美女の多い世界に転生した   作:インフェルノ

10 / 20


暗い内容です。

なんだか主人公がよう実の綾小路清隆の劣化版みたい





銀髪美女攻略
闇を恐れて


 

 

「――『闇竜の咆哮』」

 

 

放たれた漆黒の奔流が、一瞬にして山脈の一部を消し去った。S級依頼の対象だった巨大な魔物も、断末魔すら上げられずに虚無へと還る。

 

 

「相変わらず、凄まじい破壊力だな」

 

 

隣で剣を収めたエルザが、感嘆したように息をつく。彼女の鎧には一切の返り血も付いていない。俺が前衛をすべて闇の棘で拘束し、一撃で消滅させたからだ。

 

 

「これくらい、日常茶飯事です。……早く帰りましょう、ギルドメンバーが待ってます」

 

 

相変わらず俺はエルザとS級クエストをこなしていた。成果は上々。流石マルドギール並みの魔力で転生させられた事はある。やはりこの身体は使いやすかった。

 

 

ギルドへ戻れば、いつもの喧騒が俺たちを迎える。ナツにエルザがふっ飛ばされたり、グレイやエルフマン、マカオがそれを見て笑っていたりと皆いつも通りだった。

 

 

「……?」

 

 

だが、カウンターの奥で一人、穏やかな笑みを浮かべながらも、その瞳に微かな憂いを宿して俺を見つめる女性がいた。ミラジェーンだ。

 

宴が始まり、酒を片手にエルザが誇らしげに今日の戦果を語る中、俺はギルドの隅で一人、指先に残った黒い魔力――マルド・ギールの如き、禍々しくも美しい闇を弄んでいた。

 

 

「……また、そんな風に魔力を使っているのね」

 

 

いつの間にか隣に立っていたミラが、そっと俺の手元を覗き込んだ。彼女の手には、俺の好みの飲み物が入ったグラスがある。

 

 

「便利ですから。闇は重力も質量も自由自在なんです。エルザさんの無茶な突撃をサポートするには、これくらい強力じゃないと務まりません」

 

 

冗談めかして言った俺に対し、ミラはいつもの聖母のような微笑みを崩さなかったが、その声には確かな震えが混じっていた。

 

 

「ねえ、その魔法……。それだけ深い『闇』を使いこなして、心まで持っていかれたりしない?」

 

 

彼女は知っている。自分もまた「悪魔」という異質な力をその身に宿しているからこそ、強大すぎる力が使い手の精神を削り、変質させていく恐怖を。

 

 

「そんなに惜しみなく闇を振りまいていて……大丈夫なの? もし、あなたがその力に呑まれて、どこか遠くへ行ってしまったら……私、」

 

 

ミラの細い指が、俺の服の袖をぎゅっと掴んだ。周囲の騒ぎが遠のくほど、彼女の真剣な眼差しが俺を貫く。

 

 

「……心配しすぎです、ミラジェーンさん。俺がこの闇に呑まれることはありません。先輩の笑顔を護るために、俺はこの力を手なずけたんですから」

 

 

少し格好つけたセリフを言って俺がその手を優しく包み込むと、彼女は一瞬だけ目を見開き、やがて困ったように、でも嬉しそうに頬を緩めた。

 

 

(…どうにも引っ掛かるな…)

 

 

今のミラジェーンは、かつての「魔人」と呼ばれた尖った気配が嘘のように消え、ギルドの看板娘として穏やかな空気を纏っている。

 

 

「ねえ、そんなに私の顔をじっと見て、どうしたの?」

 

 

首を傾げる彼女の笑顔は、あまりに眩しくて、そして脆い。俺はグラスに残った琥珀色の液体を見つめながら、内心で複雑な思考を巡らせていた。

 

 

(……本当に、このまま原作通りに進むんだろうか)

 

 

俺の知る未来(原作)では、彼女はやがて戦線に復帰し、再びその強大な力を振るうことになる。

 

だが、目の前で優しく微笑み、おしぼりを畳んでいる彼女を見ていると、どうしてもそんな「戦う姿」が想像できなかった。

 

人の心は、一度折れてしまえばそう簡単に元通りにはならない。ましてや、彼女が背負っているのは「家族を傷つけたかもしれない」というあまりに重い十字架だ。

 

都合よく、運命の歯車が噛み合う保証なんてどこにもない。もし、彼女がこのまま戦う力を取り戻せなかったら。もし、俺が守りきれなかったら。

 

そんなとりとめもない不安を隠すように、俺は

 

 

「いや、今日のシチューも美味そうだと思ってな」

 

 

と、他愛もない雑談で茶を濁した。

 

 

「ふふ、グリアってば、食いしん坊さんね」

 

 

クスクスと笑うミラの表情に少しだけ安堵していると、ふとした瞬間に、ギルドの柱の陰からこちらをじっと見つめる視線に気づいた。

 

エルフマンだ。姉と親しげに話す俺を見て、彼は何か言いたげな、それでいてどこか申し訳なさそうな顔で立ち尽くしていた。

 

 

(……ああ、そうだ。こいつもだったな)

 

 

その姿を見て、俺は改めて思い出した。心を痛めているのは、ミラだけじゃない。目の前の彼もまた、あの日以来、全身テイクオーバーができなくなっている。

 

姉弟揃って、その溢れんばかりの才能と力を、自らの心の檻に閉じ込めてしまったんだ。

 

マルド・ギール並みの闇を、自分の手足のように使いこなしている俺とは対照的な、彼らの「止まった時間」。このまま「物語の進行」を待つだけでいいのか?

 

それとも、俺のこの強引なまでの闇の力で、彼らの檻をぶち壊すべきなのか――。

 

 

 

 

俺は、ギルドの喧騒を離れた裏庭にエルフマンを呼び出した。夕闇が差し込む中、俺の周囲には無意識に、マルド・ギール並みの禍々しい闇の魔力が陽炎のように揺らめいている。

 

目の前で巨体を縮こまらせ、俺の魔圧に戸惑いの表情を浮かべるエルフマン。そんな彼に俺は容赦のない言葉を叩きつけた。

 

 

「……お前の過去は知っている。妹を失ったそうだな」

 

 

エルフマンの肩が、びくりと跳ねた。その拳が震え、地面に視線を落とす。

 

 

「お前は自分のせいだと思っているのか? ――笑わせるな、運が悪かっただけだ。だが、そのせいで力を振るうのをやめた。それが本当にお前や、ミラジェーンさんの……姉さんの為になると思っているのか?」

 

「……っ、だが、俺はッ! 漢として、妹を、あんな……!」

 

 

絞り出すようなエルフマンの声に、俺はさらに闇の圧を強めて一歩踏み込む。

 

絞り出すようなエルフマンの声に、俺はさらに闇の圧を強めて一歩踏み込む。

 

 

「甘えるな。もし今日、悪意を持った敵が現れたらどうする? 次はお前も、あの優しい姉さんも死ぬことになる。それでも『力が怖い』と抜かすのか? 本当にそれでいいのか、エルフマン!」

 

 

俺の闇の魔力が、棘のようにエルフマンの足元を包囲する。逃げ場を奪い、絶望を突きつけ、その奥にある本能を叩き起こすための「荒療治」だ。

 

 

「戦え、エルフマン。全身テイクオーバーを成功させろ。臆病風に吹かれて止まった時間を、お前自身の力で動かすんだ」

 

 

俺は一瞬だけ魔力の質を変えた。マルド・ギールがそうしたように、絶対的な強者の、冷徹ながらも確固たる「導き」の意思を込めて。

 

 

「……姉さんを、ミラを護れ。俺が手伝ってやる。それが、生き残ったお前にできる唯一の、家族への償いだ」

 

俺の闇がエルフマンの全身を飲み込まんばかりに膨れ上がる。恐怖に染まる彼の手を、俺は力強く掴み、その瞳を真っ直ぐに射抜いた。

 

 

「立て、漢だろう? 妹を愛しているなら、その愛を力に変えてみせろ」

 

「う、うわあああああ!!!」

 

 

エルフマンは俺を殴った。何度も何度も。その拳が、空気を切り裂き俺の頬にめり込む。

 

 

「黙れッ! お前に……お前に俺の何がわかるってんだッ!」

 

 

一度火がついた彼の感情は、止まらなかった。怒り、悲しみ、後悔。それらすべてが乗った重い拳が、何度も、何度も俺の顔面や腹部を打つ。俺は闇の魔力で防御することもしなかった。マルド・ギール並みの魔力があれば、彼を消し去るなど造作もない。だが、今の俺に必要だったのは「圧倒的な力」ではなく、彼の絶望をすべて受け止める「器」になることだった。

 

 

「がはっ……」

 

 

十数発、あるいは数十発か。ついに膝をつき、俺はそのまま地面に倒れ伏した。口内からは鉄の味がし、視界が赤く染まる。

 

 

「はぁ……はぁ……っ!?」

 

 

荒い息を吐いていたエルフマンが、唐突に動きを止めた。怒りに任せて殴り続けていた手が、血に汚れ、震えている。微動だにしない俺の姿、そして一切の反撃をせずにボロボロになった「ギルドの仲間」の姿を目の当たりにして、彼の顔から一気に血の気が引いていった。

 

 

「……あ、あぁ……」

 

 

エルフマンの瞳に、あの日と同じ絶望の色が宿る。自分の拳が、また大切なものを傷つけた。自分の力が、また取り返しのつかないことをした。その恐怖が、彼の全身を支配していく。

 

 

「……グリア……? 嘘だろ、おい……。嘘だと言ってくれッ! 漢が、漢がこんな……っ!」

 

 

彼は膝から崩れ落ち、頭を抱えて絶叫に近い声を上げた。その時、俺は泥を噛みながら、僅かに口角を上げた。

 

 

(……そうだ、エルフマン。その『絶望』こそが、お前が向き合わなきゃならない壁だ)

 

 

俺は震える腕に力を込め、ゆっくりと、だが確実に地面を押し返した。

 

 

「……何、絶望してんだ……。まだ、終わってねぇぞ、お前が強くなる日まで俺はお前と向き合い続ける」

 

 

血を吐き捨て、俺は再び彼の前に立ち上がった。

 

 

 






暗い内容見て頂きありがとうございます。

因みにこの様子は誰も見てないので完全に2人きりの空間です。


メインヒロイン誰が良い?

  • ミラジェーン
  • エルザ
  • ルーシィ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。