スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている   作:かませ犬S

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愛の契り編
ラスボスと俺


「オレ様の組織の名は『Los Lobos(ロス・ロボス)』。スペイン語で狼って意味だ」

 

 高級そうなソファにそれはもう偉そうに足を組んで座るのは、『アビリティ・ストライク』に登場する作中最強の呼び名の高いラスボス、漆原(うるしはら) ロウ。

 

 第一回人気投票では数少ない登場回数で6位を獲得。顔の良さによる女性票の獲得が順位に表れた。第二回人気投票では17位に大きく陥落。主な要因は性癖バレからの女性票離れだと言われている。

 

「狼は群れで行動する生き物で、厳格な順位階層を持つ。『Los Lobos(ロス・ロボス)』もまたその生態に習って組織の一員に階級を与えている」

 

 部屋に備え付けの冷蔵庫から取り出したコーヒーを飲みながら、漆原が俺に対して組織の事を説明している。

 

 第一回人気投票で顔の良さだけで高順位にくい込んだだけはあり、なんとも絵になる光景ではあるのだが⋯⋯。

 

 信じられるか?この自信満々で唯我独尊を地で行く男がほんの数分前まで、赤ちゃんプレイをしていたなんて⋯⋯。

 

 多分、話しても誰も信じてくれないだろう。

 

 俺の胸に顔を埋めてきた時は、やっぱりヤル流れかと警戒したが待てど待てども先には進まず⋯⋯『ママァ』と甘えるような声を出す始末。普通に引いた。

 

 その他にも、膝枕して頭を撫でてあげたり、組織のボスをしてて偉いねーなんて、幼い子供にするような甘やかしをひたすらした。

 

 原作の漆原はここまで露骨に変態プレイをしていなかったはずだ。カモメに対してどこに母性を感じたかは知らないが、『オレ様のママになれ』なんて迫って、読者をドン引きさせていた覚えはある。間違いなくこの性癖バレが人気投票に影響したな。

 

 第三回の人気投票ではラスボスとしての風格と圧倒的な強さで存在感を出して9位に浮上。10位の若鬼と一緒に主従でベスト10入りを果たしていたな。そんなこぼれ話はともかく。

 

 漆原は俺に対して赤ん坊のようにさんざん甘えて満足したのか、今のように原作の漆原として振舞っている。あまりの温度差に風邪を引きそうだ。

 

 ぶっちゃけ切り替えの早さについていけていない。オレは心を虚無にして漆原が求める赤ちゃんプレイに対応していたというのに⋯⋯。賢者タイムか、おい。思わずため息が出た。

 

「あん、何ため息を吐いてんだ。オレ様の話をちゃんと聞いてんのか?」

 

「聞いてまちゅよ」

 

「その口調はプレイ中にだけしろ。普段の会話で喋ったら殺す」

 

「すみません」

 

 赤ちゃんプレイって自覚あるんだ。尚更、引いたわ。めっちゃ気持ち悪いやつだな、この漆原ってやつ。

 

 こんな気持ち悪いやつ原作に出てもモブくらいの存在だろ⋯⋯そうであって欲しいよ。なんでこんなのがラスボスなんだ。いや、うん、原作の漆原はもう少しマシだった記憶がある。

 

 たまに見せる変態性で読者を引かせていたのは確かだけど、原作に登場する漆原はただひたすらに強者として描かれていた。ちゃんとラスボスとしての風格を見せていた。

 

 もしかしたら原作に描かれていない箇所で俺が行ったような赤ちゃんプレイをしていた可能性は否めないが⋯⋯少なくとも原作にはそのようなシーンはない。

 

 それもあって余計にこの変態性に気持ちがついていかない。大好きだった作品のラスボスが、こんなイカれた性癖持ってるのを受け入れられないよ俺。

 

「あの、一つ確認いいですか?」

 

「なんだ?手短に言え」

 

「俺の⋯⋯甘やかしは満足しました?」

 

 いや、俺が聞きたいのはこんな事じゃないな。なんで俺、こんな変な事を聞いてんだ? まだ気持ちの整理ができていないのかも知れない。

 

 まぁ、今の漆原は原作っぽい雰囲気だし俺の質問を適当に流して終わりだろ。そう思っていたが、何か考え込むように顎に手を添えている。

 

「言葉は悪くなかった⋯⋯だが、次はもう少し感情を込めろ。母親になったつもりで甘やかせ」

 

 俺、男ですけど!?子供を生んだことも育てた事もありませんけど!? 母親になったつもりでって⋯⋯出来るはずないし、それを求めてくるのは普通にキモイ。鳥肌立ったわ。

 

「わかりました⋯⋯精進します」

 と言いつつ、次の赤ちゃんプレイも俺は虚無の心で応じるだろう。そうしなければ現実を受け入れることができない。

 

 どれだけ補正をかけても年下の女の子である俺に成人済みの男が子供のように甘える?普通にきつい。俺が逆の立場なら自殺するレベルだ。なんでこんな変態プレイを当たり前にこなせるんだ。これがラスボスの風格とでも言うのか。

 

 知りたくもない事実に戦慄している俺に漆原が、冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを投げてきた。飲めって事だろう。

 

「ありがとうございます」

 

 一応、礼を言っておく。漆原は満更でもない風に鼻を鳴らす。

 

「お前はオレ様が求めた時だけ母親として接しろ、それ以外は普通でいい」

 

「あ、はい⋯⋯」

 

 その方が助かるは助かるけど、普通にキモイ事を言っている自覚はおるのでしょうか? 口に出したら殺されそうなのでチャックをしておく。

 

「話を戻すぞ。お前もこれからは『Los Lobos(ロス・ロボス)』の一員として動いて貰う。本来なら他の新入りと同じように一般兵として扱うつもりだが⋯⋯」

 

 含みのある言い方で、言葉を止めた漆原が考え込むような素振りをしている。何故か、知らないが嫌な予感がした。

 

「お前は仮にもオレ様のママだ。右腕は若鬼で埋まっているし、左腕は(ひばち)以外を選ぶと揉める⋯⋯」

 

 若鬼は言わずと知れた『Los Lobos(ロス・ロボス)』のNo.2 漆原の右腕だ。そして、今⋯⋯名前が上がったのが組織のNo3 不知火(しらぬい) (ひばち)。原作における漆原の左腕で、漆原を崇拝している狂人でもある。

 

「決めた⋯⋯お前は今日からオレ様の相談役として迎え入れる」

 

「そ、相談役?」

 

 やってる事は赤ちゃんプレイですけど⋯⋯。

 

「組織のNo4.だ。ふはははは!異例の大出世だ、良かったな」

 

 漆原が楽しげに笑っているが、まるで嬉しくない。啓吾を護るために身を犠牲にする覚悟を決めた。漆原に抱かれてもいいくらいの気持ちでいた。けど、『Los Lobos(ロス・ロボス)』に入るのは嫌だな。

 

 原作を知っているせいで組織の一員が一癖も二癖もあるイカれ集団なのを知っている。とてもじゃないが仲良く出来る自信がない。

 

 それに、何よりも原作主人公である雲雀たちと敵対したくない。なんだったら原作通りに漆原を倒して欲しいとすら思ってる。

 

 俺がこのまま漆原が任命した相談役として組織のNo4の地位につくのであれば、雲雀たちと敵対するのはもはや必然。うん、断ろう。

 

「私には、過ぎた地位です」

 

「てめぇはオレのママだと言ってるんだ。No4ですら低過ぎるくらいだ。それでも若鬼たちを納得させるためにその地位にした。理解しろ」

 

 なんで赤ちゃんプレイをしただけでそんなに地位が上がるんだ。『Los Lobos(ロス・ロボス)』の幹部に、上に上がってやるって野望を燃やしていた原作のキャラが、可哀想じゃないか。

 

 とはいえ、ここまで言いきられると断るのは無理だな。下手に粘ると機嫌を損ねる。ここは受け入れるしかない。

 

 何とか組織の一員として雲雀たちと敵対しないように動きたいな。うん。

 

「あ、すみません。一つだけ言っておかないといけない事がありまして」

 

「なんだ?」

 

 魔法少女について漆原に共有しておかないといけない。『Los Lobos(ロス・ロボス)』の一員としてこれから動くに当たって、何かしらの命令はされるだろうが⋯⋯それよりも優先しないといけない事がある。

 

 既に分かっていると思うが俺にとって最優先事項となっているのは悪魔の対処だ。俺が悪魔を相手して、倒さなければこの世界は終わる。俺が大好きな『アビリティ・ストライク』の世界が終わる。

 

 それを阻止する為にも俺は魔法少女として活動しなければいけない。話をちゃんと聞き入れてくれるかは不安ではあるが、一からきちんと話そう。

 

「あ、こんなところにいたポヨ!」

 

 漆原が目で俺に話すように目配せしたので、口を開いたタイミングで壁からミューが生えてきた。見覚えのあるピンク色のクマの顔だけが壁から生えるように現れ、俺を見て嬉しそうに声を出す。

 

「もう、探すのに苦労したポヨよ」

 

 そのまま壁から全身が抜けて、俺の傍までふよふよと浮いて近付いてきた。

 

 こいつ、ナチュラルに壁を抜けてきやがった!これまで一週間ほど一緒にいたが、壁抜けが出来るなんて一言も言ってなかったし、素振りも見せなかった。

 

 ───ミューに対する警戒度を一つを上げておこう。

 

 寝室の部屋は施錠が出来るタイプだが、壁抜け出来るなら意味がない。こいつに夜這いされる可能性が浮上してきたのが何より精神的にきついな。

 

 いや、漆原の赤ちゃんプレイの方がまだきついわ。あれは心を殺さないとできないプレイだと思う。

 

「あん、なんだこの(ケダモノ)は?」

 

 漆原が俺の傍で浮遊するミュー見て不機嫌そうに吐き捨てる。正直、漆原がミューを見えた事に驚きはない。

 

 雲雀と同様に漆原は()()()()設定だった。存在を妖精へと近付けて、他の人に見えなくしている魔法少女の姿を雲雀が見えたように⋯⋯妖精の姿も見えるは必定。

 

「ボクが見えるポヨか? なら一応挨拶しておくポヨ!」

 

 ミューが自分の可愛らしさをアピールするように小動物のような動きでくるくると回り、決めポーズと一緒に漆原にウインクする。

 

「ボクの名前はデア・アップファル、ポヨ!此処にいる魔法少女の相棒ポヨ!」

 

 ドーンと、胸を張るミュー。

 

「そうか⋯⋯」

 

 大きく息を吐いた漆原がスーツの内側に手を突っ込む。

 

 あ、これ⋯⋯まずいやつだ。

 

 俺が気付くのと、漆原が隠していた拳銃を取り出したのはほぼ同じで、俺が何か口にする前に銃声が鳴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレ様のママ(もの)に近付く(ゴミ)は死ね」

 

 ───ミューの脳天に綺麗な風穴が空いていた。

 

 ミューが死んだ!この人でなし!!

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