スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている   作:かませ犬S

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ラッキースケベ

 雀のお誘いを断ってまで、俺に会いに来た?なんで?

 

 理由が分からず困惑している。友達だから?雲雀がそう思ってくれているのは嬉しいけど、普通は好きな人を優先するよな。

 

 いや待てよ。雲雀の発言に答えがあるじゃないか!雲雀はこう言っていた。

 

(あや)と話すのはこの機会を逃すと、次いつになりそうか分からなくて、ついな』

 

 雀とは同じ学校に通っているのでいつでも会えるし、連絡先も交換している筈だから会えなくてもやり取りは可能。

 

 対して俺は同じ学校に通っていなければ、連絡先の交換もしていない。会った回数も二回だけで、会話のやり取りで俺の個人情報は雲雀にほとんど話していないので独力で俺を探すのは不可能。

 

 言ってしまえば俺は、探しても会えないレアキャラみたいなもんだ。このタイミングを逃してたまるかと雲雀が俺を追ってきたわけだな。

 

 うーん、予想外!

 

 原作イベントでも見るかーって軽い気持ちできたら俺がレアキャラだったばかりに、原作イベントを放り出して雲雀が来てしまった。なんということだ。

 

 まぁ、今日のイベントは原作にそこまで影響ないしさ。大丈夫大丈夫。

 

 本当に大丈夫か?

 

 俺を見て嬉しそうに笑う雲雀を見ると、自分が思い違いをしているような気がしてならない。

 

「ごめん、もしかして⋯⋯迷惑だったか?」

 

「ううん。そんなことないよ、私も雲雀に会いたかったから」

 

 一応噓ではない。俺は『アビリティ・ストライク』を長年推してきたファンの一人だ。この世界の誰よりも雲雀のことを応援していると言っても過言ではない。迷惑と思う筈がない。

 

「それなら良かった」

 

「うん」

 

 安心したようにホッと息を吐く雲雀を見つめる俺という構図。男女逆にしたシチュエーションで原作にもあったな、こんなシーン。

 

 そうそう思い出した!雲雀に好意を寄せる『Los Lobos(ロス・ロボス)』所属の女の子───猫宮(ねこみや)が雲雀みたいに押しかけて来るシーンだ。こんな感じのやり取りだったなー。

 

 思い出せてスッキリした⋯⋯ん?いや、流石にないよな。シチュエーションが似ているだけだ。雲雀が俺を好きなんて想像できないし、うん。

 

「あっ⋯⋯」

 

 そういや、猫宮って雲雀を好きになる前に誰かに片思いしてたよな。雲雀がそいつを倒して、漆原に粛清されたから逆恨みして刺客として襲ってきたのが二人の馴れ初めだった筈だ。

 

 倒された後に、傷を治療してくれたり優しく接してくれる雲雀にキュンってなって好意を寄せるようになる。チョロい女の子ではあるんだけど⋯⋯。

 

 猫宮が誰に片思いしていたか、作中では語られていないんだよな。ただ、漆原に粛清された人数は割の限られてくる。

 

 任務を失敗した刺客は殺されていることが多いけど、漆原が直接手を下すのは実はそれほど多くない。雲雀を好きって考えると恋愛対象は男だよな。そうなると候補は更に絞られる。

 

(あや)?⋯⋯顔、こわいぞ。俺なんか機嫌を損ねるようなこと言ったかな?」

 

 

 猫宮が片思いしていた候補の中にソルシオン───啓吾がいる。流石にないよな。猫宮が啓吾を好きとか⋯⋯ありえないよな?

 

 ───啓吾は俺のだぞ。

 

 自分でも初めて感じる黒い感情だ。もしかしたらこれが嫉妬とか独占欲なんて呼ばれるものかも知れない。

 

「えっと⋯⋯ごめんなさい」

 

「え?」

 

 猫宮の片思いの相手が啓吾かも知らない可能性にジェラシーを感じていると、何故か雲雀が俺に頭を下げて謝っている。

 

 考え事に夢中になっていたせいで、直前までのやり取りを覚えていないんだよな。え、なんで謝ってるの?

 

「え?なんで雲雀が謝ってるの?」

 

「いや、あの⋯⋯俺が機嫌を損ねるようなことをしたかなって」

 

「雲雀は私に対してそんな事するの?」

 

「俺はしていないつもりだけど」

 

 なら、なんで雲雀は謝っているのだろうか?あ!もしかしたら先程のジェラシーが顔に出ていた可能性がある。

 

 不機嫌そうにしてたから雲雀は謝った?だとすれば悪いのは全面的に俺じゃないか!

 

「ごめんなさい。嫌なことを思い出しちゃって⋯⋯それが顔に出てたのかな?もしそうなら雲雀は悪くないのに謝らせて、ごめんなさい」

 

「あ!いいよいいよ!俺が(あや)に何もしてないならそれで!」

 

 どう考えても俺にしか非がない。誠心誠意、謝るしかないので前世の社会人時代に磨いた謝罪を披露する。

 

 雲雀は少年漫画の主人公らしく人がいいので簡単に許してくれるわけだけど、こっちに非がある時はもっと責めてくれてもいいんだよ。こんなので許されると申し訳なくなるから。

 

「雲雀は人がいいね」

 

「そうかな?」

 

「うん。許してくれてありがとう。けど、やっぱり申し訳ないから私にできることなら何でもしてあげるけど、何かある?」

 

()()()()()

 

 食い気味に反応した雲雀に、あれお前ってこんな奴だっけって失礼ながら思ってしまった。猫宮が同じような誘いをしてもお前、そんな反応じゃなかっただろ。

 

「もちろん、私にできる範囲だよ」

 

 念は押しておく。

 

 雲雀は腐っても少年漫画の主人公なので変なお願いはしてこないだろう。

 

 うん、少年漫画のラスボスが変態的要求をしてきたことからは目を逸らそう。そもそもあいつのマザコン疑惑は原作の時点であったしな!

 

 雲雀はそういった描写はなかったから安心出来る。いくら俺だってバカではない。ちゃんと相手を選んでる。予想外に食いついてきたし、いつになく真剣な表情で悩んではいるが大丈夫な筈だ。

 

「ならさ、連絡先の交換ってできたりする? (あや)に会いたいってなっても連絡手段がないからさ」

 

 ほら見ろ、これが少年漫画の主人公だ!なんて健全なお願いなんだ。ラスボスが酷すぎて雲雀が輝いて見えるよ。

 

 それはともかく、雲雀のお願いについて少し考えよう。連絡先を交換すること事態は別に構わない。知られたところで影響はないからな。

 

 むしろ雲雀とメッセージのやり取りをすることで、原作の進行状況をより正確に把握できるというメリットがある。

 

 懸念点はメリットと似たようなものだが、メッセージのやり取りをすることで雲雀の行動が変わり原作から逸れること。

 

 既に原作とは異なる動きを雲雀は見せている。漆原との戦いで死ななかったり、ソルシオン戦で快勝したり、雀にこの時点で好意を抱いていたり、そのくせレアキャラである俺に会いたいが為に雀の誘いを蹴ったり、完全ではないが原作が変わっている。

 

 何が原因で原作から逸れているか分からないのも怖い点だ。今回のイベントの場合は完全に俺が原因ではあるが、それ以外は俺は関係ないからな。

 

 あーでも、原作と違って啓吾が生きているし雲雀と協力関係を結んでいる。この時点で原作乖離は起きているんだよな⋯⋯なら、構わないか。俺が注意すべきところは原作における主人公陣営の戦い。

 

 最終章までに主人公陣営のキャラが死なないように、俺の方で気を配っておこう。一人でも欠けたら『Los Lobos(ロス・ロボス)』は倒せない。漆原を倒せない。赤ちゃんプレイから解放されない。

 

 幸い、俺の傍には作中随一のチート能力を持つ啓吾がいる。俺一人ならやれる事はしれているけど、二人で協力すればどうにかなる。愛の力で乗り越えていける。

 

 結論。連絡先を交換しても啓吾がいるから大丈夫だ!どうにかなる!

 

「連絡先の交換はできるよ。けど、ちょっと待ってね」

 

 今の俺は魔法少女の姿で来ている。その為、スマホを持ち合わせていない。まぁ、それも変身を解除すればいいだけの話だ。

 

「ごめん、あまり見られたくないから耳を塞いで目を瞑っててくれる?」

 

「ん?あぁ!分かった」

 

 俺の目の前で両耳を塞いで目を瞑る雲雀を見て、そんなに素直に従うんだなってびっくりした。

 

 原作の雲雀はもう少し警戒心が強かったよな?こういうやり取りの際には、何故を瞑る必要がある?なんて尋ねていた気がする。

 

 それだけ俺の事を信頼しているってことか?二回しか会ったことないけど。

 

「魔法の変身、メイクオフ!」

 

 雲雀から向けられる信頼に戸惑いつつも、待たせる訳にはいかないのでサクッと変身を解除する。

 

 お出かけように着替えても良かったけど、変身して原作イベントを見終わったら帰る予定だったので、不精して部屋着のままである。ちなみに白のジャージだ。

 

「雲雀、もういいよ」

 

 って声をかけても耳を塞いでいるから聞こえないか。雲雀に近寄ってポンポンと肩を叩く。すると雲雀は、耳を塞いでいた手を離してゆっくりと下げてから瞼を開く。メガネ越しにダークブラウンの瞳と目が合う。

 

 思っていたより至近距離だな。どちらかが躓いたりしたらキスとかしてしまいそうだ。そういうラッキースケベのイベントってあるよな。うん。

 

「かわいい⋯⋯」

 

「え?なんか言った?」

 

「いや、なんでもない!」

 

 顔の前で手をブンブンと振って珍しく動揺している。

 

 その時、たまたま強い風が吹いた。

 

 いつもの雲雀なら風をその身に受けても踏ん張りが効いただろうが、動揺していた為か風に押されて体勢が崩れてしまったらしい。

 

 ゆっくりと雲雀が俺の方へと倒れてくる。咄嗟に顔を背けてキスは回避したが、男の体重を受け止めることができず二人揃って屋上に倒れてしまう。雲雀に押し倒されているような状態だ。

 

「いった⋯⋯」

 

 背中を強打したので普通に痛い。雲雀は大丈夫かと心配しながら視線を向けると俺の胸に顔を埋めていた。こんなところでラッキースケベを発生させるなよ、おい。

 

 とはいえ、雲雀が故意にしたわけではない。その辺はちゃんと理解しているので雲雀を責めるつもりはないが、重いし恥ずかしいから上から退いて貰うとしよう。その時だ。

 

 ───ガチャっと扉が開く音がした。嫌な予感を感じつつ視線を屋上の出入口へと向けると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにしてんの貴方たち」

 

 ───原作のメインヒロイン、赤坂 雀が無表情で俺たちを見下ろしていた。




またややこしくなる。
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