それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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15話

Chapter43

 

「森の次は山越えかよ……」

「鉱山地区に行くわけですから……」

 

というわけで、ブレハンに向かう山登りの最中なわけだが。

 

「え、山良くないですか?落ち着かないっすか?」

「俺はこう見えて、今も昔もシティボーイなんだよ。」

 

妙にご機嫌なユレンはさておき、山はなぁ。

虫も蛇もワイバーンも出るし、そう快適な旅になることってないんだよ。

特に最後のは、ある意味俺の天敵っていうか、あいつら嫌いなんだよね。

 

「山登りというには大分道は綺麗だけど……」

「普通に馬車が通れる程度だよな?」

 

ああうるせぇうるせぇ。

上り坂がある時点で俺の脚は悲鳴を上げるように出来てんだよ。

 

「というか。師匠なんか浮いてないですか?」

「げ。」

 

ばれちまうし。

 

「あ、本当だ。レーヴ殿がなんか浮いてる!」

「おっさん、あんだけ言ってる割に歩くことすらしてなかったんか?」

 

ちょこっとばれない程度に浮いてたはずなんだが。

 

「いいじゃねえか……ちょっとぐらいズルしたってよ……」

「いや、それよりいつの間にそんな魔術を使ってたんです?」

 

なんなら山に登り始める前からだよ。

 

「レーヴ殿、でしたか。魔術師も器用なものですね。」

「お褒めに預かりどーも。そちらは普通に歩くのかい?」

 

アドリアーンは普通に歩いているが。

どうやら山歩きは得意な方らしい。まあ警備隊長ともなれば体力もあるか。

 

「その名前からすると、北の国のご出身ですか?」

「おお。北の海周辺だな。」

「やはりですか。この辺りで聞く響きではありませんから。」

 

まあ、うん。そうね。

 

「しかし、レーヴ、ですか。随分大切にされた名付けですね。」

「あー。「遺されたもの」じゃなくて、「残りカス」って意味の方だぞ。」

 

そもそも偽名だしな。

 

「おっさん、偽名だったのか?」

「言わんかったっけ。」

 

言った覚えは、ねえな。

どうせ本名も偽名もそう変わらんし、気にするところではないんだが。

 

「なんで偽名を名乗っているんだい?」

「本名だと色々差しさわりがあるからだよ。」

 

知られたくないっていうか……余計なことが発生するというか。

 

「魔術師って名前、大切なのでは?」

「大切だけど別にそれが全てって訳でもないから……」

 

儀式魔術使うときだと本名の方がマシだったりするけど、使わねぇし。

 

「ああ、うるせぇうるせぇ。いいんだよ。俺はフェルドランのレーヴで。」

 

特にそれで不便が発生するわけでもなし。

なんだったら、今更本名も、過去生の名前も名乗る気なんて一切ねえんだ。

 

「残りカスは残りカスとして生きていくんだよ。それで終わりだ。」

 

 

 

Chapter44

 

「つまり、ブレハンはやっていない、と。」

「少なくとも精霊術師の主張するようなことは、な。」

 

辿り着いたブレハンでは、比較的素直に領主の元まで通された。

いや、これが普通なんだよ。いくら反乱軍でも第三王子が来たならな。

 

「ですが、そちらの野蛮人が神聖なる樹木に手を出したと。」

「居丈高に来てよく言うわ。こちらは鉱山の入り口を閉ざされたというに。」

 

まあ、そりゃアドリアーンを連れてくればこうもなるよな。

というわけで、これは王子のお力で解決するところを見せるだけかな。

 

「さて、王子。ここに至っては真実を詳らかにするほかにありますまい。」

「……そうだね? お互いの主張は判った。」

「そうなればこそ、王子のお力にて真なる犯人を捜すべきでございましょう。」

 

よしよし、ちゃんと理解してくれてるな。

 

「ほう。では真なる犯人とやらを、捕まえる時間が必要かね?」

「3日ほどいただければ、その答えをここに出して見せましょう。」

 

それと、あれだな。

 

「両者から見届け人をご用意願いたく。」

「当然であるな。護衛より一人連れていけ。」

「ありがたく。精霊術師からはアドリアーン殿で問題ないか?」

「私しかいないからな。当然問題はない。」

 

うんうん。だよな。当然そういってくれると思っていた。

 

「それでは次は大捕り物をお見せするので、暫し時間をくださいませ。」

 

そうして領主の元を下がって、今宵の宿に入った俺らであるが。

護衛殿は明日から着いてくれるということなので、今日はゆっくり休憩だ。

 

「3日で足りるのかい?」

「別にそんな日数も本当はいらないんだけどねぇ。」

 

このために、コルニス殿と事前準備をしてきたわけであるし。

 

「ええと、話の流れ的に、偽王軍がやったという認識でいいんだよね?」

「その通りだな。他に得をするやつもいない。」

 

偽王軍の狙いを、反乱軍がやろうとしているパターンじゃなければな。

勿論、今回はそれではないのは、俺が保証するわけだが。

 

「偽王軍の狙いというと?」

「俺なら、諍いを拡大させたら、ブレハンの責を指摘して直轄領にするな。」

 

ついでに、これは言わないけど、精霊術師の集落も潰すと思う。

実力とプライドがある集落とか、支配者からは邪魔でしかないもんな。

 

「それは……大分悪辣だね。」

「王子には取れない手だな、有効ではあるけれど。」

「そのような悪意にわが集落は振り回されているのか。」

 

鉱山都市で、武器類の加工も出来るならねぇ。

外貨稼ぐのにも使える以上、直轄領に出来るなら俺ならするからな。

 

「それじゃ、明日からまた情報収集かい?」

「いや、大体目星はつけてるから、確認作業をしておくよ。」

 

それだけの人数を動かしても怪しくない立場なんて、限定されるからな。

 

 

 

Chapter45

 

「目星っていうけどさ。」

「おう。」

「ここはただの商会が並んでる通りじゃねーの?」

 

そうだな。

 

「人が多くて、入れ変わっても不審に思われない場所は限定されるんだよなぁ。」

「そりゃそうかもしれねえけど。」

 

カスパルもまだまだ頭が固いな。

フレデリクにさん付けなんてするから頭の固さも似ちまうんだろうな。

 

「商会が怪しいのはその通りかもだけど、どうやって特定するんだい?」

「いくつか方法があるがどうしてほしい?」

 

すげぇ雑な方法と、結構雑な方法と、意外に丁寧な方法がある。

 

「一応全部聞かせてくれないかい?」

「事前に商会の規模を調べてあるので、観察して特定するのが一番丁寧だな。」

 

コルニス殿には手間をかけているが、意外に丁寧なのがこれである。

 

「次は?」

「夜に見張ってれば連絡員が動くと思うのでそれを捕まえる。」

「すでに十分に雑なんだが?」

 

ちゃんと結構雑だって事前に言ってるだろうが。

 

「最後のを聞きたいような、そうでもないような。」

「どっちだよ。」

「師匠、後学のために聞かせてほしいっす。」

 

ユレン、お前難しい言葉知ってんだな。師匠ポイント100点だ。

 

「まあ、簡単な話だよ。鉱山の入り口が潰されたって言ってただろ。」

「そうだね。実行犯は捕まってないといってたけど。」

「俺が適当に商会を見て回って、魔術使える奴がいたら多分そいつだろ。」

 

今のところ、この世界では火薬はそこまで使われてないからな。

十中八九、魔術での仕業だろうし、その規模の魔術師なら俺なら見てわかる。

 

「因みに総合的におすすめの方法は?」

「1番と3番の複合だな。2番は夜に見張ってねぇといけねぇし。」

「雑だなー。」

「雑でも解決できるからそれでいいんだよ。」

 

というわけで、実際にはもうとっくに犯人は特定済みなんだが。

 

「早くないか?」

「時間かけたらその分酒を飲める時間が無くなるし……」

 

場にそぐわない人間がいるかどうかなんて、見りゃ判る話だからな。

 

「それで、いつ大捕り物をするのですか?今からですか?」

「今からでもいいけど、まあ逃がさないようにしたいから手配してからかな。」

 

まあ、状況的に一番キレてるのはアドリアーンだよな。

実際に被害受けてるやつで、かつ警備隊的にもプライドが許してないだろう。

 

「ま、俺たちがやるよりも、もっと相応しいやつがいるからさ。」

「誰だい?」

「この街の警備隊に決まってるだろ。手伝ってもらえばいいだろうさ。」

 

そいつらが関係ないところで終わらせちゃ面子がね。

取り逃がしても別に問題ないけど、気分が悪いことに変わりないからな。

 

 

 




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