スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの敵と戦っている   作:かませ犬S

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ブチ切れ

 雀がこの場に来た理由はなんとなく分かる。お昼のお誘いを断った雲雀を追ってきたんだと思う。

 

 雲雀がどういう断り方をしたかは不明だが、急いでいたようだし『ごめん!急用が!』みたいな感じで理由を伝えずに俺の元に来たんじゃないかな?

 

 雀は話を聞かないタイプのヒロインではないから、他の女の子に会いに行くって伝えたとしても、なんだかんだ送り出してくれるだろう。

 

 今回に関しては雲雀の為にお弁当を作ったのもあって、ふざけんなって感じで追いかけてきたんだろうな。で、少年漫画の主人公らしいラッキースケベの現場を目撃してしまったと。 

 

「いや、これはその⋯⋯俺が押し倒してしまって」

 

 好きな人にこんな状況を見られたら焦るよな⋯⋯けど、その弁明は悪手じゃないか? 無表情だった雀の表情が敵意丸出しの冷たいものへと変わっていく。

 

「そう⋯⋯貴方を信頼した私がバカだったわ」 

 

 あ、この台詞聞いたことがある!

 

 『Los Lobos(ロス・ロボス)』が主人公陣営を引っ掻き回す為に『変身(メタモルフォーゼ)』の能力(アビリティ)を持つ幹部の一人を送り込んで、雲雀に変身した幹部が雀にセクハラした時のセリフだったかな?

 

 敵の策謀によって主人公とメインヒロインがガチバトルを行うって回だったけど、最終的には雲雀を信じた雀によって幹部が燃やし尽くされて決着って流れだった。

 

「消え失せなさい!(ケダモノ)!!」

 

 今回に関して実際に雲雀が俺を押し倒している現場を目撃されているので、どうしようもない気がする。原作だと冤罪だけど⋯⋯いや、まぁ風に押さたのが原因だから冤罪と言えば冤罪。判断が難しいな。

 

 そうこう考えているうちに雀の掌から炎が放出され、一直線に雲雀に向かう。火炎放射器みたいだなって原作を見た時と同じ感想を思い浮かべていると、雲雀が俺の事を抱きしめて回避の為に転がる。

 

 漫画とかでたまに見る回避方法ではあるが、実際にされると俺も少し痛い。俺を庇っているようでダメージ入ってるからな、これ。

 

「いきなり何すんだよ、雀!」

 

 俺の事を気遣いながらそっと俺を床に下ろした雲雀が、素早い動きで立ち上がり攻撃をしかけてきた雀に文句を言う。

 

 対して雀は眉間に眉を寄せて分かりやすく怒ってる。

 

「その子から離れなさい、(ケダモノ)。こんな真昼間から女の子を襲うなんて、最低よ!」

 

「襲う!?⋯⋯いや、俺はそんな気はなかったって」

 

 ラッキースケベな展開ではあったけど、明らかに故意ではなかったしな。俺の胸に顔を埋めたとて、雲雀は何も思うことはないだろう。雀のことが好きみたいだし。今焦ってるのは好きな女の子に誤解されたくないからだなきっと。

 

「なら、どうしてそこの女の子を押し倒したのか言ってごらんなさい」

 

「風に押されて⋯⋯それこそ物がぶつかったみたいに強く押されて」

 

 雀の方も一応、話は聞いてくれるらしい。ただ言い訳として弱かったのか、雀は冷たい目で睨んでいる。

 

「貴方は風に吹かれた程度で倒れるくらい柔だったかしら?」

 

「いや、その⋯⋯はい」

 

「貴方もちゃんと天気予報見てるわよね? 体が倒れるほどって相当よ。それこそニュースなら強風注意報って形で気をつけるように言われるわ。もう一度言うわね。⋯⋯風に押された程度で、本当に倒れたの?」

 

 メインヒロインによるガン詰めだ。割と感情的に動くことが多い印象だが、頭はしっかり回るタイプである。

 

 雀の能力は『アビリティ・ストライク』全体でみればそれほど強い能力ではない。それでも作中では五本の指に入るレベルで勝率がいい。

 

 メインヒロインだから優遇されていると言われたらそれまでだけど、雀は能力に頼ったゴリ押しの戦闘を嫌う。俺が原作イベントとして観戦していたおばさんとの戦いが正にそれだ。

 

 雀は自分の能力の限界を弁えている。だからこそ勝つための努力をする。生き残るために最善を尽くす。戦闘IQに関して言えば主人公の雲雀よりも上かもしれないな。

 

 それがメインヒロインである雀の魅力だと俺は思っている。俺はどちらかと言うと主人公に護られるヒロインはそこまで好きじゃないので、雀やカモメみたいに泥臭くても勝利をもぎ取ろうするキャラは大好きだ。

 

 何が言いたいかと言うと、この場においては雲雀よりも雀を応援しそうになってる。ぶっちゃけ、雲雀が雀を言い負かす光景が思い浮かばないしな。正論しか言ってないもん、雀。

 

 確かに、風で押されるくらいで雲雀が倒れるだろうか? 風を操る能力者と戦った時もなんだかんだ倒れることはなかったよな、お前。

 

 まさか⋯⋯故意なのか、雲雀?

 

「そうは言われても、俺としては風に押されたとしか⋯⋯」

 

「そう。なら貴方じゃなくてそこの女の子に聞くわ」

 

「え?」

 

 雀の視線が屋上でちょこんと座る俺へと向かう。すみません、他人事みたいやり取りみてました。よくよく考えたら俺も当事者だわ。雀の主張する事柄では被害者って意味で。

 

「貴女からみて、本当に風に押されて倒れてきたように見えたかしら?本当は押し倒してきたんじゃない?」

 

「えっと⋯⋯」

 

 返答に困っていると雲雀と目が合った。諦観したような悲しい目をしている。自分の立場がいかに弱いかを自覚している目だ。こうして痴漢の冤罪とかって生まれるんだろうな。

 

 俺も男だったからさ、分かるぜ今の気持ち。前世では冤罪対策で両手上げてても女性が近くにいたら、冤罪に震えていたからな。大丈夫だ、俺はお前の味方だよ雲雀。

 

 雀のこと応援しそうになってたけど、そんな悲しい目をした男を放っておけるかよ。

 

「あの⋯⋯雲雀はそんなことしないと思います。付き合いは短いけど⋯⋯それくらいは分かるので」

 

(あや)っ!!」

 

 諦観していた雲雀の表情がパアッて明るくなった。雲雀に向けて笑顔を浮かべると、雲雀が泣きそうなくらい喜んでいる。雀はそんな俺たちのやり取りに拍子抜けした様子だ。

 

「だから、雲雀のことを疑わないであげてください。故意じゃないのは分かっているので⋯⋯私も気にしていないから」

 

「押し倒された側の子がそう言うなら、私は折れるしかないわね。けど、一応最後に確認させて。本当に押し倒されたわけじゃないのね?」

 

「はい。胸に顔を埋めていたけど、故意じゃないと思います」

 

 俺の返答と共に雀が雲雀に向けて炎を放射した。予備動作がなく、驚くほどスムーズな攻撃だったけど⋯⋯まるで予測していたように雲雀が躱した。

 

「あー、なら私が見た顔はやっぱり間違いじゃなかったって事ね。そこの女の子は見えてなかったみたいだけど⋯⋯思いっきり鼻の下伸ばしてたわよね雲雀⋯⋯」

 

「え?」

 

 俺の知ってる原作主人公はそんな表情しない。嘘だよな、雲雀って視線を向けると顔を逸らされた。

 

 マジかよ⋯⋯。

 

「弁明あるかしら?」

 

「⋯⋯ないです」

 

「そう」

 

 雀が雲雀に右手を向けた瞬間、雲雀は動いていた。こともあろうになんの躊躇もなしに屋上のフェンスに手をかけて飛び降りやがった。

 

 その後を追うように雀も躊躇なしにフェンスを飛び越えるのは流石にやばくないか?二人とも身体能力はアスリート並に高いけど、ちゃんと人間だよ? この高さから落ちたら死ぬよ?

 

 慌てて二人の安否を確認しにいくと、校庭を駆けていく雲雀と追いかける雀が見えた。なんで五体満足なんだ、あの二人⋯⋯。

 

 あっという間に二人の姿が見えなくなった。こんなやり取りを原作一話とかでもやってたな。雲雀は能力が目覚める前だったから屋上から飛び降りたりはしなかったけど⋯⋯。

 

「あっ⋯⋯連絡先、交換してない」

 

 雲雀と連絡先を交換する為に変身を解いたというのに。交換する相手がいなくなってしまった。どうしようかな?

 

 原作イベントは把握しているから次に会った時でも全然いいけど⋯⋯。あ、そういえば啓吾が明日雲雀と会うって言ったな。

 

 『Los Lobos(ロス・ロボス)』の刺客について話しておくって!なら啓吾に俺の連絡先を渡して貰うのもありだな。雲雀の気持ちを考えたら、早めに交換したいだろうしそうしよう。

 

「魔法の変身、メイクアップ!」

 

 そうと決まれば啓吾に会いに行こう!別に啓吾に会いたくなったとかそういう訳じゃないぞ。俺が忘れないうちに啓吾に伝えないといけないと思っただけだ。

 

 誰もいなくなった屋上で魔法少女に変身して、啓吾がいるであろう高校へと向かう。

 

 俺も魔法少女になる前は通っていたんだよなって少し寂しい気持ちにはなった。

 

「あっ、あれ啓吾じゃないか?」

 

 ちょうど校門から出てくるところの啓吾を発見して、寂しい気持ちが吹っ飛んだ。近くに誰もいないタイミングで変身を解除してびっくりさせてやろう。

 

 そんなイタズラを思いついて啓吾の後を追っていると、人気がない場所へと進んでいくのに気付いた。もしかして俺がいる事に気付いた?だから俺が出てきやすいように人気がない場所に?

 

 都合のいいように解釈しているのは分かるけど、ここまで自分にとって都合のいい展開だとそう考えても仕方ないだろ!

 

 よーし、啓吾のやつをびっくりさせてやろう。少し離れた上空から尾行していたのをやめて、一気に啓吾の方へ近寄る。

 

「ん?」

 

 啓吾が進んでいる先の曲がり角から一人の少女が姿を現す。その少女は啓吾を見て、花が咲くような笑みを浮かべ、あろうことか啓吾に抱きつきやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───は?」

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