スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけ魔法少女としてエロゲの敵と戦っている 作:かませ犬S
まだかな、まだかなって何度も時計を確認してしまう。
シャワーも浴びて、服も着替えて、下着もそれっぽいやつにして、俺はもう準備万端だけども肝心の相手が来るのはまだしばらく先。
今は6限目が終わった頃かな? SHRがあって⋯⋯それから部活に参加してってなると遅くなるよな。啓吾が来るのはまだ当分、先かな。
「早く来ないかなー」
椅子に座ってぷらんぷらんと足を動かすと、黒いストッキングに包まれた足が視界に入る。ストッキングなんて履いたことがなかったので、締め付けるような感覚に未だに慣れない。
ただ、今俺が履いているのがミニスカートなのもあって、股がスースーするのを少しでもマシに出来ないかとストッキングを履いている。お陰で締め付ける感覚はあるが、多少はマシになったな。
啓吾が生足の方が好きって言うならストッキング脱ぐけど、どうだろうか?念の為にメッセージで聞いておこうか? いや、啓吾の立場になって考えると返答に困るだろうしやめておこう。
「可愛いけど、結構短いよなこれ」
今、俺が履いている黒のミニスカを掴んでヒラヒラさせる。
いやー、それにしても買ったスカートの丈が思ったより短かったな。ミューにこれが良いとオススメされるがままに買ったのが間違いだった。でも、まぁ⋯⋯俺が選ぶよりは男受けしそうな格好ではある。
ミューが選んだコーデだと上は肩出しの少し露出多めだったが、流石に啓吾に見せる勇気がなかったので一緒に買っていた白のブラウスを着ている。袖にフリルが付いていて可愛らしい。
自分なりにオシャレをしたつもりなのだが、男の時からファッションに興味がなかったのでこれで合ってるか分からない。啓吾の反応が悪かったらへこむ自信があるな。
早く会いたいやら会いたくないやら。どちらかと言えば会いたい気持ちが勝つな、それでも。
「あっ」
テーブルに置かれたスマホから通知音が鳴った。もしかしたら啓吾からメッセージかもと思って、スマホを手に取る。
メッセージの差出人を見て頬が緩む。その内容を見て心臓がドキドキと高鳴っている。メッセージには短く一言。
『学校終わったから今から向かう』
部活もあると思ってたけど、休んでまで俺に会いに来てくれるらしい。俺の予想よりも早く啓吾と会えるので、それが素直に嬉しいなー。
学校からだと、だいたい20分くらいか?
「緊張してきた」
前世で初めて告白した時と似たような感じだ。何を言おうか決めているけど、時間が迫ってくるとドキドキして大丈夫かって心配になる。
今回の場合は啓吾から先に告白されているのもあって、正直結果が分かりきったものではあるけど⋯⋯やっぱり勇気いるよなー。
「男だろ、しっかり決めろ」
身体は女の子だけど、中身は男だ。啓吾がやったようにカッコよく告白を決めよう。心の準備はできた!後は啓吾が来るのを待つだけ!
と思ったら家のインターホンが鳴った。
「へ?」
スマホを確認しても、啓吾からメッセージがきて5分ほどしか経ってない。いくらなんでも早すぎる。
そんなまさかという思いでインターホンのモニターを見るとそこには啓吾の顔が映っている。
徒歩20分の距離を5分で帰ってきたのかこいつ? 雲雀や雀の馬鹿げた身体能力を見ると可能な気もするけど、見たところ息が切れた様子はない。
他に可能性があるとすれば⋯⋯タクシーか。確かに、タクシーなら5分くらいで俺の家に着くな。⋯⋯うん、そこまでする?
とにもかくにも、啓吾が家に来たようなので迎えに行かなくては。インターホンの応答ボタンを押して、今行くって声をかけてから玄関に向かう。
ドキドキと高鳴る心臓は自分のモノじゃないくらい落ち着きがない。緊張するな、静まれって命じてるのに一向に収まらない。困ったやつだ。
「⋯⋯ふぅ」
玄関の扉の前で深呼吸してから鍵を開けて扉を開ける。
会いたかった人がそこにいて、俺の心臓がまた強く鼓動する。
「おかえり、啓吾!」
緊張を誤魔化すように笑顔を浮かべて、啓吾に迎え入れる。変なところないよなって気にしていたら啓吾が固まっている。
「あれ、どうした啓吾?」
「いや、服装が変わってたから驚いて⋯⋯」
「うん。啓吾に会うから着替えた。似合ってる?」
ファッションセンスがないなりに頑張ったから嘘でも似合ってると言ってくれ。そんな圧をかけるように笑顔で尋ねると、啓吾が赤くなった顔を隠すように手で覆っている。
「啓吾?」
「いや、夢じゃないだよな。今のやり取りも昼のやり取りも⋯⋯オレの為に着替えたのか?」
「うん。啓吾に可愛いって言って欲しくて」
女の子になった俺が可愛いのは理解している。というよりまだ自分の顔だって自覚出来ていないから、自分じゃない誰かを見ているような感覚でこの子可愛いなーって感想が浮かぶ。
けど、啓吾が俺の顔を見て可愛いって言ってくれたら自分のことだって自覚できる気がする。今の自分と向き合える気がする。
だからさ、らしくもなく固まってないで『可愛い』って言ってくれ。
「⋯⋯かわいい」
「なんて?」
「可愛い。顔も服装もそうだけど、オレに言って欲しがってる純平がすごい可愛い」
口説き文句だ。
俺が欲しがったのもあるけど、言うのは可愛いだけでいいよ。余計な一言があるせいで、嬉しさやら恥ずかしさやら、よく分からない感情で顔が赤くなっていく。
「とりあえず、入れよ」
「了解」
赤くなった顔を隠すように啓吾に背を向けてリビングに逃げる。勝手知る我が家のように啓吾が玄関の戸締りをして、来てくれるだろうからそれまでに落ち着かせよう。
「ふぅ⋯⋯」
啓吾がいい男なのは俺も理解しているけどさ、憎い男だよほんと!俺が欲しい言葉以上を言ってくる。嬉しいけどさ、心の準備が出来てないからやめてほしい。
今も顔の熱は引かないし、心臓もドキドキしててうるさいくらいだ。こんな調子で告白できるか? いや、する。勇気を出して告白するって決めたんだ。
「よしっ!」
声に出して気合いを入れると緊張が吹き飛んだ。今の俺ならできるぞ。
足音が近付いてきて、リビングの扉が開く。普段と同じ足取りでリビングに入ってきた啓吾と向かい合う形で立つ。
真剣な表情の俺を見てか、啓吾の足が止まる。察しのいい啓吾なら、俺が今から何を言うか分かっている筈だ。
啓吾に悟られないように小さく息を吐いてから、この時までずっと考えてきた言葉を口にする。
「なぁ、啓吾」
「なんだ?」
「昼間もさ言ったと思うんだけど、俺⋯⋯啓吾のことが好きなんだ。一人の男として」
この気持ちは女の子にならなかったらきっと気付く事はなかったし、啓吾の想いも今のように受け止められなかったと思う。今になって思えば、女の子になって良かったとすら思う。
───魔法少女になったのが全てのきっかけ。
女の子になって、元の姿に戻れなくなって、何もかも失って、絶望していた俺を救ってくれた。俺を護る為に命懸けで戦ってた。俺の事を好きでいてくれた。
そんな啓吾を好きになった。
他の女の子と啓吾が話しているだけで、嫉妬しちゃうくらいには⋯⋯いや、多分もう自分でもどうしようもないくらいに───啓吾が好きだ。
元男の俺に告白するのはきっと凄い勇気がいったと思う。
男だった時の俺が好きだって言うのも、俺なら引かれるのを恐れて言えなかったと思う。
けど、啓吾は包み隠さずはっきりと俺に言った。
俺はさ、啓吾に告白をされたあの時点で⋯⋯啓吾のことが好きだったと思う。
けど、男同士でとかよく分からない理屈を並べて、啓吾の告白を保留にした。
カッコ悪いな⋯⋯。
だから、今度は俺の口から伝えたい。
「啓吾、俺と───」
付き合って欲しい。
その言葉を伝える前に近寄ってきた啓吾が俺の口にそっと手を置いた。
───なんで?
困惑と不安で心が埋めつくされる。
「純平の言いたい事は俺も分かってるけど、ごめんな⋯⋯」
告白を止められて、啓吾に謝られて、目の前が真っ暗になるような感覚に陥った。けど。
「オレも男だから、どうしてもオレから言いたいんだ」
───え?
そっと俺の口から手を離し、啓吾が真剣な表情で俺を見つめる。啓吾が深呼吸したのが分かった。
「オレは純平のことが好きだ!この世で一番愛してる!必ず幸せにするって誓うから!純平だけを生涯愛するって誓うから!俺と付き合ってください!」
啓吾からの告白を聞いて、今度は自然と口が動いていた。
「はい。よろしくお願いします」
「っ───!!純平!」
感極まったように抱き着いてきた啓吾の背中に手を回す。本当は俺から言いたかったけど、今はそんな事がどうでもいいくらい幸せだから、それでいい。
「好き。啓吾が好き⋯⋯だからこれからは恋人としてよろしくお願いします」
「オレも純平が好きだぁぁぁぁ!!!よっしゃぁぁぁ!!」
「うるさい」
「ごめん」
耳元で叫ばれて流石にうるさかったので、注意すると直ぐ謝られた。顔を合わせると自然と笑みが溢れた。
「よろしく」
「うん」
啓吾との関係性はかけがえのない親友ではなくなった。
───恋人になった。
嬉しいって、幸せだって、心の底から思えるから俺の気持ちはきっと間違ってない。
「なぁ、啓吾」
「なんだ?」
嬉しくてたまらないといった風にニヤける啓吾に笑顔を向けながら、背中に回していた手を退けて代わりに啓吾の首に回す。
ニヤけている啓吾には俺が甘えているようにしか見えないらしい。間違ってはいない。これからいっぱい啓吾に甘えるつもりだ。けど、その前に言っておきたい事がある。
「俺はさ、女の子になってから気付いたんだ。実は嫉妬深いってことに」
「そうなのか⋯⋯」
嫉妬する恋人可愛いなーくらいしか思ってないなこいつ。うんうんと、微笑ましそうにしている啓吾の耳元で囁く。
「浮気したら監禁して俺しか見れなくするからな」