美女の多い世界に転生した   作:インフェルノ

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ミラジェーン視点です。





元魔人の共鳴

 

 

妹を失った。ギルドの仕事中にエルフマンの全身接収テイクオーバーが暴走して、リサーナは光となって消滅してしまった。

 

ショックを受けたエルフマンは本格的な戦いが出来なくなり、私も現役を引退した。

 

暫くの間無気力になり何もする気が起きなかった。やがて少し落ち着いてから魔道士に戻ろうとしたけど無理だった。ギルドの看板娘を勧められて、受付嬢になった。皆が仕事に行く姿をギルドで見守っていた。

 

 

 

悪くないと思った。危険な依頼を受けて家族を失う事はもう避けたかった。

 

私はただ皆を見守るだけで良いと思った。幸い生活には苦労しない。

 

私はただ淡々とギルドの事務作業をしていた。

 

 

 

元々自分の魔法が好きではなかった。

 

テイクオーバー。接収。もともと私のテイクオーバーの魔法は近所の教会に棲む悪魔を祓った時に偶然手にしたもの。そのせいで悪魔の力をその身に宿し、村の人間から差別を受けることになった。村にいられなくなって出て行った。

 

妖精の尻尾に入ってもしばらくは私自身そのことに思い悩んでいたし、ギルドに弟と妹を預けて出ていこうと思ったけど、弟と妹が姉と同じ力を手に入れた事で踏みとどまった。

 

 

 

でもその魔法が原因で家族を失った。やはりこの魔法は信用できるものではなかったんだと再認識した。

 

だから封印した。これで良い。これが正解なんだと自分に言い聞かせた。これは使ってはいけない力。2度とあの悲劇を起こさない。

 

 

これで十分なんだと思っていた。

 

 

 

 

そんな時だった。ギルドに1人の青年が現れた。

 

 

 

 

 

「加入希望です」と一言だけ発した彼。

 

その瞳を見た私は息をのんだ。信じられない程の闇が詰まっていた。まるで何度も死線を潜り抜けて来たような強者の雰囲気を彼は発していた。

 

それだけじゃない。彼の容姿は物凄く整っていた。思わず魅入ってしまうくらい。身体もある程度大きくて、美しさと逞しさを両立させたような青年だった。

 

そう思って見惚れていた時だった。

 

ドクンと心臓が鳴った。彼の底しれない魔力が一瞬だけ見えた。ほんの一瞬だけ、しかし現役魔道士だった私にはその魔力がどういうものだか分かった。

 

闇属性。主に死と破壊、悪魔、絶望、光をも飲み込む暗黒を司る負の属性だった。夜の安息と眠り、調和を司る属性でもあるのだが、彼の魔力は恐らく前者だった。

 

私と同じ属性の魔力。身体が自然と疼いた。初めて自分と似た魔力を持つ人間に出会った。仲間と言うわけじゃないけど、同族を見つけたような気分だった。

 

底が見えない闇。彼の奥底に何が潜んでいるかわからなかった。途轍もなく強大で何か恐ろしいものが潜んでいる気がした。

 

一体彼は何を抱えているのだろう。

 

 

はっとした私はいけないと判断し、彼に声をかけた。思い込みは良くない。少し話して見てからどんな人間か判断しよう。

 

 

………。

………。

 

 

身の上話は特に大したものじゃなかった。山で生活していて、魔物の狩猟の仕事をしていたらしい。生活には大して困ってなかったが、より広い世界を求めてギルドに加入することを決めたみたい。

 

ありきたりな話だと思った。取り敢えず、ギルドの紋章は勝手に押せないから、しばらく待って貰う事にした。

 

 

………。

………。

 

 

 

普通じゃなかった。いきなりジャンプしたかと思うと2階からS級クエストを掻っ攫って、私に受注を申請したのだ。S級クエストはS級の資格を持っているものしか出来ない。故にこれはルール違反だった。

 

 

私は止めた。けど彼は聞かなかった。「依頼を達成すれば良いんですよね?」と言って出ていこうとした。

 

 

暴挙に見かねたギルドの何人かが止めに入った。

 

 

「黙れ」

 

 

瞬間、物凄い圧力がギルドを襲った。恐ろしい程膨大な闇の魔力だった。マスターと同じくらい…、下手するともっと上かもしれない。恐るべき闇属性の魔力だった。

 

その場に縫い付けられたように動けなかった。空気が「変質」した。単なる魔力の放出ではなかった。世界そのものがどす黒い闇に塗り潰されて、酸素さえもが重鉛に変わったかのような絶望的な圧だった。

 

 

(なんなの……これ……!?)

 

 

心臓が早鐘を打った。奥底に眠る「魔人シュトリ」の魂が、恐怖ではなく、かつてない「共鳴」に震えていた。

 

サタンソウルは悪魔を統べる力。だが、目の前の男から溢れ出すのは、悪魔そのものを定義し、君臨する「冥府の王」の格。あまりに純粋で、あまりに禍々しい闇。

 

 

しかも私には分かった。彼はまだ半分の力も解放してない。

 

恐らくたった3分の1が漏れ出ただけで、ギルド中の魔導士たちの魂が屈服し、悲鳴を上げているのが手に取るように分かった。

 

私自身がかつて戦場で撒き散らした破壊の衝動よりも、ずっと静かで、完成された「死」の気配。

 

 

この人…、人間じゃない。 まるでもっと深い深淵の場所から来た何かみたい…。

 

 

鳥肌が立つ。同時に、リサーナを失って以来、頑なに閉ざしていた自分の中の「魔性」が、彼の圧倒的な闇に呼び起こされ、檻を壊して外へ飛び出そうと暴れだした。抗えない惹きつけ。恐怖と、それ以上の強烈な好奇心。

 

 

「待って!!」

 

 

気づけば私はギルドの外に走り出していた。エルフマンの止める声が聞こえたけど関係なかった。ただ、彼の背中を追いかける。

 

あの人の正体を知らなければならない。そしてあの強すぎる闇がどこへ向かうのかを見届けなければならない。

 

それは、ギルドの看板娘としての責任感以上に、同じ「人外の力」を抱える者としての、本能的な共鳴だったと思う。

 

 

街外れでやっと追いついた。

 

 

「良いんですか?俺なんかについて来ちゃって」

 

「1人で行かせるわけには行かないのよ、私こう見えて一応S級魔道士だから今回だけは特別に同行してあげるわ」

 

 

そう言うと彼は笑った。年相応ではないけど、綺麗な青年の笑顔だった。

 

彼は私の肩に手を置いた。大きい…。

 

 

「ありがとうございます、それじゃ目的地に飛ぶんで捕まってください」

 

「えっ…?」

 

 

そう言うと、戸惑う間もなく、彼の強い腕が私の腰と膝裏に滑り込む。いわゆる「お姫様抱っこ」の体勢。私は顔がカッと熱くなったのを感じた。身体が性的に震える。逞しい彼の腕の感触は今も忘れられない。身内と思える人以外の異性にここまで近くで触れられるのは初めてだった。

 

けれど、恥ずかしさを口にする余裕はすぐに消え去った。私を抱きかかえたまま彼は跳躍した。

 

彼の背中から光を飲み込むようなどす黒い闇が噴き出した。それはうねりながら形を成し、巨大な「闇の翼」となって展開される。バサリと彼の背中から漆黒の巨大な悪魔と竜のそれを合わせたような凶々しい翼が生えた。

 

でも…

 

 

(…嫌じゃない……)

 

 

私の目に見えているのは、世界を終わらせるような禍々しい闇竜の翼。

 

けれど、直に触れている彼の体温はとても穏やかで、包み込む闇の魔力は、不思議と私の中の「魔人」を優しく鎮めてくれた。自分と同じ、あるいはそれ以上の深い闇を持っているはずなのに、その鼓動は驚くほど静かで優しかった。

 

 

「しっかり掴まっていてください。舌、噛まないように」

 

「ちょ、ちょっと、これ本当に移動するのっ!?」

 

 

次の瞬間、風圧と共に景色が真後ろへと吹っ飛んだ。凄まじい重力が体を襲うが、彼の腕は岩のようにびくともせず、彼女を優しく、かつ強固に固定している。

 

眼下に広がるマグノリアの街が、あっという間に豆粒のように小さくなっていく。風を切る音だけが鼓膜を震わせる中、私は彼の首筋に必死に腕を回した。

 

 

(すごい……なんてデタラメな膂力……)

 

 

唇から溜息が漏れる。サタンソウルで空を飛ぶ感覚とは全く違う。まるで夜そのものを身に纏い、空間を支配して突き進むような力強さ。風に靡く彼の整った横顔を見上げながら、私は胸の奥が騒がしくなるのを感じていた。凄く頬が熱かった。

 

この得体の知れない青年・グリザイア・エーテリアスがもたらす闇は、今の自分にとって、怖いくらいに心地よかった。

 







難しいな…。

メインヒロイン誰が良い?

  • ミラジェーン
  • エルザ
  • ルーシィ
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