獅子の名を持つ相方の軌跡   作:厄介な猫さん

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大体の語り口

《Sword art Online》。通称《SAO》。

 

2022年に発売された世界初のVRMMORPG―――専用のハードギアを用いてプレイする革新的な次世代型のオンラインゲームであり、同時に歴史的な大事件の発端となったゲームでもある。

MMORPG自体は他にも多数あるが、《SAO》の最大の特徴はVR―――文字通り、自分自身がゲームキャラとなって遊ぶことができる事だろう。従来の据え置きハードやPCと違い、同時期に発売された《ナーヴギア》というヘルメット型のハードギアを用いることで臨場感溢れるゲームを体験する事ができる……というのが当時の売りだった。

 

その《ナーヴギア》は高性能の塊。現実とは違う“もう一つの世界”―――仮想世界へと本当に転移したかのような感覚をプレイヤーにもたらし、事前の運用テストであるβ版から既に大賑わいだった。抽選に落ちて落胆した奴もいたくらいだから当然だけど。

 

その興奮の初日が、大混乱の極みに叩き落とされるだなんて予想できるわけがないよな。《SAO》()()の仕様―――ログアウト不可とHPが全損すれば《ナーヴギア》によるレンチン攻撃によるガチな死亡の二つで、ラノベやマンガの題材になる命懸けのデスゲームへと拒否権無しの強制参加をさせられたからもう大変。デマと判断して自決したプレイヤーが出たり、デリバリーが台無しになったと嘆いたプレイヤーが出たり、どうすればいいか分からず喚き散らすプレイヤーが出たりと大混乱の極みだったし。次世代のゲームを楽しむつもりでログインしたら、精神をゴリゴリ削る激ヤバゲームへの片道だったから、そうなってしまうのも当然だけど。

 

そんな極限状態だから、自分の命を優先してしまうのも当然の流れになるんだよな。今だから落ち着いて考えられるけど、いきなり死と隣り合わせになったら平静でいられないし。だから当時のβテスター達を恨む気はない……というか、がっつり助けられた側だしな。足手まといの可能性もあったのに、出来る範囲で手を差し伸べてくれたし。

 

そのプレイヤー……後に【黒の剣士】と呼ばれる事になる一人のプレイヤーの大活躍によって、本来の100層ではなく途中階層である75層でクリアされたしな。その後に起きたALO事件でも、SAOクリアの立役者に違わぬ活躍を見せたし。例えば―――

 

「待て待て待て!何で、俺一人だけで解決したかのように語っているんだよ!?」

 

隣にいる桐ヶ谷和人―――【黒の剣士】キリトが泡を食ったかのように待ったを掛けてきた。えー、此処からがからかゲフンゲフン、面白いところだってのに。

 

「何一つ間違った事は言ってないだろ。SAOでは茅場……ヒースクリフとタイマンで戦い、相討ちで勝ちを拾ったんだし」

「確かにそうだけど!つか、お前だってSAOのクリアに貢献しただろ!その前哨のボス戦で、命懸けで前衛張っただろ!」

「その後、情けなく床に転がってたけどな」

 

75層のボス戦で結構無理したからなー。凄く個人的なスキル《ゾーン》で神回避連発したり、システム外スキルの《スキルリンク》でソードスキルを連続で叩き込んだり。ボス戦が終わった後はその反動で頭がガンガン痛んで、麻痺くらう前から満足に動けなくなっていたし。

 

「後、アイツの言葉からしてユニークスキル持ちは《二刀流》以外、死ぬ想定みたいだったし。それを考えれば和人様々だな」

 

これに関しては本当に和人―――キリトに感謝だな。茅場の言葉……ユニークスキル《抜刀術》を所持するプレイヤーは、《二刀流》の活路を命を代価として切り開く役割だったみたいだし。しかも“カタナスキルを持つプレイヤーの中で、最も集中力が高い者”が取得条件だったようだし。その事実に皮肉で返したら、評価を改める云々で返されたけどな。

茅場の《神聖剣》?あれはラスボス限定だからノーカンだ。ノーカン。

 

「そもそも、オレは金魚の糞か小判鮫だぞ。もしくは【ハイエナ】」

 

キリトが【ビーター】と忌み嫌われていた時も共に行動していたからな。その頻度は彼女より上。【ビーター】に寄生して美味しいとこ取りする卑怯者……侮蔑心たっぷりで【ハイエナ】と呼ばれるようになったんだよな。

それで付き合いを止める事はなかったけど。世話になった恩を仇で返したくなかったし、ダチを見捨てる真似なんて論外だしな。一時期、離れざるを得なかったけど。

 

「話を戻すか。和人がヒースクリフが茅場晶彦だと見抜いたから、クリアへの近道切符を手に入れられたんだよ。その近道切符を掴み取り、SAOがクリアされて万事解決……とは行かず、ALO事件に繋がってしまったけど」

「ああ。ALOの前責任者……須郷の暗躍でアスナを始めとした数百名のプレイヤーがALOに囚われたからな」

 

その須郷は管理者の立場をがっつり悪用して、本当に好き放題していたからな。世界樹の《グランドクエスト》は絶対にクリアできないように設計した上、ゴールも管理者側じゃないと開かない仕様だったし。今は非人道な実験を始めとした悪事が全部露見して、ブタ箱行きとなったけど。

 

「ALOも和人が結城の手掛かりを求めて、オレもそれに付き合った形だし。もし結城さんが巻き込まれていなかったら、ここまで踏み込みはしなかっただろうな」

「……そうだな。もしアスナが巻き込まれていなかったら、俺も積極的に動いていなかったと思う」

 

だよな。事実、この店で再会したキリトから現状を聞いて、ALOへのダイブを決めたし。ナーヴギアでリンクしたせいで、ウンディーネの町じゃなくて外のフィールドに放り出されたし。

その意味じゃ、キリトの妹の直葉ちゃんとオレの実妹の七海には感謝だな。一度、兄妹喧嘩に発展したけど。

 

「それよりレーヴェ。お前、週一で別のゲームをしているだろ?そんなに面白いのか?」

 

話を露骨に変えてきたな。ちなみにレーヴェはSAO並びにALOにおけるオレの略称のプレイヤーネームだ。本名が獅童優也だから、苗字の獅からの着想でレオンハルトにした。ネット検索で外国の言葉はすぐに調べられるしな。最初からレーヴェにしなかったのは、レオンハルトの方がカッコよかったからだ。結局、呼びにくいってことで略称で呼ばれてるけど。

一応、キリトの質問には答えるか。返答に困る質問でもないし。

 

「うーん……面白いからじゃなく、お金が得られるから手を出したんだよな。接続費用も取られるけど。後、プレイヤーネームで呼ぶな」

「金って……一体何に使っているんだよ?それに、ここはエギルの店だから大丈夫だ」

 

何が大丈夫だ、何が。まあ、オレ達以外に客はいないし弁えているなら別にいいけど。

 

「趣味。今はロボットアームを作ってて、それに必要なモーターやネジ、配線にセンサー類が本当に高くて……」

 

それに作りは工場とかに使われる作業用じゃなくて、人間の手そっくりだからなー。カクカクじゃなくてしなやかな動きにしたいし、サイズも女性の掌くらいに抑えたいしな。

つまり、材料費がバカにならない。惜しむと粗悪になりそうだし。

 

「つまり無駄遣いしていると」

「お前が言うな。ゲーム内の無駄遣い筆頭」

 

SAO時代からそうだが、ALOでもキリトはよく分からないレア度の高いアイテムを買う。それでストレージがいっぱいとなり、二束三文で売るまでがお約束だ。後、キリトの彼女である結城―――アスナからの雷もたまに落ちる。それでも懲りずに散財しているけど。

そんなオレの返しに、キリトはムッとした表情で反論する。

 

「ゲーム内だからセーフだ。後、ロボットアームなんか作って何になるんだよ?」

「お前の仮想の娘と、その妹とのリアル握手」

「良し。表に出ろ」

「使い道を言っただけでキレるな。後、ソッチの気はない」

 

普通に危ない絵面だし。オレはノリコンじゃないんだよ。節操なしのお前と違ってな。

後、お前の作っている物にも協力している延長だぞ。それで材料費もかなり掛かっているが。

 

「今、凄く失礼な事を考えていなかったか?」

「気のせいだ」

 

本当に無駄なところで鋭いな。女性関連では鈍感の極み……いや、一筋とも取れるけどさ。現在進行形で付き合っているアスナに、見事に尻に敷かれてるし。

 

「話を戻すか……ゲームでリアルに金を稼げるのか?」

「リアルマネー何とか……だったか?外国が作ったゲームだったからか、ゲーム内の通貨がリアルのお金に変えられるんだよ。レートは百で一円」

 

VRゲームは《ザ・シード》というプログラムで容易に作れるようになったからな。提供者は電脳人間となった茅場晶彦。PCの18禁ゲームの設定にあったものを、現実にしたことにはマジかと呆れたよ。あっちは脳内チップだけど。

 

「仮にゲーム内で十万稼いでも、現実じゃ千円くらいか……週一のログインで本当に稼げるのか?」

 

半信半疑だな。まあ、普通は首を傾げるよな。一応、ちゃんとした理由はあるけど。

 

「そのゲーム、PvPも想定されいるからか倒されると、所持品を落とすんだよ。それに、そこでのオレの装備はパッと見はPvPに圧倒的に不向きだし。それで絶好のカモと勘違いしたプレイヤー達が襲撃を掛けてくるしな」

「……それで返り討ちにしたプレイヤーのアイテムを回収して、速攻で売り払っているのか?」

「大正解」

 

見事に正解を言い当てたキリトに、拍手で称賛を送る。おかげで週一でも十分に稼げてるし、そもそもの出費自体が少ないしな。対するキリトの顔は物凄く微妙そうにしているが。

ま、それも何となく解るけど。オレだって積極的にPKする気はないし、基本はモンスターのドロップアイテムの売却だ。後、ふとした拍子にあの時の記憶も頭に過るし。

 

「ちなみにそのゲームのタイトルは?」

「ガンゲイル・オンライン。通称GGO。銃がメインの廃坑世界でレーザーライフルとレーザーブレードモドキを振り回している」

「レーザーブレード……ロマンを感じる武器だな」

 

正式名称は《フォトン・ソード》という名称の光剣だけどな。あっちでの金属剣はナイフと銃剣くらいで、その光剣はコレクション寄りの武器だし。基本的に剣は銃に勝てないし。

それに、光学兵器は維持費が本当に少なくて済むし。モンスター相手なら光学銃だけで十分に勝てるし。プレイヤーの方は光学銃に対する、防御フィールドを発生させる装備があるから厳しいけど。それも近距離だと無意味になるけどな。

 

「お前ことだから、銃弾を叩き斬っているだろ。超人現象スイッチ付き人間」

「銃弾斬るくらいなら、お前も出来るだろ。反応速度ぶっちぎり人間」

 

事実、キリトならすぐに出来るだろうし。弾道予測線(バレット・ライン)という、事前に銃弾が通過する予測線が表示されるからな。

 

「……なあ、レーヴェ。何か悩みがあるなら相談しろよ?一応、仲間でもあり、友でもあるんだからな」

「急に何言ってんだ?朝食で変な物でも食ったか?もしくは激辛料理を食べ過ぎたのか?」

「茶化すなよ。頃ごろのお前、悩むような素振りが多くなっているだろ。アスナ達も何かあったのかと心配していたし。お前の妹に聞いてもプライベートとしか返さないし」

 

……ああ、あの件での悩みで心配させてしまっていたか。七海も知ってるから、簡単に話せることじゃないしな。

何で休日にアスナとデートじゃなくオレとカフェなのかと疑問だったが……オレを心配してだったんだな。

とは言え、マジで相談しようがないからな。SAOでの出来事とは、無関係だし。でも、少しだけ話しておかないと無駄に心配かけさせるし……当たり障りのない範囲で話すとするか。

 

「七海が言った通り、普通に個人的なことだ。強制疎遠となった、人間関係の問題だ」

 

SAOから生還して、リハビリの合間で生存報告の電話をして以来、見事に拒絶されているからな。じいさんの話じゃ上京しているそうだが、何処にいるかは口止めされているようで言葉を濁してるし。無理に聞き出して関係にヒビを入れたら本末転倒だから、頼めないし。

 

「……なるほど、女か」

「急に会話に入るな、アンドリューさん」

 

オレとキリトと同じSAO生還者(サバイバー)である店主のアンドリューさん――エギルの言葉に、オレは少しイラッとしてしまう。

 

「女であることの否定はしないんだな」

「……否定はしないが、彼女とはそういう関係じゃない」

 

完全に勘違いしているだろ、これ。エギルだけじゃなく、キリトも笑みを浮かべてるし。クラインがいないだけ、まだマシかもしれないが。

……そういう話だったら、ずっと良かったんだけどな。気持ちのハードルが違う意味で重くなるけど。特にクラインとリズベットの絡みが鬱陶しくなる。

 

「……悪い。茶化せる話じゃなかったか」

 

オレの顔を見て、浮わついた話の類でないと察したキリトが素直に謝る。エギルも笑みを引っ込めて真顔に変えている。こういう察しの良さと素直さは、本当にありがたいよ。

 

「そうだよ。複雑な事情もあるからそう話せないけどな。後、敢えて踏み込まなかったのもあるし」

 

月一でウチのじいちゃんばあちゃんの家に遊びに行く折に会う関係だったし。SAOがクリアされるまでは近況報告し合っていた七海とも連絡を断ってるから、本当に心配なんだよ。

 

「まあ、早い話がいらんお節介というやつだ。アイツは優しい奴だから、周りに心配かけまいと一人で抱え込みそうだし……」

「なるほど。確かにお節介だな」

「俺の時と同じか」

 

エギルとキリトは納得して頷いてくれたが、呆れが含まれているのは不本意だ。お節介は二人もやっているのに。

 

「何にせよ、アイツの事が心配なんだよ。アイツのじいさんの話じゃ、元気にやってると聞いちゃいるが……」

 

じいさんの声色からして、自分達に心配かけまいと嘘の報告をしていると察しているんだろうな。進学より就職を選ぼうとしたくらいだし。例の噂からして、じいさん達も強引に踏み込めないだろうし……

出来ることなら、アイツが背負う事になったであろう重荷を多少なりとも軽くしてやりたい。安い同情と罵倒されるかもしれないし、今度こそ拒絶されるかもしれない。でも、今も一人で抱えて苦しんでいるアイツを放っておきたくもない。

 

「あんまり思い詰めない方がいいぞ。思い詰めてストーカーになったら、笑い話にもできないしな」

「嫌なレッテルを貼ろうとするな、ボッタクリ店主」

 

まあ、多少は吐き出せてスッキリはしたけど。解決には程遠いけどな。

 

 


 

 

「……うん。学校ではちゃんとやってる。この前も、友達と一緒に遊びにも行ったし」

『そうか……本当に優也くんに会わなくていいのか?優也くんは―――』

「―――お祖父ちゃん、アイツの話はしないで。じゃあ、電話切るね」

 

私はお祖父ちゃんの言葉を待たずに電話を切る。お祖父ちゃん達にも悪いけど、彼にはもう会いたくない。

だって……優也はあのデスゲームに二年も囚われていた。その上で、生きて帰ってきた。

それだけで優也の強さに……過去すら乗り越えられない私は自分の“弱さ”を嫌でも意識してしまう。生きて帰ってきた嬉しさよりも、その“強さ”に嫉妬してしまった私は本当に最低だ。

だから、強くならないといけない。強くならないと、過去に怯える私の“弱さ”を消さないと、優也と向き合えない。

だから―――今日もあの世界に行って、敵を撃ち抜く。強くなって、あの過去を乗り越えるために。

 

「リンク・スタート」

 

 

 




「後書きコーナー!出演者はオリジナル主人公のオレと、原作のメインカップルのお二人です!」
「雑な紹介だな!……コホン、紹介に与ったキリトです」
「同じくアスナです。……また新たなSAOの二次創作小説が生まれたね」
「ああ。中にはアスナが他の誰かと―――」
「ダメだよキリト君!その話はここでしちゃ駄目!!下手したら炎上ものだよ!!」
「うえっ!?そ、そんなにか!?」
「まあ……そこは人それぞれだな。中には18禁の妄想すら御法度扱いとなるキャラだっているし」
「キャラ言うなよ!?色々とメタが酷くないか!?」
「二次創作だからこんなもんじゃないか?あんまり規制すると楽しみ方も減るしな」
「それはそうだが……それでも最低限の線引きくらいはあるだろ?」
「そうよね。本当に何でもありになると、本来のわたし達にも失礼になるし」
「少なくとも原作のリスペクト精神を忘れなかったら大丈夫だろ。……たぶん」
「だから不安を煽る言い方は止めろ!」
「しょうがないだろ。二次創作はファンの楽しみ方の一つだし、基本は自己満足みたいなもんだろ」
「だからそういう発言は止めろって!あちこちに敵を作るつもりか!?」
「原作でも自ら敵を作っていたから今更じゃねぇか?」
「あれと同じにするなよ!つか、問題のベクトルが違うだろ!」
「……二人とも。いい加減に、しなさい!!」
「「あぎゃあああああああっ!?」」
「……っと、こんな感じで始まったSAOの新たな二次創作『獅子の名を持つ相方の軌跡』。感想を送ってくれたら嬉しいかな?」
「す、少しネタバレすると……アリシゼーション編では、書籍版に逆輸入されたキャラも出てくる、ぜ……」
「そこまで続けば、いいんだけど、な……」
「では機会があればまたお会いしましょう」
「「「バイバーイ(!)……」」」

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