スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
気付けば三日ほど日付が経過していた。
この三日間であった事をあげるとすれば、ネットショッピングで頼んだ衣類が届いたくらいだろう。
服に関しては特にこれと言って思う事はなかったが、下着に関しては着けるのに抵抗があったな。これを付けたら⋯⋯もう戻れない。そんな心境だ。
だからといって男に戻れる可能性はゼロに等しく、女として生きていくなら避けては通れぬ道。という事で腹を括って女性ものの下着を着用した。
下は問題ない。いつも穿いているパンツのように穿くだけだった。ただ、やはり経験がないのでブラジャーの付け方で苦労した。
今の世の中は便利なもので、ネットで調べればブラの付け方は直ぐに分かる。動画とかも上がっているからな。
無事に下着を付けることに成功はしたが、やはり違和感はある。けど、胸が擦れるよりはずっとマシだな。
これがこの三日間で起きた、ちょっとした出来事だ。
この間に
そういえば、啓吾から来週からは来れるのかって連絡がきてたな。⋯⋯行けないんだよな、風邪じゃないから。もう高校には通えないと思っていい。
後で理由とか色々考えておかないとな。学校も辞めないとだし、来週から少し忙しくなりそうだ。
俺は俺で楽しみを見つければいい。
高校生活が全てではないし、社会人として働く一生も全てではない。まだ先の長い人生だ。やりたいことを見つけよう。
目下の楽しみは原作が動く二日後の日曜日。原作通りに進むのであれば、雲雀と雀の二人はショッピングモールでラスボスと遭遇してしまう。
その場で戦闘となり、二人がかりで戦うが作中最強のラスボスには敵わず⋯⋯その戦闘で雲雀は死んでしまう。まぁ、死ぬと言ってもその後色々あって生き返るんだが⋯⋯。
俺からすると重要なのはその戦闘よりも、その回に登場する推しキャラだな。
漫画もアニメもその回だけは何度も見返した。原作の世界に生まれたなら、推しの登場シーンだけでは見逃せない!かっこいいんだよ、あのシーン!
早く日曜日にならないかなってファンの一人として心待ちにしている。
「それにしても来ないな」
「来ないポヨねー」
「なんでだろうな」
「あんな倒し方したら悪魔も警戒するポヨ」
この三日間、俺は悪魔と戦っていない。いつ、悪魔がこの世界に介入してきても動けるように準備していたのに一度も出てこなかった。
理由に関してはミューが言っている通りだろう。『人間界』と『影の世界』にはまだ世界の壁がある。なのでこの世界に悪魔が出てくるまで時間がかかる。
前回はその最中に俺が倒してしまったからな。悪魔側も同じ轍を踏まないように対策を練っているところだろう。
「ところで話は変わるポヨけど」
「なんだ?」
「せっかく女の子らしい服を買ったのに着ないポヨか?」
リビングのカーペットの上でゴロゴロと寝転がる俺を見て、ミューから苦言が入る。言いたいことは理解している。せっかく可愛らしい見た目なんだから、もっと女の子らしい格好をしろと言いたいのだろう。
現在、俺が着ている服は白のジャージだ。昔から部屋着として着ていたのもあり、過ごしやすくて助かっている。
「見せる相手もいないし、わざわざ女の子らしい格好をする必要ないだろ」
俺から言わせればそれに尽きる。この家には俺しかいない。人と会うならそれなりの格好はするが、家でゴロゴロしているなら過ごしやすいラフな格好がいい。
買い物も今どきはネットである程度済ませられるからな。わざわざ服を着替えて外に出る必要性もない。
悪魔を倒したり『アビリティ・ストライク』の原作イベントを見に行く時は魔法少女に変身するから、これまた着替える必要もない。
ミューがこれを買えこれを買えって煩いから女ものの可愛らしい服は何着か買ってはいるが、それをお披露目する日がくるのやら。
「ボクがいるポヨよ」
「お前が見せる相手にカウントされているなら、脳みそを解剖して見て貰った方がいいぞ。多分腐ってるからな」
「酷いポヨ!!」
害獣の癖に面白い冗談を言うなと笑い飛ばしてやる。これでもし本気で言っているのであれば床に沈めていたところだ。
もちろん、冗談だよな?
笑顔で確認すると、ピンク色の顔を青白く染めて壊れたように首を縦に振るクマがいた。良かった、冗談らしい。
そろそろ本気でこいつに立場というものを分からせてやった方がいい気がしてきたな。脳内お花畑のこのクマ畜生はこのように調子に乗ることがある。
つけ上がる前に身の程を分からせておくか。
ひとまず、いつものように頭を握り潰そうとミューに近付くと、青白い顔のまま激しく震えだした。
怖がってる? いや、違うな。この動きは以前見たことがある。
「きたポヨ!!!」
全身を細かく振動させながらミューが叫ぶ。
ぶっちゃけ気持ち悪い動きをしている。悪魔がこの世界に侵入した事を察知できるのは素晴らしい。けど、動きがバイブみたいで嫌悪感が湧くんだよな。
「魔法少女!メイクアップ!」
ミューに感じる嫌悪はさておき、悪魔がこの世界に来たようなので対処する為に魔法少女に変身する。
「相変わらず判断が早いポヨね」
「モタモタしていてもいいことはないだろ?」
俺たちが現場に駆けつけるのが遅くなれば、この世界の人間が悪魔の被害に合う可能性がある。
悪魔にとって最高の獲物は魔法少女である俺なのだが、ぶっちゃけ人間であれば誰だって犯される可能性がある。うん⋯⋯男も女も、子供も、老人も関係なしに悪魔はヤるらしい。
ストライクゾーンが広いとかそういうレベルの問題じゃない。悪魔は人間とヤれたらそれでいいらしい。イカれた種族だと、つくづく思う。
「場所は分かっているんだろ、案内しろ」
「こっちポヨ!」
ミューが律儀に玄関から外へと向かう。俺も同じように律儀に家の鍵を閉めてから、ミューの案内で現場へと向かう。戸締りは大事だ。
「あそこだポヨ」
「あー、見えたわ」
ミューの案内で空を飛ぶこと10分弱。昨日よりも到着に時間がかかった自覚はある。そのため、悪魔は既にこの世界に降りたっていても驚きはなかった。
「相変わらずデカイな」
色々と。
全長は10メートルを優に超える。筋肉隆々の逞しい肉体をしていて、なんと腕が四本も生えているじゃないか!
エロゲやアニメならあの腕で四肢を掴まれてオナホのような扱いを受けるに違いない。
下半身に生えた今の俺にはない、巨大な肉棒はどうやっても人間に入らないだろう。人間の腕よりも尚、太くてデカイ。しかも謎に二本生えている。一本、俺にくれよ。
「鬼か⋯⋯」
身体ばかりに注目していたと、視線を上げるとそこには鬼の顔があった。節分の日に良く見る鬼の顔だ。
その鬼はまるで俺が来るのを待ち構えるように、四つの腕を器用に組んで道路の真ん中に立っていた。
交通量が少ないとはいえ、多分そこに立ってるのは邪魔だと思う。悪魔からしたら関係ない話ではあるが。
「あいつは⋯⋯ポヨ!」
「知っているのかミュー」
思い出したように、こいつ語尾を付け足したな。キャラ作りか? 思わず冷めた目で見てしまったが、面白いくらいに震えるミューを見ると割と大事なのかも知れない。
「知っているポヨ!あいつは『影の世界』の幹部!『百八柱』が一柱!『鬼チ〇コ』の赤鬼ポヨ!」
多いな。敵の幹部なんてアニメや漫画ではありがちだが、流石に百八は多すぎだろ、ふざけてるのか?
幹部を誰にするか選べなくて片っ端から任命したら百八になったとかそんなんじゃないだろうな。ちゃんと百八も登場するのか? 途中でめんどくさくなって纏めて出てくるパターンだろ、これ。
敵幹部の異名の酷さも今更ツッコミは入れない。というか名前が普通で面白くないな。そこまでいったら突き抜けろよ⋯⋯中途半端だな、おい。
「貴様が魔法少女マジカルだな」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
と、すまない。驚きのあまり前世のネットミームが出てしまった。
一体目がミノタウロスもどき、二体目がチ〇コの擬人化と、立て続けに対話不可の性欲モンスターと対面していたのでまさか言葉を喋るとは思っていなかった。
いや、エロゲでもよくあるシチュエーションか。幹部クラスの敵は普通に言葉を喋るもんな。目の前の鬼は無駄に多い幹部の一人だ。喋って当然か。
「あなたは、赤鬼であってる?」
「いかにも!我こそが!マジカルチンポッコ様に選ばれた精鋭!『百八柱』が一柱!赤鬼である!」
敵幹部の登場シーンに相応しいかっこいい名乗りだと思う。けどさ、仮にも大事な名乗りだぜ、なんでお前⋯⋯マスをかいてんの?
大事な名乗りの最中にチ〇コ弄るなよ。ふざけんな。なんで俺の敵はこんなやつばっかりなんだ。
「マジカルチンポッコ様の命で!魔法少女マジカル!お主を倒させて貰おう!」
初めての敵幹部戦がこれか⋯⋯。
原作における雲雀の幹部戦は名バトルが多くて憧れたんだよ、俺。落差が酷いよ。
何故だか知らないが、涙が出てきた。
「いくぞぉぉお!魔法少女マジカル!!!」
───瞬殺した。