スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
前世を含めてここまで真っ直ぐに俺に好意を向けてくれた人はいなかった。俺の事が好きだってあんなバカ正直に言われたら⋯⋯心に響かない人間はいないって。
それが心を許している親友なら尚更⋯⋯。
でも、男なんだよな。
啓吾は男。俺は今は女の子だけど、元は男。性別を意識するとその好意をどう受け止めていいか分からなくなる。
───俺も啓吾が好きって返したらいいのか?
いや、ダメだな。恥ずかしくて自分からは言えそうにない。啓吾の事は好きなんだけど、それを言うと俺が男じゃなくなるような気もする。
なんなんだろうな、この気持ち⋯⋯俺にもよく分からない。考える時間欲しい⋯⋯ちゃんと答えは出すから、啓吾の想いにちゃんと返すから、今日だけは保留させて欲しい。
深呼吸して心を落ち着かせる。
「もういいぞ」
振り返った啓吾の顔がかっこよく見える⋯⋯なんて事はなく、いつも通りこうして顔を向かい合わせている。
「もう、大丈夫か?」
「うん。けど、出来れば聞かないで欲しい」
「了解⋯⋯」
「ちゃんと⋯⋯自分で考えて、必ず返事はするから」
勢いだけに流されてはいけない気がする。ちゃんと自分の心と向き合って、どうしたいかを考えるべきだ。そう思って啓吾に返事をしたら、啓吾は嬉しそうに笑ってる。
「なんだよ⋯⋯」
「期待して待ってるわ」
「うるせぇ、黙れ」
啓吾の言葉で確信した。こいつ、背を向ける前に俺の顔見てたな⋯⋯。啓吾からこの発言が出るレベルで、俺⋯⋯女の顔してたってこと? 羞恥心がやばいぞ、おい。
「期待してるのは本当だけど、返事は急いでないから純平の心の整理が出来たらでいい。その返事がオレの望むものじゃなくても⋯⋯別に構わないから」
「うん⋯⋯自分で考えてみる」
啓吾が女の子か、俺が元から女だったらこんなに悩むことはなかったんだよな。それを言うと啓吾が好きって自分で認めているような気もするけど⋯⋯。
「純平の返事は期待して待っとくとして、真面目な話するか」
「そうだな⋯⋯」
その方が俺からすると助かる。さっきから胸がドキドキしててパニックになる一歩手前だ。こういうのが得意じゃないのがよく分かった。
「啓吾はあの後、どうしたんだ?」
啓吾が椅子に座るのを待ってから、話を切り出す。俺としては、漆原と赤ちゃんプレイをしている間⋯⋯啓吾が何をしていたかが気になるところだ。
「その前に一ついいか?」
「なんだよ」
「どうして純平は俺がいる場所が分かった?あそこは『
至極真っ当な意見である。啓吾からすればなんで一般人の俺があの現場に乗り込んで来たんだってびっくりしただろうな。事実、俺の顔を見て驚いていた。
俺自身、原作知識がなければあの現場に乗り込んで啓吾を救うことはできなかった。原作知識がなければ、俺の知らないところで起きてる出来事に気付けず魔法少女として悪魔と戦っていたかも知れない。
そして、人知れず啓吾が死んでいた。
『
「いつから⋯⋯『
畳み掛けるように啓吾から質問が飛んでくる。当然の疑問である。いくらなんでもタイミングが良すぎるし、能力にしたって物分りが良すぎると思うのは普通である。
魔法少女という超常現象を現在進行形で体験しているので、能力に理解があるのは弁明できるけど⋯⋯俺が『
普通に生きてたら知ることのない情報だ。それこそ啓吾のような能力者じゃなければ組織は接触してこないし、隠蔽を徹底してる。
この世界の一般人⋯⋯世間が『
啓吾の姿をたまたま見かけたから? 疑問に対する返答としてはあまりに弱すぎる。
「ごめん⋯⋯」
「言えないって事か」
けど、この世界が漫画───『アビリティ・ストライク』の世界だってことは啓吾に伝えない方がいいとは思う。
既に原作から外れてきてはいるけど、俺が伝えることで、それこそめちゃくちゃになるかも知れない。俺が知らないことが現実で起こるのは怖い。言ってしまえばエゴしかない。
俺は自分の知識を元に原作から大きくズレているなら原作の流れにそれとなく修正すればいいと考えている。それが驕りだってことも分かってるけど⋯⋯そうしないと漆原が倒せないかも知れない!
『アビリティ・ストライク』のラスボス、漆原は作中最強の男だ。作者自身、こいつどうやって倒すか悩んだって名言しているくらいだ。
薄氷の上を渡るようなギリギリの戦いの末に雲雀は漆原に勝利している。原作を変えたらもしかしたら勝てないかも知れない⋯⋯。そういう怖さがある。
「それは、聞かない方がいいことか?」
「うん⋯⋯」
今の問いかけは俺に、ではなく能力で聞いていいかどうかの確認だ。あの万能能力なら聞けばもしかしたらこの世界が漫画の世界だって答えるかも知れない。
能力を使うにしたって俺にバレないように使用できる⋯⋯それなのにわざわざ俺に確認するのは、啓吾の優しさ。
「はぁ⋯⋯わかったよ」
深いため息を吐いた啓吾に申し訳ない気持ちになる。
「ごめん⋯⋯」
「いいよ、俺も純平が言いたくない事を無理に聞く気はない。言えないにしてもちゃんと理由があるんだろ?」
「うん⋯⋯」
「なら聞かない。言える時に言ってくれ、それでいいよ」
啓吾が、話の分かる男すぎて逆に辛い。というより、こいつ⋯⋯俺に甘すぎないか?俺が嫌だって言ったら無理に聞こうとしないし俺の意思を凄い尊重してくれてる。
───それだけ、俺の事が好きってこと?
「顔、赤くなってるけど大丈夫か?」
「うるさい!啓吾のせいだろ!」
「オレのせい!?」
もちろん啓吾のせいではない。俺が必要以上に意識し過ぎているだけだ。普段通りに接しろ⋯⋯意識しろ、俺。
「啓吾が俺に優しいから⋯⋯」
「好きな人には優しくなるだろ」
サラッとこういう事を言う。
「次、そういうこと言ったらキレるからな」
「わかったわかった」
自分で言っててかなり理不尽な事をしてるのに、啓吾は怒ることもなく受け入れている。なんというか⋯⋯男として負けた気分だ。
懐広いなこいつ。
「とりあえずオレが聞きたいのはそれくらいだな⋯⋯」
「答えられなくてごめんな」
「いいって。無理やり聞いて自分が満足するより、純平の気持ちを優先する方が大事だ」
ニッと啓吾が歯を見せて笑う。
その笑顔に見惚れていた事に気付いて誤魔化すようにテーブルに置いてあった麦茶を飲む。自分らしくない⋯⋯本当にそう思う。
「それで純平が聞きたかった事だけど⋯⋯」
そこで言い淀み、啓吾が壁にかけられた時計を見た。釣られるように視線を向けると時刻は既に18時を回っている。窓の外も夕焼け色に、染まっていた。
啓吾が言い淀んだ理由が分かった。多分、話始めたら長くなるんだと思う。俺と違って啓吾は明日も学校に行かないといけないし、家に家族も待ってる。
「帰るのか?」
「どうしようか悩んでる。今話した方がいい気もするんだけど⋯⋯ただ、帰るのが遅くなると色々とな」
「遅くなるの気にするなら泊まってけよ。京子さんから許可おりたらだけど⋯⋯」
ご飯も俺が作るし、学校に行くための制服にしたって最悪俺のを貸せばいい。教科書とかはどうせ置き勉してるだろうから大丈夫だろう。
啓吾のお母さん───京子さんが帰って来なさいって言ったら諦めるしかないけど。
今日は色々あったせいか、誰かと一緒にいたいという思いが強い。啓吾がいいなら、一緒にいたいんだけど⋯⋯ん?
「どうした?」
啓吾を見ると呆気にとられたようにぽかんとしている。俺、そんなに変なこと言っただろうか?
「いや、⋯⋯うん、純平は多分深く考えてはいないと思うんだけどさ」
「うん⋯⋯」
なんだろうか?啓吾は何やら言いにくそうにしている。啓吾に泊まっていけって言ったのはそんなにおかしな事だったかな?
あるいは京子さんが泊まるのを許してくれないとか?
「告白してきた相手に、その日泊まっていけって誘うか普通」
「あっ⋯⋯」
そんなこと言ったら男は勘違いするよな⋯⋯うん。元男だからよく分かります。それはそれとして。
「でも、俺は啓吾に泊まっていってほしい。寂しいからここにいろよ」
「泊まるに決まってるだろ!」