スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている   作:かませ犬S

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不安

 漫画やアニメを見ていて思ったけど、めっちゃ美人だな⋯⋯先生。

 

 スタイルもいい、顔もいい、声もいい、何より大人の余裕溢れる雰囲気からの、デレ。これのギャップが素晴らしかった。

 

 俺の大好きな推しキャラだ。

 

「へぇ、オレ様をぶちのめすって?」

 

「あたしの可愛い生徒に手を出して、タダで済むと思うなよ犯罪者⋯⋯」

 

 今、雲雀や雀を守るように漆原の前に立つ女性───カモメは原作における先生ポジションのキャラクターだ。

 

 雲雀や雀に能力の指導や戦い方を教えたり、生徒の二人が間違った道へ進もうとした時は、大人として⋯⋯先生として道を正していた。

 

 作中通して常識人ポジにいる人物で、常に危険な場に身を置く雲雀や雀のことを気にしてくれていた。

 

 加えて、作中における最高勝率を誇るキャラクターでもある。カモメも雲雀たちと共に『Los Lobos(ロス・ロボス)』に戦う事になるのだが、その勝率はなんと90%。

 

 戦績でいえば10勝1敗けだったと記憶している。この1敗も生徒を庇って負けた戦いで、カモメ一人なら勝利していた可能性が高い。

 

 雲雀たちのピンチにカモメが駆けつけた時の安心感は凄かったな。常に勝ち確定BGMが流れている感じだ。

 

 それは作中最強キャラクターである漆原が相手でも同じ。先生が来たならどうにかなる。そう思わせてくれる。

 

「なら、やってみろよ!」

 

 挑発的に笑った漆原は銃口を素早くカモメに向けて発砲。その弾丸は弾道のままに突き進み、胸の中央───心臓を撃ち抜いた。

 

「威勢よく吠えたくせに⋯⋯、その程度かよ」

 

 舌打ちをしてつまらなそうに漆原が吐き捨てる。普通ならこれで終わりだ。けど、カモメは違う。

 

「なんだ、今の豆鉄砲であたしを殺したと思ってるのか⋯⋯甘ちゃん坊主」

 

「あん?」

 

 殺した筈のカモメが何事もなかったように話しかける。大きく前方に突き出した両胸のちょうど中間辺りに小さな穴が空いている。銃弾は間違いなく当たっていた。

 

 それでも死なない。

 

 舌打ちを打ちながら漆原が拳銃を撃つ。次の照準は頭。銃声が鳴り響き、銃弾はカモメの額に撃ち抜いた。

 

 脳天直撃。普通の人間なら即死だ。

 

「だから効かないっての」

 

 それでも死なない。

 

 これがカモメの能力(アビリティ)───『再生(リジェネレーション)

 

 能力が尽きない限り即死の攻撃であっても再生し元の状態に戻す。頭が吹き飛んでも、体が真っ二つに裂けても、それでも死なないのがこの能力だ。

 

 俺の視線が額に向いている内に、胸に空いていた穴が塞がっている。そして再び額に視線を向ければ同じように穴は塞がっていた。

 

 この能力のやばいところは、対象が能力者本人だけではないということ。その手に触れるという条件はあるが、能力を使えば他人であっても再生することができる。

 

 この能力のお陰で原作の雲雀は蘇ったわけだ。死なない能力、死なせない能力、そして死ねない能力⋯⋯それがカモメの『再生(リジェネレーション)』。

 

 流石にチート過ぎるからか、後付けで下方修正くらってたな。死んだり、体の欠損が出てから時間が経ってると能力を使っても再生できないとか、一度に再生できるのは一人だけとか、強すぎ故に主人公陣営で唯一能力に制限をかけられていた。

 

 理由は分かる。カモメがいると戦闘の緊張感が下がるからだ。死んでもカモメがいるから大丈夫でしょ!傷を負ってもカモメがいるから!そんな感じで緊張感がなくなる。

 

 露骨な下方修正を何度かくらっているんだが、それでも勝率は90%とイカれた強さをしている訳だ。

 

「いいね!最高だよ女!!」

 

 漆原のテンションが上がってる。作中でも描写されていたが漆原は強い相手が好き。強敵を己の手でぶち殺すのが何より好きだ。

 

 だから簡単には死なないカモメを見て最高の獲物を見つけたと言わんばかりにテンションが上がってる。

 

「さぁ、来いよ!!」

 

「お言葉に甘えて!」

 

 次はお前の番だとクイクイっと拳銃を持っていない手で挑発している。

 

 漆原は自身の能力で全ての攻撃を無力化することができる。無抵抗であってもカモメの攻撃は脅威にもならない。その余裕さを見せながら、攻撃を受け止めて反撃する。そういうシナリオだろう。

 

 カモメは漆原の挑発に乗って素早い動きで肉薄する⋯⋯と見せかけて、無駄のない動作で1番近くにいた雀を拾い、その後すぐに雲雀を拾い、両肩に二人を背負って漆原に背を向けて走り出した。

 

 二人の体重を合わせたら100kgは超えてそうなんだが⋯⋯軽々と運んでいるところを見ると、その身体能力の高さが窺えるな。運び方とかも色々ありそうだ。

 

「───は?」

 

 攻撃してくるかと思ったら、雲雀と雀の二人を連れて逃げていったカモメに漆原が呆気に取られている。少しずつ離れていく背中に慌てて照準を合わせるが、既に弾が届かない位置に到達している。

 

「逃げるか、普通⋯⋯」

 

 カモメの背中に向けていた拳銃が、漆原のテンションと一緒にゆっくりと下がる。拗ねた子供のような表情で、見えなくなったカモメに文句を言っている。

 

 残念ながらカモメと漆原では目的が違う。

 

 カモメの優先順位は漆原を倒すことじゃない。生徒の救出だ。倒さなければいけない状況であれば、決死の覚悟で挑んだだろうが⋯⋯慢心モードの漆原を見て、いける!って思ったんだろうな。

 

 原作でも同じように逃がしているいるし、やっぱりラスボス(笑)だな。

 

「ちっ⋯⋯若鬼!!何処だ!どこにいる!!」

 

 テンションが大幅に下がった漆原は舌打ちを打った後、若鬼を探してその場を離れていった。

 

「ヤバそうなやつポヨ」

 

「ヤバそうじゃなくて、実際にヤバいんだよ」

 

 漆原が本気で戦っていたら今の原作組三人では歯が立たない。レベチで強いからな、あの男。伊達に作中最強を名乗っていない。

 

「帰るぞミュー」

 

「了解ポヨ」

 

 原作イベントは無事に確認できた。

 

 雲雀が死ななかったり、原作とは違う展開ではあったがカモメに二人とも救出されたから大丈夫だろう。

 

 あの後はカモメからお説教をくらって、能力で治療して貰う筈だ。原作では雲雀の死に罪悪感から号泣している雀を慰めて、カモメが『再生(リジェネレーション)』で雲雀を蘇生していたっけな?

 

 死んで直ぐだったから蘇生が間に合ったとか、雲雀が能力で銃弾を引き寄せて弾道がズレて即死じゃなかったとか、ご都合展開だった覚えがある。まぁ、主人公死んだら物語が終わっちゃうしな。

 

 とにもかくにも、今のところは原作通り。このまま展開が変わることなく進むなら、漆原相手に何も出来ずに負けて意気消沈している雲雀の元に、刺客としてソルシオン───啓吾が現れる筈だ。

 

 探りとして火曜日の予定を啓吾に確認したが、予定があるから家には行けないって返ってきていた。なので、まず間違いはない。

 

「それにしても可哀想だな」

 

「なにがポヨ」

 

「このショッピングモール、何も悪くないのにしばらく営業停止だぜ」

 

 若鬼の能力によってショッピングモールに訪れていた全ての客が眠り落ちた。中には倒れた衝撃で頭を強く打って障害が残った者もいたはず。

 

 集団昏倒事件なんて大々的に扱われて、ショッピングモールに問題がなかったか捜査が入っていた。今回の最大の被害者は間違いなくこのショッピングモールだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 漆原や若鬼たちに見つかることなく無事に家に帰ることが出来た。原作のバトルを見れてファンとして良かったと思う反面、不安も込み上げてくる。

 

 

 

 ───勝てないな、あれ。

 

 

 

 漫画とアニメを見て漆原の強さは分かっていたが、実際に目の当たりにすると勝つビジョンが浮かばない。

 

 能力を使い切るまで遠くからチマチマ攻撃する?それを許してくれるほど漆原は甘くないだろう。原作キャラの中には似たような方法で使用回数を削ろうとして、削り切る前に漆原に殺されていた。

 

 その戦いにしたって序盤から中盤はずっと舐めプしていた。終盤になってようやくやる気を出した漆原が()()()()()()()を使い⋯⋯それで、決着。

 

 結局、アレを使われたら勝てないんだよな⋯⋯俺でも。そうなるとやっぱり漆原と戦うのはナシだ。

 

 雲雀と戦った後、アジトに帰還する前に俺の家に連れ去る!それしかない。

 

 問題があるとすれば⋯⋯悪魔がこの世界に侵攻してくる時間が、原作のソルシオン戦と被ってしまっていること。

 

 完全にではない。けど、悪魔を倒すのに手こずると駆けつける前に啓吾が先にアジトに帰ってしまうかもしれない⋯⋯。

 

 

 

 ドクンドクンと、不安から心臓が鳴る。

 

 

 

 失敗は許されない。俺が失敗すれば⋯⋯啓吾が死んでしまう。それだけは嫌だ。

 

「⋯⋯いやだ⋯⋯一人にしないで」

 

 脳裏に原作のシーンが浮かび上がる。

 

 倒れたソルシオンの背中を踏みつけながら漆原が拳銃の銃口を頭に向ける。そして⋯⋯。

 

「⋯⋯あっ⋯⋯」

 

 再び脳裏に浮かんだシーンでは、原作と違いソルシオンはヘルメットを被っておらず啓吾の顔がはっきりと見えていた。

 

 ボロボロの啓吾を踏みつけて原作通りのセリフと共に銃口が向けられる。

 

「嫌だ!」

 

 頭の中に銃で撃たれて動かなくなる啓吾がいた。その姿を否定するように激しく首を振る。

 

 違う。今のは違う。俺の不安が見せた悪い想像だ。現実なんかじゃない。

 

 怯えるな。不安がるな。俺がやらないといけないんだ。

 

 俺が、たすける。

 

 俺の手で啓吾を助けるんだ。

 

 絶対に死なせない。

 

「啓吾⋯⋯」

 

 ───不安で眠れない夜が過ぎていく。

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