ようこそ実力至上主義の教室へ ~ギフテッドとN.I.N.J.Aと……~   作:山上真

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第96話:理事長宅訪問。(後編)

「恥ずかしいですよ、お父様」

 

 有栖の言葉を意に介することもなく、成守は暫くの間抱きしめ続けた。

 漸くにして解放された有栖は、そこで精霊憑依(ポゼッション)を解除した。途中で解除してもよかったのだが、そうすると有栖が耐えられるか分からなかったためである。何せ、成守は嬉しさの余り力一杯に有栖を抱きしめていたのだから、生身の有栖が耐えられる保証はない。何度も言うが、素の有栖は病弱にして虚弱なのだ。

 精霊憑依(ポゼッション)中は、天神地祇と同化しているだけあって、必ずしも人のルールに囚われることはない。だから有栖も動き回れるようになるのだ。もちろん囚われる部分もあるが、完全ではなく、多分に限定的なものと言えるだろう。

 しかしながら、何の代償もなくそのような『超人化』が果たせる筈もない。

 グウウウゥゥ……!

 精霊憑依(ポゼッション)を解除した有栖は、もはやお決まりとなった空腹音を響かせた。一人の少女として羞恥心がないわけではないが、もはや慣れてしまっていた。

 と言うより、空腹で済む分だけ、負担としては極めて軽いのだ。これは現状、有栖の精霊憑依(ポゼッション)自体が、その効果を『先天性心疾患の治癒』にほぼ全振りしているからだ。正味な話、今の状態では全力疾走してもその速度は高が知れている。

 有栖が精霊憑依(ポゼッション)している間は、どれだけ食べても満腹感には襲われない。食べた端から、治癒兼肉体改造用のエネルギーに変換してストックしてあるからだ。そうして、平常時にそのストックしたエネルギーを用いて、ゆっくりながら肉体改造を施しているのが実情である。

 これは、イキナリ心疾患を治癒しても、今度は血管やら何やらが正常機能しないのが目に見えているからだ。有栖の肉体機能自体が、歪に機能している心疾患に合わせているのである。

 血管という管が太く頑健でも、ポンプに適した量しか送り込めないのは道理である。しかし、ポンプを変えて一度に送り込める量が増えても、管が細く脆弱なれば、今度は管が破裂する可能性は極めて高い。

 そういう事態を防ぐため、まずは周りから肉体改造を施し、ポンプを修復後も正常に機能するように作り変えているのが実情であった。

 

「おや? お昼にはまだ早いと思うのだけど?」

精霊憑依(ポゼッション)して解除すると、基本はこうなのです。精霊憑依(ポゼッション)中に沢山食べるとそうでもないのですけどね……」

 

 首を傾げる成守に有栖は答えた。

 

「……なるほど。まあ、何の負担もない方がおかしいか……」

 

 その余りにも簡素な説明に、成守は納得したように頷いた。

 

「それじゃあ、親バカを発動するようで他の皆さんには申し訳ないが、先にご飯を食べに行く形でも構わないかな? もちろん、皆さんの分は私の方で出させてもらうよ」

「は、いえ。ご飯を食べに行く分には構いませんが、流石に奢っていただくのは……」

 

 成守の言葉に、葛城は恐縮しながら言葉を紡ぐ。

 しかし、明確に遠慮しているのは葛城だけだった。

 葛城は信じ難い様子で伊織、亜真里、真澄を見やる。有栖は成守の実の娘だから対象外だ。

 

「これでも『見栄』の大切さってのは理解しているつもりでな」

「遠慮は美徳とされがちですが、度を過ぎるとかえって失礼になってしまいますよ? 『遠慮は無沙汰』と言うでしょう?

 相手はこの学校の理事長で、同時に有栖さんのお父さんです。すなわち、『公』の面でも『私』の面でも、私たち相手に見栄を張る理由と必要があるんですよ。――まあ、状況によりけりなのも否定はできませんけどね」

「納得ずくとはいえ普段から坂柳にいいように使われてるんだから、そのお父さんが奢ってくれるというなら断る理由はない」

 

 三者三様に葛城へと答える。特に亜真里の言葉は葛城に理解を促すのに最適だった。

 

「……なるほど。直接的でないとはいえ学校の教え子に、そして娘の学友に『ご飯も御馳走しない』というのは、それはそれでダメージになるのか……」

「まあ、そういうことだね。どうだろう? 私を助けると思って、奢られてくれないかな?」

 

 葛城が理解したように呟くと、成守がそれに続いた。

 その事実が誰にも知られなければダメージになることもあるまいが、どこからどう情報が広まるかも分からないのが世の中というものだ。

 

「そういうことであれば、ありがたく御馳走にならせていただきます。気が利かず、失礼いたしました」

「いやいや。さっき天野さんも言っていたけど、遠慮が美徳とされるのも間違いではない。そして、私と君たちとでは今一つ関係性が薄いのも事実だ。それを思えば、君が断るのは理に適っているよ。

 だが残念なことに、それは君たち『学生』や『子供』の視点に寄った見方でね。私たち『教師』や『大人』の視点に寄ると、また違った見方をされるのが世の常なんだ。

 有栖は事前に訪問のアポイントを取ったし、私もそれを了承して事前に寮管に『娘とその友人が訪ねてくる』ことを伝えておいた。そして君たちは、寮の入り口で受付を済ませただろう?

 こうなるとね。話が広まってもおかしくはないのさ。何せ、娘が親を訪ねるのなんてごくごく普通のことだからね。

 付け加えると、君たちがこの寮に来るまでの道中を誰かに見られた可能性もあるし、そこに有栖が含まれている以上、私と結び付けることも不可能ではない。

 この学校が些か特殊であるが故に実現しがたく、出来るにしても推奨されないのが事実ではあるが、有栖の病状がその前提を覆して余りある。『先天性心疾患』という病状には、それだけの重みがある。   

 その一方、『実力』を評価するのがこの学校だからね。生徒が教師に『私的な交渉』を持ちかけるのも珍しいことではない。その内容次第では、理事長相手に持ちかけることだってあるだろうさ。

 教師だって、常にアンテナを伸ばして()()()()()生徒に関する情報は探っているからね。よっぽど理由でもない限り、寮管に対して『面会の一切まで口外するな』とはこちらも言えない。この点でも、話が広まる理由としては十分だ」

 

 感謝と謝罪をする葛城に対し、成守は片手を振りながら告げた。

 早い話、『肝心の内容』に関してはともかく、『断片的事実の拡散』までは防ぎようがないということだ。

 そしてその情報を受け取った者たちは、各々が好き勝手な想像や妄想を働かせる。その中には成守のダメージになりかねないモノだって当然の如く含まれる。

 特に今回、成守は事前に『来客がある』ことを寮管に伝えているのだ。裏を返せば、『それだけ重要』ということを意味する。そも、理事長と直通で事前アポイントを取れる生徒などそうはいない。大抵は理事長に届くまでに段階を踏む。

 だからこそ、娘である有栖だけ、或いは有栖と()()()()の真澄だけであれば、周りもそこまで疑問には思わないかもしれない。

 しかし、そこに加えて三人も存在するのだ。こうなると、有栖は『ただの仲介役』という可能性が生じ、『()()()()()()()()()疑ってください』と言わんばかりなのである。

 

「率直な話、お父様が寮への訪問を許可した時点で、ご飯を御馳走するのは確定事項なんです。ある種の『特別視』を、分かりやすく周りに示す必要があるのですよ。その点で、『ご飯を御一緒する』というのは実に分かりやすいと言えます。

 とはいえ、食べに行くのはもっと後で構いませんよ。御覧の通り、私はコレを頂いていますから」

 

 そういう有栖の手には、食べかけの『エネルギーバー』が握られていた。

 割と気軽に手に入り値段もそこまで高額ではない、店によってはセールで安く売られる場合もある……などと、『バカンス』から帰宅した有栖にとっては、まさしく必携品だった。自身のみならず、何本かは真澄にも常備させている気の入れようだ。

 

「そうかい? まあ、有栖がそれでいいのなら、僕としても構わないけどね……」

 

 些か拍子抜けした様子で成守は頷いた。

 

「それで、誰の用件から伺おうか?」

「葛城からお願いします」

 

 成守の問いかけに対し、真っ先に答えたのは伊織だった。

 立場上、亜真里は伊織と同意見と見做した成守は、その視線を真澄に向ける。

 

「私は娘さんに連れてこられただけなので……」

 

 それに対し、真澄は首を横に振って答えた。

 

「……とのことだが、葛城くんはそれで構わないかな?」

「はい」

 

 端的に答えた葛城は深呼吸をし、改めて口を開いた。

 

「それでは、自分の訪問理由を説明させていただきます」

 

 そう前置きした葛城から、事情が説明される。

 

「……なるほど。妹さんの誕生日に合わせてプレゼントを贈りたい……と」

「はい。入学前の自分が、この学校の謳い文句である『許可なき外部連絡の禁止』を甘く見ていた面があるのは否めません。手紙や電話が許可されないのは覚悟していましたが、荷物の発送にまで及んでいるとは思いませんでした。いえ、流石に頻繁にであれば許可はされなくとも不思議はありませんが、誕生日やクリスマス、父の日や母の日など、記念日のプレゼントであれば許可されるものと思い込んでいたのです。

 自分の考えが甘かったことは認めます。その上で、妹への誕生日プレゼントの発送を許可願えませんでしょうか?」

 

 葛城の話を聞いた成守が呟く。

 それを自分への確認だと受け取った葛城は、ルールに対する自分の認識不足を認めた上で、許可を願って頭を下げた。

 

「申し訳ありませんが、発送許可を出すわけにはいきません。葛城くんの推測は特に間違っているわけではありません。確かに、以前は『荷物だけの発送』は許可されていたのです。

 しかし、許可を得た者たちの中から、数名ですが約束を破る者が出てしまったのです。手紙を始めとする情報媒体を無断で同封していたんですよ。生徒の側が、先に学校側の信頼を裏切ったのです。

 それを知ったきっかけは、そうやって無断で送られた手紙なりを受け取った家族や友人から、学校側に問い合わせが入ったことです。『そちらの生徒の○○から荷物が送られてきたのですが、そちらの学校は外部連絡が禁止ではなかったでしょうか? 手紙も同封されているのですが、こちらはキチンと許可を得たものでしょうか?』……といった具合ですね。

 隠して手紙を送ることを優先したが故のある種の伝達不足ですね。学校に無断で、隠れて送った手紙であることを記さなかったが故に、受け取った側は詐欺を疑ってしまったんですよ。――まあ、こちらとしては情報が得られて助かりましたがね。

 そして以後、荷物の発送も含めて全面的に禁止になったのです」

 

 葛城に対する成守の返答は厳しいものであった。

 荷物の発送に関し、『以前は許可されていた』という事実と、『今は禁止されている』という事実。

 そうなった経緯を教えてもらえたのはありがたいが、ならばこそ、葛城は愚行を犯した先達への怒りが募る。

 

「教師や生徒会立ち合いの下、店頭で直接発送の申し入れをする。葛城くんは指一本を触れず、商品と商品の代金だけを支払う。そういう方法がないではありませんが、それはある種の『特別待遇』になってしまいます。そして残念ですが、現状の葛城くんは、そこまで『特別扱い』するほどの実力を我々に示していません。

 現在は夏休みと言えど、教師や生徒会には仕事がありますからね。夏休みでないなら尚のことです。その状況で『特別待遇』を願うなら、前以て相応の実力を我々に示し、認められている必要があります」

 

 ()()()と考えた方法も、口に出す前に一蹴された。『実力主義』のこの学校で、『実力不足』を引き合いに出されれば如何ともしがたい。

 葛城自身、『()()を与えられるほどの実力を学校に示したか?』と問われれば、首を傾げるより他になかった。

 不可能。妹に誕生日プレゼントを贈ることは出来ない。――理事長直々に告げられたその事実に、葛城は深く落ち込むより他になかった。言葉を発することも出来ない。

 

「ただし、これはあくまでも『表立って許可を出すなら』の話です」

 

 しかし、続けて紡がれた成守の言葉に一筋の希望が射した。

 

「それはどういうことでしょうか?」

「ルールに沿い、ルールを通すなら、面倒な手続きがいるのは事実です。――逆に言えば、()()()()()()()()のであれば、面倒な手続きを踏む必要もありません。

 確かにルールは守るべきものですが、『絶対に正しい』というものでもありません。今の葛城くんのように、ルールを順守したが故に悲しみが生まれることもある。それが純然たる事実なのです。

 これで私も教師ですからね。基本的に厳しいルールを生徒たちに強いてはいますが、全面的に賛同しているわけでもないのですよ。私個人で譲れる範囲ならば、譲っても構わないくらいにはね。

 ですので、私から葛城くんに二つの方法を提示させていただきます」

 

 指を二本立てた成守が言う。

 

「お願いします」

 

 葛城の言葉に頷き、成守は立てた指を一旦閉じる。その後、改めて人差し指を立てた。

 

「一つは、単純に私が葛城くんからプレゼントを預かる方法ですね。もちろん、事前に情報媒体が含まれていないかは確認させていただきますが、それで問題がなければ、私がプレゼントを敷地外に持っていって発送手続きを行います。理事長と言う立場柄、敷地の外に足を運ぶこともありますのでね。

 その際に、これが特例処置であるメッセージも加えておきます。受け取った側に、気楽に『送ってもらえる』と思われるのも、それはそれで問題ですので……」

 

 それは余りにも単純明快な方法であった。生徒が敷地内で許可を取ろうとするから面倒なのだ。ならば、堂々と敷地外に出れる人物が、敷地外で発送手続きを取ればいいだけ。一般教師ならばそれも難しいが、理事長ともなれば外に出る機会は相応にある。

 情報の伝達についても同様。生徒だと『伝えて問題のある範囲』が分からなくとも、理事長ならば熟知していて道理だ。

 

「もう一つは、そちらの二人――葵君と天野君に協力を願う方法です」

「この二人に……ですか?」

「はい。おそらく、そのつもりで二人は今日同行してきたのだと思いますよ。……違いますか?」

「まあ、違いませんね。変に拗れるようであれば手を貸すのも已む無しかとは思いました」

 

 成守の問いに伊織は頷いた。

 

「日本の法は、決して未成年――特に学生の就労を禁じているわけではありません。芸能人、棋士、小説家に漫画家……学生の時分から働く人は皆無ではないのです」

「それは……はい、分かります。実際、自分たちの同期にはグラビアアイドルの『雫』として働いていた佐倉がおりますので……」

 

 成守の言葉に葛城は頷いた。クラスは違えど同学年に例に挙がった芸能人がいるのだ。否定する余地はない。

 

「今のは一般に認知されている職業を挙げたわけですが、それ以外の職業も当然あります。特定の才能を必要とする分野ほどそれは顕著でしょう。

 分かりやすいところで『神子』ですかね。神の言葉を伝える代弁者です。偽物も多いですが、中には本物も存在します。一般的な認識がどうあれ、一概に否定できるものではないのですよ。

 実際、日本には『森羅』という特務機関が存在し、ここの仕事内容は『超常現象』や『怪奇現象』の調査と解明です。だからこそ、そのスタッフには『オカルト』への対処能力が求められるのが道理です。

 しかしながら、誰も彼もが持ち合わせる能力でもありませんからね。才と能力があるのなら、年齢に関わらずスカウトされることもあります」

「まさか……」

 

 成守の言いたいことに察しが付いた葛城は、言葉を震わせながら伊織と亜真里を振り向いた。

 文字通り、『超常能力』を身に着けた有栖。学校のシステム上、普通に考えてあり得ないだろう二人の転入生。……断片的な事項が一本の線で結ばれていく。

 

「改めて、特務機関『森羅』の『見習いエージェント』、葵伊織だ」

「同じく、天野亜真里です。学生として学業に臨むのも本当ですが、その一方で、坂柳有栖さんや龍園翔くんといった『特殊事例生徒』に対する、()()()からの護衛監視を申し付かりました」

「見習いではあるが、紛うことなき政府機関の一員ではあるからな。報告書を始め、ある程度の荷物なら理事長を介して所属組織宛てに送ることが出来る。そして部署が違う以上、理事長が中身を確認するのにも限度がある。

 そこに一文を付け加えた上で妹さんへのプレゼントを混ぜておけば、うちの組織の誰かが代わりに送ってくれると思う」

「難点は、人任せになるために確信が持てないことと、細かな時期の指定が出来ないことでしょうか。妹さんに送ったという証明自体は、頼んでさえおけば向こうから送られてくるとは思いますけど……」

「同じことは僕にも言えますね。葛城くんがどちらの方法を取るにせよ、最初の一歩は確信がない状態で信じることが必要になるし、タイミング次第では妹さんの誕生日までにプレゼントが届く保証はありません。

 ああ、これも葛城くんの実力あってのことですから、そこは勘違いしないようにお願いしますね?

 私に伝手を持つ有栖との『人脈』、転入した早々の葵くんたち二人と出会った『運』、そして、私を含めた四者それぞれが『協力しても構わない』と判断するに至った――そう思わせるに至った葛城くん自身。

 そのいずれが欠けても、こうはなっていなかったでしょう」

 

 早い話、学校から正規の特例許可を得るには至らなかったが、有栖、伊織、亜真里、成守の四者からの心証が良かったが故の結果である。

 

「分かりました。今回は理事長にお願いいたします。そして、来年以降は正規の特例許可を頂けるように粉骨砕身いたします」

「ええ。僕も、そうあることを期待します。……そうそう、プレゼントの方は、有栖を介して渡してください。伝票と発送費用の方も同様に。流石に、ご飯と違ってプレゼントの発送費用を僕が持つのは違うと思いますからね」

「畏まりました。――二人にはすまないが、今回は理事長にお願いすることにした」

 

 葛城は成守に頭を下げ、次いで伊織と亜真里にも頭を下げた。

 

「そこは気にしなくていい。流石に出会ったばかりだからな。理事長との二択なら、信用や信頼が足りていなくても不思議はない」

「そう言ってくれると助かる」

「クラスは違いますが、協力できることは協力できるように交友を深めていきましょう」

「そうしてくれると、こちらとしてもありがたい」

 

 葛城は伊織、亜真里の二人と握手をする。そこにわだかまりは見られなかった。

 

「それと理事長、こちらの発送をお願いします。有栖さんとの接触を取れたことに対する報告書です」

 

 同じ学年への転入とはいえ、現在は夏休み。オマケにクラスも違うとなれば、『接触を取れるまでは時間が掛かる』と考えるのが道理だ。望外にその予測を覆すことになってしまったのだから、早めに知らせておいて損はない。

 

「確かに受け取りました。――さて! それじゃあ、お話も終わったところでご飯を食べに行きましょうか!」

 

 成守が促し、一行はご飯を食べに行くのだった。




4.5巻で『荷物の中に無許可で手紙を同封していた』というセリフがあるんですが、どうやってそれを知ることになったかが不明なんですよね。
いや、荷物を送る際に毎回チェックしていたのなら、『どんだけザルなチェックだったのか』という話ですし、その一方で生徒の『プライベート』にも関わってきますからね……。
普通に考えると、『職員のチェック可能な部分に手紙があった』という可能性が一番高いんですが、荷物と言うか、手紙を受け取った側からの『学校への確認』も一因としてはあり得ると思いました。
詐欺やら何やらが横行している御時世ですからね。

本作の成守さんは割と柔軟です。
条件を満たした場合に限りますが、『敷地外への荷物の発送』も普通に許容しますし、協力します。

で、伊織と亜真里。部署が違うとはいえ、そして『見習い』とはいえ、同じ『政府筋』の人間ですからね。
協力を求められたら理事長としては可能な限り協力しなければなりません。報告書や荷物発送なんかはその最たるものでしょう。
学校の敷地内にそっち方面の『危険物』が転がっている可能性がないわけではありませんしね。
その道の心得がある人物から『敷地内で危険物を発見したので、うちの部署へ送ります』と言われたら断る術はありませんし、『簡易的にですが封印を施してますので、余分に触れないようにお願いします』とでも言われたら尚更です。
チェックする側にその方面の心得と知識がない以上、その言葉を否定できる余地はありません。

そこを利用すれば、伊織と亜真里が『妹へのプレゼント発送』に関して葛城に協力することは十分に可能です。
伊織と亜真里の手で『簡易トラップ』を施しておけば、仮にチェックされても証拠隠滅は容易ですしね。
都合上、『森羅』を介さねばならないので手間と時間はかかりますし、葛城が『どこまで森羅を信じられるか?』という問題も絡んできますが、『妹へのプレゼント発送』が叶うことは事実です。

当然、成守もその点は承知の上です。
早い話、伊織と亜真里が同行してきた時点で、葛城が『踏み込む勇気』さえ示せば、葛城の目的が叶うことは確定していたわけです。
ただ、葛城にそれを『当然』と思われても困るため、成守さんから忠告が入った次第です。そこには葛城の成長を願う気持ちもあります。

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