銀河の歴史がまた1ページ?描かれたくない男の歴史 作:カズkaz
わずか3ヶ月にして次は第3次ティアマト会戦に参加することになります。原作ならば出撃するはずの無かった第8艦隊が何故かティアマトに向かいます。
では第3話どうぞ。
宇宙歴794年12月末、イゼルローン回廊からなんとか生きて戻ることが出来たオレと乗艦のミカサXII号は無事にバーラト星系の首都星ハイネセンの衛星軌道上にある艦隊ドックへと辿り着いた。
所属する第8艦隊も原作に比べると損害は少なく、定数13600隻だったのが損傷艦・戦没艦合わせて2653隻を出し、現在このドックには11000隻あまりが停泊している。
「艦長、ドックとの接続作業完了しました。ミカサXII号、ハイネセンに帰還です。」
「ありがとう、副長。無事に帰ってこられたなぁ。」
「ですね。まさかイゼルローンを攻めてこれ程多くの味方が生きて帰れるとは思いませんでした。損傷艦と戦没艦を合わせても6000隻以下に収まるとは。しかもそのうち2000隻程は無人艦として使用したものですし。」
「総司令部があそこまで気前よく損傷艦を無人艦に転用するとは思わなかったが、そのお陰で帝国軍の追撃も無かったからな。艦は何とでもなるが人材が失われたら戦うことすら出来なくなる。そういう意味では今回の判断は上々だろうさ。」
艦を無事に帰り着かせた安心感からか、オレも副長もいくらか饒舌になっている。負けたとはいえ、あのイゼルローン要塞に傷を与えたのだ!と艦隊の士気も高いままだ。
「そういえば総司令部と言えば、あの噂はお聞きになられましたか?艦長。」
「噂?何の事だ?」
不意に小声になったオットー副長にオレも顔を寄せて問い返す。この副長、やけに顔が広くて色々な噂を仕入れてくるのだが、なんで士官学校組のはずなのに叩き上げグループともつうかあの仲なんだ?
「それが再編されていた第11艦隊の司令官の件です。やはりホーランド提督は候補から外れることになったようで。」
「だが、司令官の枠は出兵前の段階でほぼ確定していたんじゃないのか?確かにホーランド提督は重傷で病院艦で一足先にハイネセンまで戻された、と言うことだが。艦隊編成もホーランド提督の希望を聞いていたと言うじゃないか。」
「はい、そうなんですがね。やはりホーランド提督のお怪我がかなりひどいようで。もしかするとこのまま予備役になるかもしれないそうです。左手も義手にされたそうですし。」
「そこまでひどいのか?だが、そうなると第11艦隊の司令官は誰に?」
「そこ、そこなんですがね。もしかするとムーア少将になるかもしれないと。」
更に声を潜めた副長。だが名前を聞いたオレは思わず大きな声を出してしまった。
「まさかっ!?あのっ・・・ボージー(Bossy)ムーアか?」
慌てて後半は声を落とすが、副長の反応は肯定だった。
マジか、原作だと第6艦隊司令になっていた人物だが、ボージー(威張り屋)と兵からアダ名を奉られるくらいだ。評判は良くない。肝っ玉がでかい、と言えば聞こえが良いが傍若無人で強引なところもある人物だ。第2艦隊の分艦隊司令を勤めている現在は、上手く手綱を引いてもらって切り込み役として活躍しているのだが、少々短気なところも含めて司令官になるには不安があると言わざるを得ない。
「確かにホーランド提督がダメならその次はムーア提督かパストーレ提督、あとはホーウッド提督あたりか?だがムーア提督を選ぶくらいならホーウッド提督の方がはるかに良いだろうに!?」
「アル・サレム少将もいらっしゃいますよ。独立部隊の指揮官になってまだ間がありませんが。いや、どうも国防副委員長のトリューニヒト氏の意見だそうですよ。敢闘精神に溢れる人物だから、と。」
げっ、まさかここで早くもその名前を聞くのか!?
「なる程なぁ。ムーア提督はトリューニヒト議員のお気に入り、と噂だものなぁ。それでか。だが、そうなると第11艦隊はまだしばらく出動は無理か。司令官が変われば再編にかかる時間は増えるだろうしなぁ。艦隊ローテーションが苦しくなるか。いや今回の出兵での損害が少ないからうち(第8艦隊)も補給を済ませたら早々にローテーションに組み入れられるか?」
「可能性はあります。帝国からの反撃としての出兵もあるかもしれませんし、しばらくは落ち着けそうにありませんよ。」
声を潜めたまま話す副長の様子からすると、情報の確度は高そうだ。やれやれ、早めに補給と補修をしなけりゃならないか。
「と言うことは、オレも副長も忙しくなるな。頑張るか。」
声を掛けた副長の顔は、諦めと不満がない交ぜになった表情だった。オレも同じような顔をしているだろう。
しかし、原作通りなら約3ヶ月後には第3次ティアマト会戦がある。あの時は第5、第10、第11艦隊が出動。後詰めには第4、第6艦隊だったか?
あれ、第6艦隊の司令官はその時にもうムーア提督だったような気もするな。だとホーランド提督とムーア提督は立て続けに艦隊司令になっていたのか?
ともかく、第11、第6艦隊が出動出来ず、第4艦隊は規模が小さい、となると本当にうち(第8艦隊)が出る可能性もあるな。うちのアップルトン提督は慎重派だから、シトレ元帥からすればビュコック、ウランフ提督と協力して手堅く戦ってくれる、と考えるかもしれないしなぁ。
そんなオレの考えは悲しいかな的中し、宇宙歴795年2月、同盟軍は3個艦隊を先発としてティアマト星系に迫る帝国軍を迎撃せんと出撃した。布陣は中央にビュコック提督の第5艦隊(14000隻)、右翼にウランフ提督の第10艦(13000隻)隊、そして左翼に我らがアップルトン提督の第8艦隊(12000隻)の合計39000隻。総指揮は先任のビュコック提督が取ることになった。
予算措置が降り次第、後詰めに第4艦隊(10000隻)と第3艦隊(15000隻)も駆け付ける、とされているが原作だと間に合わなかった筈だ。
一方、帝国側の艦隊は総司令官にミュッケンベルガー元帥を擁し、艦艇数は3万7000隻前後、とのことだ。原作よりも少し多いか?イゼルローン攻防戦で同盟が損害を抑えたように帝国側も被害が少なかったからだろう。
3提督が連携を取れるとしても厳しい戦いになりそうだ。おまけにラインハルトも分艦隊を率いているのだから同盟側が不利に思えてしまう。
「副長、出港準備を進めておいてくれるか?司令会議に行ってくる。」
「了解しました。お気をつけて!」
「ありがとう。」
一方でオレはと言うと、少しでも生存の可能性を上げようと色々と足掻いている。イゼルローン要塞攻防戦の後、ミカサXIIの属する巡航戦隊司令が転任となったことを受け、戦隊の最先任艦長になったオレは巡航戦隊司令兼任の艦長になった。まぁ、もともとの司令も最先任艦長だったから覚悟はしていたのだが。
そこで艦の準備などは副長に任せて、戦隊司令会議に出ては連携や協力のための打ち合わせを行っている。
アップルトン提督は慎重な艦隊運用を行う事が
多いため、自然と戦隊司令になるものも慎重派が多くなる。かくいうオレは当初、慎重派ではなく積極派と見られていたらしい。(しかも、どうやらイゼルローン攻防戦の時の1艦長にも関わらず意見具申をしたことが理由らしい)
実際に今も巡航戦隊司令や戦艦戦隊司令との顔繋ぎ、の範疇を越えて積極的に艦隊内の中堅指揮官らとやり取りをしているのでずいぶんと積極的だと思われているだろう。
だがそれも、少しでも大きな戦力で連携を取り、指揮下の艦や戦隊、更に会戦時に隣接する友軍戦隊の生存率を上げるためだ。
意外に思うかもしれないが、銀河英雄伝説における同盟、帝国の双方における正規艦隊の中で戦隊司令の役職に就く者の裁量権は存外に広い。まぁ考えてみれば当然で部隊内の連絡すら時には妨害されてしまう程の状況で
一つ一つの戦隊にまで細かな指示を艦隊司令部やその下の分艦隊司令部が下すことなど不可能だ。だからこそ、通常はそれらの上級司令部(正規艦隊の司令部と分艦隊司令部)から中級司令部(複数の戦隊を束ねる先任司令部など)や下級司令部(通常の各戦隊司令部)へは、大まかな狙いの位置や優先目標などの割り振りが成され、それをもとに中級司令部が具体的な指示を出し、下級司令部において個艦ごとの目標などを決めていくのだ。
艦隊運用の名人と言われるフィッシャー提督が真に得意としているのは、この割り振りや指示の際に各中級司令部の戦力やペアとなる戦隊同士をスムーズに振り分けること、更に消費する物資を逆算して遊兵を作らないように補給や修理のローテーションを組むことで最大効率で手持ちの兵力を運用できる事にある。
フィッシャー提督はそうした細かな調整をとんでもない速度で成すことが出来る逸材であり、だからこそ、後年の第13艦隊は徹底した集中砲火や変幻自在と言われることもある艦隊運動が可能だったのだ。
それは一先ず置いておくとして、今オレが指揮している
配下の巡航艦戦隊にはミカサと同じ789年式標準型巡航艦のtype2型が6隻配属されている。type2型は機関ブロックが新型に換装された789年式巡航艦の中期建造艦であり、機関の余剰出力をレーダーと防御フィールドの出力に割り振った艦だ。それまでの標準型巡航艦よりも守りが固いのは嬉しいが、それでも戦力としては戦隊での主砲門数は計36門、ミサイル発射管が24門、電磁投射砲が12門、更にスパルタニアンは定数より少ないために、6隻で16機に過ぎない。
一戦隊のみでは戦力として出来ることは限られている。だからこそ、隣接する戦隊との連携を取れるように司令同士で連携の確認や戦術の共有をしているのだ。
「第825巡航艦戦隊のトウゴウ少佐だな?随分と忙しなく動き回っているそうじゃないか?熱心なのは良いことだね。」
戦隊司令会議を終え、急いでミカサに戻って他戦隊との戦術シュミレーションに参加しようと急いでいたオレにそう声をかけて来たのは見覚えのある人物だった。
「あ、これは!チェン大佐!」
あわててオレが敬礼をしたのは第8艦隊の第2分艦隊司令部の参謀長であるチュン・ウー・チェン大佐だった。原作なら同盟最後の艦隊総参謀長を勤め、ビュコック提督と共にラインハルトへ最後まで抵抗した人物。その風貌から『パン屋の2代目』などと揶揄されることもあったはずだが、この時声をかけてきた彼はとてもパン屋のようには見えない。静かだが威厳のある雰囲気を醸し出している。
「あぁ、急いでいるだろうに急に声をかけてしまったね。実は先の要塞攻略戦における撤退具申をした貴官がどんな人物か気になってね。少し時間を良いかな?」
「は、勿論です、大佐!」
「ありがとう。なら珈琲でも飲みながら話そう。こちらへ。」
そういいながら最寄りのカフェブースへ誘われるが、正直に言うとここでチェン大佐と話せるとは思ってもみなかった。確かにオレの指揮下の第825巡航艦戦隊はチェン大佐が参謀長を務める第8艦隊第2分艦隊に所属している。分艦隊司令グレア少将は直属の上官に当たるし、チェン大佐も同様だ。だが、一介の巡航艦戦隊司令ごときが直接やり取りをすることはまず無いと言っていいし、声を聞くことがあったとしても分艦隊への一斉指示の時くらいで、個別の指示が伝えられる時は通信科員を介してだ。
「急にすまないね。新任の戦隊司令が忙しいのは承知の上なんだが、少佐の事を調べていて少し気になったものだがら。」
そう言いながら手ずから珈琲を渡される。恐縮しながら受け取るが、ニコニコと穏やかそうな笑顔をしながらもその言葉に緊張が増す。
「時間を取ってしまって申し訳ないので単刀直入に聞くのだが、少佐は今回の戦闘についてどう思うかね?」
「はっ、はい?今回の戦闘について、ですか?」
予想していない質問にしどろもどろになる。え、イゼルローン攻略戦で独断で意見具申した事とか、戦隊司令に手当たり次第に話してる事とかを問い詰められると思ったんだけど。今回の迎撃戦について?しかもチェン大佐はニコニコしながら頷いてる。
「あ、あー。そうですね・・・。やはり第2陣の第4艦隊と第3艦隊を待って迎撃戦闘をしたい、とは思います。もちろん、予算的にも時間的にも厳しいのは分かってはいるのですが。2艦隊も合流できれば艦艇差は2万7000隻。ほぼ2倍の戦力差です。友軍の被害を抑えつつ、帝国軍を撃退することが出来ると考えます。」
とりあえず、考えていたことを話すがこの程度の事は出兵している将兵ならみんな考えていることだろう。もう少し付け加えた方がいいか?
「ひとまず、補給態勢についても後方の第203・451の両補給船団がいれば5個艦隊であってもしばらくは継戦能力を維持できます。また、近隣の6個補給基地と連携を取れば3会戦までは戦略物資を補給できます。医療・糧食関連については不足が懸念されますが、第4艦隊が補給艦を追加で護送してくれることになっていますのでなんとかなるでしょう。」
そこまで述べるとチェン大佐は満足したのか何度か頷いた後で口を開く。
「ありがとう。補給についてよく考えているね。調べもつけていたか。少佐は後方勤務が希望なのかね?士官学校の成績を見ると、どちらかと言えば前線指揮が得意なのかと思っていたのだが。」
げっ、オレの成績まで調べていたのか?まぁ士官学校でのオレは入れ替わる前のオレではあるんだが。
「はい。小官はあくまでも前線任務を希望します。ただ、前線で戦うからこそ、補給や支援についてはその有り難みも重要性もよく実感しておりますので。」
「なるほど。ではもうひとつ、希望としては5個艦隊での迎撃をしたくとも、現実としては3個艦隊揃えられただけでも上出来だ。ではこの場合、貴官はどのように戦うべきだと思うかね?」
オレの返事を聞きながら再度問いかけてくるチェン大佐。まるで口頭諮問を受けている気分だ。というか実際にこれ、口頭諮問なのか?
「は、現在の偵察結果を見ますと、敵の構成は中央と右翼で大きく異なっているように見えます。更に敵の右翼にはホランド提督を伏撃した部隊が含まれていました。おそらく、中央と左翼がイゼルローン駐留艦隊主体、右翼が増援艦隊主体なのではないかと考えます。そこで戦闘に際しては両者の連携を断ち切りながら、中央に攻撃を集中すべきだと考えます。」
「ほう、駐留艦隊の側をかね?理由は?」
「は、理由は2つです。まず一つ目ですが、右翼部隊の練度の高さです。ホランド提督は、いくらミサイル艦主体とはいえ、護衛ごと対策を打つ暇もなく打ち減らされました。敵の攻撃の精度や、その連携はかなりのものです。これを相手に短時間で打ち破るのは3個艦隊を集中させでもしなければ難しいでしょう。一方で、駐留艦隊は先のイゼルローン攻略戦においてかなりの被害を出しています。練度の低い今なら、更に損害を出させるチャンスかと考えます。」
ここで一息つきながら、更にオレは自分の考えを続けた。
「理由の2つ目は、我が方の状況です。歴戦のビュコック提督、攻撃を得意とされるウランフ提督で駐留艦隊を叩き、慎重な用兵が得意なアップルトン提督が敵の右翼を抑えにかかるのが最も理に叶っていると思うのです。また、敵右翼は中央と左翼が被害を出せば無理をせずに下がるのではないか、とも思います。」
「ふむ。ありがとう少佐。貴官の意見はよく分かった。すまなかったね、忙しい時に時間を奪ってしまって。艦に戻ってくれたまえ。」
笑顔のチェン大佐はそう言うと先に腰を上げ、まだ温かいだろう珈琲を飲み干すとコップをゴミに捨てた。オレも慌ててほとんど飲んでいなかった珈琲を飲み干す。うへぇ。ヤンでなくとも泥水と言いたくなるのもわかる。苦さとカフェインだけはしっかり摂取できるがこれは珈琲の香りがまるでない。
「では、大佐。失礼いたします。」
敬礼をしてそそくさとミカサへ戻るために艦内エレベーターへ乗り込むが、一体なんだったんだ?
4日前のオレはそう疑問に思ってはいても目前の開戦を前に準備でバタバタだったからそんなに深く考えていなかったのだが・・・。
「これ、オレが話した作戦案に似てるよなぁ。」
いよいよ戦闘開始が近づき、双方から挑戦信号(150年に及ぶ戦闘の中で、友軍敵軍の識別や味方の連携を取るため等の理由から、自然発生的に行われるようになった両軍の共通行為。敵への降伏勧告も兼ねている。)を打ちつつ接近していく両軍の布陣は同盟が中央にビュコック提督の第5艦隊、左翼にウランフ提督の第10艦隊、そして右翼が我々の所属するアップルトン提督指揮の第8艦隊だ。第8艦隊は敵の右翼(おそらくラインハルトが指揮している)を牽制することが任務だ。
対する帝国軍の布陣は中央から左翼にかけてがやはりというべきかイゼルローン駐留艦隊に一部増援を加えた艦隊。敵の中央にはヴィルヘルミナ級も確認され、ミュッケンベルガー元帥が総指揮を取っていることが確実だ。左翼にはイゼルローン駐留艦隊旗艦のヴァルトバイセンも確認できている。右翼はやはり旗艦タンホイザーが確認され、これがラインハルトの座乗艦であることは間違いないだろう。(ちなみに、艦名のタンホイザーはホーランド提督が打ち破られた後に情報部が急いで調査したらしい)
(まぁ、布陣に関しては総司令たるビュコック提督が中央にいるのは当然だし、よくある形ではあるから似ていてもおかしくはないか。)
「司令艦長、どうも敵の右翼は後方配置されているのは間違いなさそうですね。中央とは4光秒も離れています。あれじゃすぐに対応できませんよ。」
副長が偵察型スパルタニアンの持ち帰ったデータを見ながら話しかけてくる。手元のスクリーンにもデータをもとにした合成布陣図が映し出された。
確か、原作では門閥貴族からの横やりを嫌ったミュッケンベルガー元帥がラインハルトを艦隊ごと予備兵力の扱いとして後方に下がらせたのだったか。どうやら今回もその点は変わらないらしい。
「我々にとってはありがたい事じゃないか。第8艦隊は敵の右翼に備えつつも中央へ攻撃を仕掛けることが出来る。帝国軍は自縄自縛に陥ったわけだ。」
まさか原作の知識を話すわけにはいかないので適当にごまかすが、副長も本当は答えを知りたいわけではないだろう。戦闘開始前の緊張をほぐそうとしているのだ。
「戦力的には帝国の奴らの方が劣っているのに、更に兵力を少なくするなんてどういうつもりなんですかね?」
「さて、別働隊がいて我々の後方に回り込もうとしているので無ければ何でも構わんよ。それに、お貴族様の考えることなんぞ知りたくもない。」
わざと軽口で答えると艦橋内には軽い笑い声が複数響いた。3ヶ月しか間がないで大規模戦闘に再び駆り出されたが、兵の士気は高いな。
「司令艦長!旗艦ジャガンナータより圧縮通信です!艦隊全艦シールド出力最大。戦隊ごとに統制射撃を準備せよとのことです。」
「了解信号を送れ!戦隊各艦にレーザー通信。シールド出力最大、統制射撃を行う。統制艦は本艦とする。続けて第823、第836巡航戦隊指揮艦へ通信。『合同での統制射撃を求む』直ちに送れ!」
「了解しました。第823、第836巡航戦隊指揮艦のロンドンIV、スードリLXXXVIIより了解信号が返信。追記『統制射撃を行う。指揮はスードリ艦長ハルケニア少佐』です。」
「よし、砲術長。統制射撃を準備!スードリからの指示を全艦に伝え!」
第823巡航戦隊と第836巡航戦隊はそれぞれソユーズ少佐とハルケニア少佐が司令艦長をしている。第825巡航戦隊の近隣戦隊であるこの2つとうちは共同戦闘を行うことで事前打ち合わせを行っている。3個巡航戦隊であれば巡航艦は20隻、砲門数は120門にもなる。理論上は戦艦の防御シールドであっても2度の斉射で破ることが出来るはずだ。
「副長、本艦の応急指揮は任せるぞ。」
「はい、お任せください。戦闘継続を優先でよろしいですね?」
「ああ、それで頼む。」
既に第8艦隊艦隊旗艦からの大まかな指示、更に第2分艦隊旗艦からのより詳細な指示を受けて第8艦隊も敵右翼を警戒しつつ帝国軍中央に攻撃を行う態勢を整えている。右翼(ラインハルト艦隊)が動いた際に抑えとなるためエネルギーは節約しなければならないが、2個艦隊(第5、第8艦隊)で敵の中央を叩くことが出来れば、少なくない被害を与えられるはずだ。
「敵中央艦隊までの距離、間もなく最大射程に入ります。」
「まだだ。まだ撃つなよ。最大射程では敵に有効打とはなり得ん。スードリからの指示を待て。」
ジリジリと焼かれるような気持ちで距離が縮まるのを待つ。帝国軍は最大射程に入ったところで早くも撃ち始めてきた。数の不利を補うためだろう。何万という光条が同盟軍の艦列へ飛んでくるが、まだ距離が遠く防御シールドで余裕をもって受け止められる。ミカサのシールドも2度、3度、とビームを受け止めた。、
「防御シールド、出力に変動無し。問題ありません。」
「よし。シールドの出力は最優先だ。絶対に破られるなよ。」
報告に返事をしつつ、距離を確認する。よし、間もなくだな。
「第836巡航艦戦隊スードリより通信。敵戦艦への統制射撃開始命令です!」
「よし、第825巡航艦戦隊、全艦射撃開始する。ファイヤーーー!!」
「ファイヤー!」
ミカサを含めた味方艦隊から一斉に射撃が始まった。第3次ティアマト会戦の始まりだ。
第3話をお届けしました。大変更新が遅くなり申し訳ありません。主人公、少し階級が上がり更に責任も重くなりました。
そして原作の有名キャラとまたエンカウントです。
ちなみに、チュン・ウー・チェン大佐が第8艦隊第2分艦隊の参謀長というのは本作の独自設定です。