それでも賢者は逃げていく   作:re=tdwa

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4話

Chapter10

 

第三王子たちはちょこちょこ出かけて何かをしているらしい。

 

「お前らは何を遊んでいるんだよ。」

「遊んでなどおらん。王剣の儀式に、近隣の仲間集めを急いでいる。」

 

それを遊んでいるって言ってるんだが。

 

「王剣も、無事王子に従うようになったのだ。何が悪いという。」

「順調なのは結構だけど、目的にはちゃんと進んでるのかよ。」

「貴様こそ行き倒れを拾って、遊び惚けていると聞いているが。」

 

なんでまともな反撃をしてくるんだよ。

 

「そこを突かれると弱い……」

「貴様は一体何なのだ……?」

 

フレデリクは真面目過ぎて、俺との会話がいまいち弾まん。

この男、近衛兵団長だったらしく、あまりに硬い。

いや、話題の幅自体は、年代が比較的近いだけあって話しやすいんだけどな?

 

「だって酒飲んでいい気分の時に、目の前で倒れてるんだぜ?」

「いい気分でなくても人が倒れているならば助けるのが筋なのである。」

 

くっ。そりゃそうかもしれないけど。

 

「行き倒れってことはあれだぞ。」

「うむ?」

「助けたら、短期間でも生活の面倒見ることになったりするんだぞ?」

「貴様がクズなのかそうでないのかが私にはいまいちわからん……」

 

可変式なんだよ。言わせんなよ恥ずかしい。

 

「あんたもどうせ暇だろ?手が空いてるときでいいから剣でも教えてやれよ。」

「それは構わんが……反乱軍に入れるつもりなのか?」

 

どうしようねぇ。正直、そこは決めかねてるところではあるんだが。

 

「このご時世だろ?口減らし兼ねて街に出てきた奴に、行く当てなんてな。」

「とはいえ、流石に少し前まで平凡に暮らしておった若者だろう。」

「それがどうしたよ。」

「国のために、命をかけろとは流石の私にも中々言いにくいところではある。」

 

わがまま言いやがる。

俺もそういうの大っ嫌いな性質だけどよ。

 

「元々そういう仕事だろうがよ。あんたは。」

「そういえなくもないんだが。」

「違うっての?」

「近衛兵団までくると、覚悟が決まってない兵士などいないからな。」

 

あー。

 

「そりゃそうだ。これは俺が悪いやつだな。」

「構わん。元よりこれからそれが出来るようにならねばならん。」

 

その認識が出来てるだけ、第三王子たちの保護者だよ。本当に。

でもなー。

 

「今のやり方では足りないのも判ってるんだろ?」

「……ああ。」

「お前が言わないなら、俺がきつめに言っちゃうからな?」

 

第三王子として、反乱軍として。

現在地はどこで目的地はどこで、どうやっていつまでに辿り着くかってね。

そういう方向性、決める奴が今のところ反乱軍にはいないんだよな。

 

時間がどっちの味方なのか。そこんところ、判っといてくれよなー。

 

 

 

Chapter11

 

「ところでおっさん。」

「おっさんじゃねぇが、なんだ。」

 

昼の酒場でだらだらしてたら、暇そうなカスパルが話しかけてきた。

 

「あんた、そんだけ遊び歩いててよく金が続くな。」

「賢者だからな。」

 

言うても賢者様なのである。金に困るような人生は送っていない。

 

「賢者なら金が湧いて出るとでも言うのかよ。」

「似たようなもんだなぁ。暇だし見せてやろうか。」

 

訝しむカスパルを、宿屋の裏手に連れ出す。

洗濯物が並ぶ場所で、適当に地面を隆起させ、加工しやすいようにする。

 

「さて、これはなんだ?」

「土だな。」

「土だ。色々な成分を含んでるな。」

 

成分?と頭をかしげるカスパル。

 

「色々混ざり物があるんだよ。その混ざり物を抽出して。」

「おう。」

「熱で溶かして形を作って冷やすとだな。」

 

混ざり物……アルミの成分をまとめて焼き固めるとどうなるか。

 

「ほい、コランダムー。」

「……ってこれ宝石じゃねぇか!」

 

宝石ですとも。もっとも、過去生では人工宝石として安く売られた奴だが。

 

「こうやって、たまに売り物を作って売ってるんだよ。」

「初めておっさんをすげぇ魔術師として認識したぜ……」

 

なにおぅ。

 

「ま、見る奴が見れば、安い宝石ってのはばれるんだがな。」

「宝石に高い安いもあるのか?」

「あるに決まってるだろ。こいつは本物だけど半分偽物みたいなもんだ。」

 

偽物という言葉に引っ掛かりを感じたらしく、視線が強くなるカスパル。

 

「綺麗すぎて、人が作ったものって判っちまうんだな、これが。」

「見分けつくのか?」

「光り方に揺らぎがなさ過ぎて、な」

 

素人目で見ても、綺麗すぎて逆に安っぽく見えるんだよな。

本物と並べるまでもなく、作り物だろうと一目でわかる。

 

「……売れない、のか?」

「場所や値段次第だな。ぼったくらなければ正規の商会でも売れるぞ。」

 

サイズは天然石よりも遥かに上等だからな。

大抵一回しか着ない貴族の夜会用のドレスに、縫い付けたりな。

そういう贅沢な真似をしたところで、本物ほどは懐が痛まんのだよ。

 

「そうでなくても色々できるお兄さんだからな。金には困ってねえのよ。」

「はー。そういうもんかー。」

 

魔術で氷売り歩いてもいいし、治癒術使って病人を直しまわってもいいしな。

案外、飯のタネはそこらに転がってるもんなんだよ。拾えるかは別として。

 

「というわけで、お兄さんはいつでも飲み歩けるのだ。」

「次からは奢られるときに遠慮しないことにするな。」

 

じゃあ飲みに戻りますか。カスパルも一杯ぐらいは付き合ってくれよな。

 

 

 

Chapter12

 

「ついでだし、治癒魔術でも覚えてみるか?」

「は?」

 

ユレンが反乱軍の兵士に、剣術を学んでいるのを酒とともに見守る。

そんな日々に飽きてきたので、疲れて座り込むユレンに声をかけてみた。

 

「そんなに気軽に覚えられるものなんですか?」

「簡単な術式ならいけるんじゃねぇの。」

 

責任は持てねぇけど、とりあえず試す分にはただだぜ。

 

「そもそも、俺、魔術なんて使えませんよ?」

「それぐらいは見りゃわかる。」

 

身体の魔力操作は全くできてないからな。見りゃ一発ですとも。

 

「でも、魔力そのものは割とあるから、多分何とかなるぜ?」

「……そうなんですか?」

「多分な。やってみて駄目でも、別に損するわけではないしな。」

 

元々出来ないものが出来なかったというだけである。

 

「よーし、じゃあやってみっかぁ」

「そんな気軽に……?魔術って弟子入りしないと教えてもらえないんじゃ……?」

 

普通はそうかもしれんが、今回は違うな。

どちらかと言わずとも、俺の実験に付き合ってもらう気分である。

 

「ほら。目ぇ閉じろ。俺の手を握れ。」

「はい。」

「呼吸を整えろ。自分の心臓の音を聞け。流れるものを自覚しろ。」

 

要は、魔力の知覚が出来るか出来ないかという話だ。

俺ぐらいになると、意識を切り替えなくても平常時から魔力が見えるわけだが。

そうではなくとも導く方法もある……かもしれないので是非実験してみよう。

 

「流れるものって、血、ですか?」

「血でもいい。そこに暖かさがあるのがわかるか?」

 

元々血は温かいものだから、それを知覚することは難しくないだろう。

俺の思い通り、ユレンは少し間を開けてから頷いた。

 

「よし。じゃあ、その暖かさと、周りの熱の差を理解しろ。」

「周り?」

「空気でも日差しでも何でもいいが、そこに温度差があるだろ?」

 

今は春だからな。涼しい地域なのもあって、温度差は掴みやすい。

 

「その温度差が、お前の身体に宿る生命力だ。魔力はその延長線上にある。」

「生命、力……」

「流れず揺蕩うもの。自然に揺らぐもの。怪我に集まれと念じてみろ。」

 

何分かの試行錯誤の内に、少しずつ生命力の偏りが出てきた。

 

「ほら、これで自然治癒力の向上が出来たわけだな。初歩の回復魔術だ。」

「……全然治ってない、ですけど……?」

「治癒力の向上であって即時治癒じゃないからな。」

 

これを使いこなしたら、その内即時治癒も出来るようになるんだよなぁ。

ま、いつかは辿り着くからさ。道のりは長いが頑張れよ、青年。

 

 

 




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