美女の多い世界に転生した   作:インフェルノ

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エルザとのクエストです。





海竜との戦い

 

ギルドの仕事は順調だった。エルザに連れて行って貰ったS級クエストを連続で達成したのだ。

 

依頼先の秘境。立ち並ぶ巨岩が、俺の放った闇の魔力によって粉々に砕け散り、砂塵が舞う。そこには、いくつもの頭を持ち、竜の鱗と獅子の爪を兼ね備えた伝説級の魔獣「巨大キマイラ」が、一矢報いることもできずに沈んでいた。

 

 

「ふぅ……。これで今回の依頼も終わりですね、エルザさん」

 

 

男が闇の翼を収め、乱れた髪をかき上げながら振り返る。その足元には、この短期間で四つ目となるS級依頼の討伐対象が転がっていた。

 

 

「……見事だグリア。私は正直、言葉を失った」

 

 

それまで険しい表情で見守っていたエルザが、感嘆の吐息とともに剣を収めた。彼女の瞳には、もはや「教育すべき新人」への視線ではなく、一人の比類なき魔導士への純粋な敬意が宿っている。

 

 

「本当に凄いな……。これほど高レベルのS級クエストを、殆ど一人で4つも連続で達成してしまうとは。私の立つ瀬が無いな。ミラが言っていたのは、誇張でも何でもなかったのだな。本気で驚いた」

 

 

そう言って、エルザは俺の肩に力強く手を置いた。鎧の冷たさが伝わるが、そこから伝わる彼女の信頼は熱い。

 

 

「貴様ほどの男を、私は新入りだからと型に嵌めようとしすぎていたようだ。ギルドに入った時の発言を撤回する気は無いが、お前は既に、このギルド……いや、フィオーレでも指折りの魔導士だ」

 

 

憧れの女王から贈られた、最大級の賛辞。「彼女に認められたい」という一心で、マルドギール級の魔力を精密に制御し、エルザに指一本触れさせぬよう完璧に露払いをしてのけた成果だった。

 

俺の心は、勝利の余韻よりも、彼女のその真っ直ぐな言葉に満たされていく。

 

 

「……勿体ないお言葉です。エルザさんにそう言っていただけるなら、頑張った甲斐がありました」

 

「ふっ…、さあ、帰るぞ。ミラ達がお前の帰還を待ちわびているはずだ」

 

 

夕闇に染まった帰り道。並んで歩くエルザの横顔は、S級クエスト出発前よりもずっと柔らかく、俺を「対等な戦友」として受け入れているようだった。

 

 

 

 

 

 

妖精の尻尾の名もない新人の青年、すなわち俺を連れたエルザが4連続で超難関クエストを含めたS級依頼を完遂したという噂は、瞬く間に魔法界を駆け巡った。

 

「妖精女王」の威光はさらに増し、それと同時に、彼女が認めた俺への期待も最高潮に達していた。

 

 

そんな折、評議会を通じて緊急の依頼が舞い込む。

 

「荒海竜シーサーペント」の討伐。

 

近海を荒らし、物流を止めているその魔獣は、海という絶対的な有利なフィールドも相まって、並のS級魔導士では返り討ちに遭うと言われる難敵だった。

 

 

「行くぞ。奴を放置すれば、マグノリアへの流通も滞る」

 

 

エルザの号令で、俺達は港へと向かった。港に到着すると、エルザは手際よく小型の魔導四輪付きの高速艇を手配する。

 

エルザに乗るように言われたが乗り物酔いがネックな俺は断り、背中から翼を生やして飛行する。

 

エルザが操縦する高速艇が白い飛沫を上げて海を切り裂き、その真上を、闇を纏った俺が弾丸のような速度で並走する。眼下に広がるのは、荒れ狂う群青の海。 

 

 

 

 

荒海に達した瞬間、世界の色が塗り替えられた。

 

頭上を覆うのは、光を拒絶するような重苦しい暗雲。時折走る雷鳴が、不気味に濁りきった海面を白く焼き付ける。

 

その海は、まるでシーサーペントの魔力が溶け出しているかのように、粘り気のある暗色に淀んでいた。

 

 

「どこにいるんだ…」

 

「……集中しろ、いつ来るか分からない」

 

 

波を蹴立てる船の上で、エルザが剣を構え、鋭い視線を周囲に走らせる。

 

そんな中、俺はふと不気味な匂いを感じ取った。肉食の強烈な捕食者の匂いだった。

 

水平線を見ているエルザ。俺はそんな彼女を見て気づいた。

 

エルザの乗ってる船の真下がやたら黒い事に。「敵」は水平線からではなく、彼女の真下から現れた。濁った海水の奥で、巨大な黒い影が爆発的に膨れ上がる。

 

 

「危ないッ!!」

 

 

思考より先に体が動いた。空中にいた俺は、闇の翼を最大までしならせて急降下し、甲板に立つエルザの腰を強引に抱きかかえた。その場から即離脱する。

 

 

ドォォォォォォンッ!!

 

 

直後、海面が爆発した。荒れ狂う水柱と共に、エルザが乗っていた船が木の葉のように空中に跳ね上げられ、巨大な顎(あぎど)によって一噛みで粉砕される。

 

 

「……っ、すまない! 助かった!」

 

 

俺の腕の中で、エルザが低く唸る。その視線の先——飛沫が舞い散る海中から、ぬらぬらと黒光りする鱗に覆われた、山のような頭部が姿を現した。

 

 

『グルゥァァァァァァッ!!』

 

 

咆哮一閃。大気を震わせる振動波が、抱きかかえるエルザの体温を忘れさせるほどの緊張感を運んでくる。

 

荒れ狂う海の上、足場を失った俺たちは、空中でこの「海の王」と対峙することになった。

 

 

「『換装——天鱗の鎧』!よし、もう大丈夫だ、離してくれ!!」

 

 

腕の中でエルザが叫ぶと同時に、眩い光が弾けた。白銀の翼を持つ鎧へと姿を変えた彼女が空へと舞い上がり、俺と並んで嵐の空に静止する。

 

 

「行くぞ!」

 

「はい、先ずは俺が!」

 

 

海中から再び鎌首をもたげ、巨体をくねらせて突撃してくるシーサーペント。俺は右手にどす黒い闇を凝縮し、真正面からその脳天へと叩きつけた。

 

 

ズドォォォォォンッ!!

 

 

闇の魔力が着弾と同時に連鎖爆発を起こし、海竜の巨体を強引にのけ反らせる。

 

絶好の隙。

 

俺はさらに深く、体内の「冥府の王」の残滓と滅竜の魔力を、天へと突き上げた左手に集束させた。

 

 

「沈め! 『闇竜の天罰(ヘル・ジャッジメント)!!」

 

 

刹那、暗雲を裂いて、見たこともないほど極太の紫黒の雷が真っ逆さまに降り注いだ。

 

 

ドガァァァァァァァァッ!!

 

 

それはもはや「魔法」というより、神の怒りに近い暴力的な光景だった。雷撃が海竜を直撃した瞬間、その肉体を焼き焦がすだけにとどまらず、衝撃波が周囲の海水を文字通り「吹き飛ばした」。

 

一瞬だけ現れた、海水の壁に囲まれた巨大なクレーター。その中心で、なす術もなく断末魔を上げる海竜。

 

 

「……なっ……!? 海を、これほどの範囲にわたって……」

 

 

隣で「天鱗の鎧」の翼を羽ばたかせていたエルザが、戦慄と共に言葉を失っていた。彼女の知る「雷」とも違う、冷徹なまでの破壊。海そのものを押し退け、深淵を暴き出すような圧倒的な「闇の天罰」。

 

 

「っ…、とどめを刺す!!」

 

 

エルザが剣で切り裂こうと海竜に迫る。しかし海竜は身体を反転させた。その背中を剣が切り裂く。

 

 

パキィッ

 

 

しかし剣が破壊された。海竜の背中の鱗は非常に硬く。刃が通らなかった。闇竜の天罰を耐え抜いた海竜の鱗は、極限まで硬化していた。

 

 

「……何っ!?」

 

驚愕に目を見開いたエルザの胴体に、しなる鞭のような巨尾が直撃した。鎧がひしゃげる凄まじい音と共に、エルザが弾丸のような速度で海面へと叩きつけられる。

 

 

「エルザさん!!」

 

 

しかしエルザは海中に引きずり込まれた。海竜は怒りに狂い、深手を負いながらもさらに追撃を仕掛けた。濁った海中へと沈んでいくエルザを、逃がさぬと言わんばかりにその巨大な顎が追い、海の底深くへと彼女を追い落とそうとする。

 

 

(……ふざけるな、俺の目の前で……!!)

 

 

俺の内の「マルドギール級」の魔力が、激昂と共に沸騰した。海中? 乗り物酔い? そんなものは、彼女を傷つけられた怒りでとうに吹き飛んでいた。俺は闇の翼を逆噴射させ、ミサイルのような速度で海へと突っ込んだ。

 

海竜に追いついた。

 

 

「離せッ!! 闇竜の爆炎(ヘル・ブレイズ)!!」

 

 

海中で解き放たれたのは、熱量を伴った漆黒の焔。水中で燃え上がるはずのないその魔力は、触れた海水を一瞬で沸騰・蒸発させ、爆発的な水蒸気爆発を引き起こした。

 

 

ドォォォォォォンッ!!

 

 

海面が数十メートルも突き上がり、噴水のように海水が空へ向かって噴き出す。その爆炎と衝撃波に、海竜が悲鳴を上げて吹き飛ばされた。

 

俺はその隙を突き、意識が遠のきかけているエルザの腰を力強く抱き寄せ、海面を突き破って空へと舞い戻った。

 

 

「げほっ……はぁ、はぁ……すまない、助かった……」

 

 

腕の中で荒い息を吐くエルザ。その鎧はボロボロで、絶対的な強者である彼女が、今にも折れそうなほど脆く見えた。

 

 

「……無理はしないでください。後は俺が――」

 

「いや……待て……!」

 

 

エルザが血の混じった唾を吐き捨て、前方を見据える。

 

爆炎の中、蒸発した水蒸気を切り裂いて、再びあの巨大な頭部が現れた。

 

鱗の大部分を焼き焦がされ、肉を焼く嫌な臭いを撒き散らしながらも、シーサーペントの瞳はまだ、紅く、昏く、獲物を求めて爛々と輝いている。

 

 

(これだけの攻撃を耐えきるのか……流石は古代の海竜)

 

 

絶望的な耐久力。そして、俺の魔力に当てられ、逆に野生の獰猛さを極限まで引き出された怪物。

 

 

どうしたらこの化け物を倒せたものかと考えていた。エルザを抱えたままだと正面から魔力で強行に倒すしかないか?

 

何か方法はないのかと思ってたが、エルザが俺の腕の中で動く。

 

 

「……腹部だ。あそこだけ、鱗が薄く柔らかい」

 

 

俺の腕の中で、エルザが苦しげに、しかし鋭く弱点を見抜いた。

 

 

「俺が奴の気を引きます。その隙に、腹部を斬れますか?」

 

「くっ……そうしたいところだ。だが、奴の魔圧が凄まじすぎる。今の私の魔力では、懐に入る前に弾き飛ばされるのが関の山だ……」

 

 

悔しげに唇を噛む彼女。こんな事もあるのか。珍しいなと思いながらも彼女の背中に俺は手を当てた。

 

 

「でしたら——俺の魔力を持っていってください」

 

 

俺は自身の内に渦巻く「冥府の王」の残滓、そして闇の滅竜魔法の根源を、接触した彼女の肌から一気に流し込んだ。

 

 

ドクンッ!!

 

 

「なっ……これは……!?」

 

 

エルザの体が大きくのけ反る。彼女の清廉な魔力が、俺の「深淵の闇」と混じり合い、猛烈な勢いで増幅されていく。ボロボロだった鎧が闇の波動で修復され、彼女の瞳には紅い光と黒い稲妻が走り始めた。

 

 

「馬鹿な…、グリア、これほど膨大な魔力を隠し持ってたのか…」

 

 

それは「復活」などという生易しいものではない。限界を超えた、圧倒的な魔力ブースト。

 

 

『グルルルルッ!!』

 

 

だが、海竜もまた、決着を悟った。周囲の海水を渦巻くように吸い込み、その喉元が破裂せんばかりに膨れ上がる。

 

 

『グルァァァァァァッ!!』

 

 

放たれたのは、全てを削り取る超高圧の水流ブレス。

 

 

「させるかよッ!! 闇竜の爆炎(ヘル・ブレイズ)——最大出力!!」

 

 

俺はエルザを背に庇い、右手に全ての魔力を込めて「爆炎」を撃ち出した。漆黒の業火と濁流の激突。蒸発する海水の白煙が視界を遮る中、俺は背中の彼女に向かって叫んだ。

 

 

「——今だッ、エルザさん!!」

 

 

極限の均衡を破ったのは、闇の魔力を身に纏い、文字通り「黒き閃光」と化した女王だった。

 

 

「——おおおぉぉぉッ!!」

 

 

俺の背後から飛び出したエルザが、弾丸のような速度で空を切り裂く。

 

前方では、俺の放った「闇竜の爆炎」と海竜の「高圧ブレス」が真っ向から衝突し、蒸発した海水が白煙となって視界を遮っていた。

 

だが、俺が流し込んだ膨大な魔力によって感覚が研ぎ澄まされた彼女には、その霧の向こうにある「真実」がはっきりと見えていた。

 

海竜の注意が俺との押し合いに向けられた、その刹那。エルザは闇の魔力で赤黒く変色し、禍々しい波動を放つ巨大な大剣を振り上げた。

 

俺のブーストを全乗せした、まさに一撃必殺の態勢。

 

 

「——断ち切れ!!」

 

 

空を震わせる轟音と共に、彼女の全身全霊が海竜の無防備な腹部へと叩きつけられた。

 

 

ズガァァァァァァァァァッ!!

 

 

闇の衝撃波が海竜の巨体を貫き、一瞬の静寂の後、断崖を崩すような絶叫が荒海に響き渡る。

 

俺の魔力を全て使い切ったその一太刀は、海竜の強靭な筋肉も、竜のラクリマの加護さえも紙細工のように切り裂いた。海面が鮮血で真っ赤に染まる。

 

真っ二つに割れた海竜の巨躯が、左右に分かれて波間へと沈んでいく。

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

闇のオーラを霧散させ、元の鎧へと戻ったエルザが、海風に吹かれながら空中で静止していた。

 

その手には、折れることなくその使命を全うした剣が握られている。

 

ふらりと倒れる彼女を俺は抱きかかえた。

 

嵐の空がわずかに晴れ、雲の間から差し込んだ月光が、勝利を掴み取った彼女と、彼女を抱えて立つ最強の新人である俺の姿を静かに照らし出していた。

 

 






と言うわけで2人で依頼を達成しました。


メインヒロイン誰が良い?

  • ミラジェーン
  • エルザ
  • ルーシィ
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