スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
啓吾の大事な人、大切な人って聞いて俺が最初に思い浮かんだのは啓吾の家族だ。
女手一つで啓吾と弟くんを育てるパワフルお母さんと、お兄ちゃんの事が大好きな小学生の弟。
家に何度も遊びに行ってるから啓吾の家族ともかなり親しい関係にある。啓吾から家族の話を聞いたり、弟くんや啓吾のお母さんから啓吾の自慢を聞いたこともある。
俺の家は親が海外在住なのもあって年に数回しか会うことがない。愛されていないわけではない。会った時にはそれはもう鬱陶しいくらいに絡んでくるし⋯⋯それでも、啓吾の家族を見ていると羨ましいと感じる時はある。
啓吾が家族のことが好きなのを知っていた。
だから漆原が人質に取るなら啓吾の家族を選ぶ。そう思っていた。
「俺が大事な人なんだよな?」
啓吾は家族よりも俺を選んだ。親友だから? だとしても少し重い気はする。
「啓吾の家族よりも俺の方が、大事なのか?」
俺の場合はどうだろうか?家族と啓吾の二人を天秤にかけた時⋯⋯魔法少女になる前だったら、申し訳ないけど家族の方が重かったと思う。
あんまり会えないけど、それでも大好きだったから。一番大切なものは家族だって胸を張って言える。
だからといって啓吾が大切じゃないわけではない。友達は⋯⋯啓吾以外にもいるけど、親友と呼べるのは啓吾だけだ。かけがえのない親友だと俺は思う。
「それは⋯⋯」
啓吾が言いにくそうな顔をしていた。目は泳いでいるし、どう返したらいいか悩んでる。
家族より大切だって言い切るのは、どうしても相手に重く捉えられる。現実問題⋯⋯俺も重く捉えている。
友情を大事にしている? でも俺は家族の事が大好きな啓吾を知っているからそれだけだと疑問に思ってしまう。
「俺はさ、啓吾に大事な人って思われて⋯⋯素直に嬉しかった」
これは俺の本心だ。重いな、とは思った。けど、嬉しいのは本当だ。それだけ啓吾が俺のことを思ってくれた⋯⋯。
「俺も⋯⋯啓吾のことは大事な人だって思ってる」
これも俺の本心。魔法少女になって、これから先どうしたらいいか分からなかった。原作を見るんだって現実から目を逸らしていた。
啓吾が俺だって直ぐに分かってくれなかったら、女の子になった俺を受け入れてくれなかったら⋯⋯多分、現実に絶望してたと思う。魔法少女の使命なんて忘れて部屋に引きこもってたかも知れない。
啓吾の言葉に⋯⋯存在に俺の心は救われた。あの時俺の中の比重は間違いなく啓吾の方に傾いた。今ならはっきりと家族よりも啓吾が大切と言える。あくまでも親友として。
「けど、それは親友として」
「そうだな⋯⋯それが普通だ。オレも親友として思ってるって言えたら良かったんだけどな⋯⋯」
困ったような表情。それと悲しげな目。言葉と表情で啓吾が言いたいことを察してしまう。
「違うんだな⋯⋯」
「そうだ」
俺の問いかけに対して即答した啓吾は、まるで気合いを入れるように両頬を自身の手で叩いた。力を入れすぎたのか少し跡に残ってる。
「純平!」
「はい!」
真剣な表情の啓吾に名前を呼ばれて、俺もつい背筋をピシッとして答えてしまう。
「オレは純平の事が好きだ。親友としてじゃない、一人の男としてお前が好きだ」
「⋯⋯うん」
自分の中で予想していたのと、実際に面と向かって言われるのでは受ける衝撃は違うんだなって改めて思った。勢いよく頭をぶん殴られたような感覚だ。
啓吾は自分の気持ちをストレートにぶつけてくれた。男からの告白だ。見た目が女の子になったとはいえ、俺の元の性別は男だ。普通なら気持ち悪いと感じる筈なのに、不思議と嬉しいと思ってしまった。
ドキドキと高鳴る心臓の音に変な気分になりそうだった。落ち着かせる為に深呼吸してから、自分の気持ちを素直に返す。
「ごめん⋯⋯俺はどちらか分からない。啓吾のことは好きだ。けど、この好きが親友としてなのか異性としてなのか分からないんだ」
啓吾のことは好きだ。けど、それが異性としてかは分からない。親友として啓吾が好き、俺の好意はその延長線にいるような感覚だ。
啓吾と恋人になる?
ない⋯⋯かな?いや⋯⋯あり、か? 自分の浮かべたビションには二人して笑い合う俺と啓吾がいて、それは親友としてなのか恋人としてなのか、判断出来なかった。
「そっか⋯⋯」
「嫌いじゃないぞ!啓吾のことは好きだ!告白されたのも⋯⋯嬉しいとは、思う」
嬉しいから⋯⋯多分、こんなにもドキドキしてるんだと思う。こんなに心臓が高鳴ったのは前世で好きな人に告白した以来か?
なら⋯⋯俺は啓吾の好きなのか?分からない。 正直、今この場で答えを出すのは無理だ。俺自身⋯⋯まだ気持ちの整理ができてない。
「ならまだチャンスはあるって事でいいよな?」
「そうだけど⋯⋯」
啓吾の顔が活き活きしてる。形としては告白を断ったみたいなもんなのに。
「オレは純平のこと好きだから、これから先も一緒にいたいと思う。出来れば恋人として⋯⋯愛し合う関係になりたい。けど、純平が嫌なら離れてもいい」
「離れなくていい」
嫌がるなら俺の傍を離れるって言うのは啓吾の優しさだろうけど、親友がいなくなるのは普通に嫌だ。一緒にいて啓吾が辛いって言うなら⋯⋯俺も諦めるけどさ。
「なら一緒にいさせてくれ。オレは純平といられるだけで幸せだから」
「俺はまだそういう目で啓吾の事は見れない、それでもいいのか?」
「今までずっと親友として接してきたからな、無理なのは承知の上。気持ち悪いって拒否されなかっただけ良しってくらいだ」
「気持ち悪いとは思わない⋯⋯啓吾からだし」
これで告白してきたのか誰とも知らない男性だったら普通に拒否して終わり。漆原は論外。雲雀からはしてこないから考える必要はないとして、知り合い他人に関わらず男からの告白に嬉しいとは思わないだろうな。
啓吾は?
嬉しいって、思ったよな。
「ごめん、ちょっと待ってて」
何か言いたげにしてた啓吾に一方的に言って、洗面台のある脱衣場に駆け込む。洗面台の鏡に映る俺はとても見れるような顔をしていない。
「⋯⋯女じゃん」
冷たい水で顔を洗う。火照っていたものが急激に冷めていく感覚だ。
「⋯⋯ふぅ」
今の身体は女の子とはいえ、俺は男だ。漫画やアニメにありがちな身体に精神が引っ張られるなんてこともない。爐を見てエロいなーなんて、男の感性で思ってたくらいだ。
なのに鏡に映る俺は啓吾の告白を思い出して、頬を赤らめていた。その顔が見てられなくてもう一度顔を洗う。
「男だぞ、俺」
身体は女だけど、男なんだって。無理かもしれないけど元の自分に戻りたいって、心のどこかで思ってる。
男が男を好きになるなんて普通じゃない。
けど、それを否定するのは啓吾の思いを無下にするのと同じ。あいつは俺が女の子になる前から俺の事を好きでいてくれたんだろうか?女の子になったから好きになった?
想いが変わった可能性はあるよな。ちゃんと聞いておこう。
もう一度冷たい水で顔を洗い、自分の顔が普段と同じなのを確認してからリビングに戻る。
「啓吾!」
「おかえり⋯⋯それで、どうした?」
暇そうに天井を見上げていた啓吾が俺の声と共に振り返る。
「啓吾は女の子になったから俺のことを好きになったのか?」
「純平が女の子になったって知ったのはつい最近だろ?女の子になったから好意を寄せるって、性欲を好意を勘違いしてるカスと同じだろ。オレは違う」
はっきりと否定する。
「オレは純平が男だった時から好きだ。男とか女とか関係ない。純平が好きなんだ⋯⋯」
ストレートな好意に、普通に照れる。
「俺が男に戻りたいって言ったらどうする?」
「純平が戻りたいなら協力する。さっき言ったろ、性別なんて関係ないって。オレは純平が好きなんだ」
「そっか⋯⋯」
顔が赤くなっていくのが分かる。性別なんて⋯⋯関係ないか。好きになったら男とか女とか関係ないんだろうか?
なら、俺も?
「啓吾!」
「なんだよ」
「目を閉じてあっち向いててくれ!頼むから」
「はぁ!?」
文句を言いたげな啓吾にもう一度あっち向けと言うと、渋々といった感じに椅子から立ち上がって俺に背を向けた。
「⋯⋯⋯⋯」
多分、啓吾には見られてたと思う。
「はずっ⋯⋯」
今の俺は先程、鏡に映ってた自分よりもっと酷い顔をしているだろうな。
啓吾から言われた言葉が嬉しくて⋯⋯ときめいてしまった。
「なぁ、いつまでこのままでいればいい?」
「黙ってろ!!」
鏡を見なくても分かる。多分、今の俺⋯⋯女の顔してる⋯⋯。