それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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13話

Chapter37

 

「師匠!」

「うお、ユレン。お前追いかけてきたのか。」

 

人が増えて、城下町の飲み屋も動き始めてきたそんな時。

久しぶりにゆっくりと酒と肴を楽しむ俺に、置いてきたユレンが追い付いてきた。

 

「よく探してきたもんだなぁ。」

「師匠、賢者じゃないですか。聞きまわったら、意外と何とかなりました。」

 

中々やるじゃないか。

正直、追ってこれないと思って金も渡してたっつーのに。

ユレンは、そんなことより、ですよと言いながら俺に詰め寄る。

 

「師匠、反乱軍だったんですね? 何で教えてくれなかったんですか!」

「あの時はまだ加入してなかったからだよ。」

 

俺も加入してないし、お前を巻き込む気もないし。

まあ、そんな感じで適当においてきたような記憶があるな、うん。

 

「っていうか、折角施療院の仕事紹介したのに、お前ぇ。」

「師匠を追うって言ったら餞別までくれましたよ。」

 

なんだよ。それじゃ俺が迷惑かけ通ししたことになるじゃんよ。

まあ、いいか。そういうときもあるな、うん。

とりあえず、立ったままのユレンを横の席に座らせる。流石に目立つんだよ。

 

「まあ、なんか食べろ。どうせ腹減ってんだろ?」

「腹は、それなりに減ってますけど。」

 

だろ?と笑いかけて、適当に食うもんを頼ませる。

大人しく座ったユレンは、飲み物を一杯飲み切ると、表情を暗くして。

 

「師匠、本当に反乱軍に入ってたんですね。」

「まあ、なあ。」

 

正直、今も個人的な感傷としては、反乱軍じゃなくて王子の味方だが。

 

「俺みたいに、見放せなくなったんですか?」

「……お前についてはちゃんと見放しただろうが。」

 

追ってきたのはお前じゃい。

微妙に察されている感じが、意外にこいつの見る目があるというか。

 

「そうだ、今度こそちゃんと面倒を見てくださいよ。」

「とはいっても、お前も反乱軍に入るつもりか?」

 

人と戦うことになるんだぞ?

そういう俺に、ぽりぽりと頬をかく。

 

「郷に出た盗賊となら戦ったこと、ありますし。」

「そういう段階の話ではないことも、その言い方なら判ってるんだろうが。」

 

いいんですよ、とユレンは笑った。

 

「俺にとっては、師匠についていきたいだけだし。」

「お前には自分ってやつがないのか?」

「治癒術、ちゃんと教えてもらいたいから、俺はここまで来たんです。」

 

はあ。

 

「仕方ねえな。死んでも俺は知らねぇからな。」

「その時は、きっと恨んで幽霊になっても、また着いていきますから。」

 

厄介な弟子を持ったもんだねぇ。しかし。

 

 

 

Chapter38

 

「というわけで、丁度いいところに精霊術師の集落があります。」

「あいつら嫌いなんだけど。話通じねぇ上に、矢を射ってくるし。」

 

エルナと一緒にコルニス殿に呼ばれたわけであるが。

基本人の話聞かねぇし。

その割に雑魚でも「見る目」は悪くないから、人のこと化け物呼ばわりするし。

 

「精霊術師って、魔術師とは違うのですか?」

「あんま変わんねぇよ?独自の文化があるぐらいだ。」

 

その独自の文化があれなんだけどなぁ。

エルナはあいつらのこと詳しくないのか。まあ詳しくなる必要もない。

 

「排他的で、他の魔術師を見下してて、その上個人の技量は高い。」

「技量は高いんですか?」

「個人差はあるが、並みよりは上かな。俺と勝負になるやつもゼロじゃない。」

 

俺が攻撃魔術抜きなら、長老とかならとんとんぐらいだろうさ。

でもなー。

 

「あいつら仲間になるかー?」

「仲間にしたい、というのが素直なところです。」

 

まあ、純粋な戦力もあるが。

場所的に王都と古城で中間地点の外れにあって、なおかつ気位の高い少数民族。

ここを落としておくのは、戦略的にはまあまあでかいというのはあるが。

 

「なんか素材はあるのか?」

「北のブレハンとは対立が広がっているようですね。」

 

ブレハン、ねえ。

 

「鉱山地区だったか?元々相性は良くなさそうだが。」

「その通りではあるのですが、この時期に激化してますからね。」

 

……ってことは。

 

「それは、いつからだ?」

「やはりそういう話になりますよね。」

「……どういうことでしょう?」

 

偽王軍が手をまわしてるだろうねぇって簡単な話だよ。

 

「因みにその確証は?」

「ありません。なのでレーヴさんに現地判断で。」

 

面倒くせぇなあ。

 

「因みに、なぜ私は呼ばれたのでしょう?」

「星見同士での情報交換を期待しての話ですよ。」

 

ああ。遠方でも情報をやり取りできるかもって期待の話ね。

あれは正直、効率も悪いし精度もよくないから、頼りにはならんが。

 

「期待してるやり方とは違うが、出来ると思うぜ。」

「流石ですね。エルナはこちらに残していくことになりますか?」

 

頷く。流石に中継地点無しでやるには俺もそこまで器用じゃない。

 

「そうなると、王子とカスパルを連れていくことになるな。」

「ええ、教育を引き続きお願いします。」

「俺のやり方で教えてしまうけど、そこについてはそういうことだよな?」

 

やり方含めて、全部任せるって意味に捉えちまうけど。

そう言外に込めた視線にも、コルニス殿は大きく頷いて同意を示した。

ま。そこまで構わないっていうのなら、是非もないね。やってやりますか。

 

 

 

Chapter39

 

「というわけで、ブレハンと精霊術師の対立が激化しているわけです。」

「それを解決して、どちらにも僕らの仲間に入ってもらうわけだね。」

 

王子とカスパルにもコルニス殿から説明してもらう。

しっかしあれだな。前に教えたこともあって、理解が大分早いな。

 

「しかし、そんな対立の解決なんて、俺たちにできるもんなのか?」

「そのために、レーヴ殿に同行してもらうというわけですね。」

 

ね?とこちらに視線が向くので、鷹揚に頷いておく。

 

「俺のことは護衛兼、コルニス殿の代わりと思ってくれればいいさ。」

「おっさんがすげぇのは知ってるけど、先生の代わりっていうと急に怪しいな。」

 

なにをぅ。

怪しいかと言われればその通りだが、人に言われるのは良くないな!

 

「軍略にも通じたかなりの賢者でいらっしゃいますよ?」

「普段の態度がな……」

「ちょっと昼間から酒浸りだけど、真面目に治療もしてるだろうが。」

 

ユレンが来てからはそれもユレンに任せてる節はなくもない。

まだ未熟だが、俺の補助ありなら他人の怪我も直せる所までは来たからな。

 

「そんなに深酒していて治療できるものなのかい?」

「怪我程度なら何とでもなるし……最悪自分に酔い覚まし掛けるから……」

 

そこまですることは滅多にないけども。

深酒もしねぇし、そこまでの治療が急に必要になることも普通はねぇんだよ。

 

「そこまでして何で飲むんだよ。」

「飲まねぇとやってられねぇんだよ。」

 

酒が入ったら色々忘れられるからな!

 

「それはともかく、僕らはレーヴ殿に任せてればいいのかい?」

「いえ、あくまで王子にはご自身の意思で動いていただく必要があります。」

「それは……意思決定という意味で?」

 

その通りです、とコルニス殿は頷いた。

 

「意見を求めるには十分な方ですが、頼り切ることは良くありません。」

「その塩梅を見極めろってことだな。ま、質問には何でも答えるぜ?」

「絶対何か企んでるよなぁ……?」

 

当たり前だろうよ。

必要な時には、一つのことに複数の意味を持たせるぐらいは普通にするんだよ。

 

「まあ、失敗なんかはさせないさ。」

「失敗以外は覚悟しろってことだよね?」

「判ってることをあえて確認するのは野暮っていうんだぜ。」

 

失敗できるうちに、取り戻せるうちにやらかすのも施政者としては必要だからな。

それで失われるものに言い訳が出来るのならば、飲み込んでもらうほかない。

 

「エルナがいない分、二人に集中させてもらうからな。そこんとこよろしく。」

 

 

 




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