美女の多い世界に転生した 作:インフェルノ
暗い内容です。
なんだか主人公がよう実の綾小路清隆の劣化版みたい
闇を恐れて
「――『闇竜の咆哮』」
放たれた漆黒の奔流が、一瞬にして山脈の一部を消し去った。S級依頼の対象だった巨大な魔物も、断末魔すら上げられずに虚無へと還る。
「相変わらず、凄まじい破壊力だな」
隣で剣を収めたエルザが、感嘆したように息をつく。彼女の鎧には一切の返り血も付いていない。俺が前衛をすべて闇の棘で拘束し、一撃で消滅させたからだ。
「これくらい、日常茶飯事です。……早く帰りましょう、ギルドメンバーが待ってます」
相変わらず俺はエルザとS級クエストをこなしていた。成果は上々。流石マルドギール並みの魔力で転生させられた事はある。やはりこの身体は使いやすかった。
ギルドへ戻れば、いつもの喧騒が俺たちを迎える。ナツにエルザがふっ飛ばされたり、グレイやエルフマン、マカオがそれを見て笑っていたりと皆いつも通りだった。
「……?」
だが、カウンターの奥で一人、穏やかな笑みを浮かべながらも、その瞳に微かな憂いを宿して俺を見つめる女性がいた。ミラジェーンだ。
宴が始まり、酒を片手にエルザが誇らしげに今日の戦果を語る中、俺はギルドの隅で一人、指先に残った黒い魔力――マルド・ギールの如き、禍々しくも美しい闇を弄んでいた。
「……また、そんな風に魔力を使っているのね」
いつの間にか隣に立っていたミラが、そっと俺の手元を覗き込んだ。彼女の手には、俺の好みの飲み物が入ったグラスがある。
「便利ですから。闇は重力も質量も自由自在なんです。エルザさんの無茶な突撃をサポートするには、これくらい強力じゃないと務まりません」
冗談めかして言った俺に対し、ミラはいつもの聖母のような微笑みを崩さなかったが、その声には確かな震えが混じっていた。
「ねえ、その魔法……。それだけ深い『闇』を使いこなして、心まで持っていかれたりしない?」
彼女は知っている。自分もまた「悪魔」という異質な力をその身に宿しているからこそ、強大すぎる力が使い手の精神を削り、変質させていく恐怖を。
「そんなに惜しみなく闇を振りまいていて……大丈夫なの? もし、あなたがその力に呑まれて、どこか遠くへ行ってしまったら……私、」
ミラの細い指が、俺の服の袖をぎゅっと掴んだ。周囲の騒ぎが遠のくほど、彼女の真剣な眼差しが俺を貫く。
「……心配しすぎです、ミラジェーンさん。俺がこの闇に呑まれることはありません。先輩の笑顔を護るために、俺はこの力を手なずけたんですから」
少し格好つけたセリフを言って俺がその手を優しく包み込むと、彼女は一瞬だけ目を見開き、やがて困ったように、でも嬉しそうに頬を緩めた。
(…どうにも引っ掛かるな…)
今のミラジェーンは、かつての「魔人」と呼ばれた尖った気配が嘘のように消え、ギルドの看板娘として穏やかな空気を纏っている。
「ねえ、そんなに私の顔をじっと見て、どうしたの?」
首を傾げる彼女の笑顔は、あまりに眩しくて、そして脆い。俺はグラスに残った琥珀色の液体を見つめながら、内心で複雑な思考を巡らせていた。
(……本当に、このまま原作通りに進むんだろうか)
俺の知る未来(原作)では、彼女はやがて戦線に復帰し、再びその強大な力を振るうことになる。
だが、目の前で優しく微笑み、おしぼりを畳んでいる彼女を見ていると、どうしてもそんな「戦う姿」が想像できなかった。
人の心は、一度折れてしまえばそう簡単に元通りにはならない。ましてや、彼女が背負っているのは「家族を傷つけたかもしれない」というあまりに重い十字架だ。
都合よく、運命の歯車が噛み合う保証なんてどこにもない。もし、彼女がこのまま戦う力を取り戻せなかったら。もし、俺が守りきれなかったら。
そんなとりとめもない不安を隠すように、俺は
「いや、今日のシチューも美味そうだと思ってな」
と、他愛もない雑談で茶を濁した。
「ふふ、グリアってば、食いしん坊さんね」
クスクスと笑うミラの表情に少しだけ安堵していると、ふとした瞬間に、ギルドの柱の陰からこちらをじっと見つめる視線に気づいた。
エルフマンだ。姉と親しげに話す俺を見て、彼は何か言いたげな、それでいてどこか申し訳なさそうな顔で立ち尽くしていた。
(……ああ、そうだ。こいつもだったな)
その姿を見て、俺は改めて思い出した。心を痛めているのは、ミラだけじゃない。目の前の彼もまた、あの日以来、全身テイクオーバーができなくなっている。
姉弟揃って、その溢れんばかりの才能と力を、自らの心の檻に閉じ込めてしまったんだ。
マルド・ギール並みの闇を、自分の手足のように使いこなしている俺とは対照的な、彼らの「止まった時間」。このまま「物語の進行」を待つだけでいいのか?
それとも、俺のこの強引なまでの闇の力で、彼らの檻をぶち壊すべきなのか――。
俺は、ギルドの喧騒を離れた裏庭にエルフマンを呼び出した。夕闇が差し込む中、俺の周囲には無意識に、マルド・ギール並みの禍々しい闇の魔力が陽炎のように揺らめいている。
目の前で巨体を縮こまらせ、俺の魔圧に戸惑いの表情を浮かべるエルフマン。そんな彼に俺は容赦のない言葉を叩きつけた。
「……お前の過去は知っている。妹を失ったそうだな」
エルフマンの肩が、びくりと跳ねた。その拳が震え、地面に視線を落とす。
「お前は自分のせいだと思っているのか? ――笑わせるな、運が悪かっただけだ。だが、そのせいで力を振るうのをやめた。それが本当にお前や、ミラジェーンさんの……姉さんの為になると思っているのか?」
「……っ、だが、俺はッ! 漢として、妹を、あんな……!」
絞り出すようなエルフマンの声に、俺はさらに闇の圧を強めて一歩踏み込む。
絞り出すようなエルフマンの声に、俺はさらに闇の圧を強めて一歩踏み込む。
「甘えるな。もし今日、悪意を持った敵が現れたらどうする? 次はお前も、あの優しい姉さんも死ぬことになる。それでも『力が怖い』と抜かすのか? 本当にそれでいいのか、エルフマン!」
俺の闇の魔力が、棘のようにエルフマンの足元を包囲する。逃げ場を奪い、絶望を突きつけ、その奥にある本能を叩き起こすための「荒療治」だ。
「戦え、エルフマン。全身テイクオーバーを成功させろ。臆病風に吹かれて止まった時間を、お前自身の力で動かすんだ」
俺は一瞬だけ魔力の質を変えた。マルド・ギールがそうしたように、絶対的な強者の、冷徹ながらも確固たる「導き」の意思を込めて。
「……姉さんを、ミラを護れ。俺が手伝ってやる。それが、生き残ったお前にできる唯一の、家族への償いだ」
俺の闇がエルフマンの全身を飲み込まんばかりに膨れ上がる。恐怖に染まる彼の手を、俺は力強く掴み、その瞳を真っ直ぐに射抜いた。
「立て、漢だろう? 妹を愛しているなら、その愛を力に変えてみせろ」
「う、うわあああああ!!!」
エルフマンは俺を殴った。何度も何度も。その拳が、空気を切り裂き俺の頬にめり込む。
「黙れッ! お前に……お前に俺の何がわかるってんだッ!」
一度火がついた彼の感情は、止まらなかった。怒り、悲しみ、後悔。それらすべてが乗った重い拳が、何度も、何度も俺の顔面や腹部を打つ。俺は闇の魔力で防御することもしなかった。マルド・ギール並みの魔力があれば、彼を消し去るなど造作もない。だが、今の俺に必要だったのは「圧倒的な力」ではなく、彼の絶望をすべて受け止める「器」になることだった。
「がはっ……」
十数発、あるいは数十発か。ついに膝をつき、俺はそのまま地面に倒れ伏した。口内からは鉄の味がし、視界が赤く染まる。
「はぁ……はぁ……っ!?」
荒い息を吐いていたエルフマンが、唐突に動きを止めた。怒りに任せて殴り続けていた手が、血に汚れ、震えている。微動だにしない俺の姿、そして一切の反撃をせずにボロボロになった「ギルドの仲間」の姿を目の当たりにして、彼の顔から一気に血の気が引いていった。
「……あ、あぁ……」
エルフマンの瞳に、あの日と同じ絶望の色が宿る。自分の拳が、また大切なものを傷つけた。自分の力が、また取り返しのつかないことをした。その恐怖が、彼の全身を支配していく。
「……グリア……? 嘘だろ、おい……。嘘だと言ってくれッ! 漢が、漢がこんな……っ!」
彼は膝から崩れ落ち、頭を抱えて絶叫に近い声を上げた。その時、俺は泥を噛みながら、僅かに口角を上げた。
(……そうだ、エルフマン。その『絶望』こそが、お前が向き合わなきゃならない壁だ)
俺は震える腕に力を込め、ゆっくりと、だが確実に地面を押し返した。
「……何、絶望してんだ……。まだ、終わってねぇぞ、お前が強くなる日まで俺はお前と向き合い続ける」
血を吐き捨て、俺は再び彼の前に立ち上がった。
暗い内容見て頂きありがとうございます。
因みにこの様子は誰も見てないので完全に2人きりの空間です。
メインヒロイン誰が良い?
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ミラジェーン
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エルザ
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ルーシィ