スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの敵と戦っている   作:かませ犬S

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恋の応援

 キッチンに立ってサラダ用の野菜を切っている。トントントンと小気味よいリズムでキャベツを切っていると、料理も慣れてきたなと自分でも思う。

 

 家の光熱費だったり食費用のお金は毎月かなり多めに口座に入れてくれてはいるけど、流石に毎食外食なんてリッチな生活を送る気にはならず、自炊を始めてなんだかんだ2年くらい経過している。

 

 中学生くらいまでは両親は日本にいたから、その時はお母さんの手料理を食べていた。たまに手伝っていたのもこの自炊に繋がっている気がする。

 

 俺が高校に上がるタイミングで父親の海外転勤が決まり、母親がついて行った形だ。俺も一緒にいく流れではあったけど通う高校は決まってたし、啓吾と会えなくなるのが嫌で俺だけ日本に残る事を決めた。

 

「冷静に考えたら、俺めっちゃ啓吾のこと好きじゃん」

 

 ポツリと一言。

 

 幸いな事にこの呟きを拾う相手はこの場にいない。啓吾は俺の家に泊まるってことになってから、一度家に帰るって言って出ていった。着替えだったり明日の準備物を持って戻ってくるって言ってたな。

 

 啓吾のスマホの充電が切れているのもあって、京子さんに電話をかけれないから伝えるためにどの道帰らないといけないって言ってた。充電器貸すぞーって言ったら俺から離れる口実って白状した。

 

 なんでも、このまま同じ空間にいたら変な気分になるって言ってたな。

 

 

 

 ───変な気分って、そういう意味なんだろうか?男だもんな⋯⋯啓吾だって。

 

 

 

「入るか?」

 

 一緒に温泉に入った時にチラッと見えた啓吾の息子の大きさを思い出し、自身の下半身をみた。数秒経って自分がナニを想像したか気付いて、邪念を飛ばすように頭を振る。

 

「いやいや、そもそも付き合ってないし」

 

 俺が啓吾のことを好きかどうかも分からない⋯⋯いや、うん。言い訳なんだよなこれ。

 

「啓吾が好き⋯⋯」

 

 野菜を切る包丁がピタリと止まる。

 

 男だからとか、そんな理由で色々と言い訳してるけど告白されて胸が高なったし、嬉しいと思った事実は確かに存在する。啓吾のことを好きじゃないとそんな反応にはならない。

 

「多分、魔法少女にならなければこの想いには気付かなった」

 

 啓吾には悪いけど、その好意に気付かないまま普通に恋愛して好きな人を作ったと思う。

 

 俺が啓吾に惹かれている⋯⋯ある種の依存に近い想いを抱いたのは先も見えない真っ暗な闇から、啓吾が救いあげてくれたから。

 

 俺だって啓吾が気付いてくれたから。

 

 多分、あの時⋯⋯俺は啓吾の事が好きになった。親友としてではなくて⋯⋯。

 

「今は女の子だからって言い訳もできるか⋯⋯」

 

 魔法少女になった事で今の身体は女の子だ。啓吾の好意に応えたとしても何らおかしな話ではない。中身は男だからって言い訳しても、啓吾が好きなのは自分でも分かってる。

 

 なら、問題ないんじゃないか?

 

 啓吾に好きだって伝えても。啓吾の想いに応えても⋯⋯。

 

「はずっ⋯⋯」

 

 一人になって冷静に考える時間が出来た。その間に考えてることは全部啓吾のことだ。どれだけ好きなんだよ⋯⋯本当。

 

 とはいえ、自分から啓吾に好きって伝える勇気はない。男らしくないのは分かるけど、女の子に告白するのと男に告白するのでは訳が違うって。ハードルが数段は違う。

 

 まだ自分の想いに気付いたばっかりだ。伝える勇気は⋯⋯当分でないと思う

 

「また、啓吾から告白してくれないかな」

 

 そしたら俺も好きだって自然な流れで言える気がする。男らしくない本当に。

 

「ん?」

 

 スマホの通知音が鳴ったので包丁を置き、手を拭いてから手に取る。メッセージをくれたのは啓吾だ。内容は京子さんから許可はおりたから、準備して戻るって。

 

 着替えとかは持って来ると思うけど、お風呂はどうするんだろうか? シャワー浴びてから来る? バイクで来ると思うからそれだと湯冷めすよな。

 

「風呂は俺の家で入るよな、っと」

 

 啓吾の事を気遣ってメッセージを送ると直ぐに既読がついて返事が返ってきた。短い一文で『誘ってるのか?』って。

 

 親友として接していた時は下心なんて何一つない提案だった。けど、啓吾の告白をきっかけに、関係値が変わって捉え方や見え方が変わってきた。

 

 好きな人に泊まっていけとか、お風呂入っていく?なんて聞かれたら男としては期待するのは⋯⋯元男だからよく分かる。そういう同人誌とか普通にあるしな。

 

「啓吾は俺を抱きたいの?と」

 

 過剰に反応するのは負けた気がするので揶揄う目的でメッセージを送る。さぁ、どう返してくる?

 

 既読は直ぐについたが、メッセージは直ぐに返ってこない。どうやら考えているようだ。スマホを見てニヤニヤと笑っていたら啓吾から返事が返ってきた。

 

「え⋯⋯あ、うん」

 

 メッセージには『好きだからそういう想いはある。揶揄ってるなら本気にするぞ』って。慌てふためく啓吾が見たかったからこういう返事は心臓に悪い。

 

 なんというか、男らしい返事だ。

 

 なんて返そう⋯⋯いいよって送る? そんなの送ったら間違いなくベッド・インまでいく気がする。エロ同人みたいな展開になる気がする。

 

 別にそうなってもいいと一瞬考えた自分をぶん殴りたい。

 

 無難に『揶揄ってごめん』と返事をしてから、気持ちを切り替える為に料理に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 啓吾が戻ってきたのはそれから30分後、19時を少し過ぎた頃だった。まるで示し合わせたように料理が出来たタイミングで帰ってきたのは、少し面白かったな。

 

 ただ、直前であんなやり取りがあったせいかお互いに気まずくて顔を合わせても直ぐに逸らしてしまった。

 

「料理上手だな、純平」

 

「そうか?」

 

 と言っても今日作ったものはそれほど手の込んだものではない。オムライスにコーンスープ、サラダとデザートにプリンと計4品。プリンは啓吾が買ってきたケーキ屋さんのやつ。

 

 一応、啓吾のオムライスは量が足りないと可哀想なのでかなり大きく作ってある。イタズラでケチャップでハートを書こうと思ったが、流石に怒られそうなのでやめておいた。

 

 時間があるならもう少し手の込んだものを作るのだが、お腹を空かせた啓吾を待たせたくはなかったので手早く作れるもので済ませた。それでも料理が上手だと褒められるのは悪い気がしない。

 

「食べながらでアレだけど、純平が聞きたかったこと、話すか」

 

「食べ終わってからでもいいぞ」

 

 食べながら話す話題ではない気もするし。

 

「いや、ここに帰ってくる途中でそいつと会ったんだよ。ただの買い物帰りだったけど」

 

「そいつ?」

 

「あぁ。霧崎って俺と同い年の男だ。そいつとは色々あってな」

 

 雲雀のことだな。主人公は雲雀って呼ばれることが多いから霧崎って言われると一瞬誰だっけ?ってなる。ファンも雲雀呼びで慣れてるしな。

 

「色々って?」

 

「純平も事情を知ってるだろうから話すけど『Los Lobos(ロス・ロボス)』に所属していた時、上の命令で霧崎を殺すように言われていた」

 

 それは作中のソルシオン戦でも本人の口から語られていたので、それほど驚きはないが⋯⋯。

 

「啓吾は⋯⋯人を殺したことがあるのか」

 

「いや、まだないな。ズタボロにして漆原の元に連れて行ったことは何度もある。殺しの仕事は俺以外の幹部がやってた筈だ」

 

 じっと啓吾の顔を見る。目線を逸らすこともなければ、嘘をつく時の癖も見えない。どうやらそれは本当らしい。啓吾が人を殺していないと分かって、安堵した。

 

 ズタボロにしたってところにはあえて触れない。多分、鉄パイプで動けなくなるまでボコったとかそんなんだ。原作で雲雀にやったみたいに⋯⋯。

 

 思わず遠い目をしてしまう。

 

「霧崎に関しては⋯⋯多分、漆原の命令だな。組織を目の敵にしている奴だから、仕留めてこいって話だった」

 

 ここは原作の流れと違う気がするな。原作では雲雀は漆原によって殺されていたので、ターゲットとなっていたのは殺し損ねた雀だった筈だ。

 

 雀を狙って雲雀たちが住む町にきたソルシオンは、死んだ筈の雲雀を目撃して組織に連絡。そこから雲雀を殺すように命じられる流れだったか?

 

 原作と違い、色々あって生き残った雲雀を漆原が危険視してソルシオン───啓吾に始末するように命令がいった、と。

 

「任務の結果に関しては純平も知っての通りだ。失敗したからこそ漆原に殺されかけた⋯⋯純平があの場に来なかったら間違いなく死んでいたよ。ありがとう」

 

「ううん、俺は啓吾に死んで欲しくなかっただけだから⋯⋯」

 

「それがあの場所にいた理由か。なら、素直に救われた事に感謝しておくか。純平にそれだけ思われていたって分かったことだしな!」

 

 俺を揶揄うように啓吾が笑う。事実なだけに言い返す気もおきず、無言でオムライスを口に含む。我ながら素晴らしい出来だ。

 

「それで、その後どうなったんだ?」

 

「オレは純平を救いたくてな⋯⋯けど、オレの実力じゃ漆原に勝てないのは分かっていた。だから能力(アビリティ)で漆原を倒せる方法、あるいは倒せる人間がいないか聞いた」

 

 原作と違って啓吾は能力の使用回数が残っていたのか。雲雀も五体満足だったからな。快勝したってことだよな。

 

「そしたら?」

 

「オレが任務で殺すことになった霧崎なら漆原を倒せるって解答が返ってきたんだ⋯⋯。オレはほんの僅かでも純平を救える可能性があるなら縋りたいって思ってさ⋯⋯殺し合いをした相手の元に向かっていたよ」

 

 俺は原作知識で、啓吾は自身の能力で雲雀なら漆原を倒せるって分かった。俺の予想通りに啓吾は雲雀と接触したわけだ。

 

 ───俺を救う為に。

 

 啓吾の行動理由が一貫していて、胸がポカポカと嬉しい気分になる。

 

「ほんの数時間前にやり合った相手だってのにさ、霧崎はオレの話を聞いてくれた」

 

「そっか⋯⋯いいやつだな」

 

「いいやつだよ。オレの想いを受け止めてくれて、一緒に『Los Lobos(ロス・ロボス)』を倒そうって言ってくれた」

 

 雲雀もまた『Los Lobos(ロスロボス)』に命を狙われているし、実際に漆原に殺されかけた。二人とも共通の敵を持っていた。だからこそ協力できるわけか。

 

「霧崎もオレみたいに好きな人がいるらしくてな。聞いた話によると『Los Lobos(ロスロボス)』が原因でその子も大切なものをなくしたらしい」

 

「そうなのか」

 

「だから霧崎も『Los Lobos(ロス・ロボス)』は許せないって言ってた」

 

 雲雀の好きな人と言われてパッと思い浮かぶのは公式カップリングとしてよく上げられる雀だ。

 

 啓吾の話の通り、雀は『Los Lobos(ロス・ロボス)』によって大切もの⋯⋯母親を失っている。そうなるとやっぱり雀か。

 

 けど、この段階で雲雀は雀に好意を抱いていたっけ?雀の容姿に見惚れていた描写はあったけど、妹の記憶を忘れてたり刺客に命を狙われたりでそれどころじゃなかった記憶がある。

 

 原作とは流れが違うから恋愛に対して向き合う余裕があるとか?ソルシオン戦で快勝していたようだし、その可能性はありそうだな。

 

「そんなこんなで、お互いの恋が成就したらいいなって話し合ってるうちに多少は仲良くなったな」

 

「なるほどなー」

 

 俺は公式のカップリングを推してるから、その恋が報われるといいな雲雀!

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