スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている   作:かませ犬S

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大丈夫だから

 ただいま、と言っても返事は返ってこなかった。玄関には広いスペースがあり俺の靴以外は置かれていない。

 

「ま、そうだよな」

 

 もしかしたら啓吾が俺の家で待ってるかも、なんて淡い期待をした自分が恥ずかしくなった。仮に待ってるにしても家の中じゃなくて、家の前で待ってるよな⋯⋯。

 

 というよりそもそも、啓吾は俺の家の鍵持っていない⋯⋯何を考えているんだ俺は。

 

「連絡は⋯⋯」

 

 スマホを開いて確認したが既読すらついていない⋯⋯少し寂しい。

 

「ふぅ⋯⋯」

 

 家に帰ってから何度目かのため息。

 

 心がどっと疲れた感じだ。正直、色々ありすぎた。肉体的疲労ではなく、精神的な理由から重たい足を進めてリビングに入る。

 

 誰もいない。慣れている筈なのに、今日に限っていえばそれが寂しかった。ミューがいればサンドバッグくらいにはしたのだが⋯⋯まだ、アジトに残ってる可能性が高いな。

 

「ん?」

 

 スマホから通知音がした。もしかしたら、啓吾から返信が返ってきたかも、と流行る気持ちで確認すると⋯⋯漆原からだった。めっちゃテンションが下がったが、内容は悪いものではない。

 

 漆原曰く、ミューのことはゴミだと思っているらしく言葉や態度では信用できないため、俺にしたようにミューにも契約を交わしたようだ。

 

 その契約は俺を守る為のものだ。内容でいえば『性的行為の禁止』『五十嵐 純平が嫌がる行為及び言動の禁止』『魔法少女の使命に尽力すること』、他にも細かいものはあるが、大きなものは今あげた三つだ。

 

 契約違反を犯した場合は一回目は金玉が潰れ、二回目はチ〇コがネジ切れるらしい。三回目以降はそれが同時らしいな。

 

 契約違反が起こる度に金玉が潰れたりチ〇コがネジ切れるので、例え肉体が再生してもそういう行為は行えないというわけだ。これに関しては有難い限りだ。

 

 最後の『ママの貞操を守るのは息子の役目だからな』なんて一言がなければかっこよかった。普通にキモイ一文だ。これでいいのか、ラスボス⋯⋯。

 

 ひとまず、ミューに対する安全が確保できたと思えばいいのだろうか?

 

「ありがとうございます。助かりました⋯⋯と」

 

 キモイとはいえ、俺の為に動いてくれたのは確かなのでお礼の言葉を返しておく。こういったやり取りは大切だ。

 

「ミューを?」

 

 また漆原からメッセージが届く。トマトが潰れたみたいなスプラッター写真と共に、一晩ミューを預かると書いてある。ミューから色々と聞き出したいらしい。

 

 どうでもいいので、好きにしてくださいと返しておいた。ぶっちゃけミューはどうでもいい。魔法少女の力がなくなったら困るので死ななかったらそれでいいや。

 

 漆原への返信を終えた俺は、冷蔵庫に入っていた麦茶で水分補給をしてから椅子に座る。そういえば金曜日はこの席に啓吾が座ってたな、なんて思いながら⋯⋯。

 

「⋯⋯返ってこないな」

 

 待てども待てども啓吾からの返事はない。俺がメッセージを送ってから30分以上は経過している。もしかしたら、啓吾の身に何か起きたとか?

 

「いや、そうだった!」

 

 啓吾は漆原のせいで身体がボロボロだった。もしかしたら帰ってる途中で倒れてるかもしれない。メッセージの返事を待ってる場合じゃない。まずは安否の確認をしよう!

 

「大丈夫⋯⋯大丈夫」

 

 スマホの着信履歴から啓吾を選んで電話をかける。聞きなれた呼び出し音が耳を通っていくが、期待していた啓吾の声はまだ聞こえない。

 

『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、または、電源が入っていないためかかりません』

 

 やがて、そんなアナウンスが流れて通話が終わる。

 

「啓吾⋯⋯」

 

 啓吾の安否が気になる。

 

 家を飛び出て探せば見つかるだろうか?啓吾の家に押しかければ出てくるだろうか⋯⋯。

 

「いこう⋯⋯」

 

 家にいても落ち着かない。探しに行こう。思いたったら、直ぐに行動に移す。急ぎ足で玄関まで向かい、靴を履いて外に出る。すると。

 

「え?」

 

「あ⋯⋯」

 

 玄関の扉を開けた先に啓吾がいた。

 

 俺と同じように居ると思っていなかったのか、驚いた表情で固まっていた。

 

「け、啓吾?」

 

 名前を呼ぶ声が震えていた自覚はある。こうしてもう一度啓吾と会えたことで、啓吾を救えたと実感した。原作とは違う。啓吾はちゃんと生きている。

 

 それが嬉しくて、涙が出そうにもなった。

 

 そんな俺の元へ啓吾が何も言わず歩み寄ってくる。足を負傷していたとは思えないほど淀みのない動き⋯⋯啓吾が着ているライダースーツには確かに血の跡があるけど、傷は治ってる?

 

 どうして?そんな疑問に頭の中が支配されそうになっていた俺を、啓吾が無言で抱きしめた。

 

 

 

「───え?」

 

 

 

 疑問が吹き飛ぶレベルに、パニックではある。啓吾にこんな風に抱き着かれた事は初めてだ。

 

 元が男同士だったと考えれば当然ではあるが、啓吾がこんな漫画みたいな情熱的なハグをしてくるのは思わなかったな、うん。

 

「啓吾?」

 

 出来ればそろそろ離れて欲しい。心臓が俺が思っているよりもドキドキしていて、心情的によろしくない感じ。

 

 名前を呼ぶとさっきよりも強く抱き締められた。

 

「良かった⋯⋯」

 

 耳元で聞こえてきた啓吾の声に、高鳴っていた心臓の音がゆっくりとだけど落ち着いていくのがわかった。

 

「無事で⋯⋯よかった」

 

 まるで存在を確認するように強く抱き締めてきた啓吾に、俺がちゃんといることを伝えるように抱き締め返す。

 

 啓吾の声は震えていた。だから、安心させる意味も込めて⋯⋯。

 

「ここにいるよ、啓吾⋯⋯」

 

「あぁ、ちゃんといる⋯⋯」

 

 安堵するような啓吾の声に俺も強く抱き締め返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リビングに移動した。

 

 数分前の事を思い出して、恥ずかしくて啓吾の顔が見れない。お互いに向かい合う形で椅子に座ってはいるが何故か顔が合わない。目が合うと啓吾も顔を逸らすので、それが余計に気まずさをうむ。

 

 なんというか⋯⋯少女漫画のワンシーンみたいなやり取りをしていた気がする。それを思い返すと⋯⋯自分がヒロインになっていたような感じがして、余計に恥ずかしい。

 

「その、怪我⋯⋯大丈夫か?」

 

 無言の時間が辛いのもあり、俺から声をかけた。漆原に撃たれた足は明らかに治ってる。病院に行ったとしてもこんなに早くは治らない。それが普通だ。

 

 一つだけ心当たりはあるのだが、啓吾だけではその方法を取れない。俺の予想が正しければ⋯⋯啓吾は雲雀と接触した。

 

「まぁ、見ての通りだ。自然治癒って訳じゃない。知人の能力者を紹介して貰った感じだ」

 

「怪我を治せる能力もあるんだな」

 

「らしいな。オレも受けるのは初めてだったから正直びっくりした」

 

 『アビリティ・ストライク』には様々な能力者が登場するが傷を治せる能力を持つのは極小数だ。そのうちの何人かはこの時点だと、遠くの県にいたりする。物理的に接触するのは不可能だ。

 

 そうなると、啓吾のいう知人は雲雀だと思うんだよな。治療系の能力者───カモメを紹介出来る人間なんて限られる。

 

 啓吾の能力を使って傷を治療出来る人を探してカモメを見つけ出した可能性もあるけど、カモメが見知らぬ人間の頼みを受けるとは思えない。

 

 雲雀はカモメにこっぴどく叱られた後だから、『Los Lobos(ロス・ロボス)』と戦った後は必ずカモメに連絡している筈。だとすれば大事な生徒と敵対していた啓吾を治すことは尚更ありえない。

 

 どういう経緯で雲雀と仲良くなったんだろうか? 啓吾がいなくなってから何が起きたか、俺が気になるのと同様に、啓吾も俺の事を気にしている様子だ。

 

 ただ、聞にくいことなんだろうな。何か言いたげにこちらを見たあと目を逸らしていたり、俺の体をチラチラ見てたから⋯⋯そういうアダルティな展開を想像するが本人には聞にくい、そんな感じかな。

 

 確かにあんなやり取りの後だと、俺だって漆原とヤったと思うよ。俺の為に身を犠牲にしたって思うのは仕方ない。

 

「なぁ、啓吾」

 

「どうした?」

 

「大丈夫だから⋯⋯啓吾は気にしなくていいよ」

 

 あ、啓吾の顔が曇った。言葉を選びを間違えたな。もっと明るい声でヤラれてないから大丈夫!って言えば良かったか。

 

 訂正しようと思ったタイミングで、啓吾が俺に近寄ってきて⋯⋯また、俺の事を抱きしめた。さっきと違って俺は椅子に座ってるから啓吾が縋りつくように抱きしめている形だ。

 

 正直、さっきのやり取りを思い出してしまって恥ずかしいからやめて欲しい。ドキドキと鳴っている心臓がうるさく感じた。

 

 って、力強い。感情が乗っているのか分からないけど、ぎゅっーって優しく抱きしめる感じではなくなってる。胸が潰れて少し苦しい。

 

「啓吾⋯⋯苦しい」

 

「ごめん⋯⋯」

 

 抱きしめる力は弱まったけど、離してくれない。直ぐ近くにある啓吾の顔は今にも泣きそうなくらい悲しみに染まっている。

 

「オレのせいで⋯⋯純平が」

 

「だから大丈夫だって。何があったかは⋯⋯正直言いたくないけど、大丈夫だから⋯⋯な?」

 

 啓吾に聞かれても出来れば漆原との出来事は話したくないな。ぶっちゃけた話⋯⋯まだヤラれていた方が啓吾に泣き付けた分、気は楽だったかも知れない。

 

 人に見せられないような特殊プレイの相手をしたってのは正直黒歴史みたいなもんだ。絶対に啓吾には見られたくないし、知られたくない。

 

 けど、啓吾が心配するほどの事ではないんだ。そういう意味で心配するなよって笑いかけると⋯⋯また強く抱き締められた。

 

「ごめんな⋯⋯純平」

 

 泣いてる。

 

 啓吾の涙を見たのは何年ぶりだろうか?それこそ小学生の時が最後じゃないか?そんなに泣くほど罪悪感を感じる必要はない。俺のエゴで助けただけだから。

 

 何より⋯⋯啓吾はずっと俺を護ってくれたじゃないか。泣かないでいい。泣いて欲しくない。そんな思いで啓吾の頭を優しく撫でる。

 

「これまで俺の事を護ってくれてありがとな、啓吾」

 

「っ───!!」

 

 あ、あの、啓吾⋯⋯力強い。そんなに強く抱きしめなくていいと思う⋯⋯逃げないから、ここにいるからさ。

 

 啓吾?⋯⋯啓吾さん? なんでそんな覚悟が決めたみたいな顔をしてるんですか? 顔⋯⋯怖いよ⋯⋯ほら、笑って⋯⋯ね?

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