獅子の名を持つ相方の軌跡   作:厄介な猫さん

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武器選び

男の娘アバターのキリトと無事(?)合流し、BoB出場の為に装備の調達へ向かったのだが……

 

「何でお前も着いて来ているんだ?無理に付き合う理由もないだろ」

 

どういう訳か、仏頂面でシノンも着いて来ていた。キリトに勘違いを利用されて案内をさせられ、心象はマイナスに振り切っている筈なのにだ。そんなオレの疑問に対し、シノンは仏頂面のまま口を開く。

 

「アンタ達がどんな武器を選ぶか気になったからよ。アンタもどうせ、実弾銃を買うんでしょ?」

「いや、買わねぇぞ?今ある武器で何とかなると思うし」

 

オレのその返答に、シノンは馬鹿を見る目をオレに向けてくる。

 

「アンタねぇ……さすがにBoBを舐めすぎよ。光剣と光学銃だけで、本当に勝ち抜けると思ってるわけ?」

「グレネードを買うから問題なし。後、今から実弾銃使っても猫に小判、豚に真珠だろうし」

 

オレがそう返すとシノンは頭痛を堪えるように額に手を当てる。

事実、今から実弾銃を装備しても満足に扱えないだろうし。後、そっちの方が油断を誘えて勝てそうだし。

 

「あー……そんなにレーヴェの装備はおかしいのか?以前、リアルの方でPvPに不向きな装備って聞いたけど……」

 

キリトの問い掛けに、シノンは呆れ混じりに溜め息を吐いた。

 

「よくそれでBoBに出ようと考えたわね……光学銃は防具の《防護フィールド発生装置》で大幅に威力が削られるのよ。一応、距離が近くなるとその効果は薄くなるけど、それもかなり距離を詰めないと駄目。どのプレイヤーも標準装備として身に付けているから、プレイヤー同士の戦いにおいて光学銃は本当に不向きなのよ」

「そ、そうなのか……なら、どうしてレーヴェは光学銃を一貫して使っているんだ?」

「プレイヤー相手には不向きでも、モンスター相手ならそれで十分だからよ。レオンハルトのサブウェポンは《シリウス》……片手での取り回しと連射が利く、サブマシンガンタイプの光学銃よ。光学銃は実弾銃と違って射線のブレも少なくて、バッテリー式だから弾数自体は実弾銃より多いのよ」

「実弾銃はストレージを圧迫するし、金も掛かるからな。週一のプレイじゃ割に合わないんだよ」

 

実際、光学銃は手入れも維持も楽だし。モンスターがドロップしたアイテムを全部回収して、売り払えばそれなりに稼げるからな。レアな実弾銃も即効で売り払ってるし。

 

「後、コイツの反射神経もアンタ並みにおかしいし。光剣で銃弾を斬り落とす、常識はずれなのよ」

「あー……やっぱりレーヴェは銃弾を斬り落としてたのか。メインのゲームでも似たような事をしていたし」

 

おい。何でお前が呆れているんだキリト。その件に関してはお前も同類だろうが。

 

「やっぱり?似たような事?コイツ、違うゲームでも同じような真似をしているの?」

「ファンタジー系のゲームだから銃は存在しないけど、矢を片手間で弾いたり、魔法を斬ったりしていたな」

「……容易に想像できるわ」

 

シノンが疲れたような表情でオレを見てきたが、それはオレだけじゃないからな?触発されたキリトも軽々とやってのけたし。それでアスナ達から心底呆れられたけどな。

後、魔法に関しては上位ソードスキルを使わないと相殺できないからな?魔法属性が付与されたソードスキルだからこそ、魔法同士の干渉として処理されるんだからな。下位のソードスキルじゃ、着弾と同時に吹き飛ばされて終わるだけだし。

 

「どっちにしろ、早くキリトは装備を整えないとマズイだろ。金はオレが出すにしても、時間は限られているんだからな」

「いや、さっきのゲームで大金を得たから十分じゃ……」

「光剣は大体15万クレジット。残り5万だとロクな装備にならないぞ」

「……足りない分は出して下さい」

 

光剣が予想より高い金額だったからか、キリトは素直に頭を下げる。

で、ガンショップに来て早々に光剣を買って、サブウェポンの実弾銃選びとなったが……

 

「何を選んだらいいんだ?」

「剣と併用するなら……リボルバーはないな。ロマンある銃器だけど、リロードに手間取るし」

「この《オートマグ》は?」

「それかー……威力は確かに高いが、店売りのは耐久値が低い。ついでに俳莢時に確率で詰まって撃てなくなるともあった」

「マジか……いっそレーヴェと同じ、サブマシンガンにした方がいいんじゃないか?」

「サブマシンガンは引き金を引くと連射し続ける以上、実弾だと反動がそれなりにある。光学銃と違ってブレが凄い。後、一弾一弾の威力はハンドガンより低い場合もある」

「そうなのか?ハンドガンより強いイメージがあるんだけど」

「確かに銃の中じゃハンドガンは弱いが、ステや状況によりけりだ。光学銃ならありだが、実弾の方で片手持ちは無謀だぞ。実際、ドロップで得た実弾のサブマシンガンの試し撃ちで残念な結果に終わったし」

「あー……確かにそれだと無理だな。俺も同じ結果になりそうだ……本当にどれを選んだらいいんだ?」

「「うーん……」」

 

そのサブウェポンに、オレとキリトは見事に揃って頭を悩ませていた。オレは光学銃を使っているから実弾銃の知識は乏しいし、キリトも武器に関してまで調べていなかったからどれが最善かが分からない。いや、ガンショップに何が並んでいるかなんて分かりようがないから、仕方がないだろうが。

これならボスモンスターからドロップした《オートマグIII》を売るんじゃなかったな。いや、こうなると予想なんてしてなかったから無理だけど。100万クレジットで売ったことが悔やまれる。

 

「……ああ、もう!本当に見てられないわね!」

 

そんなオレとキリトに、様子を見守っていたシノンは業を煮やしたのか声を荒げ、ツカツカと足音を立てて近寄って来る。そのままパネルを操作して、ハンドガンの画像を表示させる。

 

「えっと……《FNファイブセブン》?これがお勧めなのか?」

「そうよ。このハンドガンなら対人に十分通用するわよ。使われてる弾丸もライフル弾の形状に近いから貫通力もあって、威力も高めの設定されているわ。コイツが金を出すなら、これが一番無難よ」

「そ、そうなのか。じゃあ、これを買うことにするよ」

 

シノンの説明を受け、オレが金を出す形で《FNファイブセブン》を弾丸とセットで購入する。

防具一式―――安定の黒一色の防具も購入し終え、キリトは射撃の練習場で《FNファイブセブン》の試し撃ちをしたのだが……

 

「下手ね」

 

見事な命中率の悪さで、シノンから酷評を下された。本当は両手で撃つのが基本なのだが、光剣をメインに扱う以上、どうしてもハンドガンは片手で扱う必要が……

 

「いや、逆に考えるべきか。半端に上手いより下手な方が、戦い方であれこれ悩まずに済むと」

「戦い方?」

「接近して撃って斬る」

 

オレが実にシンプルかつ、一番有効な戦闘法を口にする。プロが蔓延るBoBを本戦まで勝ち上がるなら、常識はずれな戦い方で相手のドキモを抜くのが一番だ。銃弾斬りなんて、オレとキリト以外にやらないだろうし。

 

「確かに……レーヴェがそれをやってのけているなら、出来ないこともないか」

「……やっぱりアンタたち、馬鹿でしょ」

 

シノンが再びオレ達を馬鹿を見る目を向けてくる。まあ、色々とやっている身としては、否定しきれないのが哀しいところだ。

 

「そろそろ、総督府に向かうか。エントリーの締め切りは15時だから……」

 

オレはそう呟きながら時刻を確認すると―――14時45分。

 

「ヤベッ!?もうすぐ15時だ!」

「なっ!?」

「嘘でしょ!?」

 

オレの叫びにキリトとシノンも驚いて時刻を確認し、冗談抜きで時間がないと知った二人も表情に焦りが出る。

 

「い、急がないと!エントリーには最低でも五分は掛かるから、十分で総督府に行かないと!」

「ここから走って間に合うのか!?」

 

キリトとシノンの焦りの声を聞きつつ、オレは打開策がないかSBCグロッケンのマップを表示させる。GGOでは転移などの便利機能はなく、基本は徒歩か運転での移動しかない。

現在地と総督府の位置は……十分以内で走って行ける距離じゃない。だが、すぐ近くにこの状況を打開できる場所があった。

オレはそれを確認して画面を閉じると、有無を言わさずにシノンの手を掴み、ソコに向かって走っていく。

 

「えっ、ちょっ!?」

「レーヴェ!?何処に行くんだよ!?」

 

シノンは目を白黒させながらオレに引っ張られ、そんなオレとシノンをキリトが慌てて着いてくる。

 

「ちょっと!何処に向かっているのよ!?」

「レンタルバギーのある場所だ!あれなら時間内に向かえる!」

 

オレがシノンにそう返していると、目的のレンタルバギーが並ぶ場所に辿り着く。オレはすぐにバギーに跨がり、承認画面に手を翳して500クレジットを支払って運転可能状態にする。

 

「早く乗れ、シノン!急いでいるんだろ!?」

「え、ええ!」

 

オレの声にシノンは頷くと、レンタルバギーの後部座席へと座る。

 

「レオンハルト。これ、動かせるの?」

「動かせるに決まっているだろ!」

 

オレはシノンの問にそう返すと、フルスロットルでバギーを発進させる。キリトも同様にバギーに乗って、オレとシノンの後ろにピタリと追従していく。

現実では法定速度があるからそこまで飛ばせないが、仮想世界なら法定速度は存在しない。それに高速移動は飛行という形でALOでやってきた。だから、躊躇なくバギーのスピードを出すことが出来る。

 

バギーのスピードメーターが時速100キロを越えたが、オレは構わずにバギーのスピードを上げていく。走行車との間が近いが、少し集中すればゆったりとした速度として認識できる。車道自体に障害物がないから、バウンド等の心配もない。

一見すると無謀とも取れる運転で、道路を走行するバスを避けながら隙間を縫うかのように走らせていく。そんな心臓に悪そうな運転にも関わらず、後ろから笑い声が聞こえてきた。

 

「ハハ……凄い。本当に凄いし、気持ちいい!ねえ、もっと飛ばして!」

 

本当に楽しそうにスピードアップを要求したシノンに、オレは無言で更に速度を上げることで応える。

法定速度ガン無視。運転ルールも無視のジグザグ走行。現実では一発免停となる運転で走らせた介もあって、時間内に総督府に到着することが出来た。後ろから着いてきていたキリトも少し遅れて到着した。

 

BoBのエントリーはタッチパネル形式で、プレイヤーネーム以外にも現実での本名と住所の入力欄もあった。入力しないと上位プライスを受け取れないみたいだが、今回の出場目的は死銃(デス・ガン)の調査だ。加えて任意で絶対ではなかったし、リスクも加味して考えた結果、何も入力せずスルーすることにした。

BoBへのエントリーが無事に終わり、同じくエントリーし終えたキリトとシノンと合流する。

 

「終わった?」

「ああ。予選のブロックはFの35番だ」

「俺はEの37番だな。シノンは?」

「……私はFの12番よ。どっちも良かったわ」

 

シノンのその呟きにキリトは首を傾げ、オレはシノンの言葉の意味を理解しようと、BoBのルールを思い出そうとする。

オレが思い出すより先に、シノンが答えを口にする。

 

「同じブロックから本戦に進めるのは、決勝まで進んだ二人だけだからよ。キリトは別ブロックだから決勝まで進めれば本戦で戦えるってわけ」

 

確かそんなルールだったな。その予選は四、五回連続で勝てば通過になった筈だ。

そうした諸々の確認をしてオレ達三人は会場へと赴き、戦闘服へと着替える為に更衣室で一時的に別れる。念のために三人別々で。キリトの見た目だけなら女子だからな。

 

「このアバター、本当に不便だよ。着替えにまで気を使わないといけないとか……」

「その見た目を利用したアンタが言える台詞じゃないでしょ」

 

キリトの疲れたような呟きをシノンがバッサリと切り捨てる。そりゃ、高い声で丁寧語で喋っていたらな。

 

「ま、キリトのイタズラ好きは今に始まったことじゃないしな。妙なアイテムで驚かせたり、微妙な言い回しで相手の誤解を誘発したりな」

「へぇ……つまりは常習犯なのね」

 

オレの言葉でシノンのキリトを見る目が冷たいものに変わっていく。そんな視線を浴びたキリトはしどろもどろになりながらも反論しようとしてか口を開く。

 

「い、いや、本当にちょっとした事ばかりで……!あくまで笑い話程度に済ませようと」

「それ、加害者の典型的な虐めの正当化と同じよ」

「被害者は毎回怒り、キリトに制裁を下すまでがワンセットだ」

 

リーファもリズベットも、キリトのイタズラに怒って詰め寄っていたからな。シリカはイタズラされたいと呟いたり、アスナはイタズラ行為自体に笑顔で詰め寄るけど。

そんな風に追い詰められていくキリトは、尚も言い訳を続けていく。

 

「そもそも、イタズラはレーヴェだってしてるじゃないか!人が寝ている間に顔へと落書きしたり、顔にセロテープを張って変顔を作ったりしてただろ!」

「おまっ!?それはお前にしかやってねぇだろうが!」

 

そもそもお前のイタズラの仕返しでだぞ!落書きに使ったペンも油性じゃなくて水性だし!

 

「つか、そろそろBoBのルールを確認した方がいいんじゃないか!?オレも結構うろ覚えだしよ!前回出場したシノンもいるし、確認するには丁度いいしさ!」

「露骨に話を変えてきたわね……別にいいけど」

「頼むから俺の話を聞いてくれ!?」

 

シノンの塩対応にキリトは泣いたが、改めてBoBのルールについて確認していく。

予選は互いの距離が500メートル離れた地点からのスタートで、対戦状況によっては試合が終わってすぐに試合となる場合もあるとのこと。バトルフィールドは1キロ四方の正方形のバトルフィールドで、フィールドの地形、天候、時間はランダムとのこと。

 

「だからどちらも勝ち上がってきなさい。そこで教えて上げるわ。敗北を告げる弾丸の味を」

 

シノンはそう言ってオレとキリト……心なしか、オレの方へと視線を向けている。一度負けているのもあって、次は勝つ気満々のようだ。

 

「リベンジは受けて立ってやるよ。決勝まで上がれば、の話だけどよ」

「言ってくれるわね?もし予選で落ちたら、潔くGGOを引退するわ。今度こそ―――強い奴らを、全員殺してやる」

 

最後のその言葉とその表情に、思わず息を呑んでしまう。

勝ち気でつっけんどんな態度が通常の、バギーの時は無邪気そうな笑い声を上げていたシノンが、殺気を感じさせる程の冷たい笑みを浮かべている。

まさか、シノンが例の……?いや、何度も聞いた死銃(デス・ガン)の誇示するかのような声とは違う、自身の力を証明するかのような声で印象が違う。単にオレが彼女が死銃(デス・ガン)であってほしくないと思っているだけかもしれないが。

 

それでも、あの殺気は普通にゲームをしていて得られるものなのか?キリトもそんなシノンを見て、視線でオレにシノンが死銃(デス・ガン)の可能性を問い掛け、オレは分からないという意味を込めて首を横に振る。その意味をキリトは正確に読み取って小さく頷く。

シノンの相反する二つの顔によって、単なる噂の裏取り調査で済みそうにない予感が、オレの中にジワリと浸透していくのだった。

 

 

 




「皆さんこんにちは。後書きコーナーの時間です」
「今回のゲストは、原作キャラクターのリズベットさんです。どうぞ」
「どうもー!今回のゲストのリズベットでーす!四人とも、今日はよろしくね!」
「ああ。今回はよろしくな、リズ」
「今回の話題は……オレの武器についてか」
「ま、妥当な話題よね。このコーナーは説明会に近いところもあるし」
「GGOでレーヴェ君が使う武器は光剣《マサムネG4》と光学銃《シリウス》だね。どちらもSAOのゲーム《フェイタル・バレット》に登場した武器だね」
「SAO、新生ALOではクラインと同じく刀を使っているぞ」
「一応、設定上の名称なんだけど、SAOでは《剃刀千鳥》、新生ALOでは《雷切影打》って名前の刀ね」
「この資料だと、どちらも鍛造武器の扱いね。作ったのはリズベットかしら?」
「《剃刀千鳥》はそうだけど、《雷切影打》はマリンが作ったわね」
「俺やアスナ達は付き合いの長さからリズに頼んだんだが……」
「レーヴェ君は身内ってことで、マリンちゃんに依頼したんだよね」
「別にいいだろ。マリンの鍛冶スキルもリズベットに負けてないんだし」
「いーや、あたしの方がスキルの熟練度は高いわよ!あたしが鍛れば、《雷切真打》になるんだからね!」
「いや、真打や影打ならマリンが作らないと意味がないんじゃ……」
「目くじら立てる相手にツッコむだけ無駄だろ……」
「何か言った?」
「いえ!何でもありません!」
「だからそのハンマーはストレージにしまって下さい!」
「……ホンット、男って何でデリカシーのない発言をするのかしら?」
「そうだよね。二つ名の件と言い、本当にどうして失礼なことを口にするのかな?」
「いや、単に事実を言っているだけなんだけど……」
「そもそも異名に関してはアスナの自業自得だし……」
「……誰が自業自得なのかな?」
「……お仕置きが必要みたいね」
「「あぎゃああああああああっ!?」」
「結局こうなちゃったわね……」
「ここでさよならのお知らせです」
「良ければ感想を送ってちょうだい。それじゃ、次が会ったらまた会いましょう」
「「「バイバーイ!」」」
「「…………」」


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