜ。よもや、こんな光景でこれほどまでにダメージを食うとはな……。

 耐性を付けるためにも、澪と志保に百合百合させるか……? ――無理だな。あの二人だといがみ合ってるシーンしか想像できねえ……」

 

 葛城に返事をする龍園だが、その内容はどこかおかしかった。女性陣の雰囲気にアテられているのかもしれない。

 各クラスの担任が認める『代表格』が揃ったグループの試験は、グダグダの様相を呈して終わったのであった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「これから皆はどうするのかな?」

 

 部屋を出たところで平田が訊ねた。

 龍グループの試験は終わったし、他にも試験を終えているグループはある。その一方で、試験続行中のグループもあった。

 

「もちろん、私は清隆くんの元に向かいます。甘えられるうちにトコトンまで甘えておきませんと!」

「コイツは……。まあ、リーダーとしての務めを果たすのであれば、とやかく言う気もないが……」

「しかし、正直意外でしたね。坂柳有栖がこうまで変わるとは……。その立役者たる綾小路清隆。ハッキリ言って興味が湧きます」

 

 鼻息荒く有栖が答えると、葛城は頭に手を当てながら溜息を吐き、藍は顎に手を当てて興味深そうに有栖を見やった。

 

「私は……そうね。私も清隆くんと合流しようかしら」

「私は恵ちゃんたちと合流するかな~。まあ、その恵ちゃんたちが清隆くんと一緒にいる可能性も否めないけどね」

 

 次に答えたのは鈴音と千秋だった。

 

「俺はアズと桔梗についていくぜ。一刻も早く『百合耐性』を着けないことには、この先どう転ぶか分かったもんじゃねえからな。

 いやマジで。よくよく考えれば、星之宮クラスは言うまでもなく、真嶋クラスは分かってるだけでも坂柳に神室のコンビ、茶柱クラスは千秋のグループって感じで、『百合』の雰囲気醸し過ぎだろう。――うちのクラスなんか、側近の澪と志保が反目しあってる有様だぜ?」

 

 次に答えたのは龍園だった。その表情は見事なまでに顰められており、危機感を抱いているのは間違いないことが窺えた。

 

「え、なに? ストーカー宣言? ちょっと止めてよね」

「桔梗、揶揄うのは良くないよ。それにまあ、龍園の言ってることはあながち否定できないと思う。性差の違いからくるものだけじゃなく、私自身、そう思うところがあるのは否定できないし……。実際、千尋なんてレズビアンだし……。

 私たちはある意味で慣れちゃった感があるけど、他のクラスの人なら雰囲気に呑まれちゃってもおかしくないと思う」

 

 桔梗が顔を顰めて龍園を罵れば、アズが横からそれを窘めた。

 

「『朱に交われば赤くなる』じゃないけど、私も千尋ちゃんにアテられちゃった部分があるのは否めないしね~。いや、基本傾向がノーマルなことに変わりはないけど、相手次第では女の子もありかなって……。

 ま、これは私だけに言えたことじゃないと思うけどね」

 

 苦笑しながら帆波も続いた。

 

「まあ、『ハーレム』なんてものに加わっていればね……。

 独占欲がないわけじゃないけど、それで友情に罅が入るどころか壊れるのもやだし、『情』と『理』と『利』の同時成立を図ろうとすれば致し方ないと言うか……。

 一番の壁が『理』なわけだけど、逆に言えば、この『理』さえどうにかできれば、だいぶ折り合いは付けられると思うのよね。

 私は自分の『情』と『利』を優先して、清隆くんを唆した。清隆くんも自身の『利』を鑑みて受け入れた。

 そう、清隆くんのハーレムは、『将来的に法を変える』ことを前提として成立している。『一夫一妻』の前提が崩れてしまえば、相手の男に対する独占欲で過剰に争う必要はなくなる。女同士の友情に罅が入り、壊れる可能性はグンと薄まる」

「ま、否定はできませんね。『正式に()として認められる相手は一人だけ』という前提が、余計に独占欲を刺激している部分があるのは確かでしょう。

 逆に言うと、法が『多妻』を認めるのであれば、個人的感情が『多妻』を受け入れられるのであれば、一つの椅子を巡って争う必要がなくなるのは確かです」

「言ってみれば『温故知新』ね。少子化問題が叫ばれる昨今、戦国時代のような『多妻制』を取り入れるのは決しておかしなことではないわ。

 能力のある者が多くの妻を娶り、多くの子を産ませる。少子化対策としては否定できるものではないでしょうね。少なくとも、池くんや外村くんが言ってたような『レイプ合法化』だの『種付けおじさんによる強制種付け法』に比べれば、よっぽど健全でしょう」

「ブッハハハハ……! おいおい、鈴音の口からそんな言葉が出るのかよ!?」 

 

 話が流転していく中、龍園が爆笑した。

 

「別におかしなことではないでしょう? 人がいなければ国が回らないのは道理だもの。少子化問題の解決に目途が立たなければ、『非常の手段』としてそういう方法が取られる可能性は決して否定できないのだから」

「いや、まあ、そりゃあそうなんだけどよ。でもお前みたいな奴の口から『レイプ合法化』だの『種付けおじさん』だのって言葉が出るのは、流石にギャップが激しいわ。ブッハハハハ……!」

 

 眉を顰めて鈴音が言えば、龍園は同意を示しつつも、やはり耐えきれないように笑った。

 

「むぅ……。確かにそのように考えれば、一概にハーレムも否定はできんか……。現行の法にそぐわないのは事実だが、現行の法に合わせて打ち出された少子化対策がどこまで機能しているか怪しいのも事実ではあるからな……。

 である以上、究極的に考えれば、その打開策として行き着く先が『法改正』と捉えるのは妥当とすら言える。それに堀北の言う通り、『ハーレム』の方が『レイプ合法化』や『種付けおじさん』に比べればよほど健全的なのも事実だ」

 

 葛城が難しい顔で唸るが、その口から『レイプ合法化』だの『種付けおじさん』だのという言葉が出るのは大きな違和感があった。葛城も男である以上、別段おかしくはない筈なのだが、こればかりは普段の印象によるものだろう。

 

「正直に言わせてもらえば、現時点でそこまで考え、その上で実現に向けて動き出す者がいるとは俄かには信じ難い話だ。

 しかしながら、実現が難しいからこそ、現時点から動くのに理があるのも事実。出来ることに限りがあるのは確かだが、それでも『人脈構築』や『説得力を上げるための土台作り』など、出来ることがあるのも間違いではないからな。

 そして、そういう行動を取る者こそが、日本政府の期待する『日本の次代を牽引する存在』であり、そういう存在を育て上げることこそが『高度育成高等学校』に課せられた使命だと言われたら、否定する言葉はない」

 

 基本的には真面目な葛城らしく、理由を込みで説明されれば、『ハーレム』という名の響きだけで否定することはなく、その行動に理解を示した。

 

「まあ、早い話。学校から示された課題をこなすのは最低目標。その上で『学校の思惑を超える』のが、学校側の定める『正しい実力者』ってことでしょうよ。

 学校の敷いたレールに乗って、その思惑通りに『クラス闘争』に明け暮れるだけじゃ、あくまでも二流止まり。実力はあるのかもしれないけど、レールに沿った行動しか出来ない。

 現状のレールに見切りを付けて破壊する、或いは新たなルートを構築する。()()()()()()()()()()()()に育つことを、私たちは求められている。

 そして、それ故の『()()()()()()()の許容』なら筋は通る。法が『白』と認めれば、『黒』も『白』になるからね」

「敷かれた『法』に沿った考え方しか出来ない者には、新たな道は作りだせん。そういうことか……」

「正確には『出来ないわけじゃない』だろうけどね。ただ、そうして作られた道が人の自由を『圧迫』しているのも事実。

 利便性は出費の向上を強制するようになった。今の世の中、『携帯の無い生活』に堪えられる人がどれだけいると思う? 普通に考えて少ないでしょ。持ってるのが必然とされ、否応なく端末の購入費用と月々の利用料金にお金を持ってかれる。

 会社だって人をゆっくり育てる余裕のある場所は少なく、『如何に低賃金で使い倒すか?』が念頭に置かれている場所だって少なくはない。俗に言う『ブラック企業』ね。

 働かなければ金は得られず、そうして働いても得られる賃金は見合わない。少なくとも、そう感じる人が多いのは事実で、それが今の社会でしょ?

 そりゃあ息苦しくだってなるだろうし、先行きに展望は見いだせず、嫌気だって差すわよ。結婚する気が失せたって仕方ないし、少子化が解決しないのも道理よね。

 昨今のアニメとかラノベとか見てみなよ。どんだけ『異世界転生物』だの『ハーレム物』だのが幅を利かせてると思ってんの。それってつまり、それだけ『現代社会』に夢も希望もない証左でしょ。

 上から目線で『適応しろ』と言うのは簡単だけど、ゲームで例えれば『高難度を――難しい(ハード)を超えて狂気(ルナティック)地獄(ヘル)を楽しめ』って言ってるようなもんだからね。そりゃあ、楽しめる人材がいないわけじゃないでしょうけど、『どれだけの人間が楽しめるか?』って話よ。

 必然、そんなんを楽しめるのは極一部。実力者ってのは、言い換えれば『狂人』よ。けど、文字通りの狂人じゃあ困る。少なくとも、理性は宿していてもらわないと困る。

 極論、『ある種のサイコパスの育成』がうちの学校の本当の目的でしょうよ。普通に考えて、そんなの大々的に公表できるわけもないわね。だから『聞こえの良い言葉』で誤魔化してる。

 同時、そんな方法が明文化されている筈もないし、大量発生されても困る。だから探り探りの方法しか取れない。『クラス評価制』が敷かれているのも、『組織社会』を念頭に置いた()()()()をさせるためだと思うわよ?」

 

 桔梗の言葉は、一概に否定できない鋭さがあった。

 

「正味な話、私がこの学校に入学を決めたのは『謳い文句』に惹かれた面が強いからね。そりゃあ個人的な理由がないわけじゃあないけど、『学費や生活費の無料』や『進学先の保証』があったればこそでもあるし……。

 幸いにして私の周りは優しい人が多かったけど、それでも『母子家庭』が生きにくいのは事実だしね。先生からこの学校を紹介されなきゃ、私、中卒で働くつもりだったし……」

 

 そして、帆波の言葉が重みを加えた。

 結局のところ、『良い大学に行きたい』、『良い会社に就職したい』というのは、夢に起因するだけではない。『高収入を得て楽な生活を送りたい』という欲望に根差す部分も大きいのだ。その欲望を刺激する一因が、多種多様に広がった『趣味』であり『娯楽』なのは否めない。

 しかし、余りにも間口が広がりすぎたため、基本的な収入だけで賄いきれなくなっているのが現実だ。『アレもしたい、コレもしたい』という欲望を我慢しきれないのだ。『偶の贅沢』で済ませておくべき部分を恒常化させてしまった。

 それによって日進月歩で技術が発展しているのは事実だが、今の人々はそれを受け止めきれないのだ。それでも受け入れざるを得ないから、費用面での『生活苦』に陥っている面があるのは否めない。

 だからこそ『楽』を望むのは道理と言えるが、大きいのは欲望だけで、それを実現するための『具体的なビジョン』が思い描けない。だから、努力を厭う人間も多い。それもまた現実だ。

 単に『働け』と言うのは簡単だが、周りの大人を見渡しても、働いて生活が楽になっている様子が見受けられないのだ。むしろ、働くことでどうにか生活が成り立っている面ばかりが見受けられ、娯楽に割いている様子が見られない。割いてはいても、楽しんでいる様には見えないのだ。

 そして人は、育った環境が環境故に、そんな()()()()()生活を受け入れられないのだ。だから、そんな状況を破壊し得る人物が現れるのは道理だ。そうやって世の中は回ってきた。

 そして、この学校は少しでも多く『現状の破壊者』を拾い上げるためにあるのだろう。反面、()()()()()()()()の人間ほど退学する可能性が高い。おそらく、学校のシステムはそのようにデザインされている。

 そうやって、生徒の選別化を図っている。『謳い文句』と『現実』をすり合わせている。

 

「確かな原動力を持ち、それを叶えるためのビジョンを描き、そのために適切な努力を行える者。……この学校では、たぶんそういう生徒ほど生き残る」

()()()()()か……。戸塚はそこを誤ったということか……。残念だが、否定はできんな……」

 

 戸塚を思ってだろう。アズの言葉に、葛城は残念そうに同意した。

 

「おいおい、さっきから話が脱線しっぱなしだぜ?」

 

 呆れを隠さずに龍園がツッコミを入れると、漸く全員が()()()()()を思い出したのだった。




各クラスの担任が見込んだ『代表者』なればこその会話です。

個人的な感想を言えば、『よう実』って話が進むにつれて迷走してる感があります。いや、正確には『高度育成高等学校が』なんでしょうけど……。

冒頭で『高度育成高等学校』の教師である佐枝は、単純な『学歴社会』を堂々と否定しているんですよね。
その事実を踏まえると、試験達成のために切磋琢磨するのはいいんですけど、我欲でクラスを裏切ったり、生徒を退学に追い込むのは如何なものかと思わざるを得ません。
いやだって、そうして得られる報酬が『推薦の確約』ですよ。普通に考えて、『そこまでする価値あります?』って話になります。どう考えても報酬と行為が釣り合ってるようには見えないんですよね。
言い換えれば、生徒たちは『謳い文句』に『踊らされてる』ってことになるでしょう。
それは『学歴社会を前提にしている人たちとどう違うのか?』って話です。

試験の結果として『退学者』が出るのは仕方ないんですけど、その『退学者』の顔触れがねえ……。
基本的に焦点を当てられたことのある生徒ばかりが退学になるから、余計に疑問視せざるを得ないんですよね。
愛里はビジュアル特化型であるのが明言されてるのに、その強みを活かすような試験もありませんし、クラスメイトがその強みを活かそうとする描写もありません。
加えて、頭脳面の天才である有栖すらも退学になります。
尚更、『看板』と『謳い文句』に反しているように思えてなりません。

極論、『よう実』って焦点を当てられる生徒が限定される『ライトノベル』じゃなく、視覚面でもキャラを訴えることが可能な『キネティックノベル』向けの作品だと思います。
これであれば、『モブ生徒』が容赦なく退学になったところでおかしくありませんし、『モブ生徒』だからこそ、容赦なく退学になっても普通に納得がいきます。
まあ、イラストの用意は大変でしょうけど……。

本作は個人的にそこら辺の疑問を解消するための改変も多々あります。
基本的には『原作』をベースにして、キャラ自体は大きくズレないようにはしてるつもりですけど、克己のような例もあります。
ただ、鈴音なら何の衒いもなく『レイプ合法化』だの『種付けおじさん』だの言いそうな雰囲気があります。
なので言わせてみました。

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