Chapter34
「貴方に感謝を。少なくとも数か月は稼げました。」
「おう。」
遂に新拠点にコルニス殿がやってきた。
本格的な行動前の、管理人同士の事前打ち合わせと言ったところである。
「取り敢えず、及第点までは進んでるか?」
「そうですね。組織立っての行動が出来るところまでは。」
「なら前回みたいに、追っ手が来てそれで終わるのは回避か。」
そいつは重畳。
俺がではなく、みんながそれぞれの役目を果たした結果だからな。
これについては素直に感謝を受け取っておく。
「ところで、拠点運営のご経験が?」
「いや、見様見真似だよ。拙い手配でご迷惑をおかけした。」
「いいえいいえ、流石の賢者殿の手腕でございました。」
そうであればいいんだけどね。
感覚的には前世の、大規模建設の施工管理と言ったところだろうか。
実際に施工管理の仕事を知っているわけではないが、概念としては判るからな。
「このまま軍師として参画をするつもりはございませんか?」
「んー、相性が悪いな。特に問題がなければ王子付きとしてやらせてくれ。」
「少し残念ですが、それでも十分な話です。」
適材適所的には、俺が王子についてる方が強いからな。
護衛と治癒が出来て、星見が出来る軍師もどきだ。
これ王子のそばにいない提案をする方が利敵行為まである。
「器はできただろ、資材の運び入れもコルニス殿とマーレ殿が手配中だな。」
「ええ。貴方から形を引き継いだだけですが。」
「組織化と軍隊化はフレデリクが走ってて、魔術防衛も俺が最低限作った。」
まあここまでくれば、あとはなんとでもなるかね。
「命令経路はどうなった?出しゃばらないようにはしてたが。」
「そこも上手くやってくださってましたね。マーレが意図を汲んでいます。」
悪くないところまでは来てるな。
「本当は、もっと軍部の人間に余裕があればいいんだけどな」
「フレデリク殿だけでは足りませんからね。」
あいつも出来る奴だが、根本的には大軍を動かしたことがあるわけじゃない。
集団戦の経験と、軍隊の指揮とはまた別の能力が必要になるものだからな。
「ってことは、あとは本番の陣取り合戦と合わせて、人材確保か。」
「そうなりますね。旗揚げとしてはこれで十分ですから。」
各地の領主の中には、将軍として動ける人間もいるだろうからな。
本人が将ではなくとも、その配下に軍務に長けた人材はいるはずだ。
そこをどうやって引き入れていくかというのが、今後の問題点だな。
Chapter35
状況確認も済んだので、モーリス王子とフレデリクを含めて今後の会議である。
「まあ普通に考えたら、次は戦力の拡大なわけだが。」
「ですね。」
「戦力の拡大というと、各地の仲間集め、ということかい?」
「概ねそういう理解になるだろうな。」
拠点が出来た。旗揚げをした。
じゃあ次はってなると、戦力集めということになるわけである。
「目星はついてるのか?」
「国内勢力は一通り調べてますが、殆どが様子見ですね。」
「この場合、様子見も別にいい手じゃないんだけどなぁ。」
要するに、偽王軍と反乱軍で、どっちを取るかという選択で。
王都から離れてるわけでもなければ、選択を後回しにするのは悪手だけどな。
ま、独立を選ばないだけ、最悪の馬鹿はいないと踏んでいいだろう。
「とはいえ、状況そのものは悪くない。なんでか判るか?」
「ふむ。反乱軍が旗揚げしたのが、思っているよりも響いてるということかい?」
無論、それもある。が、どっちかというと地政学的な問題の方だな。
「この城とフェンズで、偽王軍の進出を止められるのが大きいな。」
「ああ、これより南は、様子見であるなら、敵ではないってことでもあるのか。」
ざっくりだが、この城は王都より南にある。
元のフェルドランの支配地域は、王都を中心に北東と南西に広かった。
それをこの城で、南西方面は蓋が出来ているというわけである。
「このまま順当に戦力を拡大するならば、北東部と南西部での戦いになるな。」
「それだけで済むと仮定するならば、だがな。」
「その通り。これはこの国だけを見た場合です。」
フレデリクもちゃんと着いてこれてるな、心配はしてないが、よしよし。
「当然だがこの国の外には他の国もあるからな。」
「幸いながら、山や湖で簡単には攻めてこられませんが。」
「それでも、国は国だからな。必要に応じて攻めてくる場合もあるよ。」
近隣の国とは、血縁で繋がってはいるんだけどねと、王子が言う。
「血縁が繋がってるからこそ、正当性を訴えてくることもあるからな。」
「あまりそこに期待はしない方がいいですね。」
「山脈地帯には龍種もいると聞く。それを利用されてはたまらんな。」
龍種、龍種ねぇ。
「そこに協力関係を結びに行くほど、偽王も馬鹿じゃないと思いたいけど。」
「戦局が悪化すれば、人間はどこまでも馬鹿になるんだよ。」
人間全員が、常に正しい行動ばかり取れればもっと世界は楽なんだけどな。
とにかく、偽王軍を警戒しながら、南西部の取り込みが最優先ってことだな。
Chapter36
「落ち着き、ましたね……」
「落ち着いたなぁ……」
古城の屋上、見晴らしのいい場所。
ようやく気が抜けたらしいエルナとカスパルがそこで駄弁っていた。
「俺は一足先にだらけていたがお前らは?」
「私は侍女たちの身元確認や作業手順の確認をずっとしてました。」
「俺もフレデリクさんから近衛の管理を引き継いでた……」
あー。
そりゃ忙しいわ。一気に人が10倍じゃきかなくなったもんな。
「でも、優先業務は王子付きだろ?」
「だからこの時期で一旦抜けられたんだけど。」
「人が入れ替わるごとにまた始まるんですよね……?」
それはそうだが。
「それは王都にいた頃も同じだったんじゃねえのか?」
「その時は俺にもエルナにも大した責任はなかったから……」
「今は、曲がりなりにも責任が発生すると思うと、辛いですね。」
んー。でもあれだな。
これ、王子もこの二人も戦えるからマシだけど、戦えなかったら。
「戦闘要員じゃない護衛対象とかは、想像したくねぇな。」
「王子は私よりも強いですし、私は信頼されているだけでここにいますが……」
今のところ、その信頼が何よりも優先されるからな。
「しかし、これからはこの城ももっと賑やかになるからな。」
「え?」
「戦力の拡大というか、仲間集めするわけだからな。」
まあ、侍女や近衛はおそらく入れ替わりはないが。
「じゃないとこの時点で組織を固定した意味がない。」
「だといいんだが……」
「まあ、危惧しておくのは悪いことじゃないな、うん。」
何も受け止める余裕がない時に来られるよりはマシだもんな。
「でも、ここからは南西の方に協力を求めに行くんですよね?」
「基本的にはな。」
「その間は?この城はどうなるんだ?」
そりゃ。
「フレデリクとコルニス殿が残って、訓練しながら防衛だよ。」
「またここも襲われることがあるのか?」
「そこまで直ぐではないが、いずれ一度は主戦場になるだろうな。」
その時のために、色々手筈は整えているわけではあるが。
「次、前回と同じぐらい壊滅したら終わりだな。」
「そう、ですよね。」
「次は再起を目指すよりは、別の国への逃亡を推奨だな。」
命がどうこうという段階になるからな。
追っ手をどこまでかわし切れて、何人が生き残って、という話になるだろう。
「ま、勿論、そうならないために今後頑張っていくというわけだけどな。」
「気軽に言ってくれるもんだぜ。」
気軽だよ。
生きて逃がすだけだったら、俺1人いればお前ら3人は何とかなるからね。
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