それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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2話

Chapter4

 

「そこの素敵な殿方、どうか助けてくださいませんか!?」

「えぇ……」

 

うっわあ。

久しぶりに素で、嫌だなぁと思う何かと遭遇したわけであるが。

なんだろう。マジで嫌だなぁ。出来ればこのまま関わりたくない。

 

「このわたくしを哀れだと思うなら、どうか!」

「残念ながら今のところ少しも哀れと思えていないんだが?」

 

そんな!?と目の前の女は大きな声で騒ぎ立てる。

 

「このか弱い女を哀れとも思いませんの!?」

「見る限り生命力はやたらと強そうだなと思っている。」

 

そのやたらとぐるぐる渦巻いてる金髪のあたりが特に。

 

「せめて事情を聴いてから判断してくださいまし!」

「……正直すごく嫌だが、いいだろう。」

 

このまま後ろに振り返ったら、多分しがみついてくるタイプの妖怪だしな。

 

「わたくしはフェルドランのとある貴族家の女ですの。」

「だろうね。」

「今回、政治の都合で家に帰れなくなりましたので逃げていましたの。」

 

ってことはだ。

 

「偽王派って言わないか?それ。」

「そうともいいますが、叔父が当主でしたからわたくしに非はありません。」

 

そうかな……そうかも……まあ、そこらへんは割とどうでもいいんだが。

 

「どうでもいいならついでに助けてくださいまし!」

「えぇ……」

 

何が嫌かって、その強そうな生命力に巻き込まれそうなのがなんだが。

 

「ところで助けるって、何をしてほしいんだ?」

「出来ればフェルドランの外まで連れていって頂けると!」

 

あー。それなら一応、俺の目的地的には問題ないんだが。

 

「だが?」

「山脈越え、ついてこられるか?」

「死んじまいますわね……」

 

だろ?だから俺のことは諦めて、次に通る奴に打診してくれねえかな。

 

「第二第三の熊か、それとも山脈越えのどちらかですわ。」

「それもそうかもしれない……」

「まだ貴方様のご厚意に期待して山脈越えの方が希望がありそうですの。」

 

うーん。どうかな。とりあえず、さっきの熊は殺したんだが。

 

「あれ、子熊ですのよ。」

「マジかよ。結構大きい奴だったが。」

「母熊が確実に大激怒ですわね……」

 

そうか……ここにいたら流石に母熊の方に殺されそうだな……

 

「ところでお前を助けることで俺に何か得はあるのか?」

「徳が溜まります。」

「ダジャレかよ……」

 

マジで助ける気が一瞬で失せるんだが。

 

「この馬車に積んでる荷物ぐらいなら提供できますが……」

「それはお前を助けなくても手に入りそうだな。」

「ならば、この身体を好きにしてくださっても構いませんことよ?」

「俺、一応嫁みたいなのもいるから遠慮しておく。」

 

一応だがな。

 

「それ以外ですと、精々、多少の家事や、貴族の子女らしいことぐらいしか……」

 

マジでどうしよう。こいつ。助けたところで俺に何も利益がねぇ。

 

 

 

Chapter5

 

「助けたくないわけじゃないが、とにかく関わりたくない。」

「そんな殺生な!?どうか是非積極的に関わってくださいまし!?」

 

俺も酷いことを言っているのは自覚があるのだが。

 

「せめてそのドレスと巻き髪は何とかならんのか?」

「それが助けない理由になってますの?」

 

なんか……強そうじゃん……

俺、自分よりも生命力が高そうな人は、基本的に苦手なんだよ……

 

「なら着替えますので少々お待ちくださいな。」

「着替えられるのかよ。」

「一応、横転してはいますが、わたくしの荷物を積んでますので……」

 

あーまあ、そりゃそうなんだろうけどよ。

 

「まあ、少しの時間お待ちくださいませ、レーヴ様。」

「ん?」

「あら、違いましたの?」

 

いや、合ってはいるんだが。

 

「俺、名乗ってないよな?」

「名乗られてはいらっしゃいませんわね。」

「何で判ったんだ?」

 

一応、今は賢者っぽい恰好はしてないはずなんだが。

ちゃんと傭兵っぽい、胸当てと剣を装備していることをちらりと見る。

 

「大したことじゃありませんわ。」

「一応聞かせてくれ。」

「熊を倒したという割に、そのお召し物に汚れはありませんもの。」

 

剣も抜いた気配はございませんし。などとその女は言う。

 

「そうなれば、魔術なのでしょうけれど。」

「ふむ。」

「この国にその年齢で、それだけの魔術を使える方がどれだけいまして?」

 

んー。アドリアーン殿とかは近い年齢で、該当すると思うが。

 

「そうですわね。」

「お、認めた。」

「だから、残りはあてずっぽうですわ。当たれば気を引けると思いましたの。」

 

なるほどね、そういう意味だったらちゃんと正解を引いてるわ。

 

「詰まるところ、面白い女だと思われようと必死なんだな?」

「勿論。命がかかっておりますもので。」

 

まあ、なんというか。

面倒くさいことには変わりないんだが、確かに面白い奴ではある。

……どうせ、ものすごく急ぎの旅ではない、よな。うん、まあいいか。

 

「お前、名前は?」

「アレクシア。今となってはただのアレクシアですわ。」

 

うっわ。

 

「何がうっわですのよ。」

「無茶苦茶貴族っぽい名前じゃん。それも北東の響きっぽい。」

「お母さまがそっちの出身でしたのよ。素敵でしょう?」

 

素敵だとは思うが。

 

「もうその名前なら、その格好のままでいいわ。」

「あらどういうおつもり?」

「そういう存在だと思ってた方がより面白いからに決まってんだろ。」

 

そんな感じで、東への旅路に、道連れが出来たのであった。

……エルナは別にこういうの、気にする女じゃない、よな?大丈夫だよな?

 

 

 

Chapter6

 

「ところで、俺は東に行くんだが。」

「はい。」

「お前、東に行ってなんか生きていく術あんの?生計立てられる?」

 

とりあえず、馬車の荷物で使えそうなのは片づけつつ。

アレクシアに今後の展望を聞いてみる俺である。

そもそも、今生き延びてもその先がどうしようもないとな。

 

「特にないので、下働きでも何でもする予定ですのよ。」

「既に生き物としての強さに溢れてんな、お前。」

 

もう俺とは格が違うんだよな。

というか、下働きは予定なのか?未来は未確定とかそういうレベルでは?

 

「いっそ娼館にでも入りこんじまえば?そこそこ贅沢できるかもだぜ。」

「うーん。最初は酒場の踊り子ぐらいで負かりません?」

 

まかるまからないの問題なのかよ。

というか、それはそれで娼館に入るのとそこまで変わりがないというか。

 

「酒場の踊り子は踊り子で身体を売ると思うんだが。」

「相手を選べる分だけ、貴族よりマシかもしれませんわね。」

 

本気のレスポンスをされるとおっさんは困るって常識を知らないのか?

 

「勿論、実家の家格とご時世に寄りますけどね?」

「そういう話じゃねえんだよ。」

 

そりゃそうかもしれないけど、こいつの返事、直球すぎて怖いんだが。

 

「まあ、いいか。とりあえず山脈越えてから考えるぞ。」

「本当に山脈越えるおつもりですのね……」

 

俺は最初から本気だが?

俺だけだったら余裕がありまくるほどに、普通に横断するが?

 

「ところでお前は空飛べる?」

「人は当然には空は飛べませんのよ。ご存じなくて?」

 

なんか……お前の生命力なら……羽ぐらい生やせるかなって……

 

「貴方の中のわたくしが何に思われてるかがよく判りませんの。」

「強いて言うと俺が心底苦手なタイプの雛。」

「つまり良家の奥様とかそういう系の存在が大の苦手で?」

 

よくわかるな、今の説明で。

 

「若干わかりますもの。圧が強いというか、厚かましいというか。」

「びっくりした。何急に自己紹介始めてるんだ?」

「私はまだ清楚なのでそこまでいきついていませんわよ?」

 

いずれ辿り着くかもしれない未来。

いや、でも貴族ではいられないだろうし、こいつの進化系は別になるのか。

 

「とにかく、行くか。」

「命の限りついていくのでどうか見捨てないでくださいましね?」

「見捨てないでと叫びながらしがみ付かれたりしない限りな。」

 

そのくらいは序の口では?と首を傾げるアレクシアに俺は空を仰いだ。

なんかな、やっぱりこいつ、拾ったの間違いだったんじゃないかな。

 

 

 




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