スタイリッシュ異能バトルの世界で俺だけTSして魔法少女としてエロゲの竿役と戦っている 作:かませ犬S
───翌日。
朝起きてからネットショピングで女性ものの衣服や下着を注文した俺は、特にすることもなく家でゴロゴロしていた。
ちなみに下着のサイズだったりはミューがやたらと詳しかったな。正直、気色悪くて仕方なかったが知識としては参考にさせて貰った。
お陰で迷うことなく商品を注文出来たのでよしとしよう。これで数日後には宅急便で衣服が届くだろう。
アニメや漫画なら服屋に行って女性もの服や下着に元男の主人公が一喜一憂するのが定番だが、俺は面倒なので文明の利器を使わせて貰った。
ミューは男心を分かっていないと、何目線か分からない文句を言ってきたな。お前にだけは言われたくないと、いつものように頭を握っておいた。
これで俺が直面していた衣服に関する問題はクリア。学校には姉を装ってインフルエンザで休むと伝えてあるのでこちらもクリア。
啓吾は俺のことを心配して、何か買って行こうかとメッセージをくれていたが風邪をうつしたら悪いと丁重に断った。啓吾の場合はまたやり取りをしないといけない気がする。
ひとまず、俺が直面している問題は対処できた筈だ。
「それで、悪魔はいつこの世界にやってくるんだ?」
「それは分からないポヨ。悪魔が人間界に干渉しようとしたら分かるポヨけど、事前には無理ポヨね」
俺からするとさっさと悪魔を倒して、この問題にカタをつけたい。理由?原作を汚されたくないのと⋯⋯ファンとして原作をこの目で見てみたい、この二つだ。
特に原作のラスト⋯⋯『アビリティ・ストライク』の最終回を俺は見ることなく死亡した。正直どのような結末になったか気になって仕方ない。
魔法少女になる前は原作介入する気満々だったが、性別が変わってからは急にやる気が失せたので傍観者で十分である。
理由は分かっている。俺が原作に介入したかったのは好きなキャラがいたからだ。そのキャラと仲良くなって付き合いたい。そんな浅はかな考えで原作介入を望んでいた。
性別が変わった事でそれが叶わぬ夢と悟ったので、俺は特に深入りせず前世の読者のように見守るつもりでいる。変に介入しない方が原作的にはいいと思うしな。
そんな訳で、原作を楽しみたい俺からするといつ襲ってくるかも分からない悪魔たちは厄介な存在だ。原作のやり取りを見ている最中に襲ってきたらキレる自信がある。
だからさっさとこの問題を片付けて、原作の傍観に集中したい。けど、上手くいかない。歯がゆい限りだ。
「っ───!!」
「どうした?」
「噂をすれば影ポヨ!」
急にミューがスマホのバイブレーションのように震えたと思ったら、急に叫んだ。それは俺が待ち望んだ悪魔の襲撃を意味する。
「魔法の変身!メイクアップ!」
「判断が早い⋯⋯ポヨ」
即座に魔法少女に変身。その様子を見ていたミューが、マジかよこいつみたいに軽く引いていた。
判断が早い事はいいことだろう!
悪魔が後、どれだけいるかは分からないが今日は午後から予定がある。このタイミングで悪魔がこの世界に干渉してきたのは好都合だ。さっさと倒して、予定通り原作を眺めよう。
「さ、倒しにいくぞミュー!」
「昨日と違ってやる気満々で逆に引くポヨ」
悪魔は瞬殺した。
ミューの案内で現場に駆けつけると、ちょうど空間を割りながら悪魔がこちらの世界に出てくる最中だった。
分かりやすく隙だらけだったので、マジカル波をぶっぱなしたら普通に死んだな。
俺の横にいたミューがその光景を見てドン引きしていた。卑怯だって言いたそうな顔をしていたが、戦いに手段や作法を求めるのはおかしな話だ。
勝てば良かろうなのだ勝てば!
特に世界の命運と俺の貞操がかかっている戦いだ。手段など選ぶわけがない。そんな訳でこの世界に出現した悪魔は無事に瞬殺。
ミュー曰く、『人間界』と『影の世界』を妨げる世界の壁は未だに健在な為、悪魔が本格的に侵攻を開始するのは当分先の見通し。
今は様子見で悪魔をこちらの世界に向かわせている可能性が高いらしく、少なくとも今日はもう悪魔がこちらの世界に介入することはないだろう、と。
あんなやられ方をした悪魔がいたので、より慎重に動く事が予測されるそうだ。今後は今のような不意打ちで倒すのは難しいかも知れない。
まぁ、いい。今はこれから眼下で起きる原作イベントを楽しむだけだ。
「君は何を見ているポヨ」
「黙ってみていろ」
現在地は原作主人公、雲雀たちが通う高校から少し離れた位置にある廃工場。俺はその敷地内に建てられた錆びた鉄塔に腰掛けて、時間がくるのを待っていた。
スマホを見ると現在時刻が分かる。13時50分か。もう直ぐだな。
悪魔を倒してから原作イベントを見逃さない為に、この場でずっと待機していた。ミューは悪魔を倒したんだから早く帰ろうと煩かったが無視だ無視だ。
重要度が高いのはこっちに決まってるだろ。
「きたな」
待つこと15分。赤髪が特徴の美少女が廃工場の外壁を飛び越えて中に入ってきた。当然、不法侵入である。これに関しては俺も人の事は言えないので黙っておく。
「追われてるポヨね」
「そうだな」
赤い髪の美少女───彼女は『アビリティ・ストライク』のメインヒロイン 赤坂 雀。人気投票で3位を獲得していた読者人気の高いヒロインだ。
その彼女の後を追うように熟年の女性が同じように外壁を飛び越えて廃工場に侵入していた。えーと、確かあのおばさんの名前はブルームとか、そんな感じだったかな?
メインヒロインと主人公を狙う悪の組織───『
「逃げても無駄よ」
「逃げたんじゃないわ!私はここに誘導したのよ!」
追い詰めたと言わんばかりにおばさんが宣言するが、実際は周りに被害を出さない為に雀が場所を変えただけだ。
原作通りならこのおばさんは堂々と学校に侵入して主人公たちを襲った筈だ。無関係の学生や先生を巻き込まない為に、雀が囮となって場所を移動する流れだったかな。
こうして上手く敵を誘導できた雀は、周りを気にする必要がなくなったのでおばさんと交戦を開始。
リアルに見る原作キャラの戦闘は、なんとも心躍るものだった。
「掌から炎を出してるポヨ!魔法少女じゃないのに!」
「あれは『
雀が掌から放った炎に対しておばさんが指を鳴らすと足元から水の壁が吹き出て、炎を妨げる。
そうそう、雀の本格的な初戦闘は相性不利の戦いだった。炎を操る雀に対して、刺客が使う能力は水。
相性が悪いと悟った雀は直ぐに能力ではなく、肉弾戦に切り替えた。
「なんで能力を使わないポヨ?」
「能力には一日に使える回数制限があるんだよ。彼女は相性が不利と分かったからむやみやたらに能力を使うのをやめたんだ」
『アビリティ・ストライク』の魅力の一つはこの能力バトルにある。
今回のように能力相性が不利な相手の場合、『水に炎は効かない?なら水すら焼き払えばいい!』なんて脳筋丸出しのバトル展開にはならず、登場キャラクターの多くは知恵や工夫を用いて戦闘を行う。
その主な要因は能力の回数制限にあるだろう。個人の資質であったり環境、努力によって個人差はあるが全ての能力には使用回数が決まっている。
才ある者でも一日に30回使えれば良い方で、平均的な使い手の一日の使用回数は15回を下回る。
そこにバトルの駆け引きが生まれる。相性が不利な相手であっても能力を使い切らせれば、優位に戦える。
目の前の雀が行っているのが正にそれだ。肉弾戦を用いて相手に能力を使わせようとしている。
おばさんもそれが分かっているから最低限しか能力を使わないようにしているが、身体能力や戦闘技術は雀が上。能力を使わされているな⋯⋯。
「あの女の子、能力使わないせいでボロボロポヨ」
「そうだな」
どうしても対処が間に合わない時にだけ、能力を駆使している。そのせいで必要以上に傷を負っている。
けど、そうやって無理に攻め立てたお陰か、おばさんの方も使用回数に限界が近いようだな。戦い方を変えている。
能力の相性有利を利用して一気に押し切るつもりだ。
「負けちゃうポヨ!」
「いや、そうはいかない」
能力の相性不利は確かに存在するが、能力を節約したお陰で使用回数は雀の方が大きく余裕がある。
戦い方を変えたおばさんに対応するように雀もまた、能力を駆使して猛攻に出る。それこそ能力を使って防御しなければ対処出来ないほどの猛烈な攻勢だ。
「勝ち、だな」
そこにあったのは原作通りの展開だ。
防戦一方になったおばさんは雀の猛攻の前に為す術もなく、そのまま炎に飲まれた。能力の使用回数を削りきった見事な作戦勝ちだ。
「私の前に立ちはだかるなら誰であろうと燃やすわ。たとえ、肉親であってもね!」
原作三話のラストシーンだ!
髪をかきあげながら雀が言う原作通りのセリフに感動を覚える。やっぱりこのシーンの雀はかっこいいし、綺麗なんだよなー。
ふぅ、満足した。
「さてと⋯⋯」
「どうしたポヨ?」
見たかったシーンは見れたし、移動するか。
原作二話において雲雀と雀の元に『
そして、雀が戦っている裏側で雲雀もまた『
俺が主人公である雲雀ではなく、雀のバトルの観戦を優先したのは原作で雲雀のバトルが長引くのを知っているからだ。
この時点の雲雀はまだ、能力者たちと戦う覚悟が出来ていない。能力で人を傷付ける事を恐れている。
その為、ろくに戦おうとせず防戦一方で逃げ回っている筈だ。そんな雲雀の戦闘を見ているより雀のバトルの方が見応えがある。
原作的にも雲雀のバトルシーンの盛り上がりは、おばさんを倒した雀が雲雀の元に駆けつけて発破をかけた後だ。
メインヒロインである雀に『覚悟を決めろ!』と怒られた雲雀は、それまでの防戦一方が嘘のように敵を瞬殺。主人公の格を見せつける、かっこいいシーンの一つ。
俺が見たいのはそのシーンだ。
雀が原作通りに発破をかける前に雲雀が戦っている場所に行く必要がある。記憶を頼りに場所を移動する。
ちなみに、マジカルパワーで姿は人に見られないようにしているので、空を自由気ままに飛ぶ事が出来る。
「いた⋯⋯」
雲雀が戦う場所に選んだのは廃工場からさほど距離の離れていない河川敷。そこで『
「ふぇ⋯⋯」
あれ、おかしいな。見間違いか?
思わず目を擦って、もう一度確認するが先程見た光景と何も変わらない。
「なんで、もう雲雀が敵を倒しているんだ?」
俺の視線の先、河川敷には雲雀に倒されて完全に伸びてしまっている刺客がいる。
おかしい⋯⋯。
この時の雲雀はまだ覚悟ができてないから、まともに戦えない筈⋯⋯。
「あるぇ?」