美女の多い世界に転生した 作:インフェルノ
S級クエストです。
目的地に辿り着いた。現地の人達から話を聞いて、早速討伐対象の魔物を探しに行く。森を抜けた所で辿り着いた。
目的地である荒野の断崖。そこには、周囲の山々を削り取ったかのような巨大な巣が築かれていた。
「あれが……今回の依頼対象?」
戦慄したミラの声が震える。S級魔道士だった頃の彼女でもこのレベルのクエストを受けたかどうか分からないが。十分脅威なのだろう。
目の前に君臨するのは、通常のワイバーンを遥かに凌駕する巨躯。全長40m、体高13m、翼開長50m。
その胸部には、剥き出しの「竜のラクリマ」が埋め込まれ、毒々しい紫色の稲妻が全身を駆け巡っている。滅竜魔法が使える飛竜だった。
成る程、うん、今の俺の敵ではない。
「……下がっていてください、ミラジェーンさん」
「何を言ってるの、戻るべきよ、あんなの魔導士が数人がかりで……」
「大丈夫です。一瞬で終わらせますから」
「えっ、ちょっと、嘘でしょっ」
俺は一歩、前へ出た。右拳を握りしめ、自身の内側に眠る冥府の王級の魔力と、転生時に得た禁忌——「闇の滅竜魔法」を練り上げる。
『グオオオオオッ!!』
超大型飛竜がその巨体を揺らし、口内からラクリマの魔力を凝縮した咆哮(ブレス)を放とうとした瞬間。俺は飛び上がった。
「——闇竜の崩拳」
俺の影が爆発的に膨れ上がり、天を突くほどの巨大な漆黒の腕となって、飛竜の顎を真下からかち上げた。凄まじい衝撃波が周囲の地割れを広げる。
ミラは、そのあまりの光景に絶句していた。魔法の余波だけで、大気が、地面が、魔物の咆哮さえもが「闇」に喰われていく。
「竜を殺す魔法……
飛竜は空中で態勢を立て直そうとするが、俺は既にその頭上にいた。闇の翼で重力を凌駕し、右手に「滅竜の魔力」を一点に凝縮させる。
「悪いが、俺にとってはこれも、ただの『リクエストボードの一枚』なんだ、闇竜の咆哮!!」
解き放たれた漆黒の衝撃が、螺旋を描きながら飛竜を飲み込んだ。竜のラクリマさえもが耐えきれずに砕け散り、伝説級の魔物は一矢報いることも許されず、断崖の底へと沈んでいく。
静寂が戻った荒野で、俺は静かに着地した。背中の翼を消し、振り返ると、そこには腰を抜かしたまま、未知の怪物を見るような、それでいて深い敬畏を湛えた瞳で俺を見つめるミラの姿があった。
「……ミラジェーンさん、怪我はないですか?」
物語が始まる1年前。最強を自負するギルドの看板娘の心に、俺という存在が深く、消えない「闇」を刻みつけた瞬間だった。
私は、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
目の前で繰り広げられているのは、「魔導士の戦闘」なんて生易しい言葉で片付けられるものではなかった。圧倒的な魔力と膂力による殲滅。
山のような巨躯を誇る、竜のラクリマを宿した飛竜。
それに対し、一歩も引かずに立ち向かう彼の背中から溢れ出すのは、太陽の光さえも拒絶するような、深淵よりも深い「闇」の力。
(……すごい……!)
私の中で彼への恐怖などとうに消えていた。胸を支配していたのは、震えるほどの高揚感。彼が拳を振るうたびに大気が震え、闇が爆ぜる。闇のコロナのような煌めきだった。
その一撃一撃が、あまりに絶対的で、あまりに美しい。自分が抱える「魔人」の魂が、本能的な渇望とともに叫んでいた。
これこそが真の力。これこそが、世界を平伏させる圧倒的な「王」の輝きなのだと。
同時にこうも思う。
(私と同じ、あるいはもっと過酷な闇を抱えて……どうして、そんなに凛々しく、強くあれるの?)
彼が放った「闇竜の怒号」が空を割った瞬間、私は瞬きすることさえ忘れていた。漆黒の螺旋が世界を呑み込み、絶望の象徴だった飛竜を塵へと変えていく。その圧倒的な破壊の光景に、不謹慎にも、心が洗われるような感動を覚えていた。
「……ミラジェーンさん、怪我はないですか?」
静寂が戻った荒野で、彼は何事もなかったかのように振り返る。あんなにも凶暴な力を振るった直後だというのに、その瞳は驚くほど穏やかで。
(ああ、だめ……心臓が、うるさい……)
駆け寄らなきゃいけないのに、腰の震えが止まらない。それは恐怖ではなく、あまりに強大で純粋な「力」に触れたことによる、魂の歓喜だった。
「……信じられない。あなた、本当に何者なの……?」
上擦った声で、ようやくそれだけを口にした。リサーナを失い、心を閉ざして、ただ「看板娘」として日々をやり過ごそうとしていた私の世界が、この一瞬で完膚なきまでに叩き壊されたのだ。
目の前に立つ、漆黒の翼を背負った「王」。彼となら、この止まってしまった自分の時間さえも、無理やり動かしてくれるかもしれない。そんな根拠のない期待と、熱を帯びた高揚感が、胸の奥でいつまでも熱く脈打っていた。
クエストが終わった。文句無しの無事達成だった。村で報酬の金と追加報酬を受け取り、ギルドへと戻る。マグノリアの街に着いた。
ギルドへの帰り道、隣を歩くミラの様子がどうにもおかかった。飛竜討伐前までの勝ち気な態度はどこへやら、俺が視線を向けるたびに、彼女は弾かれたように顔を伏せる。
かと思えば、盗み見るようなその瞳には、隠しきれないほどの尊敬と熱い羨望の色が混じっている気がした。落ち着かない…。
「あの、ミラジェーンさん」
「な、何かしら」
懐から報酬金の袋を取り出す。
「これ、今回の報酬です。無理についてきてもらった形になりましたし、半分受け取ってください」
お礼の意味を込めて報酬の袋を差し出した。しかし彼女はそれを見るなり慌てて両手を振って拒絶した。
「い、いいえ! 私は何もしてないもの。ただあなたの……その、圧倒的な戦いを見ていただけだわ。そんなの受け取れない」
「でも……」
「ダメよ、これはあなたの実力で手に入れたものなんだから、欲しかったんでしょう、ちゃんと受け取りなさい」
どうにも彼女は頑なだった。う〜んどうしたんだろう。やはり闇属性の魔道士はあまり好きじゃないのかもしれない。彼女自身が自分の悪魔の力を嫌悪していることを俺は原作を通して知っていた。
俺なんかのお礼は受け取れないと言ったところだろうか。
もしもこれがさっきの戦闘を見て彼女の中で俺の「格」が跳ね上がってしまったとかだったら良かったんだけどな。無いな…。
しかし、不思議なのはミラから感じる視線に憎悪は無かった。何と言うか対等な仲間というより、何か尊いものを見るような目で見られてる気がするのは気のせいだろうか。そんな目で見られては、こちらが恐縮してしまう。
取り敢えず金は駄目か…、ならば…
「……分かりました。じゃあ、これは受け取ってもらえますか?」
俺は苦肉の策として、討伐したワイバーンとは別に、道中で狩っておいた現地の獣の肉を差し出した。魔力の影響を受けた高地の獣肉で、市場には出回らない一級品だ。
「これ、追加報酬みたいなもので、肉質もいいんです。ギルドの皆で食べてください。……もちろん、ミラジェーンさんの分も」
「えっ……お肉? ……ふふ、あなたって本当に不思議な人ね」
肉の塊が入った袋を抱えた彼女が、ようやくいつものような、けれど少しだけ熱を帯びた微笑みを浮かべた。
「ありがとう。……看板娘の私の特製料理、楽しみにしてなさい。特別に腕によりをかけてあげるから」
そう言って歩き出す彼女の足取りは、心なしか軽やかだった気がする。マルドギール級の魔力を恐れるどころか、それを受け入れ、さらには「料理で返す」と言ってのける彼女の懐の深さに俺は温かみを感じた。
(やっぱり、このギルドに来てよかった……)
沈みゆく夕日の中、俺たちはマグノリア街の道路を並んで歩いた。
戦闘描写が短くてすみません。
上手く描けなくて…
あくまでこれはスタート。
ミラジェーンの話はここからが本番です。
メインヒロイン誰が良い?
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ミラジェーン
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エルザ
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ルーシィ