それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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14話

Chapter40

 

「ところで。」

「ああ?」

「精霊術師って何なんですか?魔術師や治癒術師とは違うんですか?」

 

精霊術師の集落へ向かう道すがら。

そんなことをユレンから聞かれてしまった。

 

「んー。違うっちゃ違うし、そう変わらんものではある。」

「どういうことだよ。」

「その言い方からするに、視点の違いといったところかな?」

 

お、王子がほぼ正解だな。

 

「精霊術ってのは、魔術の一種だな。大きな区分けではそう変わらん。」

「……変わらないんですか?」

「変わらない。外から見る分には見た目も違うもんじゃないからな。」

「使う分には違うのか?」

 

違うんだよなぁ。

 

「こう、自然には魔力があるんだが、たまに濃くなるところがあるんだよ。」

「はあ。」

「濃くなったまま年月が経つと、意識が生まれたり生まれなかったりする。」

 

それを人間が勝手に精霊って呼んだり魔物って呼んだりするんだが。

強いて言うと、人に危害を加えたら魔物で、そうでないなら精霊か?

まあそこら辺の定義は人によって揺らぐし、正解はないから置いとくとして。

 

「大抵、そういう場所って大きな木とか、森の奥の泉なんだよ。」

「何か言われがありそうな場所ってことかい?」

「言われを人間が勝手に作っていきそうな場所って方が正しいと思うが。」

 

人は人知を超えたものにも理由付けをするからな。

 

「そうなると、なんかそこの力を借りてる俺凄いーとか。」

「うえ。」

「他の卑しい人間どもには使わせてなるものかーとか、そうなるらしい。」

 

面倒臭いよなぁ。人間が集まると碌なことにならないんだよ。

 

「まさか」

「それが今から会いに行く精霊術師であって、精霊術師の集落ってことだな。」

 

つまり、真っ向から相手すると疲れるってわけよ。

一応、利点としては他所から力を借りる分、大規模な術を使いやすいってことか。

 

「魔術師は人嫌いで偏屈だし、精霊術師は選民意識強いしな。」

「治癒術師は?」

「大抵、研究で狂ってく。まあどれも似たような人間のクズだ。」

「おっさんはその中だとどれなんだ?」

 

魔術師兼治癒術師、だな。

 

「なるほど、二つ合わさると酒浸りになるんだね。」

「そうかもしれないし、そうでないかもしれない……」

 

一廉以上の魔術師兼治癒術師をあんまり知らないから母数が判んねぇんだよな。

どっちかというと、俺は俺で特異な結果だと思ってはいるが。

 

「レーヴ殿が比較的付き合いやすい人で良かったよ。」

「多分、これからは本当にそれに感謝することになると思うから、心しとけよ。」

 

マジで、俺は色んな意味でまともな方といって過言じゃないからな。

 

 

 

Chapter41

 

「取り付く島も全くなかったね……?」

「下賤な戦いに巻き込むなとまで言われたな……?」

 

というわけで、精霊術師の集落まで来たわけだが。

 

「ほら無駄だったろ?精霊術師が他人の話を聞くはずねぇんだ。」

「その通りではあったけど、レーヴ殿、会いに行くのは反対しなかったよね?」

「必要なことではあったからな。」

 

話し合いの結果無駄になっても、会いにいった事実はちゃんと残るからな。

寧ろその事実の方がよっぽど大切な場合もあるわけで。

 

「さて、話し合いは終わったわけだけど、この後どうするんだい?」

「んー。そうだな。ここで情報収集するか、ブレハンに向かうかの2択だな。」

「答えてくれる奴いるかねぇ。」

「試しにマシそうなやつに話しかけてみるぐらいでいいと思うぜ。」

 

酒場とかでな!

 

「またかよ。」

「またじゃねえよ。一日ぐらいは休憩しねぇと。ブレハンにもいけねえだろ。」

 

エルナがいるわけじゃないから、体力には余裕があるけどな。

それはそれとして、別に急ぎの旅程があるわけではないからな。

 

「とにかく、僕らも情報収集か。」

「一応、俺は酒場にいるから何かあったら相談しに来いよ。」

 

そして宿併設の酒場で飲み始める俺だったが。

 

「ユレンは王子たちに着いていかないのか?」

「俺が着いてっても役に立たなそうですし……」

 

俺を追いかけてきた手腕があれば、そうでもなさそうだがな。

 

「それに、師匠が別のこと考えてそうだなって。」

「というと?」

 

それは、わからないけど。とユレンは口ごもる。

まあ、勘としては十分か。実際、俺に情報収集なんてやる気ねえしな。

 

「俺は星見でもあるからな。多少はそっちから情報取れるんだよ。」

「どうやって星から教えてもらうんですか?」

 

んー。治癒術師見習いとして、そこら辺の知識はあってもよいか。

俺も、才能だよりで人に教えられるほどの技術や知識は持ち合わせてないんだが。

 

「基本は星の配置からだな。基準の位置と輝きと色がある。」

「星って、夜の星ですか?」

「ああ。別に夜じゃなくても、見る気さえあれば見れるけどな。」

 

別に見なくても見れるし、見ないふりをしたりすることも出来る。

時には騒ぎ立ててくるから、それを聞かないふりなんかしたりな。

 

「んで、通常と違うことがあれば、それが予兆ってやつだな。」

「予兆……何かの兆しってことですか。」

「そだな。今日でいうとだな、王子の星に別の星が近づいてるから」

 

多分、今回の情報収集では、王子の方に正解が近づいてると思うぜ。

 

 

 

Chapter42

 

王子が拾ってきたのは、20代後半の男だった。

腰に剣を携えた、それなり以上の精霊術師、であるように俺には見える。

 

「で、アドリアーン殿は、集落の警備隊長殿、と。」

「ええ。小さい集落なので、少人数ではありますが。」

 

とはいえ、年齢とか込みにすると、実質次の長候補であろうにね。

多分よい縁の方だと思うから、反乱軍にとってはありがたい限りだが。

さて、こうなったからには色々と聞き出させてもらわんといかんね。

 

「さて、ブレハンへの道中で悪いが、色々教えてもらいたい。」

「こちらの方は?」

「彼はレーヴ、フェルドランの賢者で、僕たちの軍師代わりだよ。」

 

まあ、酒が入ってないときの俺は過去生持ちの大賢者様だからな。

 

「認識のすり合わせだ。レルバンの干渉で、関係性が悪化してるらしいね?」

「ええ……元々、良好な関係性とは言い難いですが。」

「その切っ掛けがなんだったかは覚えてるかい?」

「神聖なる森の木を承諾無く切られたというのを見つけたから、ですね。」

 

よくあるっちゃよくある話だな。それだけなら相手は偽王軍と限らないか。

 

「んで、実行犯は捕まえてるのか?」

「いえ、最初のは。それ以降の小競り合いでは、ありますけど。」

「集落側から何かちょっかいを出したりはしてるかい?」

 

そう聞くと、アドリアーン殿は少し苦い顔をして。

 

「……してない、はずですが。相手からは非難をされてますね。」

「どんなことでだ?」

「鉱山を壊した、と。私たちがそんな場所に赴くことなどありえないのに。」

 

じゃ、ほぼ確定でいいな。

……人当たりは悪くないが、精霊術師だな。何とも言えねぇが。

 

「小競り合いの規模は?」

「大したことはありません。数人程度です。」

「怪我人は出てるけど、ぐらいってところかね。」

 

なら、今のところはそう大事には繋がってないな。

偽王軍が関与し始めてからも、実はそこまで経ってないのかね。

 

「その誤解を解けば解決、かな?」

「どうやって誤解を解くつもりだよ、王子。」

「そこはまた、相談に乗ってくれよ。」

 

相談なら構わないんだろう?という王子に頷いて見せる。

 

「大体、俺の立ち位置がよく判ってきたようだな。」

「ここまでくるとね。」

 

俺としては問題はないが。

 

「おっさんの立ち位置は判んねぇけど、俺にはその縛りは関係なさそうだな。」

「カスパルにもわかっといて貰いてぇけど、まあ確かに関係はないな。」

 

俺が重視してるのは、あくまで組織の中での話だからな。

カスパルにとっては俺の立ち位置は、頼れるかもしれないおっさんで十分だ。

 

 

 




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