スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
ソルシオンが啓吾だって気付いた時から、どうしてこいつが『
原作のキャラのように家族を人質に取られて無理やり従わせられているんじゃないのかって勝手に想像していた。だってそうじゃなければ啓吾の性格上、漆原の理想に賛同するとは思えなかった。
無理やり従わせられているのなら、啓吾を原作の死から救ったら、今度は俺が啓吾の助けになろうって思ってた。
たくさん話を聞いてくれて、一緒になって泣いてくれて、俺に考え付かない事も見つけてくれた。啓吾のお陰で先の見えない闇に一筋の光が差したようだった。
ありがとう。
そして、ごめん。
啓吾はずっと一人で戦っていたんだな。俺にはそんな素振りを見せないで、俺の命を⋯⋯組織から護るためにずっと戦ってたんだよな。
啓吾と雲雀の戦闘シーンを思い返せば分かる。あれは初めての戦いじゃない。手練の戦いだった。それだけ、啓吾は俺の知らないところで手を染めていた。
他の誰でもない、俺を護るために⋯⋯。
だから今度は俺が護る番だ。俺は啓吾を救うために此処にきた。俺が漆原のモノになればお前を救えるのなら、俺はそれでいい。
啓吾が死ぬ未来なんて、俺には考えられない。
「オレ様のモノになるってことでいいんだな、女⋯⋯」
「やめろ、オレはそんな事望んで⋯⋯」
「お前は黙ってろ」
啓吾の言葉を遮るように漆原の蹴りが啓吾の腹部を襲う。
「ぐっ⋯⋯やめろ⋯⋯頼むから」
その声は漆原への懇願じゃない、俺への制止だ。
啓吾の顔が歪んでる。痛みだけじゃない。俺に背負わせる事への罪悪感や、後ろめたさ⋯⋯あるいは俺の選択への悲しみ。
俺は啓吾じゃないからどういう想いで俺を止めているのか分からない。けど、もうこの選択肢しか啓吾を助ける道はない。
俺には漆原は倒せない。このままやり合っても二人揃って死ぬだけだ。
漆原の提案を飲む以外に、二人が助かる道はない。
「ごめんな、啓吾⋯⋯でも、俺⋯⋯お前が死んだ未来を考えられない。受け入れられない⋯⋯啓吾に、生きていて欲しい」
「純平⋯⋯」
「だから、お願い⋯⋯生きて⋯⋯」
啓吾は俺をどう思ってるのだろう。
啓吾にとって俺が何よりも大切だったって事は、素直に嬉しい。だって、俺もそうだから。
───その好意は友達として?それとも?
分からない。 啓吾が『
その時から啓吾は俺を大切な人だって思ってくれていたって事だよな。家族よりも大切な人って。
俺が
「良かったな、負け犬。この女はお前に生きて欲しいからオレ様の
「ぐっ⋯⋯」
「その上で覚えておけ。間違っても死のうと思うな。お前が死んだ瞬間にこの女は殺す。女を生かしたいなら生き続けろ」
漆原が俺に近寄ってくる。俺が身構える前に漆原が動き、拳銃を持っていない手で顎をクイッとされた。少女漫画くらいでしかされない構図だ。
「お前もだ女。お前が死を選んだ瞬間にそこの負け犬は殺す。お互いに大切に想い生きて欲しいと思うのなら、死ぬことは選ぶな⋯⋯いいな」
「わかった⋯⋯」
俺が了承すれば漆原は満足そうに笑う。
「面倒だが、こうでも言っておかないとせっかく手に入れたモノがオレ様の手から離れてしまうかもしれないからな」
面倒くさそうにため息を吐きながら、俺の顎から手を離した。
漆原の言葉通りだ。啓吾が死ねば⋯⋯俺はきっと後を追う。漆原からすれば容認できない。だから俺たち二人に楔を打ち込む。ある種の呪いようなものだろう。
「啓吾⋯⋯」
泣きそうな顔をしていた。悔しそうな顔をしていた。俺が名前を呼ぶと、その瞳から涙が流れた。
言葉が出ない。俺の選択は間違っていたのだろうか。啓吾を生かす為の選択が今、啓吾を苦しめているんじゃないか?
それでも俺は啓吾に生きて欲しい。死んで欲しくない。全て、俺のエゴだ。
「ぐっ⋯⋯はぁ、はぁ」
歯を噛み締めながら、啓吾はゆっくりと立ち上がる。頬を伝う涙を掌で拭い、漆原に撃たれた足を引き摺りながら店の出入口へと歩いていく。
「くはははは!ガキ相手に負けるカスではあるが⋯⋯空気は多少読めるらしいな。オレ様は今からこの女とお楽しみだ⋯⋯早く消えろ」
啓吾の足が止まる。ギリっと歯を噛み締める音がした。
「おい、オレ様は消えろって言ってんだ。早く消えろ⋯⋯この女を殺されたいのか?」
「くっそ⋯⋯」
再び啓吾が足を引き摺りながら歩いていく。ゆっくりとした足取りで、その背中が少しづつ遠ざかっていき⋯⋯入り口の扉が閉まるとその姿はもう、見えなくなった。
───これで本当に良かったのか?
啓吾の後ろ姿を見て、本当に俺がした選択が正しかったか分からなくなった。
確かに、俺の選んだ選択で啓吾の命は助かった。原作のように漆原に殺される事はなかった。救えたはず⋯⋯救えた筈なんだ。
それなのに⋯⋯俺が選んだ選択が啓吾を苦しめているように見えて仕方なかった。
「お前の選択は間違いじゃないぜ、女」
声に反応して啓吾がいなくなった入口から、漆原の方へと視線が移る。
「お前があの選択を選ばなければ負け犬はオレ様が殺していた。お前は命を救った⋯⋯そう思えばいい」
これを命を奪う側が言っているんだから腹立たしい限りだ。本当にカスだな、この男。
力がないってのは本当に惨めだ。選択肢すらまともに選ばせてくれない。強い奴の条件を飲むしかない。弱肉強食なんてよく言ったものだ。
「これで晴れてお前はオレ様の
楽しそうに笑いながら俺を見た後、漆原は入口まで歩いていき鍵をかけた。あ、鍵はかけるんだと場違いな感想が浮かんだ。
「付いてこい」
俺の返事を聞かずに漆原は歩いていく。無視する選択肢は最初から俺にはない。前を進む背中に睨みながら、漆原の先導で店の奥へと進んでいく。
普通の店じゃないな。既に閉店しているのかあちらこちらに埃が積もっている。漆原が一瞬だけ俺に目配せして、店の奥にあった階段を登っていく。どうやら目的の場所は2階らしい。
ギシギシと、一歩踏む事に音のなる階段を抜けた先には廊下が続いており部屋が二つ確認できた。漆原はその内の一つの扉を開け、中に入れと俺に言う。
「⋯⋯っ───」
漆原の言葉に従って中に入ると、これまでの道中と違い綺麗に掃除された部屋が俺を向かい入れる。普段からこの部屋を使っているんだろう。
柔らかそうなソファ、大理石でできたテーブル、壁にかけられた絵画⋯⋯この部屋に置かれたインテリア一つ一つが高級品であるのは一目で分かる。
その中でも目につくのが部屋の奥に設置された、ベッド。俺が家で使っているものよりもずっと大きい。キングとかクイーンサイズとかになるのか?
まるでホテルのようにメイキングされたシワひとつないシーツと、掛け布団が目視できた。
ベッドを見ると嫌でもその先が連想される。漆原が言っていたお楽しみ⋯⋯それが分からないほどピュアではないし、ガキでもない。
啓吾の命を救う為なら俺の体くらい、どうなってもいい。
「いい部屋だろ? 若鬼が手配したオレ様専用の休憩所だ」
入ってきた扉が閉まる。漆原の手で入口の鍵が閉められた。もう、逃げ場はない。
「お前はもう、オレ様の
「はい」
魔法少女になって俺だけエロゲみたい世界観で竿役と戦った。負ければ陵辱。それが嫌で必死に戦った。
まさか⋯⋯俺の最初の相手がエロゲの竿役じゃなくて『
本音を言えば男になんて抱かれたくない。元の性別が男だからこそ、尚更⋯⋯嫌悪感が湧く。けど、俺には拒否することすらできない。
漆原の機嫌を損ねて万が一にも啓吾に手が回らないように。俺が我慢すれば全て解決する。
天井のシミを見ているうちに終わったらいいな。
「お前はオレ様に選ばれた。他の誰でもない、このオレ様のだ。光栄に思うがいい」
「はい」
漆原が部屋の中央へ歩いていく。
「覚悟を決めろよ女⋯⋯」
ゆっくりと漆原が振り返る。両腕を大きく広げ、まるで演説するかのように大袈裟に漆原は言う。
「お前はこれから、オレ様のママになるんだよ!!!!」
「───え?」
作中最強って言葉に引きずられてたけど、そういやこいつ⋯⋯