ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第88話:平田グループは、これからの方針を相談する。

 星之宮クラス:1004CP

 真嶋クラス:696CP

 坂上クラス:683CP

 茶柱クラス:370CP

 

「このまま何事もなければ、夏休み明けのCPはこうなっている筈だ」

 

 船内のカフェ『ブルーオーシャン』の一席に着いた平田は、同席している鈴音と千秋にメモ用紙を見せながら口を開いた。その表情は深刻と言っていい。

 

「ふぅ……。現時点では予想に過ぎないにしろ、改めて数値化した物を目にすると気が滅入るわね……」

 

 溜息を隠さずに鈴音が続いた。

 無人島試験と干支試験、その双方で一番CPを稼いだのは紛うことなく鈴音たち茶柱クラスだ。

 星之宮クラスと真嶋クラスの無人島試験における獲得CPはゼロ。坂上クラスが150で茶柱クラスは270だった。

 そして今回の干支試験。星之宮クラスと坂上クラスは-50CP、真嶋クラスにCP変動はなく、茶柱クラスは100CPを稼いだ。

 それらの結果を反映した数値がこれだった。

 

「ホント。これを見ると『団結力』や『統率力』の重要性がよく分かるよ……」

 

 千秋もまた溜息を隠せない。

 明確なリーダーが存在していなかった茶柱クラスと、それ以外のクラスとのCP差が、その事実を如実に表していた。

 未だに1000以上のCPを維持している星之宮クラスを見れば、双方の大切さが尚更によく分かる。

 更に言えば、真嶋クラスは戸塚の退学で300CPのマイナスを食らって、なおこの数値だ。派閥に関わらぬ点では協調できるということなのだろう。

 龍園も、方法の是非はともかくとして、早期に『王』として起ったことが確かな成果を示している。

 

「まあ、正確に言うと、『今回の特別試験で得たポイントが反映されるのは夏休み明け』だと明言されてるから、ポイントが確定しているのは僕たちだけだ。何せ、僕たちは夏休み中のCPがゼロだからね。試験で得たポイントが反映されていない以上、CPがマイナスされることもない。

 その一方で、他のクラスには()()()()()()()による元々のCPマイナスの可能性がないではない。――期待は出来ないけどね」

 

 救いと言えば、それが唯一の救いではあった。

 

「でも、それを言うなら、こっちにもプラスの可能性はあるよ。ほら、須藤くん。バスケの大会のレギュラーに確定してるそうじゃん」

「ああ、そう言えば僕もサッカーの大会があるね。もっとも、僕の場合はベンチだけど……」

「部活のことはよく分からないけど、一年でベンチ入りというだけでも十分に凄いのじゃないかしら。卑下する必要はないと思うわよ」

「まあ、そうなんだけどね。サッカーの方だと、柴田くんはレギュラーが確定してるからどうしてもね……。

 CPには個人の活躍が反映されるのか、それとも大会成績のみが反映されるのか……。いずれにせよ、サッカー部の大会結果がCPにプラスとして反映される時は星之宮クラスも同様だ」

 

 三人を冷たい風が襲った。実際には涼しい風なのだが、『星之宮クラスのCPが増える。少なくとも、その可能性がある』という事実は、三人の気分を重くするには十分な効果があった。

 

「しかし、平田くんも須藤くんも大変だよね。夏休みに大会に出発しなきゃならないんだからさ」

「それに関してはそこまででもないよ。部活に関しては、僕も須藤くんも望んでのことだからね。

 それよりも、僕が気になっているのはクラスメイトの誕生日のことでね……」

 

 雰囲気を盛り上げようとした千秋に平田は微笑で答え、次いで深刻そうに続けた。

 

「誕生日?」

「そう、誕生日。無論、僕だってクラスメイト全員の誕生日を把握しているわけじゃないけど、それでも何人かは知っている。

 王さんは8/21日。井の頭さんは8/24日だ。やっぱり、新天地に入って初めての誕生日だからね。誰にも祝ってもらえないのは悲しいことだと思うんだ。

 だから、もちろん僕は祝うつもりだけど、支給がない、もしくは少ない状況が続いたことに加えて、小野寺さん、幸村くん、三宅くんの誕プレで出費が嵩んだことも事実だからね。どれだけの物が用意できるか……」

 

 平田は深々と溜息を吐いた。

 

「あ~。平田くん、私と篠原さんのも用意してくれたよね。――いや、ホントにポイント大丈夫!? 自分のことに使えてる!?」

 

 平田のセリフに、千秋は自分とさつきも誕生日プレゼントをもらったことを思い出し、平田の経済状況が本気で心配になった。ちなみに、千秋の誕生日は4/25でさつきは6/21だ。池は6/16。

 そりゃあ、千秋がもらったプレゼントもそこまで高い物ではなかったけど、話を聞く限り、平田は少なくとも五人に誕生日プレゼントを渡している。平田の交友関係を鑑みると、或いはもっと多いかもしれない。

 そして、茶柱クラスは五月早々に支給が無くなった。七月には中間突破のご褒美で若干CPがプラスされて支給されたけど、それも山内の退学で再びゼロになった。すなわち、八月の支給額はゼロだ。

 早い話、平田は入学時にもらった10万ポイントだけでやりくりしているに等しい。千秋が心配するのも無理はなかった。

 

「まあ、そこはね。僕、サッカー以外にお金をかけることってあんまりないから。いや、最近は清隆くんの影響で趣味も増えたけど、そこまでお金のかかるものじゃないしね」

「あ~。恵ちゃんから聞いてるよ。まあ、アレに関しては、どちらかと言えば『技術』になるしね。初期費用に少しかかるかもしれないけど、必需品を買ってしまえば、あとはそれほどでもないか……」

「まあ、そういうことだね。そりゃあ、トコトンまで凝ろうと思えばそれに応じて出費も増えるんだろうけどね。駆け出しが仲間内でヒッソリとやる分には然程でもないさ。

 生活必需品は無料品を使えばいいし、食事も同様。拘るところには拘りつつ、それ以外の部分には拘らなければ、意外とやっていけるものだよ。軽井沢さんから教わって、ある程度は自炊も出来るようになったしね」

 

 平田と千秋の間で、()()()()()()()()()会話が繰り広げられる。分からない鈴音は疑問顔だ。――まあ、清隆のハーレムに加わった以上、遠からず知る機会は来るのかもしれないが……。

 

「じゃあさ! いっそのこと、二人の誕プレはそれにしたら? 平田くんらしからぬ趣味であるのは間違いないし、『秘密の関係』って感じで意外と受け入れてくれるかもしれないよ?」

「え~と。流石にそれはどうかなぁ……」

 

 千秋の意外な提案に、平田は困惑を隠せない。

 

「だってさ。王さんのことは清隆くんもハーレムに誘ってるわけじゃない。ってことは、王さんに関しては遅かれ早かれだと思うのよ。実際、私も清隆くんにはしてもらったことがあるし……」

「それは――否定できないね」

「でしょ。その上で、平田くんがうちのクラスのリーダーに起ったことを加味するとね。クラスメイトとは『個人的な人間関係』を築いておくに越したことはないと思うのよ。

 平田くんは『クラスリーダーの役目』として、その趣味を女子に対して行う一方でデートをしたりする。中にはその趣味にドン引きする女子もいるかもしれないけど、結構現金なのも女子だからね。『学生生活』という期間限定とはいえ、平田くんみたいな『ハイスペックイケメン』とお近付きになれるのであれば、独占は出来ないけれど疑似的なカレカノ関係になれるのならば、案外受け入れる子も多いと思うよ。

 そうね。最初はクラス内ランキング下位の女子に対し、平田くんの方から手を差し伸べる。で、取り敢えずは一回、デートでもする。自炊が出来るんなら手料理を振る舞うのもいいかもしれないし、相手次第では最初から趣味を披露するのもいい。

 そして、女子にはそれを燃料にして頑張ってもらう。同じことを、或いはその先を望むなら、努力をしてランクを上げろ。……端的に言えばそういうことね」

 

 人差し指をピッと立てて、千秋は提案した。

 

「松下さんの言葉を一概に否定はできないけど……。でも、じゃあ、男子の方はどうするんだい?」

「そこはまあ、私と鈴音ちゃんで頑張るしかないんじゃない? 疑似デートや手料理を振る舞うくらいなら許容範囲だし……」

「私も? いえ、まあ、仕方ないのかしらね。理屈だけで人は動かない。努力させるなら、何かしらの飴は必要でしょう。私も千秋さんも十分に美人だから、十分に飴としての効果はあると思うわ」

「ま、そういうことでね。相手が彼氏持ちであることを公言してても、実際に手料理を振る舞われたりすれば舞い上がっちゃうのが人間ってものだからね。自分に自信がなければ、普段から女子と縁がなければ尚のこと。

 ランク次第で、名前と名字を呼び分けたりとかね。そりゃあ、それで冷める人だっているだろうけど、逆に奮起する人だっていると思うのよ。

 相手にとっては酷いかもしれないけど、私も鈴音ちゃんも『綾小路ハーレム』の一員であることに違いはないからね。主である清隆くんの許可なしに一線を超える真似は出来ないし、だからこそ予防線は張っておかないとね」

「それに、きっかけがどうあれ、努力は無駄にならないわ。ランクを上げるほどに努力が実ったのであれば、それによってお相手が見つかる可能性も否めないものね」

 

 あくまでも『お役目』としての振る舞い。それを念頭に置き、公言した上で、デートをしたり手料理を振る舞ったりする。

 それを受ける身にしてみれば、虚しいと言えるのかもしれない。しかし、そういうのに一定の需要があるのも確かだ。極論、水商売なんてものはそれを前提にして成り立っている。

 

「取り敢えず、今回PPを得た皆からいくらかは徴収しないとね。『クラス用資金』があるに越したことはないし、それを以て『お役目』の費用に回さないとやってられないし。

 そもそも、今回の干支試験、どのクラスも結果①と③に終始したのは平田くんが持ちかけた契約あってのことだしね。それがなきゃあ、どこかのクラスには暴走する生徒だっていただろうしさ。だけど契約内容が、契約に反した際のペナルティが、それに歯止めを掛けた。

 四クラス間の契約が成立している状況で、『自分たちだけ得を得られるようにしろ』なんて言えないでしょ。そんな真似をしてしまえば、たとえ契約には反していなくとも他クラスからの反感を買うことは間違いないし、一極集中で狙われる可能性が高まるだけだからね。

 私たちはまだ一年生で、夏休みを迎えて間もない。卒業まで先はまだ長い。そんな状況で、必要以上に反感を買う必要はないでしょ。戦国時代と違って、CPがゼロになってもクラスが滅びるわけじゃないしね。『相手のクラスを滅ぼして、有用な人材を登用する』なんて戦術は使えない。他クラスの人材が欲しければ、基本的には2000万PPでスカウトするしかない。

 必然、『優待者』を得たクラスは、結果①に持っていくか、坂柳さんが企んだように『他クラスに結果③を進呈して影響力を強めるか』の二択になる」

「結果①が合計六グループで、うちのクラスの生徒が『優待者』なのは一つ。そしてうちのクラスは二つのグループが裏切りを成立させている。各グループとも、各クラスから最低三人は選出される仕様のようだから、単純計算でも100万×1の50万×17+50万×2で1050万は確保したことになるのだけど……」

 

 あくまでもこれは単純計算だ。グループによっては三人以上が配属されている場合もある。そこは改めて確認するしかない。

 

「まず間違いなく、裏切りを成立させた一人は高円寺くんだろうからね。何かしら助言を行ったわけでなし、彼からポイントを徴収するのは難しいだろう。

 それでも、1000万だ。だから『ポイントの徴収』には賛成なんだけど、どれくらい徴収するのが妥当かな?

 ポイントを徴収しなければ、ポイントを得ていない生徒からの怒りが向かいかねない。多過ぎればポイントを得た生徒から反感を買う。だけど少なすぎても意味がない」

 

 三人は揃って頭を悩ませた。 

 先述の通り、茶柱クラスは入学以降の収入が無いに等しかった。あっても『雀の涙』程度。誰か一人がそうなのではなく、クラス全員がそうなのだ。

 そんな状況で、『特定人物だけが大量のPPを得た』という事実は、PPを得ていないクラスメイトからの怒りを買うことになりかねない。

 それが『実力で勝ち取った』ものであれば、まだ納得の余地はあるだろう。しかし、大半の生徒はリーダーとして起った平田の指示に従っただけだ。これでは、『凄いのは指示を出した平田』であり、実際にポイントを得た人物の実力など関係ない。――高円寺を除いては。

 

「やっぱり、8:2が現実的なところじゃないかしら? 今回、50万PPを得た生徒からは、40万を徴収する。不満はあるでしょうけど、棚ぼたで10万も手に入ったなら十分でしょう。

 ただし、『優待者』のボーナス分はそのまま。これに関しては、私たちは何ら寄与していないから、そこに手を付けるのは不当でしょう。

 その一方で、PPを得た彼らないし彼女らが()()()()()()()様にするためであることも強調する。徴収したポイントの一部をクラスメイトに分配することで、ポイントの無いクラスメイトの不満を抑えることも周知する」

「っても、それが可能なのは九月になってからだけどね……。学校に帰っても二週間以上休みが続くのに、使えるポイントはありゃしない……。ホント、世知辛いわ……」

 

 意見は出るが、実行可能なのはまだ先だ。何せ、特別試験で得たCPもPPも九月にならないと振り込まれないのだから。

 その事実に、千秋は深々と溜息を吐いた。

 

「千秋さんはまだマシじゃない。清隆くんにもらったポイント、まだ残ってるんでしょう?」

「ま、そりゃそうだけどね。問題なのは、それを周知しちゃったことね。たかられそう……」

 

 鈴音のツッコミに千秋は肩をすくめる。鈴音の言葉が尤もなら、千秋の言葉も尤もだった。

 

「気を取り直して、十九人から40万の徴収で……760万。そのうち、5万をクラスメイト全員に還元すると×37で……185万の出費。痛いっちゃ痛いけど、必要経費と言えば必要経費でもある。

 残りは575万。ここから私たち三人の『サブID』を購入。一つ10万ポイントって言ってたかな……? ここは後で先生に要確認だね」

 

 鈴音の言葉に千秋が同意を示す。平田も反論はない。『クラス全体のため』を思えば必要なことだ。

 来月になれば3万7千ポイントが支給される。そこに『お小遣い』として各自にリーダーから5万PPを分配すれば、クラスメイトの不満も抑えられるだろう。元手が特別試験で得たPPだと周知すれば、『クラスのため』にそれを提供した生徒への人気も高まる。

 そして、リーダーである平田たちには一切の痛手がない。仲介作業が面倒なだけだ。

 

「サブID? 試験の説明にあった『仮ID』とは違うのかしら?」

「それを()()()()使()()()()()()()()()()()()と考えればいいよ。二つのIDを使い分けることで、普段使い用と貯蓄用にすることも可能。誰かにポイントを見られた場合も一安心。一定以上のポイントを持つなら、あって損することはないよ。

 嘘か本当か、星之宮クラスの生徒は基本的に全員が持ってるらしいね」

 

 鈴音が首を傾げると千秋が答えた。その説明に二人も納得する。

 

「サブIDが10万だとすれば、残りは545万。このうち、45万を僕たち三人で分配、クラスの士気を向上させるための『遊興費』として使う。残りの500万に関しては、担任として茶柱先生に預かってもらい、必要に応じて引き出して使う感じかな?」

「引き出せるのは基本的に平田くんだけとし、状況に応じて補佐役である私と千秋さんの連名でも可。ただし、いずれの場合も引き出し理由を明記すること。……こういったルールも必要だと思うわよ?」

「あとは、夏休み明け――つまり九月からはキチンとPPが支給されることになるんだから、そのうちの一部を『クラス用資金』として徴収、茶柱先生に預けるのも必要かな?」

「……確かにそうだね。取り敢えず、来月は一人当たり5千PPが妥当なところかな?」

「そんなところでしょうね。3万7千ポイント()()支給されないんだし……。この額を『しか』と言ってしまう辺り、だいぶこの学校に染まってるわね……」

 

 取り敢えずの方針は決まったわけだが、頭を押さえて鈴音が言った。

 その気持ちはよく分かる平田と鈴音だった。




現実世界に合わせると部活の大会スケジュールとかがワケワカメになりますね。
競技は違いますが、原作で須藤がレギュラーに抜擢されている以上、並び称される身体能力の持ち主である柴田が抜擢されてもおかしくはありません。
平田はベンチです。基本的に悩み耽っているため、普段から実力が発揮しきれていません。それでいて一年ながらにベンチ入りをもぎ取る辺り、能力が高水準なのは確かです。
まあ、平田のことはアスラン・ザラとでも思っていただければ……。

本作の平田は、入学して以降、誕生日が分かっている生徒には欠かさずプレゼントを贈っている設定です。
そういったこともあり、桔梗が初期Bクラスなのと相俟って、クラスメイトからの人気は原作以上に高いです。
なお、恵たちを通して池の誕生日を知ったこともあり池にはプレゼントを贈りましたが、山内には贈ってません。平田が事前に山内の誕生日を知る術はなく、知った時には過ぎていたためです。
原作山内ならば、誕生日が近付けばそれっぽく騒いでアピールしそうですが、本作で学校に通っていたのは偽山内だったため、そんな真似はしていません。

リーダーとして起ったが故の、平田周りの苦悩シーンを描写してみました。
普通に考えてPP徴収は避けて通れないでしょう。『理想』と『現実』の『落としどころ』に頭を悩ませるのは避けて通れません。
それでも、『情』の平田、『理』の鈴音、『バランサー』の千秋で上手く纏まっているのでだいぶマシです。

あとは密接にリンクしてるR-18版を匂わせたり……。

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