ゼンレスゾーンゼロ・二刀の剣士   作:涙があふれる

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Prologue2.動き始めるその始まり

 

 

 ルー都にて発生したホロウ災害…通称“失楽園事変(しつらくえんじへん)”から2年後、(ふたた)びその最悪の災禍(さいか)は人類へと牙を向けた。

 

──“旧都陥落”

 

 後世(こうせい)にそう(しょう)される事となるそれは、人類史に深く傷跡を残す…もうひとつの大災害である。

 “零号ホロウ”と呼ばれるホロウの短時間での急速的な活性化により、繁栄(はんえい)(ほこ)っていたエリー都は(またた)()の内に飲み込まれてしまった。

 そして“零号ホロウ”の活性化による拡大から逃げ遅れた住民たちの大勢が亡くなり、そんな人々を救うため動いた防衛軍や保安官たちもまた、エーテル侵食によってエーテリアス化してしまうかそのエーテリアスを前に倒れいった。

 そうして最終的に、“零号ホロウ”は“式輿(しきよ)(とう)”を爆発する事によってなんとか一時的にであるものの活性化を抑制(よくせい)する事に成功した。

 

 “失楽園事変”。

 “旧都陥落”。

 誰もが忘れる事の…忘れてはならないその悲劇は、人類に(あらた)めてホロウという存在が立ち向かわなければならない災害であると言う事を再認識させる最悪な教訓となった。

 

 そして“旧都陥落”から11年…“失楽園事変”から13年の年月が過ぎ去った。

 

  

▼△▼△▼△▼

─【場所:新エリー都_六分街】─

 

 エリー都陥落より名前は改正され、現在では“新エリー都”と呼ばれる事になった都市。その一角にある六分街の夜のラーメン屋に、齋秋(さいしゅう)の姿はあった。

 

「…あんちゃんよー。いっつも来てくれんのは嬉しいんだが、流石に身体に悪いぞ?」

 

 ラーメン屋の店主…チョップ大将はここ1週間毎日朝昼晩と食べに来る齋秋に対して、少しばかり心配の言葉を掛けた。

 

「別に死にやしねぇからいいんだよ。それに此処(ここ)のラーメンが美味いのが悪いってもんだ」

「はっはっはっ!そいつぁ嬉しい言葉だな!」

 

 チョップ大将は齋秋の褒め言葉に、とても喜ぶように声を上げて笑う。

 

「……」

 

 転生してから31年。

 俺は(ようや)くゲームに登場していたビデオ屋…“Random_Play(ランダムプレイ)”を見つける事が出来た。それが()るのが此処(ここ)、六分街だ。友人(ダチ)の話しでしか内容を知らない俺が持つ数少ない情報のひとつ。

 別段関わる必要なんざ無いんだが…折角(せっかく)生きてるってんなら関わっといて(そん)は無いからな。何せゲームの主人公だ。行動次第じゃあ今よりも楽しめるかもしないだろ?

 てな訳でゲームの主人公である“アキラ”と“リン”の2人とはこの1週間で多少なりとも話はしたが…特段これと言って面白可笑しな事は起きちゃいない。

 正直なところ、主人公と関わりゃあ毎日事件に巻き込まれて楽しいんじゃね?と思ってたんだが──

 

「あ!山月さんまた食べてるー!」

 

 噂をすればってヤツなのか、ラーメンを(すす)りながら主人公(こいつら)のことを考えてりゃビデオ屋からリンがひとりで出てきた。

 

「んだお前。アキラはどうした?何時(いつ)もベッタリくっついてんだろ?」

「あ〜ほら、お兄ちゃんって身体弱いから…」

 

 明らかに何かを隠してる…そう分かる程にキョドった様子をリンは見せる。

 

「…そりゃお前もだろ……」

 

 身体の不調…確か主人公のどっちかが何らかの影響でぶっ倒れるとかどうとか友人(あいつ)は言ってやがったな。時系列からして…“パエトーン”のアカウントを捨てた後か。

 

 記憶力に強みのある齋秋は、リンの様子から過去に友人から聞かされたゼンゼロの内容を思い出し、今がどの時系列なのかを瞬時に把握(はあく)する。

 

「そ、それより!そんな毎日ラーメン食べてたら身体壊しちゃ──」

「そいつはもう大将に言われてっから」

「あ…そ、そうなんだネ〜。そ、それじゃ私141に用があるからまたねー!」

 

 リンは慌てるようにして141へと走って行った。そしてその後ろ姿を見送った齋秋は、大将に勘定(かんじょう)を払い店を後にする。

 そうしてフラフラと足を進める中で、携帯端末を取り出し電話をかける。

 

「…あー“ミズハ”か?」

 

『────!』

 

 ミズハ。

 そう呼ぶ名前の人物に電話を掛けるや否や、返ってきたのは怒りの(こも)った声であった。

 

「いやわりぃわりぃ。戻ったら何か買ってってやるから」

 

『────!』

 

「あーわあったわあった。それよか調べて欲しい事あんだけど…パエトーンっての、まだ存在してっか?……そうか。いやいい。個人的なやつだ…ああ、ああ分かってっから。それからあとアレだ、六課との合同なんたらのやつ、俺行けるか分からねぇからお前代表で頼むわ。んじゃそゆことでよろな」

 

『───!!!』

 

──ブツ。

 

 何やら端末の向こう側で猛抗議をしていたような声が聞こえていたが、齋秋は問答無用で躊躇(ためら)うことなくブツ切りする。

 そして手に持っている携帯端末を原型が残らないほどに握りつぶすと、道中に置かれているゴミ箱へと投げ捨てた。

 

「さぁて。俺が此処に居るのバレないように上手くやらねぇとなあ…じゃねーと後が怖ぇし」

 

 こっから原作?が始まるってんだ。もう少しばかりアイツらには苦労してもらうとするかね。

 

 

▼△▼△▼△▼

─【場所:新エリー都_???】─

 

──バキンッ!

 

 新エリー都に(たたず)堅牢(けんろう)とした建物の一室で、何かが粉々に砕かれるような音が鳴り響いた。

 

「あ、あの…九重(ここのえ)補佐官?」

 

 職員であろう人物が、バキバキに割れた受話器を握る女性…“九重ミズハ”に対して不安げな様子で声を掛ける。そんなミズハは無表情ながらも怒りに()()ちており、(まと)う雰囲気からも鬼のような怒気が溢れ出ていた。

 

「…ふぅ…失礼。(いささ)か感情的になり過ぎてしまいました。そちらの書類は私が処理しておきます」 

「そ、そうですか…では、自分はこれで」

「はい。お疲れ様です。お気を付けて」

 

 職員から書類を受け取ったミズハは、(ねぎら)いの言葉を投げ掛けると、自身の席へと座り胸ポケットから携帯端末を取り出す。

 そして連絡ツールである“ノックノック”を開き、“六課副課長”と登録されている人物へと謝罪の文を送信した。

 

「…はあ。ついて行く人…間違えた気がする……」

 

 溜息を吐きながら愚痴(ぐち)を呟くようにして独り言を上げながらも、ミズハは職員から受け取った書類に目を通す。

 

「…“讃頌会(さんしょうかい)”に“零号ホロウ”に“反乱軍”それからその他諸々(もろもろ)私たちの管轄(かんかつ)じゃないのですが…“市政府(しせいふ)”も“TOPS(トップス)”もそれを理解しているのか…はぁ、さっさとあの人には戻って来ていただかないと困るというものですね」

 

 それよりも、あの人が何故“プロキシ”である“パエトーン”を探してるのかが謎じゃありますね。軽く調べてみたあたり既にアカウントは削除されている…それに特段面白い相手でもないとと言うのに、また何か馬鹿な事を考えているとでも思っておくのが1番ですかね。

 全く、自由すぎるにも程があるというものです。少しは他人(ひと)の事を──

 

──ピピピッ。ピピピッ。

 

 ミズハが頭を抱えていると、机の上に置かれた電子時計がアラームを鳴らす。

 

「…ん〜〜っ…っはぁぁぁ…一先ず、今日はもう止めです。帰ってみゃーちゃん吸って寝るとしましょう」

 

 1日の業務を終えたミズハはひとり、家で待つ一匹の家族の元へと帰って行く。

 

 

 

  

「あ。受話器の始末書…はぁ、まあ明日やればいいか…」

 

 





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