スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
人とのコミュニケーションで最も大切なのは表情だ。その場の会話や、空気感にあった表情が円滑な人間関係を構築すると言っていい。
無表情な人と会話をしていると、聞いてるのかなって心配になったり⋯⋯つまらなそうな表情をしていると『なんだこいつ』って思ってしまう。
逆に面白い話をしている時に笑ったり、辛い事を相談している時に悲しそうな表情をしていると、ちゃんと自分と向かい合ってくれていると、嬉しく感じる。
とりわけ大事なのは笑顔だ。たかが笑顔と侮るなかれ。
笑顔は一瞬で場の空気を和らげ、相手の安心感と敵意がないという信号を伝える最強の非言語コミュニケーションツールだ。
信頼関係を築き、好印象を与えるだけでなく、会話の活性化やストレス軽減効果もあり、仕事や対人関係を円滑にする。ってネットの記事に書いてあった。
細かい事はよく分からないが、笑顔の方が相手に与える印象は良いってことだな。という事で実践してみよう。
「覚えて、ないかな?」
こうして笑顔で語りかける事で、雲雀には俺に敵意がないことが伝わるだろう。大事なのは首を傾げながら聞くこと。
さり気ない動作だが、このあざとい仕草を可愛いと思う男子は少なくない。かく言う俺もアニメや漫画のヒロインのあざとさに萌えていた一人だ。
雲雀に可愛いと思われたいとか、そういう訳ではないが⋯⋯少なくとも毒気は抜けるだろう。
「⋯⋯あっ、いや!覚えてる!ちゃんと覚えているよ!」
敵意は感じないが、やたらと挙動不審。
雲雀は何故か俺の顔を見ようとしない。見ても直ぐに視線を逸らす。後ろめたいことがある人間が行う⋯⋯なんとも怪しい挙動だ。
「どうしたの?」
ここはあえて、踏み込む事にする。
俺は鈍感ではないので、雲雀の心境は手に取るように分かっている。こうして聞くのは、雲雀が話しやすい状況を作るため。
俺と同じように、雲雀も今⋯⋯俺と顔を合わせるのを気まずいと感じている筈だ。その理由に関してわざわざ説明する必要はないと思うが、スカートの中を見てしまったからだ。
俺は別に見られても特に思うことはないが、雲雀がこうも慌てると⋯⋯なんという気まずい。なので、雲雀が謝りやすい流れに持っていく。
わざとじゃないから謝る必要なんてないんだけどな⋯⋯。
「悪い!!見る気はなかったんだけど、上を見たら、たまたま、その⋯⋯君の」
「下着が見えた?」
「そう!⋯⋯いや、うん。本当にごめん!!」
ちゃんと謝るのが雲雀のいい所ではあるんだが、状況が状況だけに申し訳ない気分になる。
普通なら上空に女の子がいるなんてことはありえない。何気なしに空を見たらスカートの中が見えたなんて、事故と同じだ。
まぁ、雲雀はむっつりさんだから直ぐに目を逸らさずに数秒間凝視していたのは知っている。それについては触れたりはしない。可哀想だからな。俺も男だから、気持ちはよく分かるよ。
「別にいいよ。あそこにいたおr⋯⋯私が悪いし⋯⋯」
一人称を慌てて「私」に変える。今の俺の姿は可愛らしい女の子だ。「私」の方が見た目に合っているだろうし、与える印象もいい。
話し方もできるだけ女の子っぽくしよう。彼女いない歴いこーる年齢なので、参考にするのはもちろんアニメの女の子だ。
「それより⋯⋯倒したんだね、それ」
これ以上、俺の下着なんかで雲雀を謝らせたり罪悪感を抱かせるのは申し訳ないので、話題を変える為に地面に横たわる『
近くで見ると、やはり見たことがあるようなないような見た目のオッサンがそこにいる。主人公が戦う覚悟を決める戦いの、かませみたいな敵キャラだから印象に残っていないんだろうな。
「⋯⋯俺が倒さなかったら、
どういう意図の質問だ? 雲雀が倒す以外の展開はない筈だが⋯⋯。
まさか!俺がこいつを倒すつもりだったと勘違いしているのか?上空で見ていたのも倒す機会を窺っていたとか、そう思った?
ないないない!原作介入なんてするつもりはもうないって!幸い、雲雀は俺のことを敵とは思っていないようだ。なら、この誤解も解いておこう。
「そいつは違う」
「違う?」
「うん。私の敵はそいつじゃない」
「⋯⋯⋯⋯」
俺の敵はそんなかっこいいやつらじゃない。
こいつに関して言えばかませでしかないが、『アビリティ・ストライク』に出てくる敵キャラは魅力的なキャラが多い。
特に幹部なんかは強さもかっこよさも頭一つ飛び抜けている。主人公たちに倒される舞台装置じゃない。彼らにも信念がある。だからこそ敵キャラであっても憎めない。好きになる。
対して俺の敵はどうだ?
性欲丸出しで、世界をザーメンまみれにしてやるぜ!って顔をしているような竿役どもだ。昨日のミノタウロスもどきはまだいい。
俺が先程倒した悪魔はそれこそチ〇コの擬人化みたいなやつだった。全身にモザイクを入れないと登場させられないような卑猥な見た目をしていた。
そんな卑猥な相手を1秒も多く視界に入れたくないので速攻で倒したのが、瞬殺の理由だ。
おかしいよな?同じ世界の筈なのに
「君は⋯⋯相棒の仇を探しているのか?」
相棒?パッと思い浮かんだのはピンク色の配色をした野生界では生きていけないクマ。自称魔法少女の相棒のミュー。ないな。
あれは害獣以外のなにものでもない。相棒の枠組みに入れるのは『相棒』という言葉に失礼だ。
だとすれば雲雀の発言に合う俺の相棒?そんなやつはいたか?⋯⋯いや、いた!かつていた!昨日までいた!
俺の下半身に生えていた、魔法少女になると共に失った大切な相棒!雲雀と初対面の時に相棒をなくしたってやり取りをしたな!
それで雲雀は相棒いこーるチ〇コと、結びつかなかったから言葉の本来の意味であるパートナーを亡くしたの勘違いした!
それで俺が仇を探していると思い込んでいる!?いけない、まずい勘違いだ!誤解を解いておかないと後々めんどうになる。
「ううん、探してない。相棒の仇なんて、最初からいないから」
「いない?どういうことだ?」
相棒がチ〇コだってストレートに言えたら誤解を解くのは簡単だが、この可愛らしい顔からそんなド下ネタを言うのは気が引ける。何より雲雀が可哀想だ。
「私の相棒は⋯⋯私が
「君
魔法少女に変身した際に肉体を作り替えられた。チ〇コを失ったのはその時だ。だから雲雀が言う、仇なんてものは存在しない。
「うん。⋯⋯相棒を失う事になるなんて、私は知らなかった。⋯⋯けど、あの時の私に戦う以外の選択肢がなかった」
今、思い返しても悪質な契約だ。
世界を人質に取られて実質、魔法少女になる以外の選択肢が俺にはなかった。とはいえ大好きな漫画の世界を護るためなら仕方ないと割り切れる。
後出しでチ〇コを失ってもな。
俺はもう、既に割り切ったぞ。どれだけチ〇コに思い焦がれても、チ〇コはもう戻ってこない。それが分からないほど、子供じゃないんだ。
「俺と、一緒だな」
悲しげな表情で俯く雲雀に言葉選びを間違えたことを悟る。相棒なんてあやふや言葉で表現したせいで、余計にややこしくなってないか、これ?
「俺もこの
雲雀が足元に転がる石に対して右手をかざすと、まるで引き寄せられるように浮き上がり雲雀の手に収まった。
今の現象は雲雀の能力が起こしたもの。
───『
それが『アビリティ・ストライク』の主人公が持つ能力の名称。
実際にこの目で見ることが出来てファンとして感動しているのだが、悲しげな表情の雲雀を見ると流石に顔には出せない。
「もう俺は⋯⋯妹のことを思い出すこともできないんだ⋯⋯」
めっちゃシリアスじゃないか、このやり取り。原作にもこんなシーンなかったよな⋯⋯。なんで俺なんかとこんなやり取りをしているんだ、雲雀くん。
やるならメインヒロインの雀とかとやってくれ、頼むから。
それはさておき。俺は原作を知っているので雲雀が言っている事の真意を知っている。雲雀は、今見せた能力の代償に大切な妹との記憶を失っている。
雲雀が言うように、もう思い出すこともできない。
───能力を得る代償に最も大切なモノを失う。
言ってしまえばそれが『アビリティ・ストライク』の設定だ。幾つかのパターンはあるが原作の登場キャラが能力に目覚めるきっかけは大きくわけて二つ。
命の危機に瀕して、能力に目覚める事で危機から脱却。その後、大切なモノを失っている事に気付く。主人公である雲雀はこのパターンだ。
失ったものが記憶だった事もあり、雲雀は直ぐには気付けなかった。雀から指摘があって気付いた筈だ。
もう一つが大切なモノを失ってから能力に目覚めるパターン。メインヒロインである雀がこのパターンだ。
彼女は目の前で母親を殺されて能力に目覚めた。
殺したのは『
もちろん、能力に目覚めるのはごく一部の選ばれた人間だけ。誰もが同じ状況で目覚めるわけではない。俺なんかでは天地がひっくり返っても能力に目覚めることはないだろう。
これが所謂、『アビリティ・ストライク』の原作設定になるんだが⋯⋯。
あれ?俺の今の状況も⋯⋯『アビリティ・ストライク』のキャラたちと似ていないか?
魔法少女になる代償に
雲雀目線では相棒いこーるチ〇コには結びつかず、能力に目覚めた代償として大切な人を失ったように見える。
まずい!!!
雲雀は今、自分と似たような境遇の俺に親近感が湧いて好意的に接している筈だ。
言えない!
妹との大切な記憶を失って悲しんでいる雲雀に、『相棒はチ〇コのことだよ』なんて口が裂けても言えない!
「君も同じなんだな⋯⋯」
「うん⋯⋯」
ごめんなさい。大好きな漫画の推しキャラに俺は嘘ついてしまいました。
───チ〇コなんです。
俺が失ったのは、チ〇コなんです。