それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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27話

Chapter79

 

そうして、ローデン砦攻略戦が始まって、そして直ぐに終わった。

どうしても戦いたい連中の相手をしたら、降伏という結末を迎えたからだ。

 

「城壁が落ちたか……」

「何か思うところでもあるのか?」

 

いや、そういうわけじゃねえけどよ。

前は眠らせて通り過ぎただけだけど、今回は流石に戦闘になったなってさ。

死人は、想定よりもずっと少ないといえる。それは判っているのだが。

 

「結局、多くの人が死んじまったなぁってさ。」

「……規模に比べれば、少ないと、はっきり言えるのではあるが。」

 

そうとはいってもさ。

この地に生きていたはずの人間が、こうやって剣をとって死んでいくのはね。

いくらそいつら自身の選択であるとはいえ、俺にはよく判んないよ。

 

「貴様は、なんというか。」

「なんだよ。」

「根本的には、戦争には向いていない人間、なのかもしれんな。」

 

そりゃ、自覚がありますともさ。

大切な人のためにすら、なんとか戦える程度の人間に過ぎないからな。

名誉も、誇りも、俺にはあんまり縁がない生き方をしてきてるんだ。

 

「俺には、愛国心も忠義心も、基本的に無縁だからね。」

「……少しだけだが、巻き込んでしまったことを後悔しなくもない。」

 

おいおい、今更だろうが。

それに、フレデリクに何か思われたところで、俺は別に嬉しくないぜ?

 

「それもそうであるか。」

「ああ。それよりは、戦いを上手く終わらせるのに尽力してくれよ。」

 

そっちの方が、俺としてはよっぽど嬉しいからさ。

関係ない人間だからこそ、不幸になってほしいという思いもないんだよ。

縁がなければ、縁がないところで、何事もなく幸せでいて欲しいもんだ。

 

「なぜ、貴様は。」

「なんだよ。」

「……いや、なんでもない。」

 

どうせ、なんで魔王候補になんかなったんだよって話なんだろうけどな。

俺にだって言い訳ぐらいあるけど、別に話したくもねえんだよ。

おっさん同士の会話で、そんな湿っぽい言い訳を並べたところでな。

 

「戦争が終わったら、貴様はどうするのだ。」

「さあね。」

 

実際、俺も決めてないしさ。

 

「エルナは、貴様に残ってほしいとは思っていないようだ。」

「……そうなのか。」

 

それは、なんというか。

少しだけ予想外というか、拍子抜けしてしまうような話だけどさ。

 

「貴様が、戻ってこられるような場所であれればそれでいい、とのことだ。」

「おいおい。」

「上手く伝えられないかもしれないからと、伝言を頼まれているのだ。」

 

伝わったのなら、ちゃんと答えろよと。

そう年齢も変わらないフレデリクから、無責任にも背中を押されたのだった。

 

 

 

Chapter80

 

王都手前の都市、ハールトを無血開城。

前の拠点があった都市だ。場所が王都近くなだけで元より反乱軍よりである。

ここが偽王軍に降っていたのは、地理上の圧力が原因だっただけである。

 

そうして、古城から王都までの間に、障害物はなくなった。

偽王軍の簒奪から、多くの時間と命を費やして。

この戦争の最後の戦い、王都攻略戦が始まることになったのだ。

 

「この期に及んで、俺にやれることはないけどな。」

 

龍の群れがまた現れたりしたら別だけど。

そうでもなければ、出てきた負傷者に対して処置をしていくだけである。

今回の戦いは、流石に規模が大きい分、ユレンだけには任せておけない。

 

ま、今回は死傷者が出るのも、ある程度織り込み済みだ。

感情的にはともかく、理屈上正しいことについて否と主張する気はない。

 

最初は野戦。

王都に手を出させる気がない、王都そのものに忠誠を誓う者たち。

その者たちを順当に、数の理論で片づけて、反乱軍は前に進む。

 

ここはフレデリクとコルニス殿たちの出番だ。

培ってきた経験、集めてきた物資、積み重ねてきた訓練が形を成していく。

元より士気には大きな差がある。それほど時間はかからずに進んだ。

 

次は攻城戦。

偽王を始めとした、反乱軍に下ることが出来ない理由を持つ者たち。

その者たちを、王城の勝手を知り尽くした王子たちは蹂躙していく。

 

反乱軍の首魁であり、そして一番の戦力である王子。

そして城を知り尽くしているカスパルとエルナの三人が道を切り開く。

止められるほどの戦力は、既に使い果たしてしまった後の祭りだ。

 

あとは、戦後を見据えたやつらの話だ。

戦後の席順を少しでも上にするために、多少の足の引っ張り合いをしながらも。

着実に功績は積み上げられていく。偽王軍はその踏み台にされていく。

 

良いとか、悪いとか、そんな話は今更することじゃないだろう。

もっと昔、それこそ、偽王軍以前に、王国が成立する時代にするべきで。

それすらもその当時の最適解を選んだ誰かによってなされたものなのだ。

 

結論は、そんなに難しい話ではなかった。

偽王についていた将軍たちは着実に打ち取られ、反乱軍の戦績に。

そして偽王の首は、モーリス王子の王剣によって刈られ、掲げられる。

 

埃まみれ。汗まみれ。血潮まみれ。

そんな大勢の人間の中から、爆発的な歓声が広がり、収まらない。

それまでの犠牲を忘れるかのように、鬨の声は王都を埋め尽くす。

 

因果は巡り、歴史は巡り、そして新しい必然を迎えるに至っただけである。

 

 

 

Chapter81

 

そして、戦争は終わった。

ハードもソフトも、色んな物の立て直しをしないといけないけども。

まあ。それはきっと、俺が何かをすることではないんだろうな。

 

モーリス王子が、新王朝の王として立ち。

事前に予定していた通りに、次席以下の者の立ち位置が決まっていく。

ああ、勿論。論功をもって多少のブレみたいなものはあるんだが。

 

コルニス殿が宰相に。フレデリクが将軍に。

そして主要なメンバーに爵位が配られ、新体制が定まる。

そんな中で、呼び出された俺に告げられた言葉は。

 

「宮廷魔導士ぃ?」

「もしもレーヴ殿がこの国に残るなら、それぐらいの立ち位置はね。」

 

要は、相談役ってことなんだが。

王族の医師であり、意見役であり、何でも屋でもある、そんな立ち位置。

それ自体は悪くないというか、その選択肢を選ぶ上ではありがたいのだが。

 

「いや、駄目だな。」

「やっぱり、駄目か。」

「俺がそんなものになったら、余分な奴に警戒されるよ。」

 

フェルドランで知られていたように、レヴィンの名前はな。

王や宰相のような立場に立っている人間だと、どうしても意識する。

うん。俺は他人に迷惑を掛けるつもりもねえんだよなあ。これがよ。

 

「それぐらい、受けた恩から考えれば迷惑でも何でもないんだけどね。」

「悪いな。厚意だけは受け取っとくよ。」

「僕が生きてる間は、席は開けておくからさ。気が向いたらおいでよ。」

 

そうだなぁ。ここは居心地が悪くはなかった。

いつの間にか、俺の居場所だと勘違いしそうになるぐらいには、な。

 

「いつか、もし、腰を落ち着けるときがくるなら、ここだな。」

「……それはよかった。そう思ってくれただけでも、こっちも救われる。」

 

あー。うん。

 

「今更、モーリス王子。いや、王に教育は必要ないんだけどさ。」

「ああ。」

「頼る相手と、頼り方は、これからずっと考え続けろよ。」

 

ずっと検証し続ける以外の正解なんて、どの国も見つけられていないんだ。

 

「それを教えてくれた人にこそ、残ってほしかったんだけどね。」

「コルニス殿がいるだろ。」

「頼れる相手は、幾らいてもいいだろう?」

 

こいつぅ。

 

「強くなったなぁ。」

「それだけの教師たちが、僕たちを育ててくれたからね。」

 

ま、そうだな。みんなが、お前をそれだけ期待してるんだ。

 

「近く通ったら挨拶には来るよ。また会おうぜ。」

「そうだね。その時は、歓迎するよ。」

 

ただの友人のモーリスとレーヴとして、その時は愚痴でも言い合おうぜ。

それぐらいの未来は、少しぐらいは期待してもいいだろ。な。

 

 

 




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