スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
「顔、こわいぞ⋯⋯啓吾」
真剣な表情はかっこいいけど、ここにいない誰かを睨んでいるような目が少し怖い。俺が声をかけるとようやく、いつもの啓吾に戻った。
「悪い⋯⋯」
「うん、別にいいんだけどさ⋯⋯そろそろ離れないか?」
「それも悪い⋯⋯離れるわ」
流石にいつまでも抱きしめられているのは恥ずかしいので、お願いすると素直に離れてくれた。
まるで気持ちを落ち着かせるように深い息を吐いた啓吾が椅子に座る。向かい合う形になったわけだけど、先程と違って顔を合わせて逸らすようなことはない。
「色々と話したいことがあってさ⋯⋯啓吾にもメッセージ送ったり電話したんだぞ」
「ん?あー、悪い⋯⋯スマホの充電が切れてたから見れてないわ」
「なのに⋯⋯俺の家に来たのか?」
啓吾が俺の家に来たのはもしかしたら俺からの連絡に気付いたからかも?って思ったけど、流石に早すぎるもんな。あのタイミングは啓吾がメッセージに気付く前に来てなかったらありえない。
「家の前で待ってたら⋯⋯純平に会えるかなって思ってさ」
「そっか⋯⋯」
「こうして顔を合わせるまで、もう会えないんじゃないかって凄い不安でさ。玄関で元気そうな顔見れたら⋯⋯気付いたら抱きしめてた」
「それは恥ずかしいから言わないでくれ」
啓吾の気持ちは分からないことはないけど、思い返すと俺もヒロイン面してた気がして恥ずかしいんだ。お願いだから言わないでくれ。
「本当に⋯⋯大丈夫か?」
気遣うような表情。俺の言い方が悪かったのもあって変な意味で捉えてる気がする。漆原との赤ちゃんプレイについては話せないけど、啓吾が想像している事は否定しておこう。
「大丈夫⋯⋯啓吾が想像しているような事はなかったから」
「本当か?」
「うん。セックスはしてない。だからまだ処女だと思う」
啓吾がゴホッゴホッと咳き込んでる。唾でも飲み込んで気管に入ったか?安心したような怒ったような、よく分からない表情で俺のことを啓吾が見ている。
「この身体になってからセックスはおろか、オナニーもしてないから⋯⋯多分処女だな」
「⋯⋯言わなくていいから、そんなこと」
「啓吾が気にしてんじゃないかなって」
「いや⋯⋯まぁ、否定はしないけど」
それはそれで気持ち悪いな。俺が処女かどうか気にしてるって言っているようで、普通に気持ち悪いぞ。
「お前⋯処女厨か?」
「違う!!⋯⋯ってオレのことからかってるだろ」
「正解!大丈夫って俺が言ってるのに暗い顔してるから」
しっかり伝えなかった俺が悪いのも確かだな。あの時の状況が状況だけに、啓吾の立場ならそういう展開が予想しやすい。俺だって漆原が『オレ様のママになるんだよ!』って言うまでヤラれると思っていた。
啓吾も俺が漆原とヤったって思ってた筈だ。啓吾の命を救う為に俺が身を犠牲にしたと。そうでなかったから、安心して欲しい。
「なら、あんな言い方すんなよ⋯⋯勘違いするだろ」
「いや、⋯⋯うん。啓吾に言えないような事があったのは事実だから」
「え?」
「それに関しては⋯⋯本当に言えないし、出来れば啓吾にも知られたくない」
暗に能力で聞かないで欲しいと伝えている。俺が漆原に犯されていないと知って明るくなっていた顔がまた曇っていた。
本当にごめん。これに関しては俺の口から言えない。知って欲しくない。
啓吾には悪いけどそのまま知らないままでいてくれ。俺はこれから先も漆原に呼び出されて赤ちゃんプレイをする事になるだろうけど、虚無の心で対応するから、気にしないで欲しい。
啓吾に知られたら、それこそ死ねる。
「純平⋯⋯」
「大丈夫⋯⋯無理はしてないから」
「⋯⋯⋯⋯」
話題を変えるか。下手に追求されても困る。啓吾に畳み掛けるようで申し訳ないけど、伝えないといけない事は多い。
「それと⋯⋯『
「なっ───!!」
「啓吾の気持ちがよく分かるよ。ごめんな⋯⋯無理させて」
これだけで啓吾には『
「オレのせいだな⋯⋯」
「違う⋯⋯今度は俺が護りたかったんだ。これまで啓吾が護ってくれたように」
「巻き込んだのはオレだ!オレの
悪いのは啓吾じゃない。啓吾の能力に目をつけた『
ここで必要なのは言葉じゃないな。気持ちを落ち着かせるのは何も慰めの言葉だけじゃない。一息吐いてから、啓吾に近付いて⋯⋯今度は俺から抱きしめる。
自分からやると⋯⋯恥ずかしいな、これ。
「自分を責めないでくれ啓吾。俺は啓吾の能力のお陰で救われたんだ⋯⋯。こんな身体になった俺を啓吾が気付いてくれた。それがどれだけ嬉しかったか⋯⋯啓吾は分かるか?」
「⋯⋯⋯⋯」
男じゃなくなった俺を見て啓吾は第一声で俺の名前を呼んでくれた。それでどれだけ心が救われたか⋯⋯。
「俺に気付けたのは
「⋯⋯⋯⋯」
「だから自分のことを責めないで欲しい。啓吾は⋯⋯自分が思っている以上に俺のことを救って、護ってるよ」
「⋯⋯⋯⋯」
あれ?反応がない。
なんでだ?と視線を落とすと抱きしめた際に啓吾の顔を胸に押さえつけていた。これでは喋れないな。慌てて離すと、顔が赤くなった啓吾と目が合う。酸欠か?
「あ、ごめん」
「⋯⋯いや、うん⋯⋯謝らなくていい」
息ができなかったよな?って確認すると『いい匂いだった』と意味不明な返事が返ってきた。酸素が足りなくて頭がイカれたか?
「しっかり呼吸しろ、呼吸」
啓吾が俺の言葉に合わせて深呼吸している。表情を見る限り、落ち着いたようにみえるな。俺の言葉が届いたのか、酸欠になってそれどころじゃなくなったのか⋯⋯まぁ、どちらでもいい。
「落ち着いたか?」
「そうだな⋯⋯おかげさまで」
まだ少し顔は赤いけど、いつもの啓吾だ。良かったと一息つく。
そういえば、飲み物出してなかったな。話も長くなるだろうし、お茶でも入れてくるか。啓吾に一声かけてから二人分のお茶をコップに注いでいると後ろから声がかかった。
「契約は交わしたのか?」
「ん?」
啓吾の中で俺が『
その能力によって無理矢理加入させられた者が、爐の能力で組織に縛られるところを見たことがあるだろう。
「交わしたよ⋯⋯組織を裏切ったら漆原に絶対服従ってことになってる」
テーブルの上に二人分の麦茶を置きながら答える。また、啓吾が顔を顰めている。『
「純平も俺と同じように⋯⋯手を汚すことになるのか」
「いや、漆原も魔法少女の事情を知ってるから、こちらの都合が優先されると思う」
「話したのか?」
「魔法少女の事は話しておかないと、それこそ世界が終わるだろ?漆原もそれは望んでいないってさ」
短絡的な行動が目立つ男ではあるけど、話せばちゃんと分かってはくれる。内容によってはどうでもいいって判断されるけどな。
「啓吾は⋯⋯どうするんだ?」
「組織の事か?」
「うん。その顔を見る限りだと⋯⋯『
啓吾は漆原に殺されそうにはなったが、組織から追放された訳ではない。これまでのようにソルシオンとして活動する事もまだ可能だ。
アジトで漆原と顔を合わせればグチグチと嫌味を言われるだろうが、今日みたいに殺されることはないと思う。啓吾が死ねば⋯⋯俺も後を追って死ぬ。それが何を意味するか漆原は理解している。
だから啓吾の事が気に食わなくても殺す事はせずに受け入れる。組織の一員として活動はできる。あくまでも啓吾にその気があればの話だ。
「オレは⋯⋯戻らない。オレが傷付くだけなら良かった。けど、あろうことか奴はオレの大事な人───純平に手を出した。許せる筈がない」
「そっか」
「オレが『
「うん、待ってる」
啓吾は『
───『
その時がくるまでに雲雀たちが爐を倒してくれないかな? 彼女を倒せば『契約』の効力は消える。俺や無理矢理加入させられた者が漆原に反抗出来るようになる。
けど、強いんだよな爐⋯⋯。
能力は戦闘向きではないけど、身体能力が作中トップクラスに高く忍者のようなトリッキーな戦いをする。原作だと爐を倒せたのは最終章に入ってからで、カモメの辛勝だった。倒すことすら至難。
俺が敵として雲雀たちに立ちはだかる可能性の方が高い気がしてきた。啓吾に期待するしかないか。
「あっ、そういえば聞きたい事があってさ」
「なんだ?」
漆原から啓吾が『
「俺の事⋯⋯啓吾は大事な人って言ってたけど、それってどういう意味?」