スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
漆原が放った銃弾はまるで吸い寄せられるように綺麗にミューの脳天に直撃した。普通の生物であれば、これで死亡だ。
「え?」
冷静に考えるとミューが死ぬのはまずい。俺の体を狙ってるのもあって、正直死んで欲しいくらい気持ち悪い生き物ではあるが、ミューが死ねば魔法少女としての力を俺は失う。
つまり、悪魔と戦える者がいなくなる。それが意味するのはこの世界の終わりだ。
俺が魔法少女について説明する前にミューが来てしまったと言えばそれまでだが、いくらなんでも短絡的に行動しすぎだろ⋯⋯
原作でも漆原のこういう行動は目立っていたな。決まって責任を取らされたり、しり拭いをさせられるのは右腕の若鬼だった。表情には一切出ていなかったが、文句の一つや二つあったに違いない。
「あん?」
漆原が怪訝そうな声を出す。
どういうことだ?と漆原の視線の先を辿るとミューの脳天に空いてあった風穴が、内側から肉が盛り上がって塞いでいくではない。相変わらず気持ち悪い治り方だ。
「痛いポヨ!いきなり何するポヨー!」
頭を潰したら死ぬって言ってたけど、頭撃たれたくらいじゃ死なないのかお前⋯⋯。魔法少女もののアニメに出てくるマスコットみたいに不死身じゃないよな?そうであって欲しい。
信頼出来る相棒ならこんな事を思わないが、こいつは俺の体を狙う害獣で淫獣だ。死なない、ってなるとこいつを止める方法がなくなる。それは普通に辛い。
「てめぇ、なんで生きてやがる? あの女みたいな
確かにカモメに近い気はするが、少なくともこんな気持ち悪い治り方ではなかった。カモメの場合は能力が発動してから傷が治るまで割と一瞬だしな。
「ボクのことを殺そうとしたポヨか!さては悪人ポヨね!」
お前、雲雀たちと交戦していたのを見ていただろ? ヤバいやつだって分かった上でそれが言えるのは大物過ぎる。
銃声が四発鳴った。
撃ったのは漆原、撃たれたのはミューだ。頭、胸、足、手と様々な箇所を狙って銃弾を放っている。けど、その全ての傷も先程と同じように肉が盛り上がって治っていく。
「無駄ポヨ!ボクは妖精ポヨよ!マジカルパワーを持つ魔法少女や悪魔ならともかく、普通の人間じゃ傷をつけることができても殺す事はできないポヨ」
胸を張って自慢げにミューが語る。殺されない自信があるからこそのあの発言か。納得はしたし、俺なら殺せる事もわかった。ミューの扱いはこれまで通りで構わないだろう。
しっかり上下関係を作った上で、全て解決したら殺そう。魔法少女の力を失うことにはなるが、こいつから貞操を護るために気を使う方が億劫だ。
「殺せないか⋯⋯だが、痛みは感じるよな。さっき痛いって言ってたんだからなぁ!」
「ポヨ?」
「なら殺せなくても十分だ。オレ様が考えるに⋯⋯獣の躾っての痛みが伴う方が従順になりやすい。上下関係をはっきりさせられるからな」
漆原は原作で時折見せた悪役としての顔を見せる。邪悪な笑みだ。その笑みを見るだけで身が震えるほどの⋯⋯。
横に浮遊するミューが助けを求めるように俺の方を見たが⋯⋯漆原に勝てる気もしないし、ミューを庇う義理もないので顔を逸らした。
「ちょ、ちょっと待つポ⋯⋯ぎゃあ!」
銃弾が二発が放たれ、ミューの目をぶち抜く。『目がァ目がァァ!』とどこかの映画で聞いたような言葉を発しながら空中でのたうち回るミューを、近寄ってきた漆原が鷲掴みにする。
「しっかりと教えてやるよ。オレ様の
そこからの光景は俺は目を瞑っていたので知らない。耳を塞いでいても聞こえてくるミューの呻き声と媚びを売るような声、それと破壊音。例え聞こえても俺には関係ないと無視した。
どれくらい経過したかは覚えていない。ミューの声が聞こえなくなったと思って耳を塞ぐ手をのけて、目を開くとそこには漆原の靴を一生懸命に舐めるミューがいた。
───妖精が人の靴を舐めている。
「へへへ、すいません漆原さま。もう逆らわないのでやめて欲しいポヨ」
「おい、次にそのうぜぇ語尾をオレ様の前で口にしたら⋯⋯死ねない事が後悔するくらい甚振るぞ」
「申し訳ございません」
分かりやすく上下関係が構築された。謎の力で消えていくミューの血痕の後を見ると、それはもう痛めつけられたんだろうな。床や壁、インテリアにいたるまで色んなところに血が飛び散っていた。
「
「なんで御座いましょうか、漆原さま」
なんだ
「そこにいる女はオレ様の
「漆原さまの所有物ってことですね!」
そんなものになった覚えはない。漆原も満足そうに頷くな⋯⋯え?俺の認識がおかしいだけで俺、漆原の所有物になったのか? ママには⋯⋯なった覚えはあるが⋯⋯。
『
「お前が邪な感情を抱いているのは一目でわかった。手を出したら⋯⋯潰すぞ」
どこを?
「絶対に手を出しません!!」
なんでこいつは下半身を抑えたんだ。まぁいいわ。よく分からないが、漆原のお陰でミューに襲われにくくなった⋯⋯って事でいいよな?
「女⋯⋯」
「はい」
「万が一、この
「わかりましたー」
ミューを見るとピンク色だった顔が青ざめている。本当に小さな声が『ボクの密かな野望が⋯⋯』って聞こえてきた。チャンスがあれば俺の事を襲ってくるつもりだったな、こいつ。
そういう意味では、貞操を護られたってことで漆原に感謝か。
「で、だ。こいつを含めて⋯⋯魔法少女が何かオレ様に説明しろ」
「わかりました」
ぶっちゃけ話そうとしていたので、素直に答える。魔法少女のこと、悪魔のこと、妖精のこと、世界のこと、マジカルパワーを持つ俺以外には悪魔を倒せないこと、このままだと悪魔にこの世界を支配されること。
特に後半は重要なので念を押すように話した。
「なるほど⋯⋯ふはははは!いいな面白い!」
話を聞いた漆原は靴を舐めていたミューを踏みつけながら楽しそうに笑っている。
「おい、女」
「なんでしょうか?」
「次に悪魔がくるのは何時だ?」
「啓吾の
正確な時間はまだ聞いてはいないけど、二日後の木曜日に幹部⋯⋯『百八柱』の一柱がくる事は分かっている。
「なら、オレ様もその現場に連れて行け」
「え?」
「本当に魔法少女以外に倒せないか、確認する」
なんでそんな事をする必要が?ふと思ったが⋯⋯漆原のもう一つの能力を試したいのか。原作の設定上だと悪魔に通じそうな感じではあったけど、啓吾の
あの能力ほど万能で正確なものはない。なら、試す価値すらないんだけど⋯⋯言っても聞かないよな。
悪魔との戦いの現場に漆原がいて足手まといになるなんて事はまずないだろうし、それで漆原が納得するなら連れて行けばいい。了承すれば楽しみが増えたと、言わんばかりに笑う。
原作でも度々口にはしていたが、漆原は強いヤツと戦うのが好きだ。いや、より正確に言えば強者を屈服させるのが好きだ。支配欲とでも、言うべきか。
倒した相手が頭を垂れて、許しを乞う姿が快感だって原作のシーンにあったな。漆原はそういうやつだ。
「一通り、事情は分かった。お前は『
「はい」
「相談役として立場だ、それくらいの融通は効かせてやる。何よりオレ様が支配する前に悪魔に世界を落とされたら困るからな」
頼むからお前も原作通りに雲雀に倒されてくれ。お願いだから。漆原が語る『能力者のための世界』は間違いなく秩序が終わってる。
力や恐怖で人を無理矢理抑えつけた先にあるのは緩やかな崩壊だろう。その支配がずっと続くわけではない。
「さて、このまま解放しても問題はないが⋯⋯念の為、契約を交わしておくか」
やっぱりそうなるかと、心中で悪態をつく。
漆原が言う契約は書面によって行われるものではない。そんなものに拘束力がないことは漆原が一番よく分かっている。
『
「今すぐに来い。来ないと殺すぞ」
漆原が割とめちゃくちゃな事を言っている。スマホの通話先の相手に同情しそうになった時。
「ただいま参りました!ボス!」
天井をぶち破って忍者のような服装をした女が漆原の前に着地した。
「ついにワタクシが夜伽に召されるのですね!このメス豚、覚悟はできております!ボスのでっかい逸物でワタクシの中をズッコンバッコンしてくださいませ!」
な?この組織、一癖も二癖もある奴ばっかりなんだ。
体をクネクネさせているこの女こそが先の契約に関する能力者。
『