スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの敵と戦っている 作:かませ犬S
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
玄関で学校に登校する啓吾を手を振って見送る。昨日の夜よりは顔色はいいけど、まだ辛そうにしてた。
学校を休んだ方がいいんじゃないかって提案したけど、休むほどじゃないってさ。なら、無理だけはするなよってこうして送り出している。
「大丈夫かな」
啓吾の姿はもう見えない。
足取りはしっかりしてたから意外と元気なのかもしれない。けど、心配なんだよな。啓吾に何かあったらってついつい考えてしまう。
昨日の今日ってのもある。あんな事があった翌日くらい休めばいいのにって。
本音を言えば啓吾と一緒に、家で居たかっただけだけど⋯⋯。
「一緒にいたいって言えば居てくれたかな?」
啓吾なら言えば俺の傍にいてくれた気がする。けど、俺の我儘で迷惑をかけたくはない。
俺と違って啓吾には生活がある。高校生として学校に通わないといけない⋯⋯。
「俺も連絡しないとな⋯⋯」
学校には家の都合でしばらく休むことを伝えてある。このまま自主退学する流れにはなるだろう。
それにしたってまずは親に連絡しないといけない。軽く調べただけだから正確なことは分からないけど、自主退学するには保護者の同意と退学願が必要らしい。
俺が18歳以上であれば単独で手続きケースもあるらしいが、俺には当てはまらない。
親に連絡するのはなかなか自分でも踏ん切りつかなかったけど、後回し後回しにしてもろくな事にはならないからな。
スマホのメッセージでまずは父さんに連絡を入れる。両親は二人とも尊敬はしているし、大好きではあるんだけど冷静に話を聞いてくれると個人的に思っているのは父さんの方だ。
父さんが家にいない間に、色々あって高校を辞めることになりそうって文字を打ち込んでメッセージを送る。犯罪を犯したとか校則を破ったとかではないと一応付け加えておくか。
詳しくは電話か、次に家に帰った時でいいから口頭で話したいと伝える。
即、既読がついた。
「大事な話か?」
父さんから帰ってきた短い短文を読み上げる。口頭で話したいって書いたからそう返事がきたんだと思う。
また短い短文が送られてきた。母さんと違ってこのメッセージのやり取りに慣れていないらしい。
文章には電話と顔を合わせて話すのとどっちがいいか聞いている。
「電話でも別に⋯⋯あっ」
両親は簡単には帰れないところにいるから電話でもいいかと思ったけど、今の俺は女の子で声も男の時とは違う。
啓吾のような
下手したら俺が事件に巻き込まれたって勘違いして警察沙汰になる可能性すらある。それなら電話で話すよりも実際に会った方が説明はしやすいか。
これから先の将来に関わる大事な話だからちゃんと会って話がしたい返信を入れると、また直ぐに既読がついた。
「今週末に帰ってくるって早くないか?」
メッセージにはスケジュールを変更して今週末に家に帰ると書いてある。明らかに無理やり作った時間だ。
俺なんかのために仕事を止めて帰ってきてくれるのが申し訳なくて、お盆とか年末とかいつものタイミングで帰って来る時でいいよと返信した。
即既読がつき、息子の将来に関わる大事な話なら、それは仕事よりも優先するべきだから帰国するって書いてある。
あと、俺が気にしないようにか仕事に支障はないとも補足してあった。
「ありがとう」
ちなみに連絡を入れたのが母さんだったら、メッセージではなく電話がかかってきていたと思う。そんな大事な話をメッセージで済ますなって。
それが悪いわけではないし、子供想いで嬉しく思うけど、今の俺の状況だとややこしくなるから結果的に父さんを選ぶ形になったわけだ。
母さんには父さんから伝えてくれるそうだ。ひとまず急ぎの連絡はこれで終わりだな。父さんたちが帰ってくるまでに心の準備だけはしておこう。
「さてと、やることないし家事でもこなしますか」
今日は悪魔の襲撃もない日だし、漆原からの呼び出しがあるわけでもない。お昼頃に『アビリティ・ストライク』の原作イベントがあった気はするけど、日常パートだから学校に忍び込んでまで見るのはなぁ⋯⋯。
あ、でも原作との相違がところどころ出ているから確認を兼ねて見に行ってもいいかもしれない。雲雀がどうやら原作よりも雀を意識しているようだし。
それがどれだけ原作に影響が出るか分からない。どうせ暇だし、見るだけ見に行こう。
よし、午後の予定は決まったし洗濯とか掃除とか諸々済ませて時間を潰すとするか。
時刻はお昼すぎ。
無事に家事を終えた俺は原作主人公である雲雀が通う高校の屋上から、お昼休みを楽しむ学生たちを眺めていた。
ただ、目的の人物が見当たらないな。原作通りなら校庭に置かれたベンチにいたと思うんだけど⋯⋯微妙に違う?雲雀とは違う女子生徒が座ってるしな。
魔法少女に変身してるから姿を見られることはないし、校内を歩き回ってもいいけど⋯⋯雲雀に俺の姿は普通の人には見えないって言ってないんだよな。
俺を見つけた雲雀が話しかけてきて、それを第三者が見たら何もない場所へ話しかけるやべーやつみたいな扱いをされるかもしれない。
実際に原作でも幽霊に話しかけるシーンがあり、それを見かけたクラスメイトに疲れてるなら病院に行けって心配されてたな。
「うーん、どうしようかな」
特別見たかったイベントではないのは確か。お昼休みに雀が作ってきた手作り弁当を雲雀が食べて、悶えるなんてギャグシーンだしな。
メシマズヒロインではないんだけど、その日だけは塩と砂糖の容器を間違えていて調理に失敗⋯⋯なんてオチだったと記憶してる。
二人が少しずつ仲良くなっていく過程を描く大切なシーンではあるが、俺はどちらかと言うとサブヒロインのカモメとのやり取りの方が好きだし⋯⋯バトルシーンの方が見応えがあるので、そっちの方が見たい気持ちが強い。
確認を兼ねて来ただけだしな。雲雀たちがいないならいないでそれでいいか。
雲雀が雀を好きってくらいならそこまで影響はないだろうし、むしろ雲雀の覚醒が早くなるかも知れない。その方が好都合か。
「ん?」
用も済んだし帰ろうかと思っていたら、ドタドタドタと階段を駆け上がってくる音がした。
現実では屋上は閉鎖されていることが多いけど、この世界は漫画の世界なので生徒が出入りできるように施錠はされていない。原作にも屋上でお昼ご飯を食べるシーンもあったしな。
ただ、今日は何故か屋上には誰もいない。
記念すべき一人目の学生が勢いよく屋上に上がって来ているようだ。どうせ俺の姿は見えないのでどうでもいいけどな。
そんな事を考えていると、バンッと屋上の扉を勢いよく開けて見覚えのある学生が駆け込んできた。
はぁはぁと息を切らしながら俺を見て笑顔を浮かべるのは我らが主人公、雲雀である。
「雲雀?」
「はぁ⋯⋯はぁ、ごめん⋯⋯ちょっと待って」
俺が話しかけると深呼吸を何度か繰り返して息を整えている。一般人よりも身体能力が高かったと筈だけど、息切れするくらい急いで屋上まで上がってきたのか?
何のために?
屋上で雀と待ち合わせをしているわけでもなさそうだし、今この場には俺しかいないぞ。
まさか、俺に会うために息が切れるくらい本気で走ってきたのか?
「どうしてここに?」
「いや、たまたま頭上を見上げたら屋上に飛んでいく
そのまさかだった。
「私に会いたかったから?」
「うん。友達にお昼ご飯一緒に食べようって誘われてたけどさ⋯⋯
頭をかきながら笑う雲雀を見て、背中に嫌な汗が伝うのがわかった。
───あれ?もしかして俺が学校に来たせいで、原作イベントなくなった?