スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの敵と戦っている   作:かませ犬S

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裏の一面

 腹の底から込み上げてくるどす黒い感情に自分でも初めて聞くような声が出た。

 

 ───俺の目の前で、俺じゃない女が、俺の啓吾に抱きついている。

 

 理解出来ないし、受け入れられない光景だ。

 

 今すぐにでも、啓吾に抱きつく女をぶっ飛ばしてやりたい。ついで言うと俺に告白しておいて、女を引き剥がそうとしない啓吾も一発殴ってやりたい。

 

 なんでその抱きついている女を引き剥がさないんだ?俺という存在がいるのに⋯⋯やっぱり、可愛い女の子の方がいいのか? 男だった俺よりも、最初から女の子だった可愛い女の子が⋯⋯。

 

 気分が沈んでいく。

 

「あっ」

 

 啓吾がようやく女を引き剥がした。そこでようやく啓吾の表情が見えたけど、鼻の下を伸ばしたり喜んでる様子ではない。むしろ嫌そうな顔をしていた。

 

 ───啓吾!

 

 けど、嫌ならもっと早くに引き剥がせよ。なんでしばらく抱きつかせてたんだお前。ぶっ飛ばすぞ。

 

 いかんいかん、冷静になれ。見ての通り啓吾と目の前の女は親密な関係ではない。俺と啓吾のような仲ではないということだ。

 

 それによくよく女を観察すると見覚えがある。茶髪の髪に猫耳カチューシャ、目は大きくパッチリとしたダークブラウンの瞳。愛嬌のある笑顔を俺の啓吾に向けている。ブレザーの制服を着たどこか猫っぽい女。

 

 俺の記憶違いじゃなければ、原作において雲雀に恋をして『Los Lobos(ロス・ロボス)』に反抗して死んだ悲劇のヒロイン───猫宮だ。

 

 登場回数は少ないが、彼女が好きだっていうファンは多かった。二次創作なんかでは猫宮がヒロインの作品も多く見受けられたくらいだ。俺も猫宮は嫌いじゃなかった。

 

 先程まで、は。

 

 俺の啓吾に抱きついた時点で問答無用で嫌いになった。嫌な予感はしていたが、こうも見事に当たるとは思っていなかった。

 

 んー、会話をしているようだけど周囲を気にしてか声が小さいのでこの位置からだと聞き取れない。マジカルパワーで二人には姿は見えないから近寄ってみるか。

 

「ソルシオンさまは、どうするんですかー?」

 

「オレは動かない。好きにしろ」

 

 猫宮が甘えるような声で啓吾に尋ねているけど、素っ気ない対応で返しいる。それが気に食わないのか頬を膨らませて、わたし不機嫌ですと言いたげな表情で啓吾を見ている

 

 口には出さず察しろというアピールは、自分の可愛さを理解しているからこその行動だろうけど、正直鬱陶しいと思う。

 

「さっきも言った筈だ。京都の件はオレは動かない。命令はきていないからな」

 

「えーでも、可愛い部下に万が一があるかもしれないですよー。一緒に来てくれたらー、嬉しいかなー」

 

 あー、ダメだ。俺、猫宮嫌いだ。原作の漫画とかアニメ見てる時は雲雀の事を一途に思っていい子だなって感じてたけど、好きな男に近寄る女は問答無用で嫌いになれる。

 

 啓吾に甘えるように近寄ったり、ボディタッチしているのを見ていると本当にぶっ飛ばしたくなる。二度と啓吾に近寄れないようにボコボコにしてやろうか。

 

 いや、ダメだ。俺は契約のせいで『Los Lobos(ロス・ロボス)』のメンバーを攻撃できない。攻撃すれば違反となり漆原に絶対服従となる。一時の感情で行動して負っていいペナルティじゃない。

 

「京都の件は既に複数人で当たる形になっている筈だ。幹部からはポイズンが出ている、オレまで行く必要はない」

 

 猫宮が不満そうにしているが、そんな鬱陶しい女のことなど捨て置いて二人のやり取りを冷静に思い返すが、俺の記憶には思い当たるものがない。二人の会話は原作にはない『Los Lobos(ロス・ロボス)』の襲撃だな。

 

 幹部が出っ張ってくるという事は一度勧誘に失敗しているということ。二度目は他のメンバーのように無理矢理連れてきて(ひばち)と契約を交わさせるか、殺すかの二択になる。

 

「それに、オレはしばらく組織とは別行動を取る」

 

「どういう事ですか?」

 

「前回の任務でオレはターゲットを始末できずに失敗した。そのせいでボスはお怒りだ」

 

「なるほど⋯⋯ほとぼりが冷めるまで組織から距離を置くってことですねー」

 

 啓吾はもう『Los Lobos(ロス・ロボス)』に戻る気はないが、現時点の段階では表立って敵対する気もない。

 

 幹部として長年組織にいたから啓吾は俺と同じように⋯⋯いや、俺以上に組織の脅威を理解している。短絡的な行動がどのような結果を齎すか解答も得ているだろう。

 

 それっぽい理由で猫宮のお願いを断っているが、件のボス⋯⋯漆原は既に怒っていない。いや、啓吾に興味すら持っていない。好きにしろ、言葉にすればそんなところだ。

 

「オレに構ってる暇があるなら、任務の準備をしておけ。下手をこけばオレのようにボスの鉛玉を喰らうことになる」

 

「分かりました!でも、猫宮は可愛いから失敗しても許されるかも⋯⋯にゃん!」

 

 原作でも見た猫の真似。あざとかわいいとファンに好評だが今の俺には不快で仕方ない。頼むから早く啓吾の前から消えてくれ。

 

 そんな俺の思いが届いたのか、ちょっとしたやり取りの後啓吾に手を振りながら猫宮がその場から離れていった。

 

 一人の残された啓吾が猫宮が消えていった曲がり角を見ながら深いため息を吐く。気持ちはよーく分かるぜ啓吾。俺もこの鬱憤を晴らしたいからさ、ちょっと甘えさせてくれ。

 

「うぉっ!なんだ!」

 

 マジカルパワーで姿を見えなくしたまま、啓吾の背中に抱きつく。猫宮がマーキングのように啓吾に抱きついていたので、上書きするように強く強く抱きしめると先程まで感じていたモヤモヤが消えていく。

 

 啓吾の温もりをこうして感じていると、好きなんだなと改めて実感する。

 

「攻撃じゃない⋯⋯?いや、むしろ背中に柔らかいものが」

 

 それにしても啓吾の反応が面白いな。急に抱き着いたから敵襲かと身構えていたが、痛みがないことに困惑していた。俺が強く抱きしめても抵抗しない。

 

 発言から察するに背中に当たってる俺の胸の感触を楽しんでる?それはそれで、啓吾であっても気持ち悪いな。せめて俺だって分かった状態で堪能してくれ。

 

 「純平か?」

 

 あ、こいつ能力(アビリティ)で確認したな。確信を持っているような声だった。バレてしまったら仕方ないので、マジカルパワーによる認識阻害を解除して姿を表す。

 

「なにしてんのさ、こんなところで」

 

「いや、何してるんだはこっちのセリフだ純平。どうしてこんな所に⋯⋯いや、さっきのやり取りも見ていたのか」

 

「うん、見てたし聞いてたぞ。あの可愛い女の子にデレデレになってたな⋯⋯」

 

「なら見間違いだ。オレは純平にしか興味はない。お前のことが好きだって言ってるのに、他の女に手を出すと思うか?」

 

 軽く揶揄ってやろうと思ったが、啓吾のストレートな好意にカウンターパンチを食らった気分だ。顔が赤くなっていると思うので、啓吾の背中に顔を押し付けて隠す。

 

「それで、どうしてここにいるんだ?」

 

「啓吾に会いたかったから」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

「どうした?」

 

 此処ににいる理由を聞かれたので、素直に答えると啓吾が固まった。背中から顔を離して様子を窺うと、嬉しさを噛み締めるようにニヤけていた。ちょっとキモイ。

 

「啓吾は、どうしてこんなところにいたんだ?」

 

「見ての通り、部下に呼び出しをくらっただけだ。次の任務が不安だから一緒に来てくれって」

 

「それだけ?」

 

「純平に嘘は言いたくないから正直に白状するけど⋯⋯隙があれば殺す気でいた」

 

 ───え?

 

 先程のニヤケヅラが嘘のように鋭い目で猫宮が消えた曲がり角を睨みつけている。

 

 自分に好意を寄せている部下を、殺す気でいたの啓吾?

 

 いや、俺も鬱陶しいとか消えてくれって色々と思いはしたけど⋯⋯なんて言うか、原作と同じでどうやっても報われない猫宮に同情した。

 

「殺すつもりだったの?」

 

「そうだな。ここなら隠蔽も簡単だし、隙があればって思ってた⋯⋯けど、あんなバカみたいな女でも『Los Lobos(ロス・ロボス)』のメンバーだな。隙はなかったよ」

 

 振り返った啓吾は笑顔を浮かべていたが、目は笑っていなかった。本気で殺す気でいたらしい。

 

「そっか⋯⋯」

 

 ───啓吾の裏の一面を見た気がして、少しチビった。

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