美女の多い世界に転生した 作:インフェルノ
緋色の姉ちゃん登場
夕暮れ時、静まり返っていたギルド『妖精の尻尾』の扉を俺は開いた。ミラの手にある、ボロボロになった依頼達成の印鑑のあるS級の依頼書と、見たこともない上質な獣肉の塊を見てギルドメンバーは驚いた。
ミラが告げた「クエスト達成」の一報に、ギルド内には最初、乾いた笑いと静かな困惑が広がった。「おいおい、冗談だろ? あの飛竜を新人と2人で?」「いくらミラがついてると言っても、S級をその日のうちに片付けるなんて……」と半信半疑、あるいは「見栄を張っている」とさえ思っていたメンバー達。
しかし、ミラジェーンが語り始めた「真実」が、その場の空気を一変させる。
彼女は語ってくれた。それも誇張すぎる表現で皆に伝えた。
魔導士の常識を遥かに超越した闇の奔流。山を砕く飛竜を一撃で粉砕した、人知を超えた滅竜魔法の威力。そして、その強大な「闇」を完璧に制御した魔道士、すなわち俺の勇姿を。
うん、だいぶ盛られてるけどな。
話を戻すとミラの言葉に熱がこもるにつれ、茶化していた者たちの顔から余裕が消えていった。彼女がこれほどまでに誰かを称賛し、尊敬の念を隠そうともしない姿を、彼らは見たことがなかったみたいだ。
やがて話が終わる頃、ギルドを支配していたのは、もはや疑念ではなく圧倒的な「戦慄」と「羨望」だった。「マジかよ……本当にやりやがったのか。化物じみた新人が……」ナツもグレイも、そして酒を飲んでいた大人たちも、誰もが言葉を失い俺を凝視する。
何と言うか単なる新入りへの興味ではない気がした。自分たちの想像を絶する「本物の強者」だけが受ける、畏怖の混じった、凄まじい熱量を持った視線って感じに思えた俺は思い上がっていると思うが強ち間違いでもない気がしてしまう。
その日の夜、ギルド『妖精の尻尾』は、俺達が持ち帰った「戦利品」による盛大な肉料理パーティーの会場と化した。厨房に立つミラが腕によりをかけた料理が次々と運ばれ、芳醇な肉の香りが広がる中、ギルド中が祝祭の熱狂に包まれる。
しかし、その中心に座る男に向けられるのは、単なる歓迎の意だけではなかった。
「おい、待てコラ! 飯の前に俺と勝負しろぉ!」
轟音と共に、原作主人公であるナツ・ドラグニルが拳に炎を纏わせて突っ込んでくる。
目の前の新人が「自分と同じ滅竜魔導士」であり、しかも底知れない魔力を持っていると聞いたナツが、黙って食卓を囲めるはずもなかった。
勝負するのは構わないが、今は肉が焦げるからやめて欲しい。
ナツの攻撃をあしらってるともう一人来た。
「テメェ……姉ちゃんを危険な目に遭わせやがって! 漢なら、姉ちゃんの迷惑を万死に値すると知れ! 殺すぞ!」
ナツの次はミラの弟であるエルフマンだった。家族を大切にする彼にとって掟破りのS級クエストに姉を連れて行った俺は許せないのだろう。
その背後で、当のミラジェーンが「あらあら」と困ったように、けれどどこか嬉しそうに微笑みながら追加の皿を運んでくる。
「エルフマン、ダメよ。彼は素敵な新人なんだから」
彼女のその言葉が、火に油を注ぐ。憧れの看板娘から僅かな信頼を勝ち取り、若き問題児たちの洗礼を受け、時には喧嘩に巻き込まれる。あまりに騒がしく、あまりに温かい——。
翌日。
俺は絶賛怒られ中だった。
ギルドに来て事の顛末を聞かされたマスター・マカロフと、依頼から帰還した「妖精女王」エルザ・スカーレット。
マカロフは当初、新人である俺がS級依頼を片付けたと聞き、「とんでもない逸材が来た」と目を見開いていた。
しかし、掟を無視した強行を知ると、巨大化した拳で俺の脳天を一撃。「次は手続きを通せ」と、彼なりの厳格さと寛大さで不問に付す構えを見せた。
だが、真の嵐はそこからだった。
「
ギルドの規律を何より重んじるエルザの逆鱗に触れたのだ。「マルドギール級の魔圧」も、エルザの放つ「正論の重圧」の前には形を潜める。俺は、今やギルドの床に律儀に正座させられ、彼女の説教という名の猛攻を一身に浴びていた。
「実力があるからといって、秩序を乱していい理由にはならん! 貴様は自分の命だけでなく、同行したミラの身も危険に晒したのだぞ!」
仁王立ちで説教を続けるエルザの背後では、ナツとグレイが腹を抱えて転げ回っている。
「ぎゃははは! あの強え新人がエルザに詰められてやんの!」
「ざまぁねえな! 正座だってよ、正座!」
昨日、圧倒的な魔圧で自分たちを黙らせた新人が、一人の少女に叱られて縮こまっている姿は、彼らにとって最高に愉快な見世物だった。しかしエルザに「煩いぞ」と睨まれると途端に縮こまった。
その様子をカウンター越しに見ていたミラジェーンは、少し申し訳なさそうに、けれど昨日よりもずっと親密な色を湛えた瞳で、クスクスと楽しげに笑い声を漏らしていた。
嵐のような説教が一段落し、ギルド内の緊張感がわずかに緩んだ。
解放された俺はS級の依頼を受けられないとなると腕が鈍ると悩んだ。どうしたものかと考えていたが…
「……まあ、確かに今は仕事が薄い時期だ。血気盛んなお前の実力を考えれば、掲示板の一階部分では物足りぬという気持ちも、分からんでもない」
腕を組み、厳格な面持ちのままエルザが言葉を継ぐ。
「掟は掟だ。だが、魔導士がより高みを目指そうとする志までを否定するつもりはない。……どうしてもS級の依頼に挑みたいというのなら、この私が連れて行ってやろう。私の同行があれば、マスターも文句は仰らんだろうからな」
その瞬間、俺は立ち上がった。腕を鈍らせない為の滅多に無いチャンスだ。
この際「冥府の王」の魔力も、転生者としてのプライドも捨てた。憧れの「妖精女王」からS級クエストへの直々の誘いという最高のご褒美を前にしては、何の意味も持たない。
「……っ…お願いします、 俺を連れて行ってください」
俺は腰が折れる勢いでお辞儀した。あまりに速く、あまりに深いその躊躇いのない礼に、流石のエルザもビクッと肩を跳ねさせた。
「そ、そうか……そこまで畏まらなくてもよい。顔を上げろ」
呆れ果てたような、けれどどこか面食らった様子のエルザ。しかし、彼女の口元には、自分の想像を超える熱意を見せた新人に対する、小さくも爽やかな笑みが浮かんでいた。
「ふっ……。いいだろう、いい心掛けだ。その意気込みに免じて、私の次の遠征に同行させてやる。準備を怠るなよ」
「はいっ、 必ずついていきます」
俺の全力の返事。それまで爆笑していたナツやグレイも、流石にその「潔すぎるお辞儀」には引き気味になり、ギルド内には妙な活気と苦笑いが広がっていった。
カウンターの奥で、その光景を見守っていたミラジェーンは、昨日自分が見た「圧倒的な俺の姿」と、今目の前で全力で礼をしている「一人の青年」のギャップに、耐えきれずお腹を抱えて笑っていた。
ギルドの片隅で、そんな俺の様子を眺めていたロキが、呆れたように肩をすくめて近づいてきた。
「……君、本気かい? エルザとの仕事なんて、軍隊の合宿に行くようなものだよ。地獄を見る前にやめておいた方が身のためだ」
女たらしで鳴らす彼にしては珍しく、本気で同情するような忠告。
しかし、俺の決意は微塵も揺るぐわけがない。憧れの「妖精女王」と肩を並べて戦える機会を、逃すはずがなかった。「何が何でも一緒に行く」と返答すると、ロキは思わず数歩後退り、引きつった笑いを浮かべた。
「……君、もしかして……ものすごいドMなの?」
向けられたのは、もはや「変なもの」を見るような、完膚なきまでのドン引きの視線。失礼な奴め。
「……滅相もない。俺はただ、エルザさんに頼れるところを見せて、彼女に一人前の魔導士として認められたいだけだ」
俺は至って真面目な顔で、ロキの目を真っ直ぐに見据えて言い放った。
当然、ロキの眼に映る俺の瞳には一点の曇りもなく、むしろマルドギール級の魔力を宿しているからこその、絶対的な自負と純粋な憧憬が同居している。「自分なら…あの「妖精女王」の隣に立っても足手まといにならず、彼女の負担を分かち合えるはずだ」と伝えた。
俺のあまりに迷いのない、そしてあまりに重すぎるその熱量に、ロキは一瞬言葉を失った。
「……あはは。君、本当にすごい自信だね」
ロキは引きつった笑みを浮かべ、片手を上げた。「……こいつ、ある意味ナツやラクサスより手に負えないかもしれないな」そんな呟きが聞こえたが、「せいぜい頑張って」とだけ残して、彼は嵐の予感から逃れるようにそそくさと自分の席へ戻っていった。
一人残された俺は、周囲の冷ややかな視線などどこ吹く風で、遠征に備えて武具を点検し始めたエルザの背中を見つめ、高鳴る鼓動を抑えきれずにいた。
はい、エルザ・スカーレット登場です。やっと物語がスタートした感じがします。
メインヒロイン誰が良い?
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ミラジェーン
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エルザ
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ルーシィ